作者「あれも書きたい!!これも描きたい!!沢山書きたい!!」
心の中の作者「良いから予告通り2週間後に間に合わせろ駄作者ァ!!」
作者「アッ───!!!」
はい、茶番にお付き合い頂き有難う御座いました。取り敢えず原作2巻が残りあともう少しで終わるくらいには、プロットがありますので暫くの間エタる心配は御座いません。
メンタルがズタボロになりかけて要らん脳内会議まで繰り広げてる作者ですが、今後ともよろしくお願い致します。
注意!
タイトルにも書きましたが、作者はイラストに関してはド素人です。気になる方は閲覧非推奨でよろしくお願い致します。
最初から、運命なんてものは信じていなかった。
俺にとってこの世界というものは偶然の連続であった。置かれた状況に唖然とする余地もないまま転生という摩訶不思議な状況にポイ捨てされて、その地で親友が出来て、女友達も出来て。後ろには偉大な家族達が俺を見ている───それら尽くを中身凡人である俺が予想出来る筈もなく、偶然偶然またまた偶然と様々な偶然に出会って、それでも何とかこの世界でよろしくやってる。
なら、これから先に起こる展開も偶然と呼べるのか。
それは、今の俺には何一つ分からない。
───俺は、そんな事を本気で考えてしまう程の『事象』に出会ってしまったのだ。
そして、俺は後にも先にもその事象による衝撃を忘れることはないだろう。
あの時の女の子の悪戯っぽい笑みを忘れることはない。あの時のひっくり返った痛みを忘れることはない。
『俺は───』
※
朝、日が登りかけた早朝に突如着信音が鳴り響き睡眠によって眠ってしまった俺の脳内を痛いくらいに起こす。
「......何だってんだ?」
こんな早朝に電話を掛けてくるやつを俺は知らない。ああ見えて政宗は友人間でもマナーを守る男であるし、藤ノ宮だって今頃はおねむの時間の筈だ。元々友人の少ない俺にはこんな時間に電話掛けてくる友人なんて居ないはずなんだけどな。
......否、待て。
「......いたな。ちょっと前に俺の朝食タイムを奪い取った奴」
小動物のような可愛さと暗黒的な2つの性格を持っている2面性パシリヒロイン小岩井吉乃。彼女とは協力関係となり連絡先を交換した中であり、彼女ならこの早朝に連絡してもおかしくはない───そう思い、俺は渋々スマホを見る。
結果は、ビンゴといった所か。
「......なんだよ、よしのん」
『馬鹿な事を言わないで、私だってこんな早朝に変態と話なんてしたくない』
なら、速く電話を切りやがれ。こちとら眠くて眠くて仕方が無いんだ。エナジーは大切にしておきたい俺にとってこの時間帯での長電話ははっきりいって『害悪』でしかないのだ。
しかし、次に発せられる一言により俺の頭はやや正常に戻ることになる。
『復讐関連の事で話したいことがある』
「......復讐、とな」
『更にいえば、さいきんの豚足に関して』
「政宗?」
最近の政宗が何をしたというのだろうか。あのテストの件から補習が始まり1週間程過ぎた。それでも政宗の調子は良さげだったし、言動からも自信に満ち溢れている様子が見て取れた。
正直、心配等していなかった───というのが本音なのだが。
「何かやったのか?もしかして復讐に1歩近付いたとか!」
半ば興奮混じりにそう言うと、今度はその気概事剃り落とすかのようなため息が俺の鼓膜を震わせる。
畜生、今アイツ心底ってな感じで溜め息吐きやがったな。
「変態、分かってるの?」
「何が」
「豚足は貴方と一緒に色んなことをした。そうして完璧超人になった。一応女性とのコミュニケーション能力も悪くはない。けど、恋愛と女とのコミュニケーションはまた違ってくる」
なんと。
では、お前は政宗がアッキーに対しておかしなことをしていると。そう言うのか?
『この際はっきりいう。さいきんの豚足がキモイ。正確にはまじキモイ。このままじゃ愛姫さまに愛想を尽かされて、試合終了』
「諦めるまで試合は終わらねーぞ。安西先生だって『諦めたら』試合終了だって言ってんじゃねえか」
『2次元と現実を一緒にしないで。世の中にはどうしようもないことだって相応にある』
そりゃ失礼しましたな。
「......で、それと今の電話になんの関係があるんですかね小岩井さんよ」
気分は最悪、寝癖もボーボー。そんな状況で溜息混じりにそう言うと、小岩井吉乃は相変わらずの無機質な声色で一言。
『公園に来て欲しい』
そう言って、一方的に呼び出して携帯の着信を切った。
はい、急げー!!
