ロクでもない魔術に光あれ 作:やのくちひろし
紅に染まる空の下、あちこちに瓦解した建物と陥没した地面……その中で巨大な影がそれぞれ距離こそ空いているが、いつ衝突してもおかしくないほどの張り詰めた空気がこの街の重力を増してる気がした。
『ハハッ……こんな状況で言うのもなんだが、主役登場に相応しい舞台だな』
その中の一人……ウルトラマンゼロが左腕をブンブンと振り回しながら正面にいる敵──トレギアを視界に収めながら得意気に言う。
『フフフ……やれやれ、流石はウルトラマンゼロ。おいしいところを横取りするのが得意なだけあるね』
『ハッ、テメェこそ……人の努力に水を差すのが得意なだけあるぜ』
お互いに挑発めいた言葉を投げながらも相手の些細な動作も見逃さないという鋭い眼で観察していた。
一瞬でも動き方を誤ればそこから一気に不利な立場にまで持っていかれるくらい油断がならないのはお互い理解していた。
そして、俺達も……これだけ巨大な存在が周囲にいれば逃げるための行動も安易に起こせなくなる。下手なことをすれば却ってウルトラマン達の足手纏いになる。
ゼロが降り立ってくれたとはいえ、トレギアの邪魔をある程度抑止しただけで二人のウルトラマンをピンチに陥れてるダークルシフェルに対する手はいまだに思いつかない。
ひっくり返すなんて啖呵を切っておきながらまだこの窮地を脱する方法がまだ整わない。
だが、向こうはこっちの事情など知ったことかと言わんばかりに戦いの火蓋を切って落とした。
ダークルシフェルが翼のような部分から大量の光弾をミサイルのように発射して手当たり次第に地上へと落とした。その中の人的被害が出そうなものだけをティガとネクサスが同じく光弾で撃ち落とす。
人のいないところに落ちた光弾で舞い上がった土煙に紛れてゼロとトレギアが動き出し、格闘戦が始まった。
ゼロの素早く正確で鋭い拳打や蹴りをトレギアは舐めるように受け流し、反撃するかと思えば目の前で爪をチラつかせたり足払いを仕掛けたりと挑発するような戦い方だった。
ティガとネクサスは再び空中へ躍り出てダークルシフェルに光弾を浴びせるが、依然としてダメージは通らず、目にも見えない高速打撃で吹き飛ばされてまた攻撃を仕掛け、反撃を受けるという流れを繰り返していた。
「おい、リョウ……あのウルトラマンが来たはいいが、未だにピンチ真っ只中なんだが、こっからどうすんだ?」
グレン先生が緊張した顔つきで問うてきた。いくら援軍が来てくれたと言っても状況はほとんど変わってないんだ。そりゃあ疑念も沸くだろう。
「……すみませんが、ゼロが来てるの自体は先生の話で予想してましたが、俺の本来の狙いはまだ完遂してないんです」
「は? え、じゃあ何のためにあんな必死で法陣ぶっ壊して……」
「理由としては俺に気づいてくれるかどうか……これはかなりの賭けですけどね」
俺の言葉にグレン先生達が訳がわからないと言った顔をしていた。
まあ、いきなり本命が賭けだなんて言われたらそうなるだろうけど、正直トレギアがいる時点でゼロ一人が駆けつけたとしても事態が好転する保証なんてなかった。
ゼロはとんでもなく強いのは知ってるけど、トレギアは余りにも得体が知れない。だから俺という存在がどれだけ響くかが鍵だ。
だが、事態は俺の希望を壊そうと次々と大波を立てて寄ってくる。
『フフフ……やはり君はつまらないも厄介な奴だ、問題児君』
『テメェが言うな。さっさとケリつけて向こうの援軍行かなきゃいけねえからな。すぐに終わらせてやるぜ』
ゼロが頭部に備わった刃、『ゼロスラッガー』を両手に握り、それを向かい合わせて巨大な弓形の大剣、『ゼロツインソード』へと形態を変えて切りかかる。
『おっとっと……悪いが、残業はしない主義なんだよ私は。あまりここで力を無駄遣いするわけにも行かないんでね。ここからは派遣達に任せるとするよ』
そう言いながらトレギアは指をパチン、と鳴らすと空中にいたダークルシフェルが周囲の空気を大きく振るわせるほどの高周波を発生させた。
