ロクでもない魔術に光あれ   作:やのくちひろし

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新型コロナの影響があちこちで出て、仕事も面倒なものが目白押し……プライベートもルーティンの一部を堪能できず、果てにはタイガの映画も延期……。
皆さんは今をどうお過ごしか……早くコロナが終息してルーティンもウルトラマンも復活して欲しいと願うばかりです。
願望の吐露もここまでに随分と待たせました。休息中の感想もありがとうございます。


第39話

「マリアンヌ先生……?」

 

 グレン先生へ事の次第を伝えようと活路を開こうとした矢先に暗闇から出てきたのは、この聖リリィ魔術女学院の学院長のマリアンヌだった。

 

「妙に煩いと思ったら、もう片方と妙なネズミまで来ていたなんてね」

 

 マリアンヌ先生は以前の柔和なものとは対照的に邪悪な笑みを浮かべて近づいてきている。

 

「マリアンヌ先生……何故貴女が?」

 

「あの人が、今回の件の首謀者です……。周りにいる彼女達も含め、多くの生徒達を従えてリィエルを攫ったんです」

 

 マリアンヌ先生がいる理由を尋ねると、ジニーが彼女が首謀者だと教えてくれた。

 

「じゃあ、やっぱりエルザも貴女の部下だったんですね?」

 

「部下? 笑わせないで」

 

 エルザも周囲にいる女子達同様、マリアンヌの手の者だと思っていたら向こうはそれを否定した。

 

「エルザは今回の件で利用できると思ったから使っただけ。リィエルを手に入れるためのただの駒だっただけよ」

 

「駒……?」

 

「ええ。リィエル=レイフォードはとても強いから、彼女を押さえ込むための実力者が必要だったの。彼女はそれだけのものを持ってたし、都合よく彼女に対して復讐心を持っていたしね」

 

「復讐心……? リィエルとエルザは互いに初対面だった筈ですよ」

 

「えぇ、そうね。確かに二人は初対面よ。……ただし、エルザが知っていたのは彼女の素になった人物……イルシアよ」

 

「イルシア……?」

 

 その名前は確か……リィエルがProject(プロジェクト):Revive(リヴァイヴ)Life(ライフ)によって生み出されるためのモデルになった人だったか。

 

「エルザは嘗てイルシアによって苦しめられた過去を持ってるから利用できると思ったのよ。で、予想通りにエルザはまんまと復讐に走ってくれたわ。全くの別人だとも知らずに、自分が再び軍学校に戻れると勘違いしてね」

 

「偽りの言葉と希望で、彼女を……っ!?」

 

「お陰でようやくリィエルを捕らえる事が出来たわ。エルザも欠点さえ除けば駒としては使える。リィエルを調べればエルザと同じだけの実力者を大量に造れるわ」

 

「やっぱり……目的はリィエル── Project(プロジェクト):Revive(リヴァイヴ)Life(ライフ)だったんですね」

 

「えぇ。それと……あなたもね」

 

 マリアンヌは俺を指差してそう言った。

 

「私……?」

 

「あなたのその妙な力も持ち帰れば……蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)に戻れる日も近いわっ!」

 

蒼天(ヘブンス)……十字団(クロイツ)?」

 

「帝国魔術界の最暗部と言われてる組織です……。ただの都市伝説だと思ってましたけど……」

 

「存在するわよ。私がその元研究員なんだし。リィエルを連れ帰ってProject(プロジェクト):Revive(リヴァイヴ)Life(ライフ)を解明出来れば組織で再び返り咲く事ができるわ。そして……あなたの事もね。リョウ=アマチ」

 

「……俺の事も最初から知ってたんですね」

 

「当然でしょ。リィエルをこの学院へ誘えば、必ずあなたも付いてくると踏んでいたわ。とはいえ、リィエルレベルの実力者に対抗出来るのがエルザ以外にいなかったから片方だけと諦めてたけど……私は幸運だわ。そっちからノコノコとやってきてくれるなんてね」

 

 マリアンヌが言うと、周囲の女子達が一斉に襲いかかってきた。

 

「《円泉》っ!」

 

 俺はジニーを庇うように前に出て黒魔[サークル・スプリング]で周囲に水の壁を作った。目眩し程度のもので防御にするには厚さはないが、俺達の姿を隠すには丁度いい。

 

「ジニーさん……これが解けたらすぐに走り出してください。ジニーさんの道は俺が開いておきます」

 

「な……っ!? いくらなんでも、この数は無理です! 恥を呑んででも逃げに徹して先生達にこの事を伝えるべきでは!?」

 

「その考えに至ってるあたり、ジニーさんも魔術師になってきたなって先生なら言うと思うけど……生憎、向こうは簡単に逃しちゃくれないだろうし、どうやら俺の事も標的にしてるっぽいので俺が残ってあなたが戻れるよう上手く戦ってみせますよ」

