講義が全部終わって、今日はバイトがあるから真っ直ぐバイト先に向かおうと駅に向かって歩いたら私の少し前の方で人集りが出来ていた。
なんだろうと思って人集りの中心の方に目をやるお男の人達が喧嘩しているのが見えた。
こんな街中で喧嘩なんて物騒だなぁと思っていると、微かに助けてと言う声が聞こえてきた。
派手な服装の男の人がもう1人の男の人に馬乗りにされ、ただひたすらに顔を殴られていた。
これだと喧嘩というより一方が無抵抗な人に暴力を振るってるだけに見える。
実際、殴られてる人の顔は腫れ上がり口や目の上あたりからは血が流れている。
そんな状況なのに誰も止めようとしない。
逆にこの異常な喧嘩をスマホで録画したり笑っている人までいる。
怖いけど私が止めなきゃと思った時だった。
殴っていた側の男の人が殴るのをやめて立ち上がり、周りを見回してた。
男の人の周りにはまた違う人が2人倒れていた。
どうやら殴られていたのは1人だけじゃなかったみたい。
「よし、おしまい!」
男の人はそういうとこちらに振り返って歩き始めた。
喧嘩を見ていた人達は、まるで何事もなかったのように散って行く。
けど、私は動かなかった。
違う、動けなかった。
何故なら私はその人の顔に見覚えがあったから。
「朝陽君…?」
その人は私の好きな人。
私にとってのヒーロー。
そんな人がなんでこんなとこでこんなことをしてるの?
間違いだと思ってもう一度顔を上げて確認すると、間違いなく朝陽君だった。
けど、いつもの落ち着いてて、クールな感じではなく、何か楽しいことでもあったかのような笑顔で、まるで喧嘩を楽しんでいるかのような彼がいた。
そして、彼は私に全く気づいてないのかそのまま私の横を通り過ぎていく。
私は何かしなくちゃと思って
「朝陽君‼︎」
と、呼んでみたけど呼ばれたことすら気付いてないかのように歩いて去っていった。
このまま彼を追いかけなきゃと思ったけど色んなことが重なってちょっとしたパニックになって、私は涙が止まらなくなってその場で座り込んで泣き出してしまった。
それから数時間後
私はさっきのことがショックすぎてパニックになって過呼吸になっていたところをたまたま通りかかった梨子ちゃんに助けてもらって今は梨子ちゃんの部屋にお邪魔させてもらっている。
「はい、コーヒー。ブラックでよかった?」
「大丈夫。ありがとう…」
「調子はどう?」
「だいぶ楽にはなったかな」
「なら良かったわ」
ズズッとコーヒーを啜る音が静かな部屋に響く。
落ち着くためにコーヒーを飲んだけど今はあんまり味がわからない。
多分苦いんだろうけど、今はしょっぱい味がする。
「曜ちゃん、なにがあったの?」
「え?」
「こういう時あんまり事情とか聞いちゃいけないって思うけど、今回のことは流石に見逃せないわ」
「…」
「言いたくない、それとも言えない?」
「ううん…」
「じゃあ教えて」
梨子ちゃんは優しく語りかけてくれる。
そんな梨子ちゃんになんて説明すればいいんだろ…
「朝陽君ってわかる?」
「朝陽君って曜ちゃんと同じ講義受けてる人よね?」
「そう。で、さっき大学から帰ろうとしてた時なんだけどね、道で喧嘩してるのを見かけたの。あれは喧嘩っていうよりただ一方的に暴力
を奮ってるようにしか見えなかった。でも周りの人達は誰一人止めずに写真とか動画を撮ってて私が止めなきゃって思って人混みの中をかき分けて中に入って行ったら殴ってた人が立ち上がって私の方を振り返ったの…」
そこで言葉が詰まってしまう。
あの時のことを考えて、あの時の光景を思い出すと涙が出てくる。
「もしかしてその殴ってた人って…」
涙を両手で抑えながら私は頷く。
「そういうことだったのね」
「で、でも…その時の朝陽君まるで違う人みたいだったの」
「違う人って、喧嘩をしてたのは朝陽君って人なんでしょ?」
「確かに朝陽君なんだけど、いつもの朝陽君と表情や雰囲気が違ったの」
「ど、どういうこと?」
「朝陽君っていつもは物静かでクールな感じの人なんだけど、あの時はすごく楽しそうに笑っててまるで子供みたいだったの…」
「私は彼とは直接あった事は一回しかないけど確かに大人しそうな人だったわ」
「だよね…って、梨子ちゃん朝陽君に会ったことあるの?」
「えっ!?あ、あの〜大学で見かけた事あるくらいだけどね〜」
「そういうことね…」
でも、なんで朝陽君があんなことしてたんだろ。
性格が別人みたいになってたのも気になるけど、あんな一方的に暴力を奮っていたのが一番気になる。
私を助けてくれた時は必要最低限の力で抑えてくれていたのに、あんな喧嘩をする人じゃないはず。
でも、私が見たのは間違いなく朝陽君だった。
「梨子ちゃん、私どうしたらいいんだろう…」
「それは曜ちゃんが決めることじゃないかしら?」
「私が決める?」
「曜ちゃんの中ではどうしたいかって決まってるでしょ」
「どうしたいか…」
「そう」
「私は…聞きたい…。朝陽君に直接話を聞きたい!」
「ふふっ、それでこそ曜ちゃんよ」
「えへへ」
私は涙を袖で拭きながら梨子ちゃんと笑い合う。
ガチャン!!