※
「.....眠い」
あれから数十分後。朝のランニングが日課になっていない俺は支度もまちまちに近くの公園へとやって来ていた。
政宗と小岩井が同盟を結んだ記念すべき場所。そこに1人で居るのは何か新鮮で、不意に政宗を呼び出したくなってきた。
「変態、こっち」
本格的に電話でもしようかと携帯を取り出した途端に後ろから声がかかる。いけねえ、早朝に政宗に電話しちまう所だったぜ。マナー違反はどっちなんだって話だわな。
「よ」
「......変態、今回の件は貴方にもせきにんがある」
「そうか?」
自主的な行動が出来るのは良いことではないか。世の中にはそういう事が出来ない奴らだっているんだからな。
「じゃあ聞くけど、豚足は女の子と付き合った事はあるの?」
「ない」
アッキーの復讐に命を賭けていた政宗は彼女を作ることはなかったな。
「未経験の事を1人でやらせて成功出来るほどのテクニックが、豚足にあるの?」
「ないな」
松姉さんに初対面でテンパる政宗には、ないな。
「知識とテクニックは表裏一体......学んで変態。これを貴方が知っていなきゃ、後々豚足が重大なヘマをやらかす危険性がある」
ふむ。
確かにそうだな。
「ならば、どうする?お前が政宗と付き合ってやるのか?」
「経験させる必要なんて何処にもない。問題は『経験しなきゃ分からない』選択肢をとっていること」
そう言うと、小岩井は後ろを振り向き一言。
「愛姫さまに必要なのは、スリル」
「スリルだぁ?」
「今の豚足は愛姫様が食べ飽きたであろう炭水化物と同じ。何時も見栄えのないメニュー、工夫も凝らしていない白米だけの料理に愛姫さまが靡くとでも?」
「あ.....」
そこまで言うと、漸く俺が気付いたと踏んだのか音の大きさ2割増の溜息を吐いた後に小岩井が続ける。
「愛姫さまをあっと驚かせる、ひいては興味を引かせるものを選ぶ。今はその時期に来てるの」
けど、と小岩井はそっぽを向きながら続ける。
「豚足を褒めておいて欲しい」
「なして?」
「私の中ではこの段階は4段階中の2段階目に来ている。正直、豚足がここまでいくのにはもう少し時間がかかると思っていた」
おお、予想以上の高評価ではないか。てっきり小岩井の事だから『馬鹿』とか『マジキモイ』とかそういった辛辣な評価をしているのかとばかり思ったのだが。
「序に4段階作戦の詳細ってのは」
「そんなものはかんたん。1つは豚足が愛姫さまのメールアドレスを獲得する。2つは愛姫さまとしんみつになる。3つは、豚足が愛姫さまにぷろぽーずする。4つ目は......」
そこまで言ったところで小岩井は少し苦しげな表情で何かを言い淀んだ。なんだってんだ?お前のブレインには4段階の作戦がインプットされてんじゃないのか?
「どした小岩井、テスト勉強のし過ぎで記憶が曖昧になったか?最近は暑くなってきたからな、ボケんじゃねーぞ」
「変態に私の脳内環境を指摘されるなんて、屈辱のきわみ。勘弁して欲しい」
「売られた喧嘩は買うぞよしのん。なあに、心配するな。死にゃしないからよ」
閑話休題───
「変態。今回、貴方にやってほしいのはアフターケア」
「アフターケア?」
アフターケアと言えばあれか。誰かの心にポッカリ、または鋭く刻み込まれた穴や傷を埋める役割を果たす役職か。良いな、慈愛と調和を生きがいとする俺にとってはピッタリの仕事じゃないか(大嘘)。
「よっしゃ任せろ。で、俺は誰の今後をケアしていけばいいんですかね?」
「愛姫さま」
What ......?
「はぁっ!?」
俺がアッキーのアフターケアをしろって!?んなの無茶に決まってんだろ恥ずかしい!!ていうか俺アッキーにこの前偉そうに口弁垂れたばっかなんだよ!!それにも関わらず今度は甘い言葉でアッキーの心をケアってか!?やらせんなこんなの!!
