ロクでもない魔術に光あれ   作:やのくちひろし

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第45話

 地上、アルザーノ魔術学院では突如二体の巨人が現れたかと思うと戦線にいた者達を脅かしていたスペース・ビーストへと駆け出し、攻撃を仕掛け始めた。

 

 片方……赤と紫の巨人、ティガは空中前転で接近すると鋭い手刀を脳天に叩き込み、スペース・ビーストの攻撃を地面を転がることで回避し、背後から掴みかかって学院から引き離そうとする。

 

 だが、スペース・ビーストは触手を伸ばして背後にいるティガを縛ると学院へと投げつけた。

 

 視線を移し、もう片方の巨人ネクサスは走り出して接近しながら腕に備えられた手甲に手を添え、光の斬撃を複数牽制として撃ち放つ。

 

 そのままスペース・ビーストの眼前まで肉薄して身体を捻りながら重い拳を喉元へ打ち込み、身を捩らせたところに両手を握り込んで脳天へ振り下ろす。

 

 そのままスペース・ビーストへマウントを取ると、拳を何発も打ち込んでいく。

 

 スペース・ビーストも負けじと激しく抵抗を繰り返すとネクサスはバランスと崩して地面を転がり、その隙を突いてスペース・ビーストはネクサスへ突進し、その巨体を学院まで吹き飛ばした。

 

 再び学院へ接近するスペース・ビースト……これ以上人々を襲わせまいとティガとネクサスは一瞬後ろを見やると視線を戻して再び駆け出す。

 

 だが、突如地面が割れたと思うとそこから長い触手が飛び出し、二人の首に巻きつく。

 

 振り解こうにも触手はまだ残っており、それぞれの両腕を縛って完全に動きを封じられてしまう。このままスペース・ビーストが二人の巨人を攻撃しようと迫っていく。

 

 その時、どこからか紫電の閃光が飛来してティガとネクサスの手を縛っていた触手を焼き切った。

 

 それは二人の巨人が戦闘している間に立ち直ったアルベルトを中心とした狙撃組が黒魔[ライトニング・ピアス]を主にした遠距離射撃によってスペース・ビーストへ一矢報いようと静かに構えていた。

 

「十のうち四っ! 二体の巨人の手を縛る触手に命中っ!」

 

 観測を担当しているセシルの報告が狙撃組へと響き渡り、アルベルトは更に追撃を仕掛けようと両手に持つ狙撃用魔杖の照準をずらす。

 

「総員、次は首に巻きついた触手だ! 巨人達の束縛を完全に剥がす!」

 

「「「はいっ!」」」

 

 アルベルトの指示を聞き、全員がティガとネクサスを縛る触手に狙いを定めて紫電を閃かせる。

 

 空を切った紫電が巨人二人の首を絞めてる触手へと到達し、その拘束を緩める。隙の出来たところにティガとネクサスは触手を握りしめ、力づくで引きちぎった。触手を引きちぎられた痛みか、スペース・ビーストが奇怪な悲鳴を響かせる。

 

 ティガとネクサスが一旦距離を置き、学院へと視線を送ると学院から様々な声が響いてくる。

 

 それは自分達を守っているんだと信じた学院の生徒達が中心になって巨人達を応援するものだった。援護射撃を指揮していたアルベルトも、声こそ出していないが軽く頷いて引き続き援護するという意思を表す。

 

 ティガとネクサスは頷き、スペース・ビーストへ向き直るとティガは両腕を眼前へ、ネクサスは左腕を胸元へ持っていく。

 

 すると、ティガの額にあるクリスタルから赤い光が閃き、両腕を振り下ろすと同時に赤と紫の二色から赤一色へと変化し、その体つきも直前より筋肉が肥大化する。

 

 先程までの二色の形態はマルチタイプ……全ての能力のバランスが取れたスタイル。そして、今の姿は力と耐久力に優れた剛力形態、パワータイプだ。

 

 そしてネクサスは左腕に備わった手甲、アームドネクサスを輝かせると彼の周囲が水が流れるように光が波打って降り注ぎ、その身体が赤く輝いた。

 

 先程までの形態、基本の姿であるアンファンスから更に力を解放した姿、ジュネッスへと姿を変える。

 

『デヤッ!』

 

『ジェアッ!』

 

 先程よりも力強さの籠った声を響かせ、地響きを鳴らしながら再びスペース・ビーストへ接近する。

 

 

 

 

 

 

 大層な啖呵を切りながら駆け出し、自分の中から感じる力の限りを脚力へと変え、ザギへと接近する。

 

 ようやく俺へと意識が向いたが、その時には俺の拳が奴の顔面を捉え、その身体を吹き飛ばした。

 

『ぐ……貴様ぁ……ッ!』

 

 ザギが憤怒に満ちた眼光を向けるが、間髪入れずに再び高速で接近して拳を叩き込む。

 

 今度は防御されてしまったが、俺はすかさず蹴りを打ち込んでザギを退け空中前転してからの踵落としを見舞うとザギはそれを受け止めて空中へと放り投げられる。

 