余りの音の高さとデカさに思わず落下しそうになったが、どうにか留まることはできた。
だが、一瞬閉じた眼を開いたら嫌な光景が広がっていた。俺達の眼下に何体ものスペースビーストが突如姿を現していた。
ノスフェルや、バグバズン、グランテラ、ガルベロス、メガフラシ、ゴルゴレム、イズマエルなど……巨大なスペースビーストの軍勢が咆哮を上げて佇んでいた。
『うむ……生まれていたのはこれくらいか。まあ、人間達を潰すには十分すぎるかな』
『テメェ……相変わらずコソコソと色んなもん潜ませやがって』
『私だけで仕事は回らないからね。それに別件もあるしね……では、これにて』
トレギアは再び指を鳴らすと背後に禍々しい魔法陣を出現させ、それを潜り抜けてこの場から消えていった。
『チッ! また厄介なもん残しやがって……っ!』
ゼロはトレギアの行方を追おうとせず、ゼロツインソードを構えながら周囲のスペースビーストを警戒する。
トレギアはいなくなったものの、それ以上に数を増やされて状況は更に悪化されてしまった。
このままじゃ俺の賭けも間に合わなくなってしまう。
「リョウ……お前が何を狙ってるかは知らねえが、あのピエロみてえな奴のおかげで状況は最悪だぞ! もうのんびりあの巨人達に任せてる場合でもねえ、どうする!?」
グレン先生の言う通り、ウルトラマン達に任せてばかりじゃみんなを守ることも難しい。
せめてティガとネクサスの不足してるエネルギーを補えればいいんだが……俺の力を合わせても魔術ではスペースビーストにダメージを負わせることも出来ない。ウルトラマンをサポートしようにもそれが叶う手段も……いや?
「……先生、ちょっと聞きたいんですが」
「あん?」
俺はグレン先生にある事を聞いた。答え次第では二人のウルトラマンに力を与えられるかも知れない。
グレン先生は思案顔になって脳をフル回転させて俺の質問内容を考えた。
「……多分、出来なくはねえ。いくらセリカでも一人でそんな大それたことは無理だったかも知れねえが、今はルミアがいる。単独では無理な演算と調節もあの力があれば可能になるはずだ。だが、状況が状況だ……ただでさえそんな繊細な事をするためにとんでもないマナの量と演算力が必要だってのに、それを行うべき対象が動いてばっかになる以上当てるのも無理に近いぞ」
「動きに関しては俺がなんとかします。ダメージを与えるのは難しくても、注意を引いて動きを阻害するだけなら……空中を動けてかつ機動力のある俺が一番適任です。その間に先生達は準備を、そして最後の仕上げで俺も加わります」
「……これで、今度こそどうにかなるんだよな?」
「…………」
その言葉には簡単に頷けなかった。これだけみんなが死力を尽くしても大した進展がなかった。その上こっからも何度命を掛ける行為を続ければいいかも予想ができない。
だが、それでもやるしかない……。
「先生……このやり方がダメだったとしても、それが一々立ち止まったり、諦めたりしていい理由にはならない。例え死んでも、地獄から何度だって舞い戻って戦ってやるつもりですよ俺は」
「……縁起でもねえ事言うなって言っておきてえが、お前が言うと全く冗談に聞こえねえのがな。なら……こっちも何度も付き合って終わる度に説教ぶちかましてやるよ、ゲンコツ付きでな!」
そう言いながらグレン先生は拳を振り上げて俺の胸の前まで持ってきた。俺は自分の拳で軽く小突き合わせて背を向ける。
「まだまだゆっくりするには遠いけど……俺達の明日を取り戻すまで、止まれるかぁ!」
俺は一言叫ぶと同時に空中を駆け出し、ルシフェルの方へと飛ぶ。
途中振り返ればみんなも俺の方へ何度か視線を向けるが、自分達のすべきことを必死でやり切ろうとしていた。
申し訳ない気持ちだってあるし、これからもきっとそんな事が何度もあるだろう。だが、それ以上に自分を信じてそこまでしてくれるという信頼が嬉しい。そして、何としても応えたいという気になる。
ウルトラマンが闘い続けているのも、これをずっと感じていたからという事だろうかと背中に感じるものを受けながらルシフェルへと接近する。
