ゼロから始まる俺氏の命   作:送検

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第32話 下見

 

 

 

 

 

 

 

 

「......ふむふむ、傘を返すねぇ?」

 

 時は過ぎて放課後のティータイム。俺とアッキーは近くの喫茶店で軽食を取りながら、今後に関しての話し合いをしていた。

 

 内容は『真壁にどうやって傘を返すか』。そして、『どのタイミングで話しかけるか』の2つである。

 

「先ず1つ目の策として、正直に面と向かって話してみる」

 

「却下」

 

「何でさ」

 

「なら、逆に聞くわ。面と向かって何を話せと?」

 

 そりゃお前さん、傘を返す時に1番初めに言う言葉を声帯使って発せば良いだけなんじゃないんですかい?

 

「ありがとう」

 

「却下」

 

「だから、何でさ」

 

「私が真壁に傘を片手に持ちながら『ありがとう』なんて言う姿を想像することが出来るの?もし出来るのなら貴方の妄想力は大したものよ。妄想検定2級を授けるわ」

 

「良いぜ......妄想してやるよ。アッキーが『ありがとう』って言う様をな!」

 

 そこまで言って俺は思考の海に潜る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日が刺す教室。そこで2人が向かい合っていた。

 1人は、正にイケメンと呼ぶに相応しい男。

 もう1人は、超絶美少女と呼ぶに相応しい女。

 

『えっと......こんな所に呼び出して、どうしたんだい?』

 

 そこまで男が言うと、女は顔を赤く染める。それは、夕日のせいで男には見えなかったものの、女にははっきりと自身の顔が赤くなっていた事に気付いており、狼狽していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして────

 

『あのね、あのね。愛姫、真壁くんに話があるんだけど───』

 

 

 

 ───────。

 

 

 

「ぶわっはっはっは!!!!!!」

 

「......今、物凄く蹴りたい衝動に襲われたのだけど、蹴ってもいい?」

 

 それはやめて下さい。や、笑ったのは本当に悪かったからさ。

 

「すまん......俺の妄想力じゃアッキーのそんな姿想像することも出来なかった」

 

「嘘おっしゃい。貴方数秒前に自身が何をしでかしたかもう忘れたんじゃないでしょうね」

 

 アッキーが正に腹立たしいと言った様子で俺を睨みつける。その瞳に俺は軽く身震いしつつも肩を竦める。

 

「まあ、そんな事は良いだろうよ。俺が妄想した所でアッキーの状況が好転する訳じゃないんだからさ」

 

「......それはそうだけど。何か腹が立つじゃない。私の知らないところで勝手に私の知らない何かが想像されてるのって」

 

「気にしたら負けでっせ」

 

「想像した貴方には言われたくないわよっ」

 

 アッキーに頬を抓られながらそう言われる。元々華麗な蹴りに定評のあるアッキーだが抓りも相応に力強く、多少顔が歪むものの抓られたまま平静を装う。

 

「お前さ、テストの結果ってどうだったんだっけ」

 

「は?」

 

「だから、実力テストだよ。あれの結果は政宗陣営かお前さん陣営、どっちが勝ったのかと聞いている」

 

 そう言うと、ポカンとした表情をしたアッキーは目線を左右に揺らし、悔しげな表情で一言。

 

「......負けたわ」

 

 と、言ってのけた。

 

「そうかそうか、はっはー。やはり政宗は強いんだなー」

 

「黙りなさい!!私さえ熱で休まなければ真壁には勝てたのかもしれないでしょう!!そもそも今のそれとこの問題に何の関係があるのよ!」

 

 なに、関係ならあるさ。寧ろそれを使って政宗の気を引くことだって出来るだろうて。

 

「アッキーは俺が何も考えないでテストの話を持ち出したと思っているのか?」

 

「可能性の1つとして、私を弄ぶ為に話を持ち出したと思っているわ」

 

「アッキー、それは俺を甘く見過ぎよ」

 

「なら普段の生活態度から改める事ね......で、なんの関係があるっていうのよ」

 