 飛ばされながらもバランスを整えようとすると妙な浮遊感に包まれ、自分が浮いてるのがわかる。一瞬驚いたが、これもこの力に目覚めた所為だろうと即結論づけてザギと向き合う。

 

 ザギが肉薄し、拳や蹴りをぶつけ、防ぎ、躱し、普通の人間では目で捉えることも困難な高速の攻防戦を繰り広げ、ザギのカウンターで俺はこの空間に所々突き出ていた柱の一つに叩きつけられる。

 

 柱が粉々に砕けるほどの衝撃だというのに俺自身は痛みはあれど、身体はそこまで深刻なダメージは受けていなかった。そこは力が目覚めたために身体も釣られて頑丈になったということだろう。

 

 だが、いくら頑丈になったり五感や力が高まっても俺自身の闘いに関する勘が追い付けていない。多少技の応酬ができてもすぐに向こうに対応されてしまう。

 

 だが、それは俺一人が闘っていればの話だ。

 

「いいいいぃぃぃぃやああああぁぁぁぁ!」

 

『ぐっ!?』

 

 ザギの攻撃が叩き込まれる寸前、大きな刃がザギを斬りつけた。リィエルが攻撃の速度が緩む一瞬の隙を突いて剣戟を浴びせた。

 

「おおぉぉぉぉらぁ!」

 

 更にグレン先生がルミアの力を授かった状態で[ウェポン・エンチャント]で更に強化された拳をザギの顔面に叩き込んだ。

 

 一瞬ぐらつきつつも、ザギは新たに飛び込んだ二人の動きにも対応してカウンターを決める。

 

「まだまだぁ!」

 

 グレン先生は一枚のカードを取り出すと自身の胸に押し当てる。それはいつも使っていたグレン先生の固有魔術(オリジナル)を起動するためのものではなく、ウルトラマンの描かれたカード。

 

 そう……さっきの作戦会議で俺はそれぞれにウルトラマンのカードを手渡していた。コイツを倒すためには俺一人が使っても無理だろう。なら、ここにいる全員がかりで倒しにいこうということ。

 

 単純な結論の気もするが、ウルトラマンによって力の性質は異なるし、俺以外の人と相性のいい組み合わせもあるかもしれない。

 

 特に今グレン先生が使用したのは『ウルトラマンダイナ』。この戦士はティガみたいにタイプチェンジの使えるウルトラマンだが、それは一回の戦闘で一度しか使用できないというデメリットがある。だが、それ故かは知らないが高いポテンシャルを誇り、窮地に追い込まれると普段以上のパワーを発揮する。その性質はいざという時の勝負強さを持つグレン先生と相性が良かったか、俺が使っていた時よりも身体的な強化がなされてる気がする。

 

「だあらぁ!」

 

 グレン先生の強化された拳でザギが吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

「やあぁぁぁぁぁっ!」

 

 そこに間髪入れずにリィエルが自慢の大剣に炎を纏って斬りかかった。

 

 彼女にはメビウスのカードを手渡し、炎の力によって普段以上のパワーを発揮した剣がザギの身体へ振り下ろされ斬撃と共に灼熱の炎を浴びせ、その場に火柱が立った。

 

『ヴァアァァッ!』

 

 火柱の中からまだ炎に包まれたザギが飛び出してグレン先生とリィエルを殴り飛ばした。

 

「シャアッ!」

 

 ザギが攻撃を放ったところに飛び込んで奴と共に地面を転がり、空中へと放り投げる。同時に自らも空中へ躍り出て拳と蹴りをあらゆる方向から連打する。

 

 それも数秒すれば腕を掴まれ、何回も振り回されて地面へと叩きつけられる。それから追い討ちをかけようと俺目掛けて急降下を始めた。

 

「《荒れよ風神・千の刃となりて・激しく踊れ》っ!」

 

 俺とザギの間に青白く光る風の刃が球状に吹き荒れた。今度はシスティがヒカリの力を使って風の魔術を強化していた。

 

 ザギは荒れ狂う風の刃の中に飛び込んでしまい、その身を刻まれていく。

 

 これによってザギの動きが止まり、その隙に俺は姿勢を直して意識を集中する。すると、俺の右手の甲の水晶体が青く輝く。

 

 同時に俺の身体を赤黒い稲妻が駆け巡り、かつてないほどの力の高まりを感じた。その溢れんばかりの力を右手の水晶体に集中させ、それをザギに向けて腕をL字に組んで照射する。

 

「いっけぇ!」

 

 叫ぶと共に蒼白の光線に赤黒い稲妻が螺旋状に纏ってザギの身体へと吸い込まれ、大爆発を起こした。

 

 ベリアルの闇の力とついさっき目覚めた光が渦巻くような力……この技に名をつけるなら『ヴォルテック・シュート』というべきか。かなり強力な光線技だ。

 

 いくらザギとはいえここまでやって倒せないまでも軽症で済むとは思えない。そう思いながら警戒混じりに爆発地点まで歩んでいく。

 

『この、紛い物ごときがぁっ!』

 