俺の横槍にティガとネクサスが一瞬驚いたように俺を見やるが、それに構わず俺はルシフェルへと『ヴォルテック・シュート』を顔面目掛けて浴びせる。
相手も俺に意識をむけ、ハエを叩くように片腕を俺目掛けて振り上げた。
向こうは軽く追い払うつもりでやってるのだろうが、巨人達に比べて蟻ほど小さい俺たちからすればそれだけで命を潰されかねない兵器の一撃だ。一度たりとも喰らうわけにはいかない。
俺は全力飛行でそれを躱して奴の周囲を旋回して再び攻撃を仕掛ける。
それが十秒、二十秒と……最初こそ時間稼ぎを意識していたが、二度目のちょっかいから時間なんて気にしてる余裕なんかなかった。だが、多分四、五回目の辺りでようやく準備が整ったようで。
「リョウ──ッ! いけるぞっ!」
グレン先生の声が耳に入り、俺はそっちに視線を向けて頷くと二人のウルトラマンに呼びかける。
「ティガッ! ネクサスッ! とにかく真正面からアイツ目掛けて突っ込んでくれぇ!」
俺の突然の提案に二人のウルトラマンは一瞬驚愕するが、すぐに頷いて俺の言う通りにルシフェル目掛けて本当に正面から飛びかかった。
だが、ルシフェルは最初の時と同じで目にも止まらぬ速さでティガとネクサスを地上へ叩き起こした。……俺の作戦通りに。
「ここだぁ!」
俺は右腕を思いっきり振りかぶって手に握っていた二枚のカードをウルトラマンへ投げた。
「オラァ! 文字通りの出血大サービスだ、受け取れ巨人共っ! [イクスティンクション・レイ]ッ!」
そしてグレン先生がそのカード目掛けてアルフォネア教授直伝の黒魔[イクスティンクション・レイ]を打ち込む。
これが俺が立てた、二人のウルトラマンに力を与える方法だった。ここまででまだ使用してなかったティガとネクサスのカード……あのカードに込められてるのは本人達の力。だからそれらが二人の力として還元できるのは間違いないだろう。
だが、あんな小さなカードだけでエネルギーが回復できるかどうかと言われると正直心許ないと思う。だから、グレン先生にはそこにあの魔術を攻撃ではなく、純粋なエネルギーとして降り注げるかどうかが問題だった。
グレン先生だけでは攻撃として一発使うのが精一杯だろう。だが、ルミアのあの力のおかげでマナも底上げできるし、別の使い道に回すだけの演算力も持てるだろう。それをあのカードに当てて内部の光のエネルギーを増幅させた上でウルトラマンに力を与える。
その予想は当たったのか、グレン先生の魔術を受けて眩い光を放ったカードがティガとネクサスのカラータイマーとエナジーコアに吸い込まれていき、赤く点滅していた光が最初の青色へと戻った。
作戦成功と、心の中でガッツポーズを取ったのはハッキリ言って油断だった。
「リョウ君ッ!」
ルミアの声で俺は自分目掛けて振り下ろされるルシフェルの手がようやく視界に入った。
ウルトラマンの回復に気を取られて大きな隙を生んでしまった。回避しようにも距離的にもう間に合わないと確信できる。
こうなったら受けるしかない……ついでにベリアルの影響で強化されてるだろう生命力にワンチャン賭けるしかないと思いながらこんな状況でも冷静な思考のまま目を閉じた。
「リョウ君っ!」
すると、急に至近距離からルミアの声が聞こえた。ハッと目を開けると、俺はいつの間にかルミア達の傍にいた。
「……へ?」
状況についていけなかった。テレポートなんて芸当は俺にはできないし、そもそも俺が何かしたような感覚もなければ先生達が何かした風でもない感じだ。一体何が起きたのか。
『ったく……俺の光速のスピードがなかったらお前、危なかったぜ』
『危機一髪だったな』
『なんか、どっかの誰かを思い出す無茶振りだな……』
背後から三つの声が聞こえ、振り返ってみるといつの間にかそこに新たな巨人が立っていた。
恐らく、俺を助けたんだろう膝をついた状態の細身の手裏剣を彷彿させる形のプロテクターの着いた蒼い巨人。
身体の隅から隅まで隆起した筋肉が鎧のように覆われた大半が黒い、他と比べても頭一つ抜きん出た巨体と星形のカラータイマーが特徴の巨人。
