ロクでもない魔術に光あれ 作:やのくちひろし
──の筈が、相変わらずのコロナ騒動の上、東京で開かれるアレ……県民で実家暮らしの身なので下手にいくことが出来ないのでテンションは相変わらずのロー状態。
ウルイベに行く人も行かない人も引き続きコロナには気をつけてください。そして、終息した日には一気に輝けるようになれることを祈ります!
投稿間隔が開いてばかりですが、ウルトラマンもロクアカもある限りまだ続けたいと思ってます!
暗黒の中での耐え難い苦痛を受けてどれだけ経ったのだろうか……。
一日、二日……いや、時折ふと景色が変わることがあった。海の底みたいな場所だったり、氷海の下だったり、光の届かない小惑星の地上だったりと何度も変わったが、それがどれだけの頻度と間隔で変わったかなど記憶してないし、する余裕もない。
何十回も景色が変わりながら苦しみに耐えようと必死に抗ったが、それも徐々に弱々しくなっていく。
このままでは近いうちに俺の中にいるベリアルに存在を乗っ取られることになるだろう。
どれだけ抵抗しようが、痛みは増すばかり……拒もうとも体内にいるベリアルをどうにかする術など持っているわけもなく自己を見失わないようにするだけで精一杯。それももはや限界だった。
身体がいよいよ動かなくなり、感覚も徐々に無くなっていき、意識も薄まっていく中、自分が別の何かに変わろうとしていることだけはわかった。
これまでかと思っていた時、何も無い暗闇の中に突如一筋の光が煌めいた気がした。
突然見えたその光に一瞬遅れて気づいた俺は目を開いてそれに目を凝らした。
その光の中にはいくつもの光景が見える。巨大なナメクジ──ペドレオンに襲われながらも必死に囚われてく仲間を救おうと奮闘する姿……建物を覆う障壁を形成してるだろう魔法陣らしいものを描いている図面を中心に周囲の爆発も無視して懸命に力を降り注いでいる者達の姿……頭上に浮かぶ大きな船に向かって必死に何かを叫んでいる者達の姿……そして、ボロボロになりながらも必死に立ち上がる三人とその傍で涙している少女。
それらを目にした瞬間、俺の頭から何かが飛び出そうとするような痛みが走る。
その痛みの中で見えたのは外の世界の出来事……。突然見知らぬ世界に迷い込んだ時期、子供達と過ごす日々、突然魔術を学ぶ学院に通う事になった事、その生活の中で突然様変わりした非日常への一歩、数々の葛藤、それを飛び越えた出来事、それからしばらくした後の大きな壁、自分が殺される場面……そして、宇宙で何かが衝突した時に発生した光。
その後に見知らぬ空間で何かが自分に囁いてくる。
『お前は、いずれ◾️◾️◾️◾️を降ろすための器……それまでは……として、力……ておけ』
言葉が途切れ途切れで内容がわからないが、自分に囁いた存在が俺を利用しようとしているのがわかる。同時に、自分はやはり人間でなければ真っ当な生命ではない事が。
だが、あの世界に来てからの自分の日々は辛いものだけではなかった。
そう思ってから流れてきたのは一人の少女に対して温もりを感じた時の出来事の数々。それがあったから……そして、失いたくないと思っていたから自分はあの世界で戦い続けようとしていたんだ。
そして、それはこれからもそうしたいと。必死に手を伸ばしながら、あの世界への帰還を……あの少女の傍にいたいと望んだ。
『お願い……来て、リョウ君っ!』
その言葉が聞こえた瞬間、全てを思い出した。同時に身体が光に向かって引っ張られていくと同時に俺を蝕んでいた闇が小さくなっていき、右腕にこびり付く程度にまで縮んだ。
この闇に関しては自分の現状を考えて、ふとした拍子にまた俺を包もうとするだろうことはなんとなく理解した。だが、今はそれも怖く無くなっていた。
そんな見えない恐怖よりも、あの少女に向ける感情がそんなものを押しのけるほど強かったから。俺はただ……あそこに向かって全力で駆けつけたい。傍で、守りたい。あの涙を、流してやりたい。もっと、あの少女と過ごしたい。
「ぉ……おお、おおおおぉぉぉぉぉっ!」
