ゼロから始まる俺氏の命   作:送検

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終わる終わる詐欺をしてしまう駄作者をお許し下さい。

纏めて出すのも良いのですが、それだとどうしてもキリが悪いので近日中に後編を出し、原作1話を終わらせます。


第22話 観察 (中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『必死に頑張る姿は人の心を打つ』

 

 これは数年前に幸村の親父さんに教えられた言葉であり、今でも俺の心に刻みつけられている言葉である。かつて『早瀬政宗』という存在がデブだった頃、俺は死ぬ気でその現実に立ち向かい、痩せるべく努力した。

 

 必死に頑張ることで、仲間もできた。それは数だけで言ってしまえば些細で、小さなものだけれど一人一人の力だけは誰にも負けないと自負できる仲間たち。

 

 友達だって、出来た。それは、俺の素性こそ知らないけれどデブじゃなくなった俺に対して友好的に接してくれる人。

 もし、あの体型のままだったらって思う時はあるけれど、そんなことを言ったら幸村に怒られるし、口には出さない。

 

 かくして、俺という人間はひたすらに努力を繰り返したことにより昔とは驚く程にいじめとはかけ離れた世界を築くことが出来た。それは、長年『早瀬政宗』自身が希求していたものである友人に囲まれた普通の暮らし、楽しい世界。それを掴み取れた俺は、幸せなんだと思っている。

 

 

 それでも、俺の心の内面───『真壁政宗』自身は、それじゃあダメなんだ。幾ら信頼出来る仲間を増やそうが、友達を増やそうが、諸悪の根源を叩かない間は、俺のこの気持ちが晴れることはない。

 

 かつて、俺を裏切った女は今も男達をバサリバサリと言葉で切り倒し、のうのうと従者を連れて暮らしている。

 

 腹立たしい。

 

 イライラする。

 

 安達垣の姿を見る度にそんな感情が抑えられなくなっていく俺は、きっと意地になってしまっているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここだよ」

 

 時はお昼時。俺は安達垣愛姫とワーキングデッドとかいう超絶濃密ホラー映画を鑑賞し、その映画の凄まじさに辟易しつつも安達垣の隣で目的の店を指差す。

 ハダピュアの衣装を着こなした何時ものツインテールではなく、髪をストレートに下ろした安達垣は、俺の指さした方向を見て、興奮と空腹を抑えきれずに俺の手を引っ張る。

 

 「速く行くわよ、真壁」

 

 「え」

 

 「え、じゃないわよ。とっとと私をエスコートしなさい。ご飯、連れてってくれるんでしょう?」

 

 コイツ。

 

 それは少なくとも男を引っ張って今まさにドアに手をかけようとしている女が言うセリフではなかろうて。

 何時もの落ち着き払った安達垣愛姫はどこへ行った?なんだ、無限の彼方にでも飛んで行ったのか?

 とはいえ、安達垣とデートをしている以上ここは1歩引いて紳士的な行動をせねばならない。幾ら罵倒されようとも山のような心で、寛大に。悪態は心の中に留めるのみにしなければな。

 

 「分かったよ、それじゃ行こうか安達垣さん」

 

 「言われなくともそうするわよ。なに、アンタ馬鹿なの?」

 

 このまな板女め!

 

 俺は心の奥で安達垣に悪態を突き、店のドアを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ!何名様で御座いましょうか?」

 

 店内へ入ると、まさに元気溌剌といった様子のウエイトレスさんがこちらに駆け寄り、俺達に話しかける。一見普通の元気な店員さんだがその実自身の太ももを思いっきし抓っており、安達垣の奇天烈な格好に対し笑いを堪えている姿が容易に察せられた。

 とはいえ、流石飲食店の店員といったところか、プロ根性のような何かでこのおかしな状況を堪え、貼り付けのスマイルで俺達を席に誘導したのだ。正直、俺が彼女と同じ立場ならどうなっていたやら。きっと、笑いを堪えきれず即日クビになっていたことだろう。

 

 「安達垣さんは、こういう所は慣れてる?」

 

 座席に座った俺が、そう尋ねると安達垣はスカートを整えながら上品に座る。

 

 「まあ、ぼちぼちね。取り巻きの子達を従えてカフェなんかには良く行っているから」

 

 ほう。

 