赤と銀の身体と、小ぶりだが鋭さのある側頭部から伸びた二本の角のある巨人。
『光の勇者、タイガッ!』
『力の賢者、タイタスッ!』
『風の覇者、フーマッ!』
『『『我ら、トライスクワッドッ! 星の危機を救うため、ここに参上したっ!』』』
三人の見た事ないウルトラマンが一列に並び、それぞれ右手に付いた同じデザインの手甲のようなアイテムを掲げ、見栄を切った。
「トライ……スクワッド?」
『おいおい……俺達も来てるんだって忘れてないか、お前ら』
『あと、先に僕が彼の存在を感じたから君達も気づけたんだからね』
更に上空から二つの声が聞こえ、頭上に視線を送ると空中にもう二人の巨人が浮いていた。
一人は巨大な大剣を手に持ち、その胸に輪のようなカラータイマーを青く光らせた巨人ウルトラマンオーブ。
もう一人は野獣を思わせる鋭い目つきと刺々しい赤と黒の模様が特徴のウルトラマンジード。
『よ……久しぶり、でいいか? 一応お前とは前に会ってるが』
『君が必死に宇宙へ向けて僕達を呼んでたの、聞こえてたよ』
空中から俺に向けて軽く手を上げながら声をかけてきた。思ったより多いけど、ようやく俺の応援を呼ぶ声が届いたと分かった。
『へっ……遅えんだよ、お前ら』
増援が降り立ってゼロも喜びの声を漏らした時だった。
『師匠ぉぉぉぉぉ!』
『……ん? この声……』
『師匠ぉぉぉぉ! 応援に来まし──だばぁっ!?』
更に上空から声が響き、空の彼方から胸にアルファベットのZ型のカラータイマーを灯した巨人が飛び込んできた──と言うより、落下してきたどころか地面に顔面をめり込ませて来た。
……いや、何なのコレ?
『おま……何しに来たんだ、ゼット?』
ゼロもこれには呆れてるのか、天を仰いで呟く。
『おいおい、大丈夫かゼット?』
『見事に空気ぶち壊したな……』
『大気圏外から重力の影響も考えずにブレーキもかけぬまま突っ込んだようだな……』
タイタスと名乗った巨漢が大地にめり込んだ巨人を片手で引っ張り上げるとゼットと呼ばれた巨人は首を揺らしながらどうにか立ち上がった。
『大丈夫か?』
『あ、はい……すんません。ちょっと急ぎすぎてブレーキかける暇もありませんでございました』
ゼットが変な言葉遣いで引っ張り出したタイタスに礼を述べた。
『おい、ゼット! いきなり出てきたと思ったら恥ずかしい姿晒してんじゃねえぞ!』
『い、いや師匠っ! これはベリアロクが急にこっちから何かを感じてるって俺を引っ張ってきて──って、アレ!? またいつの間にか勝手にいなくなってるし!』
ゼットが慌てて何かを探してるように左右を見渡しているが、何がどうなってるのやら。
『おい……そこのお前』
「ん……今度はだ──って、エエェェェェェェェェェッ!?」
また声をかけられて振り返ると、俺の目の前にベリアル──ではなく、その顔の着いた奇妙な剣が浮いていた。
『なんだ、その顔は? 失礼すぎないか』
「いや、だって……」
『チッ! それより、忘れ物だ』
俺が次々来る驚きの展開に狼狽していると、ベリアルの顔の着いた剣が口を開けてそこからさっき俺が魔法陣を破壊するために投げ飛ばした二振りの剣が飛び出して慌ててそれを掴んだ。
『面白そうな気配を感じたから来てみたら、随分切りごたえのありそうな顔ぶれがいるしな。ついでに宇宙に漂ってたそれを回収してやったぜ』
「あ、えっと……ありがとう?」
『……フン』
呆然としながらどうにか絞り出して礼を言うと、ベリアルっぽい剣がその場から瞬間移動するとその身体(?)を巨大化させてゼットの手に収まった。
『おわっ!? ちょ、また勝手にどっか行ったと思ったら!』
『フン……少し野暮用を済ませただけだ。それより、さっさと斬るぞ!』
『え……ゼット、それって……』
『どう見てもベリアルの……』
『二人共、気になるのはわかるが……敵方もそろそろ仕掛けてくるぞ』
『前にも増して、相当のトラブルに巻き込まれてるな』
『父さんの気配を感じて飛んできたけど……先にこっちを何とかしないとね。ジーッとしても、ドーにもならないってね』