「アッキー相手ならよしのんがやれば良いだろ!?近い相手なんだから!!家令なんだから!!腹黒メイドなんだから!!」
「変態、私がケアをするのと変態がケアをするのとでは意味合いが違ってくるの。私がケアをすれば愛姫さまは立ち直るだろうけれど、これから豚足がやる事に対しての疑念は晴れない。でも、その役割を『豚足の親友』がやったら?」
「ッ......それは、そうだな。信憑性の観点で言えば政宗に近しい俺が近況を話した方がより信頼性がある、か。けど、俺がアッキーのアフターケア......『変態』と罵られる未来しか浮かばねえな......」
「問題ない。何を言おうが変態が変態であることには変わらない。その不変の事実は今活用すべき」
「サラッと毒混ぜんのやめろよな、傷つくから。や、割とガチで」
不変の事実とか言うのもガチでやめろ。俺はアッキーに『変態紳士』と罵られるまではただの一般転生者だったんだからな。俺は悪くない、悪いのはアッキーだ。アッキーが男嫌いを拗らせてなきゃ今頃俺は上田と呼ばれ続けていたのだろう。
{IMG53602}
「まあ、いい......私の言わんとしていること、分かった?変態」
「......ああ、言いたいことは分かったよ」
「それなら話ははやい。これから愛姫さまとの関係を自力で何とか取り持って。多少の狼藉なら私がふぉろーするから」
「分かった......なら、俺は持てる全ての力を使ってアッキーの心の穴を埋めて見せよう!!」
「きもい」
「キモイ連呼すんなや、いい加減怒るぞ?」
普段なら快適な朝。されど、朝っぱらからこんな暴言吐かれまくってたら快適どころじゃない。寧ろプラスがマイナスになってストレスが増し増しの状態で歩んでいかなければならなくなる。
著しく発達していくストレス社会。職場の上司と部下の関係ってこんなものなのかな......なんて巫山戯た妄想をかましながら、朝は過ぎていった。
※
罵声を浴びようが、糾弾されようが俺のやるべき事は変わらない。所詮逃げることも出来ず、朝っぱらからの罵倒で今日限りの罵倒耐性がついてしまった俺にとっては女の子の罵声などどこ吹く風───といった心境だった。
「貴方、死にたいの?」
言葉を飾るということを知らない相変わらずの邪智暴虐の限りを尽くすプリンセス・アッキーは今日も今日とて美化委員代理で旧校舎教室の窓を綺麗にしている俺に罵声を浴びせてきた。
ただ、一方的という訳では無い。今回の件には俺にも原因があるのだから。
「ただでさえ貴方がいることだけでも寒気がするのに寒気がする貴方にアフターケアをされるなんて......考えただけで寒気がするわ。渾名のグレードアップも考えなければね」
「自覚してるだけに反抗できません。今回は甘んじて受け入れよう」
「その理解不能な言動や行動が『変態紳士』たる所以って事にいい加減気付きなさいよ......」
それは無理な話だ。自分らしく生きていきたい俺にとっては例え『変態』やら『変態紳士』と呼ばれようが今の生き方を変えるなんてことはしたくないんだからな。幸い、アッキーの秘密を握っていることもあって『変態紳士』の渾名も拡散されてはいない。俺は幸運だ、そう思っとこう。
「アッキー、そう連れないことを言うなよ。俺だってお前と政宗の恋路を心配してるんだ」
「余計なお世話よ。大体、何で私が真壁との事で貴方にアフターケアされなきゃならないの?上田は私のどこをケアするっていうの?」
そりゃお前さん、その高飛車な心理面───
「
恐らくアッキーと関わってきた中では史上最強の痛みが俺の尻に走る。瞬間的に発せられた俺の声が、2人しかいない旧校舎の教室に響く。
「何か文句でも?ド 変 態 紳 士」
気が付けば、俺を引き攣った笑みを浮かべたアッキーに見下ろされている。数時間前の俺はまさかこんなことになるなんて想像だにもしてなくて、この光景に改めてアッキーのアフターケアの難しさを感じると共に要らんことを考えてしまった数秒前の俺に心の中で中指を立てた。
「......そこまで言うなら分かったよ。でも、これから政宗が反旗を翻そうが、何をしようが俺の知ったことではないからな?」
小岩井からの具体的な案は俺には知らされていない。故に、政宗が何を仕掛けてくるのかは正直に言うと全く読めない。ただひとつ分かるのは、今の今までの政宗とは全く違ったやり方で何かしらの行動を起こすこと。
『愛姫さまに必要なのはスリル』
そこまで言った小岩井が、政宗をこのままで居させるはずがないというのは、小岩井の人となりを知れば一目瞭然である。