 

 ウルトラマンの力を使って無理矢理逃げる事も出来なくはないが、向こうがあとどれだけの戦力を残してるのかわからない以上、今無闇に使うのもマズそうだ。

 

 なら、俺自身を使って敵戦力を出来るだけ釣ってジニーを逃して先生達を連れて来る可能性に賭ける方がいい。

 

「とにかく、後の事は貴女に任せます。頼みますよ!」

 

 ジニーに言う事を言ってすぐに[サークル・スプリング]を解いて集団の中へと飛び込んでいく。

 

「[震電]っ!」

 

[サークル・スプリング]の影響で周囲に溜まった水浸しに[ショック・ボルト]を広範囲に広げるよう設定して撃ち込んだ。そして、そのおかげで戦闘不能はいかずとも連中を怯ませるくらいには役立った。

 

「今です! 急いでっ!」

 

「……っ! ……武運を」

 

 俺の叫びにジニーは一瞬躊躇いを見せるが、ボソリと俺を気遣う言葉を残して[フィジカル・ブースト]込みの驚異的な加速でこの場を離脱した。

 

 それを見た女生徒が何人か追尾しようとするが、元々俊敏さにかけてはダントツトップのシノビなので追いつかれる事はないだろう。

 

 彼女らの距離の広さを見て確信した俺は安堵の息を吐いて再び連中に注意を向ける。

 

「無駄な事をするわね。彼女一人を逃したところであなたを含めてリィエル達も連れて行けばそれで私の任は果たされるのよ」

 

 俺の狙いなどとっくに気づいてると言わんばかりにマリアンヌが見下した態度で俺に言葉を投げかける。

 

「まあ、貴方の持つ不思議な力を使えばこの娘達を一掃するくらいなら余裕でしょうけど……この娘達以外にも私に賛同してくれる生徒は大勢いるのよ。リィエルを助けるまでその力が続くかしら?」

 

 どうやら俺の力に時間制限があるのも承知のようだ。これだけの戦力を納めただけあって用意周到だ。

 

「別に力を使うまでもありません。貴方の目論見はどうせ潰えるんですから」

 

 俺の挑発じみた言葉に一瞬眉を震わせるが、すぐに平静を保ってふん、と鼻で笑った。

 

「その力も存分に使えない貴方が私に勝てるとでも?」

 

 マリアンヌは俺ではこの状況を突破できないと完全に舐め切っていた。

 

 まあ、その通りなんだけど……。素の俺の実力ではこの包囲網を突破するのはかなり厳しいだろう。

 

 ウルトラマンの力さえ使えれば確かに周囲の奴らを倒すのは容易いかもしれない。けど、他にも同じ規模の──いや、これ以上の戦力を有してる可能性もある。

 

 まだどれだけの規模なのかも確認しないまま力を使うのも自殺行為……。けれど、このまま足掻き続けても助け出せる見込みも低い。

 

 だったらせめて……グレン先生達がこの騒ぎを知って駆けつけるまでの間──

 

「俺が時間稼ぎをするしかない!」

 

 俺はカードをしまってる胸ポケットをパシン、と叩きながら駆け出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウ。……ぶ、リョ……?」

 

「……ん?」

 

 何か腹部を叩かれてるような感触の所為で目が覚めた……。目を開けてみると、何故かロープで簀巻き状態にされたリィエルが目の前にいた。

 

 どうやら腹部の感触は手の使えないリィエルが軽い頭突きをしていたからのようだ。

 

「リィエル……?……っ! リィエル、無事だったのか!?」

 

「ん……ちょっと、身体が痛いけど……うん、平気」

 

「そうか……」

 

 見た限りだが、特に命に関わるような怪我を負ってるわけじゃなさそうだとわかって手を伸ばそうとしたが、左手が動かないので見れば手首と壁を伝ってる柱と一体になるようにキツくロープで縛られ、その上に[スペル・シール]の札を貼られていた。

 

 そして右腕はアルベルトさんから渡された義手を外されている。完全に監禁状態の出来上がりであった。

 

 どうやら俺の足掻きも長時間は続かなかったようだ。グレン先生達が駆けつけるまでの時間稼ぎをしようと戦ったものの、結局数の暴力には勝てなかったみたいだ。

 

 見れば妙な雰囲気の個室染みてるし、さっきから小さな揺れが続いている。どうやら密かに用意していた鉄道列車に乗せられて動いているようだ。

 

「……ん?」

 

 周囲を見ると、少し離れたところで儚げな雰囲気の少女が縛られた状態で横たわっていた。眼鏡こそかけてないが、あれは間違いなくエルザだ。

 