 カフェには行くのか。とはいえ、カフェも飲食店でありそれなりに洒落の利いた店ならサンドイッチやらの炭水化物系の食べ物もあるわけで、そこに目移りしないのかと是非尋ねたい所なのだが。

 

 「周りの目とか大丈夫なのかい?」

 

 今日は休日だし、もしかしたら同じクラスの人間がいるかもしれない。そんな所で安達垣がドカ食いをしていたらそのクラスメイトはどう思うのだろう。きっと、殆どの人間は驚き、のたうち回ることだろう。

 しかし、そんな事など気にしていないかのように安達垣はふふんと笑い、俺を見る。

 

 「真壁は私を誰だと思っているのかしら」

 

 「安達垣さん」

 

 「今一瞬物凄くイラッときたんだけど.....まあいいわ。そうよ、安達垣よ。天下御免の安達垣愛姫よ?そんな私がこの程度の事で動じるとでも?」

 

 「うん、安達垣さん時々抜けてるところあるからさ。心配だよ、あんまりドカ食いしないようにね?」

 

 俺が、そう言って笑うと遂に安達垣は暴言を吐く。

 

 「余計なお世話よ」

 

 「すいませんでした」

 

 「大体、こんな時間に特に洒落ている訳でもない店に同級生が来るわけないでしょう?唯のファミレスよ?」

 

 「ファミレスを舐めるとは何事か」

 

 「黙りなさい」

 

 そう言って、安達垣は後ろを見渡して頷く。

 

 「.....それ見たことか。ここに居るのは私たち以外殆ど成人した中年老人しか居ないわ。真壁、アンタの予想する力も大したことは─────」

 

 ?

 

 先程まで得意気な笑みをしていた安達垣の顔が唐突に固まる。一体どうしたというのか。次第に固まった顔は解れていくものの、解れた顔は安達垣の自信のある笑み等ではなく、まるで『会ってはいけない人間に会ってしまったような』顔付きであった。

 

 どうかしたのだろうか。

 

 そう思い安達垣に尋ねようとしたその瞬間、不意にポケットに入れていたスマホが振動する。

 

 「なんだ.....?」

 

 変化した安達垣の顔付きに疑問を抱きつつも、スマホを取り出して内容を見ようとするとそこには親友からのメールが。

 ははん、さては幸村の奴場所が分からないんだな?仕方ない、ここは何時も手助けしてくれるささやかな御礼として場所を懇切丁寧に教えようではないか。そう思い意気揚々とメールを開き、内容を見る。

 

 

 

 

 幸村: やらかした、すまん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんでアイツが.....ここにいんのよ.....!」

 

 「.....あー」

 

 何だ、そういうことかよ。

 

 俺は、内心苦笑いしつつ安達垣の向いた方向を見やる。すると、そこには地毛である茶髪の髪にサングラスをかけたイケメンが同じく茶髪のロングヘアの綺麗な女の子と共に和スイーツを食べていた。

 というか、一緒に和スイーツ食べてる女の子は一体誰よ。そう思いつつ苦笑いをしていると、すぐ様幸村のモロバレな変装をいち早く見抜いた安達垣が俺の胸ぐらを掴み、糾弾する。

 

 「謀ったわね真壁.....!!」

 

 「ノ、ノン!!平和主義!!ワタシ!謀ったつもりじゃないよ!!」

 

 「嘘こけ!どうせ悪魔的な何かが閃いて上田を呼びつけたんでしょう!?朱里小十郎とかならまだしもあの上田を呼びつけるなんてアンタどんな精神環境してんのよ!阿呆なの!?」

 

 「逆に嘘を吐く理由がどこにあるんだよ!本当に今回の件についてはイレギュラーだって!」

 

 そもそも幸村は意図してこのような短絡的な見張りはしない筈だ。映画とかなら暗く、周りが見えない故に同じ場所で監視したりすることは有り得るものの流石にこのような店内で堂々と見張りをしたりはしない。

 普段変態的な行動を繰り返すこともある幸村だけど、俺の復讐に関しては真摯になってくれている。そして、真摯に取り組む故に幸村の性格上このような店内で意図して監視をするとは思えなかった。

 極めつけに、幸村は電話でメシを食べているという話をしていた。だとしたら、考えられるのはイレギュラー。まあ、飯を食べている場所を深く聞かなかった俺の落ち度でもあるという事だ。

 