 怒り狂った叫びと共にザギが飛び出して俺に飛びかかり、首を掴んできた。

 

 身体の所々に罅のような傷跡がはしっているが、まだ戦闘できるだけの余力は残っていたようだ。

 

 ……だが、それくらいは想定済みだった。

 

「あああぁぁぁぁぁっ!」

 

『ぐっ!?』

 

 突如ザギの身体が吹き飛ばされた。俺へ意識を向けるあまり、既に吹き飛ばしたリィエルのことは頭から外れていたようだった。

 

「《集え暴風・戦鎚となりて・打ち据えよ》っ! 打て(ツヴァイ)! 叩け(ドライ)っ!」

 

 そこに更にシスティーナが[ブラスト・ブロウ]を三連発叩き込んでザギを地面へ落とす。

 

 ちなみにザギに吹き飛ばされた筈の二人が早い段階で戻ってきたのはルミアに渡したコスモスの力でブーストされた治癒術(ヒーリング)でダメージはおろか、マナも一気に回復し、更にルミアの『王者の法(アルス・マグナ)』という力で二人の魔術の効果が増幅されていた。

 

 だが、あれだけの攻撃及び不意打ちを喰らっても未だに奴の闘志は衰える気配を見せなかった。

 

『この……虫ケラ共がぁ!』

 

 ザギの身体から更にドス黒い闇のオーラが醸し出される。これ以上効果のない攻撃を重ねても奴をより本気にさせるだけ。近くにノア……いや、ネクサスの元へ行くために一時撤退を選択される可能性だってある。だから、ここでケリをつけるしかない。

 

 俺は再びザギへ向けて突進して右手を奴目掛けて振り下ろす。同時に右手の水晶体が輝いて俺の右腕を水のオーラが包み、巨大な鉤爪と化する。

 

「『龍爪』っ!」

 

 俺の水の鉤爪──黒魔[ネイル・シュトローム]は例え厚い鉄板だろうが、切り裂けるぐらいの鋭さは誇る。だが、ザギは大ダメージを負いながらそれすら驚異的な腕力で防いでしまう。

 

『自惚れるなっ! 巨人になれないのはおろか、光にも闇のどちらにも染まりきれない虫けらごときが、俺を倒せると思うなっ!』

 

「ま、確かにウルトラマンと違って俺じゃあどう足掻いても倒せそうにないな」

 

 今まで借りてきたウルトラマン達の力をフルで使えていたとしても、ベリアルの力を使いこなせたとしても、目の前のコイツを倒すには到底足りないことだろう。だが……

 

()()()()()……」

 

『何……っ!?』

 

「ま、要するにこういうこった」

 

 ザギが気づいた時には既に背後をグレン先生が取り、銃をザギへと突きつけていた。舌打ちしながら回避を取ろうとするが、そうは問屋が卸さないってな。

 

『グ……クソ、貴様っ!』

 

 回避を取ろうとした奴を俺が水の鉤爪を変化させて奴の身体を捉え、更に素早く詠唱を混ぜて[テイル・シュトローム]も発動させてザギを拘束する。

 

 さっきまでならともかく、あれだけの攻撃を加えてそれなりのダメージを負った今ならこの拘束から抜け出すのは容易ではないはずだ。

 

「そろそろ往生しろや、よくわからんバケモン。どっから引っ掻き回してくれやがったか知らねえが、もういい加減馬鹿騒ぎも終いにしろや!」

 

 グレン先生がザギに突き付けた銃の撃鉄を親指で引っ張る。

 

「《0の専心(セット)》……」

 

『ぐ……この、虫けらがぁっ!』

 

「虫けら虫けら……その虫けらに追い詰められてるお前って、一体なんなの?」

 

 拘束から必死に抜け出そうとするザギに向けて質問するとザギの抵抗が一瞬弱まり、こちらに憎しみの眼を向ける。

 

「ただでさえ力が強い上、人間の闇を利用するのが得意なお前からすれば確かにそう見えるかもしれないけどさ……」

 

 コイツは正真正銘の化け物だ。さっき言った通り、その手の能力に長けてるしノアの力を持ってしてもこうして生き延びてるあたり、ザギは人間には決して倒し得ないものではと諦めたくなってしまう。だが……

 

「今の俺が言ってもどうかと思うけど……あまり人間舐めんじゃねえよ!」

 

 俺の叫びと同時にグレン先生の指がトリガーを引いた。

 

 この場を包んでいた喧騒が、銃の発砲音と共に一瞬にして収まった。

 

 それからしばらく沈黙がその場を支配していたかと思うと、呻き声が響いてきた。目の前にいるザギからだ。

 

『グッ……ウゥ……ッ!? き、貴様……一体、何を……』

 

 ザギが呻きながら問い、膝を崩していく。俺は拘束を解いて一歩退き、グレン先生も俺の傍へと移動する。

 

『貴様、何をした……? 貴様の攻撃は……俺に傷一つつけてない……なのに、何故……』

 

 そう……。グレン先生が放った攻撃は何故かザギの身体を通ってはいない。なのにどうしてザギは満身創痍という風に膝を着いているのか、俺も不思議に思っている。

 