 漸く俺の頬から右手を離したアッキーが俺を睨みつけつつも、解答を急かす。それに応えるべく、俺は依然としてひりひりする頬を擦りながら笑みを作った。

 

「政宗は、アッキーに何でも言うことを聞いてもらう権利を有している。それを生かす作戦に打って出てみたらどうだ?」

 

「生かすって......大体真壁が持っている権利を私がどう生かすのよ」

 

「そりゃ違うなアッキー。そういうのは後々に取っておくと何を要求されるか分からない。なら、自分から向かっていって1番良い結末に収まるように対象を誘導するんだ、何時もお前がやっているだろうよ......そういうことはさ」

 

 厳密に言えば、ハイキックと罵倒で俺という存在を縛り付けている今の現状とか。元来辛辣なアッキーは場を支配することに関しては慣れているだろうて。どうしてこういった恋路になると、途端に鈍感になるのか明確な恋をした事の無い俺には分からないな。

 

 それともこれが乙女心とでもいうのだろうかな。

 

「ッ......具体的には?」

 

 兎も角、アッキーが食いつき気味になってきてくれた所で、俺は『今、俺が、アッキーに、最もして欲しい事』を言うために口を開く。

 そう、このメンタルケアはアッキーの為なんかじゃない。名目上はそうだが、本来なら政宗の復讐を円滑に進めるために行ったそれ。政宗のための作戦だ。ここでアッキーに都合の良い事なんて発するはずがない。俺の作戦でアッキーが籠絡出来るんなら鬼にでもなんでもなってやるよ。

 

「デート」

 

「......は?」

 

「だから、デートってんだよ。思い出せないなら思い出させてやろうか?この前アッキーがハダピュアの衣装着て政宗のデートしたあの日───」

 

「あああああ!!!!」

 

 狼狽したアッキーが俺の口を両手で塞ぐ。身体が密着しているが、そんなのは目もくれずにアッキーは続ける。

 

「シット!!!シャーラップ上田ッ!!!貴方次あの悲劇を思い出させたら本気で屠るわよ!?てか、あれはデートじゃないわよ!!それこそメンタルケア!!真壁の豆腐メンタル改善に一役買ってやっただけなんだから!!」

 

「男女が前もって時間や日付を合わせて会うことは立派なデートだぞ」

 

「うっさいわよ変態紳士!!」

 

「はっはー、おめーには言われたくねぇな。はっはー」

 

「言ったわね!!言ってくれたわね上田!!直りなさい!!私が貴方の生命活動を終わらせてあげるわ!!」

 

 アッキーが俺の身体に強烈な蹴りをかますべく、右足に力を入れる。口を滑らした俺が大概悪いのだが、流石に蹴られるのは予想してなかったよ。

 

 きっとアッキーは過去の自分を知らず知らずのうちに恥じて、悶えるタイプだ。その手のタイプに過去の話はしてはいけない。俺は初めてその事を学んだ。

 

 さあどうする上田幸村。ここは甘んじてアッキーの蹴りを受けるか、もしくは回避。回避の選択肢は逃げ足の速さには定評のある俺にとってはダメージを受ける心配はないものの、当てられるまで追いかけられる故に体力が尽きるだろう。

 

 なら、一時的な痛みを取ろうか───なーに、だぁいじょうぶだって!!ぱぱっと喰らってぱぱっと悶絶するだけだから───と自分を奮い立たせてみるが、本当に大丈夫なのだろうか?

 

「......愛姫さま」

 

 と、気が付くとドアが開き協力者小岩井がアッキーの下へ歩いていく。それに気付いたアッキーは唐突の小岩井乱入に焦り、片足を引っ込めた。

 

「よ......吉乃」

 

「よ......よしのん」

 

 さて、アッキーにも俺にも存在を気付かれた小岩井は俺を一瞥した後軽く親指を立てた。後に、その親指の先を地面に向ける───ああ、成程。『良くやったけど、そこまでの過程が悪過ぎる。死ね変態』って事ですね、分かります。

 

 閑話休題───

 

「愛姫さま、ふほんいですけど私も変態のいうことに賛成です」

 

「よ......吉乃まで!!」

 