「はっ......別に結構よ。貴方なんかに悩みを打ち明ける位ならもっと別の人に頼むから。そもそも、悩みなんてあの憎たらしい真壁がいちいちキモイ言動をしてくる位だし」
「俺が言うのもなんだが、近頃の政宗はそんなに酷かったのか?」
そう言うと、安達垣は少しだけ渋い顔をしながら俺を見やった。
「傘を渡してきたわ」
「おう」
「その時の表情が生理的に無理だったの。『ザ・ナルシスト』な表情で『お前の涙と思えば雨に濡れるのも』───みたいなこと言ってる真壁を見ても酷くない、なんて歯に衣着せない私が言えると思う?」
そりゃアッキーさん、衣を着せぬ努力をしてないからなんじゃ......と口に出せば間違いなくハイキックが太腿を蹴り上げるであろう言葉を必死に飲み込み、俺は大きくため息を吐く。
「兎に角。私は貴方にアフターケアなんてされる必要ないわ。黙って見てなさい、私が真壁を心身共に八つ裂きにする瞬間を」
「あっそーですか。どうなっても知らねーからな」
もーこーなったら知らん。無理矢理アフターケアするって言っても聞く耳持たなきゃ意味もない。小岩井には現時点で交渉の予知すらなかったと適当に言い訳しておけば良いや。それに、小岩井&政宗の行動によっちゃ、『もしかしたら』があるかもしれない。
俺はそれまで安達垣のご機嫌でも取ってりゃ良いさ。
「じゃあ、アッキー。箒を取ってきてくれ」
「嫌よ、貴方が取りに行けば良いじゃない」
「あ?今のお前は俺の後ろに突っ立ってるだけだろうが」
「それが何か?大体箒なんて今持ってくる必要ないでしょう。然るべきタイミングで、貴方が持ってくれば良い話よ」
確かにそうだった。
でも、美化委員の癖してそうやって突っ立ってるだけってのも頂けないのではないのか?大体、何時もは小岩井師匠に掃除を任せてる暴君アッキーがこうして美化委員に参加してるってのもおかしな話だ。
何故、アッキーはここに居るんだろう(哲学)
「なあアッキー。何でアッキーは此処に───」
俺が先程思いついた疑問のようなものを言うべくアッキーに向かって思考の通りに尋ねようとすると、不意にガラガラと大きな音が聞こえる。
「ようっ!マイ・ベストフレンドユッキー!」
大きな音のしたドア付近に目を遣ると、先程まで話題に挙がっていた真壁政宗が軽業師のような軽い身のこなしでこちらへ向かってきていた。
軽い身のこなし同様、幾分か声色も語調も軽いチャラ男のような声をしていらっしゃる。こういった余裕綽々の風体を装う事が出来るのも、信州での訓練の賜物である。面白い、乗ってやろうではないか。
「おうムネリン!!今日も相変わらずイケメンだねぇ!!」
「ははっ!ムネリン言うなっての!」
「ならお前もユッキー言うな!」
そして、最早早瀬家では恒例となっているお互いの右拳をコツンと当てて『うぇーい』をやっていると相変わらずの冷たい視線が俺達を襲う。汚物を見るような目付きで俺達を見るなんて......全く、安達垣は最高だぜ。
「幸村、今日は担当の先生が休みで補習がないんだ。だから一緒に帰ろうぜ」
「お、良いな。じゃあ帰るか」
心做しか、政宗の纏うオーラがいつもより重苦しい印象を感じたがそんなものは親友との帰宅を考えれば些細なものだ!
復讐?政宗が現時点で俺との帰宅を優先してんなら俺がわざわざ強制する必要はない。オンオフの切り替えも大切な要素のうちの1つだ。
と、丁度良いタイミングでチャイムが鳴る。
何はともあれ、俺達は肩を組んで教室を出ていく。
「ちょ......真壁!!上田!!」
アッキーが俺達を───特に政宗を強く引き留めようと言わんばかりの声色で、叫ぶものの政宗は『あははー!あっははー!!』と作り笑いに作り声を重ねたまま、俺の肩を組んでスキップで教室を出ていく。
あ、ちょっと待って。横1列じゃ教室出れないって!不味いって!ちょ、待てよ!!
「ぶほッ......ッ!!!」
気付くも時すでに遅し。俺は教室のドアに顔面を思い切りぶつけてしまった。痛い、というか、他人を配慮出来ないほど自分をメイクするのは止めろって政宗ェ......
「し、親友ッ!!?すまん!!マジで済まん!!!」
ようやっと我に返った政宗が潰れたカエルのような声を出して、カエルのようにひっくり返った俺を見て慌て出す。今ならたんこぶから湯気でも出てきそうな位、ぶつけた箇所が熱い。
そして、そんな熱さが頭の中にまで至ったのか俺は瞬間的に立ち上がりアッキーに慟哭───
「後悔するんだな......安達垣アッキー!!」
そうして俺は再び政宗の肩を組んで、歩き出して、今度はドアの角に左肩をぶつけ、悶絶しつつ教室を後にした。
2019/07/23 17:48 落丁&誤字訂正
失礼致しました