「そりゃあな……コイツは俺のもう一つ、二度と使わないと思って封印してた固有魔術(オリジナル)……愚者の一刺し(ペネトレイター)。俺の魔術特性(パーソナリティ)[変化の停滞・停止]を弾丸に込めて放つ術だ」

 

『それが……何だ? 何故虫ケラの攻撃が俺を……俺の力を崩していってる……?』

 

 確かに……こうしてみればザギの内側から徐々に何かが崩れるのを感じる。グレン先生の固有魔術と言ったが、そのパーソナリティが弾丸に乗ってるからといってザギをこうも追い詰められたのは一体……。

 

「この魔術火薬によって発射されたコイツはな……あらゆる物理エネルギー変化が停止し……同時にあらゆる霊的要素に破滅の停滞をもたらす」

 

『な、なに……を?』

 

「わからねえか? お前って存在がいかに外側を頑丈な護りで堅めようが、お前っていう存在がいかに不死身だったとしても……いくらなんでも魂そのものまでガードするなんていうのは不可能だろ。俺のコイツはその護りを擦り抜けてお前という存在そのものに攻撃を入れたんだ」

 

 それはそうだ。ザギが不死身だとしてもそれは力の源が生物では触れることができないものだからだ。だが、グレン先生の固有魔術はその触れられない部分に強引に針を刺しこみ、亀裂を入れるものだった。

 

「つっても……コイツはその性質上、外界に晒されるとあっという間に効果が失っちまうから遠距離から射撃で打ち込むって動作ができやしねえ。ああしてゼロ距離でぶち込まなきゃてんで使えやしねえ。コイツらの協力でもなきゃな」

 

 そう言ってグレン先生は俺の肩をポン、と叩く。

 

『ぐ……そんな……俺が、こんな……虫ケラどもに……』

 

「何度も言うけどな……人間を舐めるなよ。こちとら散々人間以外の相手との戦闘強いられてんだ。今更人外の一体二体で跪くなんて思うんじゃねえぞ」

 

「来るならいっそ巨体に戻れるまで待つべきだったな。人間を甘く見て、中途半端に意識だけ戻った状態で表舞台に出るべきじゃなかった」

 

『その通りだね』

 

 突如俺達以外の声が響き渡ったことに驚いた一瞬のうちに事は急転した。

 

『グッ!?』

 

 突然ザギの心臓部分が破裂した。いや……別の腕が貫いた。

 

『いやぁ……随分予定が狂ったよ。彼を当てれば出て来てくれるだろうと思ったけど、彼が退場しかけた時は私もヒヤヒヤしたよ。まあ……思わぬ展開もあって消耗したおかげで作業も比較的楽に終わりそうだ』

 

『ぐ……貴様、は……?』

 

『これから消えようとする者にわざわざ名乗る趣味はないよ。まあ、初対面が多い中だし……名前くらいはいいか』

 

 それからザギの背後からぬ〜、と顔を覗かせてきたのは青黒い仮面だった。そして、目の部分からは禍々しい紅の光が怪しく光っていた。

 

『初めまして、先生と生徒の皆さん。私はトレギア……しがない悪魔さ』

 

「トレギア……今まで何してたかと思ったら、狙いはソイツだったのか」

 

『おや、リョウ君。地獄からわざわざ、お帰り。随分格好良くなったんじゃないのかい?』

 

 トレギアは俺の右腕を指しながら挑発めいた事を言う。

 

「何でここに……なんて言うのは今更だからそっちはいい。何故ソイツを……お前の目的は何なんだ?」

 

『おやおや……せっかく君達の手伝いをしたのにお礼はないのかい?』

 

「ふざけろ……お前がそんな親切心で動く奴な訳あるか」

 

『はぁ、やれやれ……これでも一応ウルトラマンなんだけどね。まあ、君達のためでないのは否定しないけどね』

 

 そう言いながらトレギアは指をパチン、と鳴らすとザギが突然苦しみ出し、周囲に黒い靄が溢れ出た。

 

「──ッ!? あの靄、どこかで……」

 

 何か妙に見覚えのある靄だと思ったが、記憶を探るとあの靄から感じる波動と同系統のものに覚えがあった。

 

「そうだ……聖リリィ学院のマリアンヌの剣からでてた……まさか、あれも!?」

 

『あぁ……あれか。この星の人間の魔導具に私の力がどれだけ影響するかちょっとした実験のつもりだったのだが……正直あれのモデルになった聖遺物が元々人間達の手に余る代物だったから大したデータは得られなかったね』

 

 俺の推測を認めるもトレギアからすれば大した出来事と思ってなかったのか、思い出すのに若干時間がかかっていた。

 

 そういった部分も問いただしたいところだったが、そんなことよりももっとやばいことが目の前で起こっていた。

 

 黒い靄がトレギアの貫いたザギの傷を入り口にどんどん入り込んでいき、ザギが苦しみの声を上げながらその身体を徐々に膨らませていく。

 