今まで苦しみでロクに出せなかった声を全力で振り絞り、あの光に向かってただ必死に手を伸ばして少女の名を叫ぶ。
「ルミアァッ!」
その瞬間、真っ暗だった空間が突然背後から色づいていき、オレンジがかった黄金色に輝いていき、自分を蝕んでいた苦痛が完全に消え去り、同時に背中から押されるような感覚に身をまかせながらあの光へと飛び出した。
『そうだ、もっと強く……もっと高くっ!』
『最後まで……諦めるなっ!』
視界が白一色に染まる中、二つの声が自分に語りかけたのを最後に身体がどこかに落ちていくのを感じた。
気がつけば俺は妙な空間の中だった。ただし、今度は真っ暗闇なところではなく現実の。
目の前にはボロボロの状態で尻餅をついていたグレン先生、その後ろでルミア、システィ、リィエルが俺を見て驚いていた。言いたい事がわからんでもなかったが、敢えてそれを無視して俺は黒く染まった右腕をグレン先生へ差し伸べる。
「はぁ……ようやく抜け出せたと思ったら、もう最初からクライマックスな状況の最中とか……正直、もう少し慣らしたい気もするけど……しょうがないか」
背後に感じる殺意を受けながらもグレン先生を半ば無理やり立ち上がらせ、俺は背後に立つ存在──ザギを見据える。
『貴様……その力……』
「お察しの通りだけど、今それはどうでもいい」
ザギなら今の俺の状態はすぐにわかるだろう。だが、正直今の俺のこと全てを口にされても困る。
ザギが何かを言う前に俺は一瞬にして距離を詰め、右拳を叩きこむ。
『チィッ!』
それに素早く反応したザギは両腕を交差して防御体制を取り、俺の拳を簡単に防いだ。
それを見て俺もすぐに身体を丸めてザギの両腕を土台に、跳躍して最初の位置に戻り、右腕から紫電の斬撃を三つほど飛ばした。
『……フン』
ザギは左腕を一振りするだけで斬撃を打ち消し、更にこっちにまで衝撃波を飛ばしてきた。
そこにようやく現実に戻ってきたシスティが黒魔[エア・スクリーン]を張って衝撃波を防いでくれた。
「ん〜……身体はともかく、力の方は思ったようにいかないな……」
「リョウ……お前、今何を……?」
グレン先生は俺の今の攻撃に愕然としながら尋ねる。まあ、当然か……運動能力ならまだしも、俺が今使ったのは今まで見せたウルトラマン達の力ではなく、闇の力なんだから。
グレン先生達が普通の人間だったとしてもこの力については生物としての本能的に恐ろしいものだと認識せざるを得ない。
「まあ……強いて言うなら、新しく──いや、俺の中にあった力が表に出たってとこでしょうか?」
「……それは、ベリアルって奴の力か?」
グレン先生の言葉に思わず振り返った。尋ねてくるその眼と表情は何処か悲痛な色が出ていた。
「……どうしてベリアルの事を知ってるかは後で聞くとして、とにかく今はアイツをどうにかしないとですね。ハッキリ言って今までの奴らとは文字通り桁違いの化物なんで」
「んなのはもう実感してるわ。けど、もう後には引けねえからな。お前も……遅刻してきた分、たっぷり働いてもらうからな」
「また先生の不始末に付き合わされなければいけないんですか。レポートといい、リィエルの事といい、結構頻繁にあんたのサボりで出てきた問題に付き合わされてる気がするんですが」
「いや、レポートはともかくリィエルの事はお前にも責任あるからな!? お前が止められなかった所為で俺の財布事情がどんどん罅割れてんだっつうのに、一生徒のお前は無傷じゃん!」
「俺は押し付けられただけでしょう。ていうか、今になって思い出したら事の発端ってアルベルトさん達じゃありませんでした?」
「そういやそうだよな! これ終わったらこれまでの弁償代分くらいは請求したってバチは当たらないよな!」
「二人共こんな時まで何を下らない喧嘩してるんですか!」
「うん……そろそろあの黒いヤツも動く。ちゃんとして」
「「あ、ごめ──って、ちゃんとして云々はお前にだけは言われたくないわ!」」
俺とグレン先生は揃ってリィエルに吐き捨てた。その後ろではルミアが苦笑いしていた。
まあ、そろそろ本当に改めて気を引き締めないといけないのは間違いない。今のコントが原因かは知らないが、ザギの纏ってる闇がまた濃厚さを増した気がする。