「エルザ……そういえばリィエル。エルザと何があったんだ? マリアンヌから聞いた限りじゃ、エルザがリィエルを狙ってたみたいだけど……」

 

 一応の事情は知ってるが、リィエルの口からエルザと何があったのか聞いておきたかった。尋ねると、リィエルはシュン、と顔を俯かせて悲しげな雰囲気を纏った。

 

「……よく、わかんない。エルザは私を、イルシアって言ってた……わたしとイルシアは違うって言いたかった……でも、どうしたらエルザにわからせてあげられるか……わからなかった」

 

 話すに連れてリィエルの肩が震えていった。

 

「だから、とりあえずエルザをボコろうって思った……。でも、わたし……エルザが好き。友達だから……エルザはわたしを嫌いって言ってたけど……わたしはエルザを傷つけたくなかった……」

 

 説明は子供レベルだが、その言葉でリィエルはエルザに対して並ならぬ感情を持っていたのは疑いようもない。こんな言い方はどうかと思うが、だからこそリィエル程の実力者がこうして捕まってしまったというわけだ。

 

 平時のリィエルであれば、エルザがいくら強かったとしても捕まるとは思えなかった。

 

「わたし……エルザとお話したかった。でも、エルザ……聞いてくれなかった。もう……わたしと話したくないのかな?」

 

俯いたリィエルの瞳から頬へ、そして顎へと涙が伝っていた。

 

「……なあ、リィエル。お前はどうしたい? このままエルザと話さないままさよならなんてしたいか?」

 

 俺の質問にリィエルは一瞬間を置いてから首を横に振った。

 

「なら、簡単じゃなくてももう一度話そう。今度は俺も混ざって説明してやる。そんでもって、仲直りしようぜ。エルザは……お前の友達だろ?」

 

「ともだち……なのかな? エルザは……わたしを、殺すために……近づいたって……」

 

「確かにそうかもしれない。でも、お前がエルザに向けてる感情は紛れもなく本物だ。向こうがどうあれ、お前はエルザを友達だと思った。だったら、仲直りする手伝いくらいしてやるさ」

 

 エルザがリィエルへ近づいたのは何らかの私怨による打算かもしれない。けど、留学期間中に彼女がリィエルの世話をしている時の顔が嘘によるものだったとはとても思えない。

 

 そもそも人の悪感情に敏感なリィエルが短期間であそこまで懐いたのが今までの経験上不思議だったのだ。エルザがその手の感情を隠すのが卓越していたというのであればそこまでだが、自分に害を為したからという理由でこのまま距離を置かせたくはなかった。

 

 いざ仲直りのためのシチュエーションを用意してやるかと意識を内側に集中させようとした時だった。

 

「……エルザ、気づいたの?」

 

 リィエルが声を上げて、振り替えると拘束状態のエルザがムクリと上半身を起こしてこちらを見つめていた。

 

「エルザさん……大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……貴女は──そうですか……貴女も叔母上……マリアンヌに捕まったのですね」

 

「叔母上……?」

 

「はい。マリアンヌは……系譜上、私の叔母に当たります」

 

 意外な関係を知って一瞬硬直したが、今はそんな事は重要ではないと首を振って意識を現実に留める。

 

「あの、エルザさん……リィエルは──」

 

「ごめんなさい」

 

 俺がリィエルについて説明しようとすると、突然エルザが謝罪してくる。

 

「エルザ……何で謝ってるの?」

 

「私が馬鹿だった……貴女は、本質的にはイルシアとは全くの別人だったのね」

 

「ん……? 何でエルザがそれを……?」

 

「貴女が倒れてから色々知ったの……ビックリしたよ。『Project(プロジェクト):Revive(リヴァイヴ)Life(ライフ)』なんてただの都市伝説だと思ってたのに……更には叔母上が蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)の元メンバーだったなんて……」

 

 どうやらリィエルの事はマリアンヌから聞いたようだ。更にエルザは何故リィエル……いや、イルシアに復讐する事に拘っていたのか。己の過去を震える声で語った。

 

「そう……だからエルザ、わたしをやっつけようと……」

 

「自分の家族を殺されて……それなら復讐心に駆られもしますね……」

 

 事情を知った今ならエルザの目的もその心情も、少しだが理解出来るようになった。

 

 自分の大切な者が殺されたとあれば、どうにかしてその仕掛け人を探し、自分の手でケリを付けたいだろう。手段はともかく、それを己の原動力として柱とする気持ちはわからなくはない。

 

 今回は、彼女を支えていたその感情をマリアンヌに利用されたという事だ。

 

「本当に……ごめんなさい。今の貴女は私を憎んでると思うけど……せめて、貴女達だけでも……」

 

 そう呟きながら拘束されてる身体をズリズリと這わせ、口をロープへ近づけ、噛み付いた。

 