『ん〜……一応身体はこの世界の人間の者の筈だけど、やはり収まり切るものじゃないね。まだデータが不足してるか……この世界の法則というのは中々掴みづらい』

 

「トレギア……一体何を……っ!?」

 

『もう少し実験をね。とはいえ、やはりこの世界の人間とはいえ私達の基準で力を収めるというのは難しいみたいだね。意図した事じゃないとはいえ、すぐ巨大化してしまう。あまりスマートなものじゃないね』

 

 トレギアはこんな状況にも関わらず、やれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

 

 そうこうしてる間にもザギはどんどん膨れ上がり、おそらく数分と待たずにこの空間を圧迫するほどにまで巨大化してしまうだろう。もうここにとどまるのも危険だった。

 

「く……先生っ!」

 

「ああ、わかってる! 一緒に来たセリカもそろそろ飛べるくらいには回復してる筈だ! すぐにこっからずらかるぞ!」

 

 ロクに会話もできない状況でこの場を後にしようと駆け出し際に背後を見ると、既にトレギアの姿はなく、今もなお膨張し続けているザギだけだった。

 

『さて……この実験で()()()()()()()()()()()()……様子見と行こうか』

 

 崩壊する音が大きすぎるため、虚空に響くトレギアの声は俺の耳に入る事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達がいた場所──《炎の船》が崩壊する直前、船の中腹辺りで一体の竜──アルフォネア教授が魔術で変身した姿らしい──が待機していた。

 

 俺の姿を見て一瞬眼を見開いたが、緊急事態だというのはわかっていたのか、巨大な顎で器用にルミアとシスティを優先して背中に乗せ、それに残った俺達が飛び乗ったところで巨大な翼を広げ、飛び立つ。

 

 その直後、《炎の船》が轟音とともにその船体が粉々に砕け散り、それ以上の巨大な黒い物体が姿を現した。

 

 俺達含め、地上に見えるみんなやウルトラマンも戦闘中とはいえあまりの異常事態に何事かと上空を見上げていた。

 

 今なら好機とも言える筈にも関わらず、二人のウルトラマンと相対していたスペース・ビーストは反撃するでもなく、ただ上空に向けて何かに共鳴するかのように咆哮をあげていた。

 

「うっ……ぐぅ!?」

 

 その音は文字通り肌でも感じるくらい周囲の空気を振動させるほどだった。更には脳まで直接揺らされてるような気持ち悪さでどうにかなってしまいそうだった。

 

「リョウ……おい、どうした!?」

 

 俺が苦しんでるのを見てグレン先生が俺の身体を支えながら呼びかけてくる。

 

『う……人間の耳じゃ感じない程の高周波が響いてんだよ。これは……今のあたしでも、堪えるな……』

 

 今は竜の身体であるアルフォネア教授もこの気持ち悪い高周波を感じているのか、飛行がやや不安定気味だった。

 

 これがしばらく続くと、地上にいた二体のスペース・ビーストが上空へと飛び立ち、進路途中にいた俺達のことも無視して更に上に浮かんでる黒い物体へと突っ込んでいく。

 

 手前まで行くと黒い物体から突如触手のようなものが伸び、二体のスペース・ビーストの身体に巻き付き、抵抗するどころかまるでそう望むかのように黒い物体と同化していく。

 

 そうしてようやく気持ち悪い高周波が鳴り止んで意識がハッキリし、アルフォネア教授の飛行も再び安定した。

 

「おい、リョウ……一体何が起こってるかわかるか?」

 

「ああいうのに大抵の理解はあると自負してるつもりではあるんですけど……あれは俺にもわかりませんよ。ただ……あれから感じる限りとんでもないものが出てこようとしてることだけは嫌でもわかります」

 

 実際、スペース・ビーストを取り込んでから黒い物体が小さくなっていくが、逆に内部から感じる力がみるみる強くなっていくのを本能で感じる。

 

 黒い塊がウルトラマン達程度の大きさまで収縮すると、そこから卵の殻を破るように人型の腕が黒い塊を突き破ってきた。

 

 更に足、胴体、頭の順に出てきてその全体図が露わになった。漆黒の身体に血管のような赤いラインはザギと変わらないが、その背には悪魔の翼を思わせる一対の突起物が生え、顔はザギのものとその左右にウルトラマンに似た別の顔が二つ付いていた。

 

 慌ててあの存在の事を考えるが、俺の知識の中にあのような姿に関する情報は欠片もなかった。

 

 似たようなものならファンブック的なものからダークルシフェルという設定だけ載せられたものと特徴が合致する部分があるが、アレはそれよりももっと禍々しいものだった。

 

「あ、悪魔……?」

 

 巨大で尚且つ、邪悪な雰囲気の漂う漆黒の巨人の姿に周囲の空気までもがまるで凍りついたかのように沈黙した中、無意識なのか地上で誰かがそう呟いたのが聞こえた。

 

 上空に浮かんでいるのはまさしくその呼び名が相応しい存在だ。宗教的な書物にしか存在してないと思っていたものが現実に飛び出してきたような光景に誰もが呆然とする中、漆黒の巨人がその手をゆらり、と上へ掲げた。