『貴様が生きてることには驚いたが、奴の光が無くなった今……俺を阻む者などいない。どっちにしろ貴様らが俺の前から消え去るのも時間の問題だな』
「勝手に決めつけないでほしいよ。お前が何を言おうがどうしようが、一々がお前の思い通りに運んでたまるか」
「だな。どの物語だって結局悪は滅ぶんだしな……テメェもここら辺でいい加減退場しやがれってんだ」
俺達が戦闘態勢を取ると同時に、ザギの周囲に紅黒い稲妻が複数迸る。
「さて、リョウが加わったのはいいが俺達はほぼ満身創痍のままだ。ルミアには色々言ったが、あの空間を操る力はアイツには通じねえ。更に前衛組はアイツの動きに対応できねえ、そして防御もほとんど意味をなさねえ。ひとまずリョウがアイツを惹きつけて隙を作ってもらわなきゃ──」
「いえ、大丈夫です」
グレン先生の言葉を遮ってルミアが強く言うと、光の柱がグレン先生、システィ、リィエルを包み込んだ。
「《
ルミアがふと俺に視線を配ると何か言いにくそうにしていたが、グレン先生達から感じる力を見ればまあ仕方ないとも思う。
今の俺にはルミアの力による恩恵は授かれない。しようとしても俺の中の、ベリアルの力がそれを拒むだろう。
「ま、とりあえず先生達がパワーアップ出来たみたいだし。一丁本腰いれますか!」
叫ぶと同時に足腰に力を込め、踏み出すとその距離を一瞬で詰めてザギに回し蹴りを叩き込む。
『フン!』
ザギは俺の動きなど完全に見切って、片手で俺の蹴りを弾くと同時に拳を叩き込む。咄嗟に腕でガードするも俺の身体はその攻撃に耐えられず見事に吹き飛ぶ。
「そっちばかりに気ぃ取られていいのかよ!」
「いいいいぃぃぃぃやあああぁぁぁぁぁっ!」
ザギの背後から[ウェポン・エンチャント]を施したグレン先生とリィエルが拳と大剣を振り下ろした。
『チィ!』
鬱陶しそうに舌打ちしながらそれぞれの攻撃を片手で防ぐと同時に紅雷で二人の身体を吹き飛ばす。
「《集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えよ》──《
更にシスティが空気を圧縮した破壊搥を放つも、ザギは両腕でそれを完璧に防いだ。
『ヴアアアァァァァァッ!』
ザギは獣のような叫びをあげると驚異的な速度でシスティへ向けて駆け出す。そこでようやく態勢を立て直せた俺が割って入って突進を受け止める。
「ジェアッ!」
右拳に集中させた紅雷の拳をザギに叩き込んで距離を取らせ、再び右腕に力を集中させると紅黒いオーラが発光し、巨大な爪の形を取った。
「ハァッ!」
それを力一杯振るってザギを刻みつけるが、それは奴を退け反らせただけで大した効果は見込めなかった。
『フン……最初は警戒はしたが、大したことはないな。貴様……その闇の力、馴染めてないな』
正解だった。実際ベリアルに取り込まれそうになりながらどうにか自分を保って身体は取り戻せたものの、肝心の闇の力は全く思うように振るえない。
多分闇の力を使うにあたって俺の技術云々の前に精神的な部分が枷になってるんだろう。
ウルトラマンティガもかつては強大な闇の力を持った戦士だったが、その心に光を持ってからは著しく弱体化したものだが、恐らくそれと同じような状態なんだろう。
身体能力も強化できてもザギには及ばず、闇の力も十全には発揮できない。俺一人が加わったところで焼け石に水だ。
ルミアの力でブーストして攻撃防御共に上がった先生達も時間が経つにつれて徐々に押し返され始めている。
その中でグレン先生は時折懐に手を伸ばそうとしながら躊躇する場面も多く見られる。多分、グレン先生の[愚者の世界]とはまた違った
結局、どうにかしてザギに大きなダメージを与える必要が出てくるわけだ。だが、ルミアの力の恩恵を受けたシスティの魔術も駄目……リィエルの身体能力も一歩及ばず、俺に至っては全てが中途半端な状態だ。
だが、ただ現状を把握するだけでは勝てない。もっと……この状況を大きく変えるための一手がいる。そこに辿り着くために何をすべきか。
