ゼロから始まる俺氏の命   作:送検

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原作開始。

主人公が、自分の楽しいと思えることを全力でやっているから少し弾けています。





親友は復讐を開始するそうです (原作開始)
第13話 始まり


 

「お爺様!!ありがとうございました!!」

 

部屋の中からそんなはっきりとした声が聞こえた。そのはっきりとした声は、これから始まる復讐に気合を入れているようにも、これまで支えてくれた爺さんに対する感謝の気持ちとも取れて見えた。

 

暫くすると、その男は玄関を出てこちらへ向かってくる。その男の顔は整っており、体もしなやかに、正にイケメンといった風貌である。

 

「待たせたね、幸村」

 

そう言って、男は笑顔でこちらを見る。その姿を見て、壁にもたれかかっていた俺は大きな鞄を2つ、背負って目を細めた。

 

「...見れば見るほど変わったもんだ、なあ政宗くん?」

 

「そう言うお前も、相当イケメンになったよなぁ幸村くん?」

 

そう言ってお互いに嫌らしい笑みを浮かべ、拳をぶつけ合うと、俺達はお互いに吹き出す。

 

「何か、やり残したことはないか?」

 

俺がそう言って政宗を見ると、政宗はあの時と同じように曇のない瞳でこちらを見る。

 

「ああ、もうこの地にやり残したことはない...幸村」

 

「あ?」

 

「本当に、協力してくれてありがとう。もし幸村がいなかったら、ここまで来れなかったかもしれない」

 

そう言うと、政宗はこちらに正体して手を伸ばし、俺はその手を掴む。

 

「まだまだこれからだろ?お前さんはこれから憎き安達垣愛姫に復讐しないといけないんだ。それを忘れんなよ?」

 

「...ああ!」

 

さあ、始めようか。

 

ここから政宗くんのリベンジが始まるんだ─────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......がっ!!」

 

突如、自分の体中に走る痛みで目を覚ます。それと同時に鳴るけたたましい程の目覚まし時計。その音に痛さに悶えていた俺は呻き声を上げつつも立ち上がり目覚まし時計を消す。

 

懐かしい夢を見たな。

 

忘れることもない、我が故郷信州での親友との最後の会話。あの時はえも言われぬ達成感に満たされたものだ。

 

そして、あの夢の続きから今に至り───

 

俺、上田幸村は絶賛一人暮らし中です。ま、そこら辺は当たり前だよね。だって信州に実家があるのに東京の高校に編入しているんだもん。

信州から東京の高校に通うのなんて無理だし一人暮らしが妥当であろう。

 

時計を見ると、時刻は6時。ここは二度寝と洒落こみたい所だが、どうにも今日は寝る気になれない。というか、仮に俺が寝坊したら起こしてくれる奴がいないため、もはや迂闊に二度寝も出来ないというのが現状である。

 

さて、支度しなくちゃな。

 

そう思い、俺はワイシャツに着替え、真新しい黒の制服に身を通す。

 

さあ、今日も学校生活を始めようではないか。

 

 

 

 

 

さて、7時になって東京の某所───そこのコンビニエンスストアまで徒歩で歩くと丁度そこには見知った顔がゼリー飲料を飲んでいた。俺はその男を見て苦笑いをしつつ男の元へ近づく。

 

「よ、政宗」

 

俺がそう言って軽く手を上げると、真壁政宗はこちらを振り向き、笑いかける。

 

「おう、幸村。おはよう」

 

「どうしたんだ、朝からゼリー飲料を飲むなんて」

 

朝メシ抜きなんてことは無いだろう。何せ実の息子を溺愛している母だ。よっぽどのことがない限り朝飯を作らないなんてことは無いだろう。

俺がそう言って政宗に尋ねると、政宗は乾いた笑みを浮かべる。

 

「朝からカレーに唐揚げ、ドーナツ!!こんな高カロリーの物摂取できるかよ!?普通の奴でも胃がもたれるわ!」

 

そう言って頭を抱える政宗。どうやら、これからも政宗はカロリー摂取の事で苦心しそうだな。

 

「...ま、愛されてるって事で良しとしとこうぜ。俺なんて朝メシ近くのパン屋の食パンだからな」

 

「それは...うん、ごめん」

 

おい、よせよ謝るなよ。そしてそんな悲しい人を見るかのような目線はヤメて!?