 「それに、幾ら幸村だって今日のことを言いふらしたりはしないよ。断言するよ、絶対に言わないから」

 

 何はともあれ、安達垣の目を見つめて強くそう言うと安達垣は訝しげにこちらを見つつ、目を逸らす。

 

 「.....なら、いいけど」

 

 「おお、素直だね。何時もそうやって引いてくれれば良いのに」

 

 「アンタ1度処されたいの?」

 

 「すいません調子に乗りました」

 

 饒舌に舌が回りすぎて、失言をしてしまうことが多いな。まあ、テンパって何も言えないよりかはマシなんだけどさ。

 生まれ育った環境が環境なだけに、どうしても人を弄るのが楽しくなってしまう。おっと、俺は決して幸村のせいだとか、松さんのせいだとか、親父さんのせいだとか、薫さんのせいだとか、そんなことは言ってないからな。言ってないったら言ってないんだからな。

 

 「全く.....それにしても上田がこんな所にいるなんて思いもしなかったわ。しかも女連れで。いいご身分じゃない、こんな休日に女とデートだなんて。まさかナンパじゃないでしょうね、悪徳商法、キャッチセールスとか」

 

 いや、待って待って。

 

 確かに幸村は変な行動することはあるけど、ナンパするほど女の子に飢えてないって。しかも悪徳商法ってなんだよ。安達垣よ、お前の頭の中で幸村はどんな人間になっているのだ。

 

 「幸村はそんな奴じゃないと思うんだけど.....」

 

 「どうかしら、後々になって思い出したのだけれどアイツ初対面の私に向かってお淑やかな女の子が好きとか言ってたし、あの女なら上田の言っていたタイプに当てはまると思うのよ。所謂どストライクね、それもど真ん中直球の」

 

 そして親友よ。

 

 お前は出会った人間全てに地雷のような何かを埋めないと気が済まないのか。

 

 取り敢えず、帰ったら色々突っ込ませろ。

 

 「ま、まあ.....八坂高校にもお淑やかな女の子はいるけど幸村は手を出してないし.....ほ、ほら!幸村はそんなに愛には飢えてないから!」

 

 「分かってるわよ。ただでさえ変態なのにあれで愛にも飢えてたら.....ちょっと、あれよ。あれ.....もう手遅れになるわよ」

 

 安達垣さんはそう言うとむすっとした顔で幸村を見やるその姿はまさに癇癪を起こした子供。俺はそんな安達垣さんを見て、改めて俺は上田幸村という人間の人脈の多さに驚いてしまう。

 幸村は日頃からぼっちを自称している男だが、ああ見えて他人から信頼を置かれることに長けている。コミュ障でもない幸村は人と仲良くなる話術を心得ているのかとでも言うくらいに直ぐに友人を作ることが出来てしまうのだ。

 現に、あの安達垣愛姫が幸村を罵るものの突き放すことは無い上に、それなりに友好的なのだ。それは一重に上田幸村という人間の表裏のない誠実さと長年の社交パーティーなどで培ったのかは知らないが類まれなる話術によるものだということを長年幸村の傍にいた俺は知っていた。

 

 本当に頼もしいし、ありがたい。幸村がいなかったら今頃俺はストレスによる胃痛で相当頭を悩ましていたことだろう。1人では不安だったことも、2人なら不安じゃなくなる。

 幸村と出会って、俺は信じてくれる仲間の重要性をひしひしと感じていたのだ。

 

 「.....なに感傷に浸ってるのよ、気持ち悪いわね」

 

 不意に、声が聞こえる。その声により現実に引き戻された俺は安達垣を見つめ、気を引き締めて笑顔を作る。

 

 「いいや、何にもないよ。ただ、安達垣さんの事を考えててね」

 

 「へえ.....それは私との会話よりも優先すべきことなのかしら?」

 

 おっと。

 

 ここでかつての俺なら慌てて『そ、そんなことないよ!!』なんて馴れない女の子との対話のせいでテンパった故に言ってしまうところだが、今の俺はひと味もふた味も違う。

 

 松さんに鍛えられた女の子との話術.....と、いっても美人の女の子相手にテンパらないようにする訓練を受けただけだけど、それのお陰で安達垣相手にもテンパることは滅多になくなった。

 

 

 

『いいかな?所詮この世には人間は男と女しかいないの。だから男の子が女の子の事を意識するのは仕方が無いんだよ。だったら、いっその事めいっぱい意識して、その安達垣ちゃんとやらにめいっぱい美辞麗句を並べちゃおうよ!』