 そのまま右へ左へ、上へ下へと動かすが、ロープはびくともしなかった。

 

「うっ……く……私はもう、どうなってもいいから……せめて、貴女……だけでも……」

 

 瞳から止めどなく涙を流しながら、エルザはただただロープを噛みちぎろうと踠いていた。

 

「……よかった」

 

 ポツリと零したリィエルの一言にエルザはロープから口を離してリィエルを見上げる。

 

「わたし……エルザに嫌われたと思ってた。でも……エルザの嫌いが、わたしじゃなくてよかった」

 

「よかったって……だって、私は……馬鹿な勘違いで、貴女に酷い事を……」

 

「でも、わたし……エルザのこと、好きだから。だから、いい」

 

 リィエルにとってエルザの過去話や後悔以上に、自分がエルザに嫌われてないという安堵感の方が重要のようだ。なんともリィエルらしいと言えばそうだが……。

 

 まあ、そんなアホらしくも、飾り気のない言葉はエルザの心にズン、と響いたようだ。

 

「だから、一緒に出よ?」

 

 リィエルはスッと壁に寄りかかりながら言った。

 

「けど、脱出するにも今私達は拘束されてるんですけどね。オマケに[スペル・シール]まで付けられて」

 

 ロープをよく見たら、以前テロ事件の時に使われた術式を刻まれた呪符が手首周辺に貼られていた。

 

 あの時はワザと魔力を暴発させて無理やり引きちぎったのだが、ロープの上にピッタリと貼られてる上に紙も以前の急ごしらえのものとは違って結構なものなので濡れてもないのに以前のような手段では千切るのは無理だろう。

 

「ん……大丈夫。わたし……縄抜けの魔術を習得してるから」

 

「え……? 縄抜けの魔術って……そもそも私達、今魔術を封じ──」

 

 封じられてるとエルザが続けようととしたが、突如何かが千切れるような音が個室内に響いた。

 

 見ると、リィエルを縛っていた筈のロープがハラリ、と床に落ちた。

 

「ん……縄抜けの魔術」

 

 何か無理矢理強い力で引きちぎられただろうロープを見せびらかしながらリィエルが胸を張って言う。

 

「えっと……縄抜けの魔術……?」

 

「どう見てもただの力技でしょう……」

 

 魔術どころか手品でもなんでもない純粋な力による強硬手段だった。俺のツッコミも聞く耳持たず、リィエルはエルザ、俺のロープもあっさりと引きちぎった。

 

「ん……二人にも縄抜けの魔術、かけてあげた」

 

「……あ、うん……そうだね。人が成し得ない奇跡を呼ぶのが魔術だもんね……」

 

「エルザさん……考えるのを諦めないでください」

 

 いや、その気持ちはよくわかるけど……。

 

「ところで、リィエル……大丈夫なの? 私、結構深く斬ったから……」

 

「ん……大丈夫。一眠りしたらだいぶ治ってたから」

 

 エルザの気遣いの言葉にリィエルが胸を張って答える。単純な腕力と頑丈さもそうだけど、治癒力もバカ高いんだよな、この娘……。

 

「行こう。グレン達が待ってる。そんな気がする」

 

 オマケに勘もすごいから本当にもうグレン先生達が来てる可能性が高い。

 

「なら、すぐに合流するとしましょう。正直、先生のアドバイスもなしにこの件を止められる気がしませんので」

 

「で、でも……この個室内、監禁の魔術もかかって……」

 

「問題ない。わたし、鍵開けの魔術も使えるから」

 

 それはきっと力づくによるものだろうと予想するが、もうツッコむ気も起こらなくなる。

 

 さてリィエルに先陣を切ってもらおうかと思うと、直立姿勢でじっと動かなくなったエルザを見てリィエルが声をかける。

 

「……エルザ?」

 

「……駄目だよ、リィエル。私、足手纏いになる」

 

「そう? エルザ、すごく強いと思うけど」

 

 俺は見てないので知らないが、リィエルがお世辞で言うわけがないので相当の実力を有してるのは間違いないだろう。だが、それでもエルザは首を横に振った。

 

「ううん、違うの……私……炎や血……赤いものを見るのが駄目なの……直視しただけで、震えが止まらなくて、動けなくなるくらい……」

 

「赤いもの……?」

 

 そういえば、留学初日の決闘の時、炎熱系の魔術を使わないよう制限をかけられた。あれはお嬢様特有の我が儘みたいなものかと思ってたが、あれはエルザに炎を見せないようにするための気遣いだったってことか……。

 

 それからエルザが他の人達と距離を置いてる理由も、自分がそんな魔術師として欠陥とも言えるものを抱えている事による劣等感、それを知って気遣おうとするクラスメート達への申し訳なさからだったんだろう。

 