 

「ま、そろそろ行こうぜ政宗」

 

「そうだね。行こう」

 

そう言って、俺達は高校に向かって歩を進めた。

 

「そういえば、幸村。部活とか決まってるのか?」

 

「部活、か」

 

特にこれといった部活はないし、2年生だしな。今のところ、部活にこれといった意欲はなかったりする。

 

「お前は...筋トレがあるからな」

 

そう言って政宗を見ると、少し苦笑いをしつつ頷く。

 

「兎に角、俺は現在の体型をキープしつつ何としてでもあの憎き安達垣愛姫に復讐する。だから、他の事にうつつを抜かす暇はないんだ」

 

政宗はそう言って握り拳を作る。その政宗の引き締まった表情を見て、俺は政宗ならば本当にリベンジを成してしまうのではないのか、と直感的に思った。

 

 

俺も、最大限の助力はしないとな。もう、ここまで来たらやるしかないんだ。

 

 

俺は、空を見上げて決意を固めた───

 

 

 

 

 

 

 

「いい脚線美だな...」

 

「女子の生脚にうつつ抜かしてんじゃねーかよ」

 

前言撤回。コイツが復讐を本気で成せるのか不安になってきたよ。

 

「てか政宗、女子の生脚ばっか見てると女子に怒られるぞ───」

 

「ちょっと!何見てんのよ!!」

 

「ひいっ!ごめんなさい!!」

 

そーら見た事か。今回の件に関しては俺知らないからな。そう思い、政宗の隣で口笛を吹いていると女子達は政宗と俺の間を素通りして後ろを歩いていた男子に詰め寄る。

 

「その携帯見せてみなさいよ!」

 

「ご、誤解だよ!ちょっとメールしようとしただけだよ!」

 

男はそう言うも、女子達は猶も男を責め立てる。

 

哀れ男。メールをしようとしてたキミより女子の生脚にうつつを抜かしていた政宗の方が余っ程変態だろうに。

 

隣を見ると政宗は、その光景を見つつも後ずさりしている。少しでも悪気があるのならば今すぐ女子達に詰め寄られている男のフォローをしてやろうとは思わないのか。

 

まあ、傍観気取りで見ている俺が言うのもなんだけど。

 

「おい、政宗。いつまでも後ずさりしてないで行くぞ」

 

「そうだね...」

 

そう言って、2人で揃って歩を進めると突如として、女子の声が、俺と政宗の名前を呼ぶ。

 

「もしかして、真壁政宗くんと上田幸村くん!?」

 

「は、はい!」

 

「そうですけど...」

 

俺達がそう言って立ち止まると、突如として女子達が集まっていく。ふむ、これがイケメンの力か。改めてこの力は素晴らしいな。

...って、今の女子の言葉だと俺もイケメンってことになるのか?

 

 

...まさかね。俺はせいぜいついで。政宗の付き人のようなものだ。どうせ周りからは『なにイケメンの政宗くんにくっついてるの?キモイんだけど』とか絶対に思われている筈だ。

 

「もしかしたらテニス興味ある!?朝練、参加してく!?」

 

「い、いやあ...」

 

テニス部の女性に部活の参加を促されて政宗がお茶を濁していると、今度は先程までケータイをいじっていた男に詰め寄っていた女性が俺に詰め寄る。

 

「二人とも編入試験満点だったって本当!?」

 

「あ、いや...そう言われてはいるが」

 

「二人ともサッカーしてるとこ見たよ!チョーかっこよかったよね!!」

 

尚も続く政宗に対する賞賛の嵐。それに気を良くしたのか、政宗は前髪をサラッと払い一言───

 

 

 

「褒めすぎだよー、むしろみんなの頑張っている姿に感心してるところだったよ」

 

そして、テニス部の女性陣は真壁政宗に一瞬でときめいた。

 

 

...なんだ、あの砂吐きそうな光景は。

 

 

先程まで詰め寄られた男の子なんてもう気の抜けたような顔をしているではないか。

 

「さあ幸村。行こうか」

 

そう言って先程とは打って変わって背筋をピンと伸ばして歩き出す政宗。俺はそれについて行く。

 

その瞬間、またしても上がる黄色い歓声。

 

この世界は何処の甘々ラブコメかってんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、朝からいい思いしたなあ」

 

「お陰でこっちはめっさ疲れたけどな...!」

 

何が好きでキャーキャー言ってる女子の対応なんてしなくてはならないのだ。

 