 

「──っ!? 躱せぇ!」

 

『チッ! お前ら、掴まってろ!』

 

 ダークルシフェル(仮)の動作と同時に巨大な力が収束するのを感じた俺は敬語抜きで叫んでしまった。アルフォネア教授も俺の言いたいことがすぐに理解できたのか、それを咎めようとはせずにすぐに行動に移した。

 

 奴が掲げた腕を中心に赤黒い稲妻が次々と雨のように襲いかかってくる。アルフォネア教授はどうにか回避できてるが、地上にいるみんなは──というより、これは人間の機動力で回避できるレベルではなかった。

 

 不幸中の幸いか、学院に到達することはないが、街の民家や施設のいくつかがこの攻撃によって木っ端微塵になってしまった。

 

 街を傷つけられたことには憤りを感じるが、今はこの攻撃を凌がなくてはならない。だが、アルフォネア教授の飛行能力を持ってしてもこの稲妻の雨をいつまでも潜り抜けられそうにない。

 

 そう思った矢先に稲妻の一つが死角から飛来して来るのを感じたが、回避させようとするのはおろか、声をかける暇もなかった。

 

 このまま命中してしまうのかと、最悪俺が盾になることも考えたところに俺達の周囲を虹色に輝く水の波紋のようなものが稲妻を防いだ。

 

 そのまま守られること数秒……稲妻を目にしてチカチカした視界が戻ると、俺達の頭上に地上にいたウルトラマン達が両手を掲げて守ってくれていた。

 

 しかもその姿も変わっており、ティガは全身が紫一色へと染まった空中戦に優れたスカイタイプに。ネクサスは濃淡分かれた青いジュネッスブルーへと変化していた。

 

 ウルトラマン達が守ってくれたんだと一安心するが、ティガとネクサスは互いを見合って頷き、すぐにダークルシフェルの方へと飛んでいく。

 

 奴もその気配を感じたのか、僅かに首を動かしてからゆっくりと身体を二人の方へ向ける。

 

 ティガとネクサスがそれぞれ上昇したスピードを持って上下左右と縦横無尽に飛び回りながら拳や蹴りを叩き込むが、スピードに特化した反面パワーが下がってしまう形態では劇的な変化を遂げたあの悪魔にロクなダメージは与えられなかった。

 

 ダークルシフェルがゆらり、と身体を動かしたかと思うと何かの激突音が二つの方向から同時に聞こえ、目を向けるとティガとネクサスがいつの間にか地上へ叩き落とされ、その足元には大きなクレーターが出来上がっていた。

 

 慌てて視線を戻すが、ダークルシフェルはあの場所から特に動いた様子はなかった。そして再び奴が手を俺達へ向けると奴の掌から一瞬妙な揺らぎが見えた。

 

「ッ!? 右へ回避ぃ!」

 

 慌てて叫んでアルフォネア教授も懸命に動いてくれたが、初動が遅れてしまったのか目に見えない衝撃波が左翼に掠って大きくバランスを崩してしまった。

 

 その所為でただでさえ空中で安定しない中をずっと身体を強張らせて耐えていたルミアとシスティが激しい揺れで遂に空中へと放られてしまった。

 

「白猫っ! ルミアっ!」

 

「──の……『龍尾』ッ!」

 

 俺は咄嗟に[テイル・シュトローム]で二人を確保しようとするが、まだアルフォネア教授が態勢を整えられないために二人まで水の尾が届かない。

 

 俺は咄嗟にアルフォネア教授の背から()()()()()、どうにか二人を確保することに成功した。

 

「ふぅ……危なかった。二人共、無事か?」

 

「え……う、うん。無事は無事なんだけど……」

 

 ルミアの俺を見る目が驚愕に満ちていた。この場において今更なんでそんな表情をするのか一瞬理解できなかった。

 

「あんた……空、飛んでない?」

 

「……え?」

 

 システィに言われて自分の足元を見てみると、その下は荒れた地上だった。そう、足元に何もなかった。そこまで理解すると自分の身体が妙な浮遊感に包まれているのが今更ながらにわかった。

 

「お、お前……いつの間にそんな高度な飛行魔術なんて使えたのか?」

 

 少し遅れてようやく態勢を立て直したアルフォネア教授の背でグレン先生が呆然と宙に浮かぶ俺を見ながら呟いた。

 

「イヤ、多分……これもベリアルの力が身体に浸透した影響だと……」

 

 今のところそれ以外に心当たりなどない。まあ、俺一人だけでも飛べるなら若干であれどアルフォネア教授の負担も軽くなるだろう。俺はそう思いながら二人をアルフォネア教授の背中へと戻した。

 

「……で、どうすんだ? お前の憧れっつうウルトラマンも、今絶賛ピンチみたいだが……あの悪魔みてえなのどうにかできるアイディアなんかあるか?」

 

 グレン先生が不安げに俺を見ながら聞いてくるが、それは俺だって聞きたいことだった。

 

 俺が何も言えないのを見てアイディアなどないと悟ったのか、視線を外して溜息を吐いた。

 

「くそが……魔将星と命懸けの戦いしてザギとかなんかにも勝ったと思えばわけわからん変態仮面の所為で変なデカブツと戦うハメになったり……()()()()もリョウの事ばかりじゃなくてもっと他に情報寄越してから消えろってんだ!」

 

 本当にピンチの連続でグレン先生じゃなくても愚痴りたくなって──ん?