グレン先生達を助け、ザギに一矢報いるためにどうすればいいか奴の戦闘とこれまでのこと、更に今までの俺の闘い方を思い出すうちに一つの方法を思いついた。
正直、コレが当たってるかどうかもわからない上に成功できる保証なんてない。だが、奴の動きを止めるには現状最も有効になるだろう。これが成功すればザギは必ず大きな隙を曝け出す。
そう決めると同時に俺はザギへ接近して拳を突き出した。ザギはすぐに反応して余裕で俺の拳を受け止める。
『フン……どうやら真っ先に死にたいようだな』
俺に力を振るうかどうかも賭けではあったが、既に俺から自身の力と光を奪った以上は虫ケラの一体としか思ってなかったのだろう。
ザギは俺を突き飛ばして両手に闇の力を収束して両拳を合わせると、そこから闇の破壊光線を打ち出してきた。
俺はその破壊光線を、全身で受け止めた。
「な、リョウッ!?」
俺の余りにも無鉄砲な捨て身の方法にグレン先生達が驚愕する。それでも俺はこの全身を粉々に撃ち砕かんばかりの攻撃を受け止め続ける。
『敵わんと知って観念したか? ならば望み通り死んで、その力も俺が吸収してやろう』
ザギはトドメの一撃として光線の威力を更に高めてきた。
俺は両足を踏みしめてただ耐え続ける。もっとだ……もっと耐えろ。この力を反転させるために。
それが数十秒も続くと突然の変化が訪れた。
ザギの破壊光線がうねりを上げて俺の身体へと吸い込まれていく。文字通りに……。
『な……ッ!?』
突然の変化にザギが驚いたが、もう遅い。破壊光線を通じて奴から放たれる闇の力を次々と俺の身体へと取り込んでいく。
そして俺の中でも闇の力が渦巻いていき、その中心から熱いものが大きくなっていくのを感じた。それに身を任せるように広げた腕を胸の前で交差すると胸の中心から光が閃き、一瞬のうちにこの場を包むほどに巨大化した。
突然広がった眩い光に俺を含めて皆が動きを止めた。
光が収まり、自身の身体を確かめると右手の甲から青い水晶体が浮かび上がり、俺の視界が少し青みがかったように色が変わって見えた。
後ろで見ていたみんなは相変わらずの驚愕に満ちた表情だった。さっきの無鉄砲な作戦についてまだ引きずっているのか、もしくは今の俺の変化に驚いてるのか……。
『バ、バカな……貴様、それは……』
一方、ザギはグレン先生達以上に俺の変化に驚いているようだ。
「……テヤッ!」
『ッ!?ヴァァッ!』
俺はさっきまで以上の速さでザギに肉薄し、ザギの腹部……コイツがアセロ=イエロの肉体に潜んでいた時に一矢報いた傷へ向けて手刀を刺し穿った。
そこからまるで出血するようにザギの闇の力が粒子となってこぼれ落ち、更に赤い光の球が飛び出して俺のもとへ飛来してきた。その光は静かに俺の眼前で輝き、見下ろすように浮かぶ。
『グッ……き、貴様ぁぁぁぁ!』
吹き飛ばされたザギが立ち上がって怨嗟の叫びをあげると、俺へと向かって猛スピードで接近してくる。
吸収していた光が抜けた上、手傷を負ったとは思えない人間の反応速度を超えた勢いで俺に暗黒を纏った右手を突き刺そうとした時だった。
『グアッ!?』
暗黒の手が俺に触れるか否かの刹那……俺とザギの間に眩い光が出現し、俺の盾となってザギを吹き飛ばした。
突然の眩しい光に視界が一時機能を低下したが、数秒もすると目の前に赤い光と黄色い光が俺を見つめるように浮かんでいた。
それを認識するとこんな時だが、俺の目から涙が零れ落ちた。
思えばずっと疑問ではあった。ウルトラマンの力を顕現したのが俺の身体に刻まれたノアやザギ、ベリアルといった巨人達の因子があったからなのはなんとなく理解できた。
だが、それでもなぜ最初に得た力が『彼』だったのか。単純に数だけで言えば闇寄りの力に真っ先に目覚めてもおかしくないと今ならそう思ってる。
だが、俺の中にいたのがそれだけじゃなかったとしたら? その巨人達の力が俺という存在を創る前から情報体として俺の中に存在していたとしたら?
俺を創った情報──本物の天地亮という男がその素質を持って、それが俺にもあったとしたら?