 

『は、はいっ!』

 

『じゃあ早速やってみよう!私の事をどう思ってるのかな!かな!』

 

『め.....滅茶苦茶綺麗で.....怖いです!』

 

『即答だ───!?』

 

 

 

 

 .....うん。あの時の松さんとの訓練はめっさ恥ずかしくて、めっさ辛かったけど、それのお陰で今の俺があるんだし───

 

 「うん、大事かな。だって俺安達垣さんとデートするの滅茶苦茶楽しみにしてたんだもん。何から話そうか、本当に迷っちゃうな」

 

 こうやって簡単に美辞麗句を並べられるってもんだ。

 

 「.....言うじゃない、真壁」

 

 「安達垣さんだって、かなりどぎつい事言うよね」

 

 ニコニコスマイルを崩さずに、そう言う。

 すると、安達垣は引きつった笑みで俺を睨み付ける。

 

 「私は別に良いのよ。最早私の残虐度は一種のステータスと形容してもおかしくないのだから。真壁、貴方にだってその気になれば渾名のひとつくらい付けてやるんだから」

 

 「ほう、例えば?」

 

 「吉乃に貴方の欠点を粗探しさせてるから直に私がとんでもない渾名を付けてやるって言ってんのよ。今に見てなさい、真壁。貴方の調子に乗った、舐め腐った態度を改められる日が楽しみね」

 

 ごめんなさい、安達垣さん。

 

 その人既に俺達の仲間です。

 

 「うん、分かってるよ。安達垣さんとデート.....楽しいなぁ」

 

 「話を聞きなさいッ!!」

 

 そう叫んで俺を睨み付ける安達垣を内心笑い、メニューを取り出す。

 

 「まあいいじゃないか。どちらにせよここでご飯を食べることには変わりないでしょ?お腹いっぱい食べて、午後に備えれば何とかなるよ」

 

 「はぐらかすんじゃないわよ.....本当サイテー.....!」

 

 吐き捨てるかのように、そう言われ内心ショック。幾ら復讐対象が相手でも、美人の子にそう言われるのはあまり気分がよろしいものでは無い。

 安達垣は俺の持っていたメニュー表を半ば強引に奪い取ると、メニューを暫く眺める。そして、1度頷くと一言───

 

 「ここからここまで、全部頂こうかしら」

 

 「ちょっと待て」

 

 「何よ」

 

 何よ、じゃない。幾ら大富豪のハラペコ娘とはいえあたかも服を買うような感じでメニューの全部を平らげようとするな。昼だぞ?学校でもドカ弁3つが最高記録だったではないか。

 

 「せめて腹八分目にしてよ。これから色々予定もあるんだしさ」

 

 「私にとってはアンタの豆腐より柔らかいメンタルの治療よりもお昼を平らげる方が大切なの」

 

 「.....幸村に笑われるぞ?『やーい、アッキーそんな可愛らしい表情してドカ食いとか似合わないよー、さっすが大富豪ー!』ってな感じにさ」

 

 俺が、幸村のおちゃらけた雰囲気を真似しつつ身振り手振りを交えてそう言うと、若干こめかみに青筋を立てた安達垣がため息を吐いて店員を呼ぶ為のベルを押す。

 

 「.....確かにそれも癪ね。なら、3人前程度にしようかしら」

 

 そう言って、安達垣は注文を尋ねた店員にステーキ等の料理を3人前プラスデザートを注文し、店員さんを驚愕させていた。

 そして、さりげなく後ろを見るとそこにはじっくり俺たちの様子を見つつも綺麗な女の子と会話に花を咲かせている幸村の姿が。

 

 リア充って、こういうことを言うんだろうな。そんなことを思いつつ、俺は安達垣のワクワクした姿を見つめつつ内心ため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人前の料理が届くと、安達垣はまるで掃除機のように料理を吸引し始める。その姿は、普段残虐姫としてブイブイ言わせてる安達垣とはまるで別人で、それこそ小さな子供のような姿だった。

 

 しかし、昔の安達垣がそんな子供なのかと言われたら、それは違うと答える。少なくとも、俺が知っている『愛姫ちゃん』はハダピュアの格好をしながらファミレスのランチを3人前平らげるような人間ではなかった筈なのだ。