 

「……先生、今のどういう意味ですか?」

 

「あん?」

 

「こんな時に聞くのもなんですが、そもそも俺の中にいるベリアルのこと……誰から聞いたんですか?」

 

 今のグレン先生の口ぶり……まるで誰かの口から俺のことを知ったかのような感じだ。そもそもまだ語ったことのないベリアルの事を何処で?

 

「あ、あぁ……お前が一時的に心臓止まってた時、どっかから変な声が聞こえてさ。そん時にお前がベリアルの力を宿しただ、いろんなもん引き寄せるだ、色々な。一方的にお前の事話したと思ったらすぐ交信?をぶち切りやがって……」

 

「…………」

 

 それはつまり……()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、これだけ側から見ても劣勢だとわかる上に人間の手でどうにかできる領域をとっくに超えているのに未だに来ないのはいくらなんでもおかしい。

 

 そう思いながら上空を見上げ、全神経を集中させるとうっすらと……毒々しい光を放つ魔法陣のようなものが見えてきた。

 

「……あれか!」

 

「おわ!? 一体何だっ!?」

 

「まだこの状況ひっくり返せるかもってことですよ!」

 

 俺の言葉にグレン先生達の顔が明るくなってきた気がした。

 

「……で、これからどうすればいい?」

 

 どんな手段がとは聞かず、グレン先生は自分達の役割を尋ねてくる。他のみんなも余計な口を挟むことなく、質問をグレン先生に一任していた。

 

「……これから一人でここより更に上空に行きます。でも、アイツがタダで見過ごすとも思えません。だから……」

 

「要するに囮が必要ってわけだな。いけるか、セリカ?」

 

『流石にあんな存在に私のブレスは虫に刺された程度しか効果はないだろうが、引き付けるだけならどうにか、だな』

 

 俺が言いづらそうにしたセリフを先回りしてグレン先生はあっさりとその役割を引き受けようとしていた。

 

「ちょ、待って……ハッキリ言ってあんなの相手に囮って、死にに行くようなもんでしょう。俺がやるならともかく、それを先生達に任せようってのに──」

 

「だが、それしかねえんだろ? 少しでもこの戦いに勝つ確率が上がるならそれに賭けるしかねえだろ」

 

 いつもの軽口も引っ込め、ただ真剣な顔で俺の案を呑むと言う。みんなも口は出さないが同じ意見だと既にアルフォネア教授から二度と放られまいといつの間にかリィエルが錬金術で構成した鎖を身体に巻き付けて待機していた。

 

「……で、だ。肝心な所を最後に回したが、この状況をひっくり返す手段はあるんだな?」

 

 最後の質問としてその疑問を投げかけてきて、俺はもうみんなを信じて進むと決意を改めて右手を差し出しながら言う。

 

「ええ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()……てところですね」

 

 右手の甲にある水晶を撫でながら言うと、グレン先生はそうかと笑って頷いた。

 

「じゃあ、また一丁頼むぜ……人外(ウルトラマン)ッ!」

 

 妙な響きの言葉を残してアルフォネア教授に奴の元へ飛ぶことを促し、瞬く間に離れていった。

 

 俺も……言い出しっぺの癖に失敗するだとか真面目に笑えないから腹を決めてかからなきゃな。自分の両頬をパシンと叩いて自身を鼓舞すると魔法陣へ向けて上昇を始める。

 

 昇る間に俺は右手の甲の水晶に手を触れると、そこから二つの光を放ちながら俺の両手へと収まる。

 

 そこにあるのは同じデザインだが、群青と紫紺の二色の曲刀だった。こんな時に気の利いたようなネーミングなんて期待できないので群青の方を『水精(すいせい)』、紫紺の方を『晦冥(かいめい)』と名付ける。

 

 俺は二振りの曲刀を構えながら上昇すると何処からか白と黒の混じった稲妻が飛来してきた。咄嗟に身を翻して回避できたが、当たれば今の俺でもあっという間に消滅しかねないな。

 

「……まあ、魔法陣があった時点でお前が関わってないわけがないよな」

 

『フフフフ……そりゃあね。こういう困難続きがあるから人は醜くも美しくいられるんだ。予定に入れてないキャストの飛び入りはごめん被りたいんだよ』

 

 稲妻を撃ち放ったのはやはりというか、トレギアだった。何を企んでるのか全部は知り得ないが、自身の計画を邪魔されようならそりゃあ邪魔もしに現れるよな。

 

 だが、こっちもお前の思い通りにことを運ばせたくはないんだよ。

 

「悪いけど今はお前の相手をしてる場合じゃないんだ」

 