「……はは……そういう」
そう思えたらなんとなく笑いが込み上げてきて、余計涙が止まらなくなってきた。
「ずっと……俺を、見てて……くれてたんだな……」
俺が絞り出した呟きに頷くように黄色い光が明滅した後、赤い光と共に上へと浮かび上がり、壁をすり抜けていった。
何処に行ったかとグレン先生達は動揺するが、俺は感覚であの光の行き先は分かっていたし、ザギが投影したのだろう映像にも光の姿が映し出された。
二つの光は学院の上空へ到達すると、膨れ上がっていき、瞬く間に白光を伴って学院に蠢いていた巨大スペース・ビーストを吹き飛ばした。
突然現れた光に学院にいたみんなも時が止まったように呆然と見上げていた。
光は既に収まり、そこにいたのは巨大な二つの影だった。
片や銀地に赤と紫のラインを走らせ、肩から胸へかけて金色のラインの走ったプロテクターと雫を逆さにした形の青い水晶体を光らせた巨人。
片や銀を主体に黒いラインを走らせ、まるで鎧を纏ったような外観と何より特徴的なのは胸にあるアルファベットのYを思わせる赤い水晶体だ。
『き、貴様らは……』
何回も吹き飛ばされながらもなんでもないように立ち上がったザギが映像越しに見える存在に忌々しげな声をあげ、
「あ、あれって……」
「何……?」
「おいおい……マジで?」
「リョウ君が、言ってた……」
グレン先生達が信じられないというようにその存在を思わず現状を忘れてしまうほどに見つめ、
「ネクサスに……ティガ……ッ!」
俺は、その巨人達──ウルトラマンの名を口にした。
地上に降り立った二人のウルトラマンは互いを視認すると同時に軽く頷きあい、それぞれスペース・ビーストと向き合う。
それを見て俺もウルトラマンを見た感動よりも優先すべきことを思い出し、ザギを見ると向こうは自身の宿敵の出現に怒りを露わにして俺達のことは意識外へと放り出していた。
チャンスだと思い、今のうちに奴を倒すための話をしようとグレン先生へと歩み寄る。
「先生……奴が向こうに気を取られてるうちに纏めたいんですが、先生達はザギを倒すための策とかありますか?」
「ぇ……あ、あぁ……まあ、奴がアセロ=イエロだったらって思って用意したやつならあるが、これがアイツに効くかって言われるとわからん。お前の方は? その……お前のその力……」
グレン先生が聞きたいのは俺の腕や俺から漏れ出ている力についてだろう。だが、ここでそれを説明できるほど時間の猶予はないのでそっちの説明は放り出して今やれそうなことだけを言おう。
「こっちについては今は多く語れませんけど、とりあえずアイツを倒せるかもしれないというくらいには行けそうです。あと、これらも先生達に」
俺が取り出したものを見ると先生達は目を開いて驚愕する。
「ただ、使い所は気をつけてください。今の俺がこれを使用したら、多分……もう二度と」
「お前……いいのか、こんなところで?」
「こんなところだからこそです。今ここでやらなきゃ、それこそ
「……わかった」
俺の意思を汲んでグレン先生は俺の手からソレを受け取る。
「で……それらの特徴と俺が取りたい作戦なんですけど……」
俺はグレン先生達に渡したソレと俺が現在取れ得る作戦、奴の特徴や考え方などを軽く説明した。
「ただ……これが成功してアイツを倒してもここで終わるかどうか……なにぶん、物理的な破壊だけで倒せそうな相手じゃなくて……なんでかって聞かれると答えに困りますけど、多分アイツは人間の悪感情さえあればスペース・ビーストみたくそこに魂──って、言えばいいのかな? とにかくそれと同調して復活しかねないんで」
「ん? 魂……要するになんだ? アイツを倒すには物理的なものとは違う手段が必要ってことか?」
「まあ、そうなりますけど……生憎、今の俺にもそれはできないので。けど、先送りになったとしてもアイツをここで倒さないと──」
「だったら大丈夫だな」
例え再戦することになったとしてもと覚悟していたところにグレン先生が俺の言葉を遮る。
「お前のおかげでこいつが効きそうだってのはわかった。だったら後は突っ走るだけだ」
グレン先生が銃を俺に見せつけながら笑いかける。まだ何も聞いてないが、グレン先生の手札にアイツを倒せるものがあるというのなら、それを信じるだけだ。
俺はグレン先生へと笑い返して腰を落とす。
「じゃあ、一丁目に物を見せてやろうじゃねえか!」
「っしゃあ!」
足を踏みしめ、一気に力を地面に押し出すと同時に音にも匹敵する速度でザギへと肉薄する。
ここから流れを作るのは