いきなり、ドアが勢いよく開く音がした。
ドタドタドタ
と思ったらすぐに廊下を走る音がして
「曜ちゃぁぁぁん!!」
私の名前を呼びながら千歌ちゃんが飛びついてきた。
「ち、千歌ちゃん!?」
「曜ちゃん大丈夫!?」
「え、え?どういうこと?」
「こら、千歌ちゃん。急にだと曜ちゃんびっくりしちゃうでしょ?」
「だって曜ちゃんが心配で」
「だってじゃないの。後靴はちゃんと脱いでね?」
「あ、ごめんなさい!」
梨子ちゃんに注意されてすぐに靴を玄関に置きにいった千歌ちゃん。
「えっと、なんで千歌ちゃんが?」
「こういう時は幼馴染の千歌ちゃんの方が助けになるかなって思って」
「わざわざ呼んでくれたんだね」
「びっくりしたよ。梨子ちゃんから【曜ちゃんが大変だからすぐに来て】ってメールが来たから急いで来たんだ」
「ごめんね千歌ちゃん…」
「ううん、謝らないで。私は曜ちゃんが元気そうでよかったよ」
「うう…千歌ちゃんほんとうにありがとう!」
私は2人の助けがとてもありがたく思い、さっきとは違う安心した涙が出てきた。
「もお曜ちゃんったら。泣いたら可愛い顔が台無しよ?」
「だってぇ〜」
「よ〜しよ〜し、千歌が慰めてあげるね〜」
「う〜2人ともありがとう〜」
こうして私は親友2人に撫でられたりぎゅっと抱きつかせてもらったりして慰めてもらった。
その日は流れで梨子ちゃんの家に泊まることになって、遅くまでお喋りした。
side朝陽
ヅキンッ!!
突然の頭痛によって目が覚めた。
虚ろな目をゆっくりと開き、周りを見渡すと見覚えのない光景だった。
ブランコや滑り台なんかがあるからここは公園みたいだ。
で、俺はベンチに座っている。
辺りは暗くなっていて完全に日が沈んでるから結構な時間ここで意識を失っていたらしい。
時間を確認するために携帯を取り出して画面をつけようとスイッチを押しても反応しない。
もしかしてと思いスイッチを長押しすると充電切れのマークが出てくる。
「おい、まじかよ…」
まさかの事態に焦るが公園には大体時計があることに気づいて周りを見渡すとやはりあった。
「19時過ぎってことは、俺3時間近く気失ってたのかよ」
ふと、自分の両手に違和感を感じたので目線を下に落とす。
そこには血が服の裾に飛び散っている少し腫れた自分の手があった。
何故、血がついているのか考えてみる。
自分が意識を失う前のこと。
大学の講義が終わって、家に帰ろうと駅に向かっていたときに男性が男3人組にカツアゲをされているのを見かけた。
だけど自分は気にしないようにするために避けるようにしたのだが、そこで頭痛が起きて、あいつが出てくる前兆が発生した。
そして現在に至る。
つまりは…
「また俺やっちまったのか…」
もう喧嘩や暴力は禁止と自分の中で誓っていたことが、こんな簡単に破られてしまう。
俺は変わりたいと思っている。
だけど、それをあいつを許さない。
俺は昔から変わらないんだ…
皆さん、こんにちわ!
いひょじんでございます!
大変長い期間が空いての投稿。
本当、執筆するのって大変ですね。
と、いう言い訳は置いといて〜
前話から少しずつ見え始めた朝陽君の謎。
そして、それを見てしまった曜ちゃん。
一体どうなのでしょうか…
次回をお楽しみに!
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