 そう言いながら俺は上昇するスピードを上げる。

 

『ツレないねぇ』

 

 トレギアもため息混じりに指先からエネルギー体を形成して弾丸のように俺へと撃ち放つ。

 

 あいつからすれば挨拶がわり程度のつもりだろうが、俺からすれば回避にせよ防御するにしても全力で行かなければならない。だが、あの弾丸のスピードから逃れるのは無理……ならもううまく流すしかない。

 

 俺は二刀を交差して構え、エネルギー弾が当たった瞬間に身を捻って軌道を逸らした。

 

「相手をしてる場合じゃないっつってんだろうが!」

 

 そう言い残して俺は更に上昇していく。もちろん俺の飛行程度……トレギアからすれば人間と蟻の歩みほどの差があると理解しているが、とにかくまずは魔法陣の元へ辿り着けなければ話にもならない。

 

 それでもトレギアはどうせ振り切れないと高を括ってるからか、余裕の笑みを浮かべながら徐々に距離を詰めていくが、そこに文字通りというか横槍が入った。

 

『テヤッ!』

 

 ティガが猛スピードでトレギアに身体をぶつけ、接近を妨害していた。だが、トレギアも若干の苛立ちを見せながらも左手から白黒の入り混じった閃光を浴びて距離を離されてしまう。

 

 同時にティガのカラータイマーが赤く点滅を始め、もはや一刻の猶予もなかった。

 

 俺は更に上昇して魔法陣を正面に捉えた。

 

『おやおや……脚本家を無視とは、関心しないね』

 

 尚も掴みかかるティガを殴り飛ばしながら俺へ向けて閃光を撃ち放ってきた。()()()()()()()

 

 俺は右手に持っていた『水精』を投げ放ち、変わり身のように左手の『晦冥』を放って離脱する。

 

「ティガッ! 剣に光弾をっ!」

 

 俺の叫びにティガは頷いて腕を水平に伸ばし、頭上で収束してから居合のようにエネルギーを矢のように撃ち放った。

 

 その攻撃はトレギアの閃光と共に『晦冥』に命中し、先に放った『水精』へ向けて飛んでいく。そして二つの剣が触れ合い、激しい光を纏いながら魔法陣へと穿たれていく。

 

 これこそが俺の作戦だった。今の俺でも魔法陣に辿り着いたところで何をしてもトレギアの作ったアレを壊すことは不可能だっただろう。

 

 だからこそあの剣の特性を利用することにした。あの剣……『晦冥』はエネルギーを吸収して内部に蓄えるのが特徴だ。量に限りはあるが、遠距離を得意とする相手ならそれなりに優位に立てるくらいのものを誇っている。

 

 対して『水精』は『晦冥』とは逆の、エネルギーを放出する……ただそれだけだ。だが、この二つが並ぶことによって『晦冥』の吸収したエネルギーがそのまま『水精』へと流れていき、相手の力をそのまま剣に乗せてぶつけることができる。

 

 増してや、咄嗟とはいえティガに頼んでトレギアの閃光に更にエネルギーを上乗せしてもらった。

 

 ──バキャアァァァァァァァァッ!──

 

 ガラスの砕け散るような音が天空に鳴り響き、頭上では魔法陣の光が粒子となって飛び散るのが見えた。

 

 これでこの窮地を脱させてくれる助っ人が来れる筈だ……。

 

『……ぁ〜あ……やってくれたね。本当に……お前達の存在というのはつくづく私を苛立たせるなぁ』

 

 トレギアが溜め息混じりに呟くと同時に俺に向けて黒白の閃光を撃ち放った。今の俺にはもう武器がないので身一つで受け止めなければならないが、あんな攻撃を受けようものなら俺は消滅してしまう。

 

 かといって、もう回避も間に合わないので最早これまでかと思った。

 

 だが、攻撃が当たる寸前……上空から何かが割って入り、俺の目の前で回転して盾となった。

 

 回転が緩んでその輪郭が見えるようになると、それは二つのS字に湾曲した刃だった。俺を守ったと思えば勝手に再度回転をして上空へと消えていく。

 

『ハッ! 自分の思い通りにならないからって八つ当たりか? 以前と違って随分短気になったか、トレギア!』

 

 刃の消えた方向から声が響いてきたかと思ったらエメラルド色の光球が飛来して轟音を響かせて大地へと降り立った。

 

 光球が粒子となって消え、その中から巨大な影が仁王立ちして現れた。

 

 赤と青の身体を持ち、頭部には二つの刃がトサカのように備え付けられ、鎧のような胸部から肩にかかったプロテクターの曲がりがその細身ながら屈強なラインを強調して見せていた。

 

『へへっ……あの結界に邪魔されたが、結果的にいいところで来れたな』

 

 左手の親指で顎を払うような仕草をしながらゆったりとトレギアやダークルシフェルを見やりながら不敵に笑う。

 

『やっぱ……主役は遅れて登場するもんだよな!』

 

 自信満々な口調で大見えを切り、もう一人の巨人……ウルトラマンゼロが降り立ってくれた。

 

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