「愛姫さま、このままの状態をつづけても意味はありません。『まんねり』は良くないって、聞きました」

 

「......けど!」

 

「だいじょうぶです。今度は、間違えませんから」

 

 最後にひと押し、そう言うと小岩井は両手でガッツポーズを作り一言───

 

「ふぁいとです、愛姫さま」

 

「ッ────分かったわよ!!やれば良いんでしょう!やれば!!」

 

 ......すげえ。

 

 や、俺が至れなかった領域に簡単に踏み込んで完全勝利しちゃう小岩井とか、ツボを突かれたら簡単に籠絡されちゃうアッキーとか。色々すげえ(語彙力崩壊)。

 

「では、そろそろ行きましょう。愛姫さま、時間ですから」

 

「......ええ、そうね」

 

 アッキーが小岩井を連れて外に出ていく。入口側にいた俺の横を通り過ぎ、さてドアを開けよう───とした所でアッキーは俺に一言。

 

「......世は私を残虐姫、ドSと言うけれど、貴方も大概よ。ドS紳士」

 

「え?何のこと?幸村分かんな───い゛ッ!!!」

 

 調子乗っておちゃらけてたらアッキーに手痛い1発を喰らいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......んで、その紅葉が出来上がったってか」

 

「痛い」

 

「お、おう......まあ、なんだ。このハンカチで涙拭いて、この冷えピタで頬を冷やせよ」

 

「......泣いてねーし」

 

 5時限目の休み時間。俺は安達垣愛姫との一連の流れを政宗にリークして、情報共有を図っていた。

 やはりこまめな情報共有は大切だし、政宗とそれを行うことにより細かな作戦変更と軌道修正を図ることも出来る。

 

 それが不都合になる時も時として存在するが、やらないよりかはやった方がメリットも多い。故に俺達がこの手の情報共有と交換を行うのは日課のようなものになっている。

 

「取り敢えず、だ。外堀を埋めてくれてありがとな幸村」

 

「......俺、大して何も出来なかったけどね」

 

「そんな事ない。話を聞く限りじゃ幸村の口先は安達垣の心を惑わせた。そもそもある程度俺と安達垣の事情が分かってなきゃ『デート』なんて発想には至らなかったろうよ、G.Jだぜ、幸村」

 

 そこまで誉められるのも何だかな───と思ったが、折角の親友のG.Jだ。ここは受け入れておこうかな。

 

「で、だ。結局俺は何をすれば良い?」

 

「それはさっきの話題の通り、アッキーと再デートだな。アッキーに関しては小岩井が何とかしてくれるから、俺達は俺達でアッキーがデートって言い出すまで前回のようなヘマを冒さないように対策を練ろう」

 

「......そうだね、前回はイレギュラーバッティングにハダピュア、覗き......色々やりすぎてデートどころじゃなかったよな」

 

「それをしない為に先ずは2つ......今回は俺は様子を逐一見たりしない」

 

 前回の過ちの1つは、俺の身がアッキーにバレてしまったことにある。ファミレス、藤ノ宮。俺にもイレギュラーがあった。故に今回はそのイレギュラー自体を滅してしまう。

 厳密に言うのなら、俺は今回政宗とアッキーを監視せずに自宅付近でぬぼーっとしている。

 

「......やや不安だけど、それは必要だな。けど、また何時、何処で幸村以外のイレギュラーが発生するかは分からない」

 

「そりゃそうだな、だからもう1つ」

 

 そう言って、俺は自身の手を人差し指のみ立てる。その光景に首を傾げた政宗を半ば苦笑いの面持ちで見つつ、俺は政宗に───くつくつと笑みを零した。

 

「今から、デートコースを下見しに行くぞ」

 

 まあ、笑い声の反面言っていることは当たり前の事なんだけどね。

 

 やだもう、恥ずかしい。

 

 

 

 

 




───WARNING───

腹黒吐血系京ガールが付き人と共にアップを始めました。

皆様、何時になるかは分からない上に期待に添えられる可能性は限りなく低いですが万が一、もしもの事がありますので次話以降ののご閲覧はコーヒーをお供にどうぞ。
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