「学院のみんなはそれを知ってるから……だから……私の事は置いて行って。二人だけなら、きっと脱出出来るから……」


「ん……よくわかんないけど……わたしが、エルザを守れば問題ない」

 

「……あ」

 

 リィエルがいやに男らしさを感じるセリフを言い放つと、エルザが虚を突かれたような顔をしたと思ったら頬を赤らめながら戸惑っていた。

 

 いや、緊急事態の筈なんだけど……妙な疎外感というか、すごい邪魔者感が半端じゃない気がする。

 

「えっと……とりあえず、まずはここを脱出しましょう?」

 

 俺はボソリとそう呟くしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果を言えば、脱出自体は簡単だった。リィエルお得意の腕力で無理矢理監禁室として使っていた個室の扉を監禁魔術ごと粉砕して、それからは車両の屋根を伝ってグレン先生のいるだろう場所へ移動する。

 

 リィエルの勘は正しかったのか、俺達が向かった先──先頭車両内には……。

 

「全部、貴方の所為よっ! グレン=レーダスゥゥゥゥゥゥ!」

 

「ははっ! 馬鹿騒ぎも終いにしようぜ、ババアッ!」

 

 自分の思惑通りに進んでないからか、その表情を憤怒で染めたマリアンヌと拳を鳴らすグレン先生とシスティがいた。

 

「これで状況は五対一だ。流石にアンタ一人じゃ勝ち目はねえよな? 大人しく投降した方がいいぜ」

 

 グレン先生が勝ち誇ったように言うが、マリアンヌは一瞬舌打ちしたかと思うと不気味に肩を揺らした。その表情はいかにもな悪い笑みだった。

 

「……何がおかしいんだ?」

 

「いえ……まさか、本当にこんな事態になろうとは思いませんでしたが……いざという時、エルザの牽制になると思って用意したものですが……本当に正解でしたねっ!」

 

 マリアンヌが腰に吊った剣を抜いて頭上に持ってくと、一瞬にして彼女の周囲を高熱の炎が奔った。

 

 それなりに距離もある筈だが、それでも松明を至近距離に持ってかれる以上の熱だった。

 

「熱っ!? 何だ、その炎……魔術を起動してる気配がまるで感じなかったぞ!? 魔導器──じゃねえ! どの道起動させた気配なんて感じなかったぞ!」

 

 グレン先生がマリアンヌの剣の出鱈目さに驚くが、隣にいるシスティがそれ以上に剣の能力に驚いていた。

 

「その剣……まさか、魔法遺産(アーティファクト)──炎の剣(フレイ・ヴード)ッ!? 『メルガリウスの魔法使い』に出てくる魔将星が一翼、炎魔帝将ヴィーア=ドォル……彼が振るったという『百の炎』の一つ、炎の剣(フレイ・ヴード)……どうしてそんなものがこんな所に!?」

 

 魔将星……以前『タウムの天文神殿』──というか、学院の地下迷宮のかなり下の方で出会ったアール=カーンと同類の奴か……?そいつが持っていたという武器がマリアンヌの持ってる剣ということか……。

 

「へぇ……結構コアな古代遺物マニアもいたみたいね。おかげで説明の手間が幾分か省けたわ。まあ、大体その通りね」

 

 システィーナの博識さに面白そうに笑いながら肯定してマリアンヌが剣を見せびらかしながら語り出す。

 

「私ね、蒼天十字団の『Project(プロジェクト):Revive(リヴァイヴ)Life(ライフ)』研究では経験記憶・戦闘技術の復元・継承に関する術式の研究を担当してね……その一貫として、古代の英雄の戦闘技術なども現代に再現出来ないか、みたいな事もやっていたわけ」

 

「まさか……白魔儀[ロード・エクスペリエンス]の応用かっ!?」

 

 その魔術は確か……これまた『タウムの天文神殿』に行く際、アルフォネア教授が途中で襲いかかってきた魔物を蹴散らす時に使っていた奴だ。無機物に眠る記憶情報を自らに反映させたりして技術などを再現させたりするっていう……。

 

「ええ、そうよ。流石にかのセリカ=アルフォネアのように過去の英雄の戦闘技術をほぼ完全再現……という風には出来なかったけど。私はこの炎の剣(フレイ・ヴード)から、不完全ながらも半永久的に戦闘技術をこの身に憑依させるくらいには成功したわ」

 

「な……!?」

 

 正直、専門的な話だからほとんど理解は出来ないが、あの剣から感じる力とそれを振るっているマリアンヌの実力が尋常ならざるものだというのは明らかだった。

 

 この距離でも感じる熱量からして、あの炎を真面に浴びれば火傷だけで済むとは到底思えなかった。

 

「……っ!? 危ない、みんな、下がって!」

 