「だけど、これなら安達垣愛姫を攻略出来るかもしれない...!やっぱり努力は報われるんだな幸村!!」

 

そう言って俺を見る政宗に俺はチョップを敢行する。

 

「調子に乗るな。相手はあの男嫌いの安達垣だぞ。簡単に懐柔出来ると思うな」

 

しかも、告白してくる男には痛い渾名を付けてくるというおまけ付きだ。1度でも告白して、振られたら身辺調査をされてまたしても渾名を付けられるというのが関の山だ。1度きりのチャンスを狙わないといけないし、そこに行きつく過程もしっかりしなければならない。

 

「そうだね、確かにそうだ。そして、俺の秘密を...過去を誰にも知られちゃならないんだ」

 

そう、政宗は自分に言い聞かせると俺の肩を組む。

 

「サンキュー幸村。お陰で少し冷静になれた」

 

「なら良かった」

 

何をするにしても、先ずは冷静にならなければ事を考えることも短絡的なものとなる。

ましてや、これから安達垣愛姫とお話したりするやも分からないのにこのまま有頂天になっていたら何をしでかすかわかったもんじゃないからな。

 

一先ずは安堵。そう思いほっとため息を吐くと、今度は校内からどよめきが走った。

 

「おい、幸村。今日って行事の予定あったっけ?」

 

「ない」

 

始業式が始まった直後の学校行事って何だよ、というツッコミにもならない考えは置いといて。

 

「にしちゃあザワザワしてるよな」

 

「幸村、行ってみようぜ!」

 

「その野次馬乗った、俺も行くぜ政宗」

 

そう言って俺達は校内に向かって走り出して、校門を潜ると校内には既に野次馬がたくさん存在しており、『シゲオ先輩』やら『残虐姫』やらの声が聞こえた。

 

「今から何するんだろうな」

 

そう呟き、人混みに紛れて俺と政宗はその一部始終を観察しようと目を凝らす。

 

髪を金髪にしたイケメンが一人。

 

そして今、屋上から1人。残虐姫と呼ばれ髪をツインテールにしている少女がシゲオ先輩を見下ろしていた。

 

そして、その少女を見たシゲオ先輩は上を見上げ

 

 

「やあ、来てくれたんだね!恥ずかしがり屋のラプンツェル!!遠慮はいらない!人の視線には慣れている!今ここで返事が欲しい!」

 

恥ずかしがり屋のラプンツェル...!?人の視線には慣れている...!?

 

「く、くくっ...!恥ずかしがり屋のラプンツェルって...!俺を笑い殺す気かっての...!」

 

「ゆ、幸村...!笑っちゃ悪いって...!人の、人の視線に慣れてるって...く、くくっ!!」

 

終いには政宗まで笑ってしまっている始末である。それほど先程の生徒の公開告白は滑稽だったのだ。

 

明日は我が身、そんな一般的な事を見事に忘れていた俺達が、金髪の先輩であるシゲオさんの言動を笑っていると、残虐姫が拡声器を持ち大きな声で話し始める。

 

「山田茂雄さん。この度は交際のお申し込みありがとうございます。つきましては、当家の使用人により身辺調査をさせていただきました」

 

「こ、公開告白!?」

 

「し、身辺調査か!随分本格的だなおい!もうお前ら付き合っちゃえよ!!」

 

「もう幸村黙って!!お願いだから黙ってて...くくっ!!」

 

 

俺達がそう言って笑いながら言い争っていると────

 

 

「そこの2人!!少し黙ってなさいよッ!」

 

「「す、すいません...」」

 

残虐姫様は俺達を見て、一喝しました。

 

いやあ、流石残虐姫。自らのやる事に一切の妥協を許しませんよね。

 

 

 

 

 

 

 

結果として、シゲオ先輩のプロポーズ大作戦は見事失敗に終わった。どうやら赤本に紛れて『なんてこった!女体三國志に俺だけ劉備玄徳!?』の最新刊を買ってたり、『女子高生の二の腕を凝視する性癖』などが諸々バレてしまったらしい。極めつけはそれを公衆の面前でされた事なのか、渾名が『し毛ぼ〜ん』になってしまったかそれはシゲオ先輩のみぞ知る事実なので深くは聞かないでおく。

 

 

政宗には、是非ともあのような失敗は犯して欲しくないものだ。

 

 

人の振り見て我が振り直せ。

 

 

...いいことわざだよね。

 

 

 

 

 

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