 

 「多分だけどさ、安達垣さんがよく食べるのって生まれつきじゃないよね」

 

 デザートのパフェを食べている安達垣にそう尋ねると、安達垣は少しばかり悲しげな表情になる。

 

 「そうね.....ちょっと昔、嫌なことがあってからかしら」

 

 そう言った安達垣の瞳はまるで懐かしい何かを憂うかのような瞳だった。そして、その瞳を見た俺は何故かその『嫌なこと』というキーワードに過敏に反応してしまったのだ。

 嫌なこと───かつて、俺と安達垣との関係が良好だった頃、安達垣がたったひとつだけ俺に見せた涙があった。

 その涙と『嫌なこと』は果たして関係するのか。今では、恐らく聞くことの出来ない、そして今の復讐者である俺には必要のない疑問を、俺は抱いてしまったのだ。

 

 「そっか.....」

 

 「ええ、そうよ。尤も真壁には関係のない事だし、私もその件に関しては割り切ったわ。いいじゃない、ドカ食い。隠れて食べなきゃいけない事とお腹が鳴る以外には大して不都合はないし.....何より、過去をずっと引き摺るよりマシじゃない」

 

 「それは、違いないね」

 

 過去を引き摺るのが良いことだとは思わない。一生引き摺ってのうのうと暮らすよりも、何らかの方法で過去を払拭しなければならないのだ。

 恐らく、安達垣の嫌なことと、俺の安達垣に対する憎しみは似ている節がある。それは、どちらとも何らかの形で過去の汚れを払拭しようとしている面だ。

 安達垣にとって、それが『ドカ食い』という術であって。俺にとって、それが『復讐』という術であるのだ。

 何時か、安達垣愛姫には痛い思いをしてもらわなければならない。そして、それが今ではなくても、何時か惚れさせて振る。その為にはどんなカードも惜しまず切る。

 

 

 

 

 そして、過去を払拭して───

 

 

 

 その後は────

 

 

 

 

 

 「ねーねーお姉ちゃん!」

 

 俺が明確にしている答えを今まさに脳内でまとめようとしたその時、不意に女の子の声が聞こえた。その声は、安達垣に対して発しており尋ねられた安達垣は不思議そうな顔つきで女の子を見ていた。

 

 「なにか?」

 

 「なんでそんな変なかっこしてるの?」

 

 そして、いきなり核心───

 

 女の子よ、自重しておくれ。今そんなことを彼女に言ってしまえば、もれなく安達垣の気持ちは昂り、きっと恥ずかしいワードを連発し、店内の空気をおかしなものにしてしまう!

 

 「へ、変じゃないわよ!これは『私はハダピュア』からの引用で───」

 

 「えー、そんなハダピュアしらないよー」

 

 「貴方が生まれる前にやってたのよ!」

 

 案の定そうだった!

 

 安達垣は立ち上がり、女の子に向かって腕を組む。その姿の滑稽さときたら、それはそれは普段安達垣が『変態紳士』と馬鹿にしている幸村以上に滑稽だった。

 

 「あ、安達垣さん自重───」

 

 「真壁は黙ってなさい!いいこと?子供のあなたには分からないでしょうけれどもこれは男女の付き合いには欠かせない儀式なの。初デートの時はお互いが打ち解けるために必ず仮装して───」

 

 「おねーちゃんハダピュアになりたい人なの?」

 

 「違うわよ!!何をどう解釈したら私がハダピュアに───」

 

 「もういい!!皆まで言うな安達垣さん!行くよ!!」

 

 これ以上は収拾がつかないと判断した俺は立ち上がり、安達垣の手を引いて早々に会計を済ましこの店を出た。

 幸村、すまん。これ以上は俺の心臓が持たない。俺はお前みたいに心臓に毛を生やすような人間にはなれないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あー、そこの女の子ちゃん。これにはとてつもなく深い理由があるんだよ。ほら、大人の事情っていうさ、兎に角あの話は誰にも言っちゃダメだぞ。お兄ちゃんとの約束だ」

 

 「おにーちゃんはハダピュアになりたい人なの?」

 

 「断じて違う。お兄ちゃんはレッドスターなアラキになりたかった真っ当な人間だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みに主人公はチャンスを切り拓くセ界1のスプリンターにもなれないし、夢掴む一打を決めることも出来ません。ご了承ください。
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