 不意に、マリアンヌの姿が陽炎のようにボヤけて消え、次の瞬間にはその動きを察知したリィエルが前に出てマリアンヌの剣に自身の剣をぶつけた。

 

 だが、刀身同士が接触した次の瞬間にはマリアンヌの剣から放たれた炎が津波のようにリィエルを飲み込もうと迫ってくる。

 

「《大気の壁よ・二重となりて・我らを守れ》っ!」

 

 それをシスティが風の障壁を二重に展開して熱伝導を遮断する事で炎の波を防ぐ。その隙にグレン先生が懐に忍ばせていた銃を抜いて三連射を見舞うが、マリアンヌはその見た目からは考えられない動きで銃弾を剣で受け止める。

 

「ふふ……私も中々のものでしょう?」

 

 いや、あんたがじゃなくてその剣の持ち主がとツッコみたいところだが、そんな言葉をかける余裕なんてない。

 

「……もう逃がさないわよぉ。貴方達全員、程良くトーストして、実験サンプルにしてあげるんだから」

 

 瞬間、剣から大量の炎が吹き出し、車両内の温度が一気に急上昇していく。少しでも距離を詰めようとすればマリアンヌの言う通り、人間トーストの完成となろう。

 

「く……これ、マジヤバだろ……絶対に強ぇ……」

 

「だったら、これでいくしか……」

 

 いくら向こうの剣が強力でもこっちにだって火に対抗出来る戦士と自然を味方に付ける戦士の力が──あれ?

 

「ちょ──ないっ!?」

 

「おい、何が……って、まさか……?」

 

「そのまさか…………カードが、ない……」

 

「はあっ!? おま、よりによってあのチート剣に対抗しうるモンをこんな所で無くしたってか!?」

 

「そんなわけないでしょう! アレは常に身につけ──って、まさか……」

 

「あら、お探し物はコレかしら?」

 

 マリアンヌが明らかに見下すような表情をしながら懐から一枚のカードを見せびらかす。それは間違いなく俺が持っていたウルトラマンのカードだった。

 

「一応もしもの為と回収したのだけど……本当に貴方が身につけなければただのカードでしかないのね。まあ、貴方を実験サンプルとして持ち帰ればいくらでも解るでしょう」

 

 そう言いながらマリアンヌは更に炎を吹き出させ、車内の熱がより高まる。

 

「はぁ……はぁ……あぅ、ぐ……うぅ……」

 

 更にその後ろでは青ざめたエルザが呼吸を乱しながら膝を着いていた。

 

「エルザ!?」

 

「おいおい……さっきあいつらからチラッとは聞いたが、ここまで酷いのか」

 

 どうやらグレン先生達もエルザのトラウマの件は聞いていたようだ。こうなるとエルザが戦線に立つのは最早望めない。

 

「チッ! 仕方ねぇ……どうにか俺達だけであのババアをぶっ倒すしかねえ。やるぞ、お前ら!」

 

「「はいっ!」

 

「ん!」

 

 カードを取られたのは痛いが、これでは逃げる事も厳しいのでとにかく前へ飛び込むしかない。

 

「あははは!」

 

 狂気じみた叫びを上げながらマリアンヌが剣を振るうと同時に高熱の炎が波となって押し寄せてくる。

 

「《光輝く護りの障壁よ》っ!」

 

 システィが前に出て六角形の光の障壁、[フォース・シールド]を張って炎の波を防ぐ。

 

「って、熱っ!? 遮断し切れてねえぞ、白猫! サボってんじゃねえ!」

 

「これが目一杯なのよ! 私の所為じゃなくて、あの剣の出力がおかしいのよ!」

 

 別にシスティが手を抜いてるだなんて思わないし、俺達よりずっと魔術の才能に富んでいる。だと言うのに、防いでおいて尚ここまでの熱量を誇るあの剣がどれだけ出鱈目なのか嫌でも理解してしまう。

 

「ああ、もう! しゃあねえ!」

 

 グレン先生が自らに[トライ・レジスト]をかけ、炎に対する抵抗を高めたところで前に出て、俺もそれに着いていってマリアンヌに接近する。

 

「白猫! 援護頼む!」

 

「《大気の壁よ・二重となりて・我らを守れ》っ!」

 

 システィが対象の周囲を真空の壁で覆う黒魔[ダブル・スクリーン]を俺達にかけて炎の熱を極限まで軽減させる。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 グレン先生がマリアンヌに向けて拳を打ち放つが、マリアンヌはそれを剣の腹の部分で受け流し、グレン先生の後ろを取ってその刃を首目掛けて振り下ろそうとしていた。

 

「させるかっ!」

 

 俺はマリアンヌの後ろから[テイル・シュトローム]を発動させ、水の尾を叩きつけようとするが……。

 

「しっ──!」

 

 死角からの攻撃にも関わらず、即座に対応して炎の刃を振るい、水の尾を一瞬で蒸発させてしまった。

 

「はあっ!」

 

 水の尾を蒸発させた炎の刃はその熱を保ったまま俺達二人を同時に焼き尽くそうとしていた。

 

「いいいいいやああああぁぁぁぁ!」

 

 が、その炎が振るわれる寸前でリィエルが割って入り込み、自慢の大剣でマリアンヌの剣を受け止めて炎を阻止する。

 

 だが、リィエルを認識しては炎はすぐに大きくなり、リィエルを飲み込もうとしていた。

 

「た、《大気の壁よ》っ!」

 

 リィエルを襲う炎はシスティが咄嗟に[エア・スクリーン]を張る事で阻止した。

 

「しぃっ!」

 

 だが、それもマリアンヌが物理的に刀身を振るう事で斬り裂かれてしまう。また、炎が吹き上がってその津波のような炎が再び俺達を覆わんと襲いかかってくる。

 

「て、撤退ぃぃぃぃっ!」

 

 グレン先生の叫びですぐさま後退して、システィと立ち位置を入れ替えて彼女が再び[フォース・フィールド]を張って炎の津波を防ぐ。

 

「だから熱いって!? 白猫、何とかしろ──っ!」

 

「無茶言わないでよ! これが限界なんですってば!」

 

「リョウ! お前も加わってあの炎、消火しろ!」

 

「俺が加わっても文字通り焼石に水ですし、この高温密閉空間の中で下手に水撒き散らしたら水分の熱伝導性で蒸し焼きですよ!」

 

「だよなぁ! ああもう! [フォース・シールド]は足が止まるからダメ、焦れて攻撃仕掛けても[エア・スクリーン]じゃ物理攻撃で消滅、[トライ・レジスト]もあの高熱の前じゃ無意味に等しい……使ってるのは炎だけなのに、地味に反則だな!」

 

 確かに、使ってるのは炎だけだが、逆に言えばそれを極限まで特化させた武器がマリアンヌの剣だ。システィがどの防御魔術で援護してもそれぞれの弱点を突いて一瞬で霧散させられてしまうため、どうしても距離を詰められない。

 

 ただ近づいたところであの炎で一瞬で黒焦げか消し炭にされてしまうのがオチだろう。

 

「あははははははは! 燃えろ……全て、燃えてしまえええぇぇぇぇ!」

 

 こっちに考える暇も与えるつもりはないのか、マリアンヌは狂気に満ちた笑い声を上げながら更に炎を剣から吹き出していた。

 

「あぢぢぢぢぢ!? おい、いくらなんでも無茶苦茶だろ! このままじゃ、お前まで黒焦げになるぞ!?」

 

「あはははははははは!」

 

 グレン先生が声をかけるも、マリアンヌはただ笑いながら炎の嵐を噴き荒らすだけだ。オマケに気のせいか、彼女から黒い靄みたいなものまで吹き出してるように見える。

 

「く……ダメだ。まるでこっちの声が聞こえてねぇ……っ!」

 

「ひょっとして彼女……剣の記憶に引きづられてるんじゃ……?」

 

「あぁ……まあ、古代のイカれた英雄の武器なんて使えばそうなるか……」

 

「それに……彼女自身からも妙な靄が出てますし……完全に色々狂ってますよ」

 

「……靄? そんなもん、見えねえぞ?」

 

「……は?」

 

 グレン先生には今も尚彼女から漏れ出てる靄が見えてないのか? 隣にいるシスティにも目線で尋ねるが、彼女もマリアンヌと俺を交互に見ながら困惑した表情を浮かべてる。

 

 あの靄は俺にしか見えてないのか……? いや、そんな疑問は後回しだ。まずこの状況をどうにかしなければ数分後には全員焼け死んでしまうだろう。

 

 現にシスティーナも頑張って炎の波を抑えてくれてるが、車両内の温度の上昇は止められないし、[フォース・シールド]も所々に罅が入り始めている。最早一刻の猶予もないだろう。

 

 ──ドクンッ!

 

 この高熱の空間と極限の状況の中で突然、これまで何度も感じた鼓動が再び体内を走った。

 

 同時に頭の中にあるイメージが明確に浮かぶ。このイメージ通りに動けばこの炎の中でも何とかなる気がした。

 

「……先生。システィと一緒になって俺を補助してくれません?」

 

「は? お前、何するつもりだ?今のお前じゃ、あの炎に対抗する力なんて……」

 

「すみません、説明する暇がありません。俺がマリアンヌをぶっ飛ばしてきますので、みんなはこの場に留まってサポートに専念して欲しい」

 

「……やれるのか?」

 

「というか、やらなきゃジ・エンドなんで……」

 

「……わかった。けど、もしここで失敗して黒焦げになったら絶対ぇ恨むかんな!」

 

「上等ですよ!」

 

 俺は一歩前へ踊り出て、未だ狂気の笑いをあげてるマリアンヌを見据える。

 

 炎が燃える中、もうほとんど残されてない酸素を少しでも取り込もうと慎重に且つ、大きく呼吸をする。そして数秒後、俺は床を蹴り上げて飛び出した。

 

「あっははははははははは!」

 

 俺の接近に気付いたマリアンヌは更に炎を吹き荒らす。肉薄してくる炎の波に向かって左手を振りかざす。

 

「《水鏡》っ!」

 

 眼前に水の膜を張り、炎を防ぐが、それは一瞬で蒸発して再び俺へと押し寄せようとしてくる。

 

「《大気の壁よ・二重となりて・我らを護れ》っ!」

 

「《守人よ・遍く弎の災禍より・彼の者を護り給え》っ!」

 

 炎が俺の身に到達する前にシスティの[ダブル・スクリーン]とグレン先生の[トライ・レジスト]のコンボでダメージはなかった。

 

 その効果も数秒でこの炎によってねじ伏せられるだろうが、その数秒もあればマリアンヌの距離を詰めるには十分だった。

 

 カードはなくても強化された肉体スペックを最大限発揮して炎の嵐を駆け抜け、マリアンヌの持つ剣へと飛び込む。

 

「今だぁっ!」

 

 マリアンヌの剣の刀身を左手で捕らえると同時に俺はさっきの感覚に身を任せ、全身に力を込めた。

 

 すると、俺の全身が白銀に発光し、車両内の炎を払い始めた。

 

「──っ!? うあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 だが、異変に気付いたマリアンヌが奇声を上げながら更に炎を吹き出す。それと同時に彼女を包んでいた黒い靄が濃くなって俺に襲いかかってくる。

 

「ぐっ……っ!」

 

 靄が俺の身体へ流れた瞬間、凄まじい激痛が全身を襲う。

 

『死ね貴様は死ね死ね殺す絶望しろ喜ぶな恐れろ狂え死ね憎い憎い殺す貴様はその光は憎い狂え狂え死ね崩れ落ちろ死ね憎い絶望しろ憎い喚け喜ぶな死ね貴様は殺す殺す殺す滅びろ憎いコロス殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス死ねシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ!』

 

 更に頭の中に呪詛というか、とんでもない悪感情が雪崩れ込んで来る……。

 

 マリアンヌの炎を取り払おうにもこの妙な激痛が邪魔をして力を使う事が出来ない。

 

 グレン先生にデカい事を言っておきながらなんてザマだと思った時だった。

 

 スパン! と、何かを振り切るような、斬るような音が耳に入ると、俺の背後でメラメラと燃えていた炎の波が真っ二つに割れ、俺達の身体スレスレで斬撃の軌跡が飛来した。それと同時にマリアンヌの周囲の炎も幾分か千切れたように勢いが小さくなった。

 

 背後を見ると、蒼ざめた表情でエルザが刀を振り抜いた状態で息を乱していた。どうやらあの刀で鎌鼬みたいな事でもしたのだろうか、そのおかげで俺を襲ってた靄も若干勢いを失っている。

 

 好機と見た俺は一気に仕掛ける事にする。

 

「いい加減……目を覚ましやがれえええぇぇぇぇぇぇ!」

 

 俺の内側から白銀の光が眩く輝き、その光量はそれを発した俺自身も眩しすぎてまともに目を開けられない程だった。

 

 一瞬だったようで長時間にも思えるくらい目の前が真っ白になる時間が続き、それが収まるとあれだけ燃え盛っていた車両の炎が完全に鎮火し、マリアンヌは俺の足元で気を失っていた。

 

「えと……やった、のか……?」

 

 長い沈黙の中でグレン先生がポツリと呟いたのをきっかけに、後ろでシスティが歓喜の声を上げながらエルザにさっきの鎌鼬の事について問い詰めていた。

 

 それに続いて後続車両からグレン先生達に着いてきたフランシーヌとコレットが飛び込んできて事が済んだと知るやグレン先生に抱き着いて大騒ぎし、システィが暴風を吹かせるといういつもの締まらない光景が広がっていた。

 

 その傍では、エルザがリィエルの胸に縋りながら泣いており、リィエルはただエルザを受け止める姿があった。

 

 そんな中で俺はただ黙って取られたカードを回収しながらふと考える。

 

 俺にしか見えなかったマリアンヌの黒い靄と言い、俺がさっき使った力と言い……なにか、空想じみたものがどんどん重い現実となって迫ってきてるような嫌な予感を僅かに感じながらどうやって学院に戻るか考えるのだった。


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