『ふう……。っしゃぁ、お前ら……気合い入れて行くぞっ!』
『『『『『『おうっ!』』』』』』
ゼロの掛け声でウルトラマンが駆け出し、あちこちに散らばったスペースビーストへと飛び込んでいき、ティガとネクサスも再びルシフェルへと向かって飛びだった。
『ハァッ!』
ジードは右手に二又の刃が付いた武器、ジードクローを構えてガルベロスと対峙する。
ガルベロスの鋭利な爪をジードクローで捌きながら野生的な動きで蹴りを打ち込んでダメージを蓄積させていく。
その近辺ではオーブが聖剣オーブカリバーを構えてメガフラシの稲妻攻撃を防ぎ、聖剣を振るって巨大な竜巻を浴びせていく。
タイガと呼ばれた二本角のウルトラマンがノスフェルの噛みつきを前歯を掴む事で阻止し、体勢を崩させて連続パンチを浴びせていく。
その背後ではタイタスと呼ばれた巨漢がグランテナの突進を直立姿勢のまま耐え、尻尾から放たれる光弾もダブルバイセップス、サイドチェスト、バックラットスプレッドの順で防いだ。……一々ボディビルポーズを取る部分はツッコみたくなるが。
そしてフーマという青いウルトラマンがラフレイアの花粉攻撃をまさに眼にも留まらないスピードで躱してかつ、光の手裏剣攻撃を雨を浴びせていく。
ゼットと呼ばれた巨人がゴルゴレムへと掴みかかり、拳を叩きつけるが結晶部分がかなりい硬いのか、逆に拳がダメージを受けてる状態だ。
ゼロはイズマエルへと向かい、奴の身体のあらゆる部分に浮き出ている他のビーストの攻撃能力を躱しながらゼロスラッガーによる斬撃を浴びせていく。
ティガとネクサスは回復したからか先程よりも速いスピードで空中を飛び回りながら光弾をルシフェルへ当ててダメージを負わせていく。
怪獣やウルトラマンが単一でいるだけでもとんでもないことなのに、それがこうも数が揃うとまさに圧倒的というか、映画の怪獣総進撃っぽく見えてしまう。
それだけ今目に見えてる光景は現実離れしているのだから。
そう考えてる間に戦況も刹那の間にどんどん変化を遂げてきている。
ジードが相手取ってるガルベロスが三つの口から稲妻のような光波エネルギーを放って反撃をし、ジードは攻撃によって発生した爆炎の中で別の姿へと変化する。
『変えるぜ、運命っ!』 [ロイヤルメガマスター]
金色のマントをはためかせて煌びやかな装飾のなされた杖を構えながら飛び出し、それを反転させて刃の部分を振るってガルベロスへ斬りかかる。
オーブも空中でメガフラシの閃光を浴びながらその身体を赤く輝かせて姿を変える。
『闇を抱いて、光となるっ!』 [サンダー・ブレスター]
先とは打って変わって筋骨隆々の姿となってメガフラシの閃光をものともせずに突っ込んでいき、その剛腕から放たれる強烈な拳を浴びせ、メガフラシを地上へ叩き落とす。
その近辺でタイガ、タイタス、フーマが三人で並ぶと互いを見合って右手に着けられた共通のアイテムを掲げる。
『ここは一気にカタを着けるぞっ!』
『うむ!』
『合点でい!』
三人を中心に赤、黄色、青の光が渦巻くと共に内側から虹色の炎が爆ぜた。
『『『ウルトラマンタイガ・トライストリウムッ!』』』
そこから炎を模した剣を両手に構えた炎のように真っ赤な身体と胸に更に鋭くなった空色のプロテクター、そして身体全体が虹色のオーラに包まれたタイガが佇んでいた。
更に別の場所ではゴルゴレムが背中にある結晶を輝かせてその身体を消失させる。あのビーストは結晶を発光させることで別の位相へ跳躍し、現実空間から姿を消すことができ、こちらから容易に干渉することが難しくなる。
だが、対峙していたゼットは戸惑うことなく、その身体を紫色に輝かせる。
『変幻自在、神秘の光っ!』 [ULTRAMAN Z! GANMA FUTURE!]
赤と紫、そしてティガのような金色のラインが胸と頭を走った姿へと変わり、魔法陣のようなものを出現させ、その中へダイブする。
しばらくすると何もないはずの空間にスパークが走り、そこからガラスが割れたように空間が弾け、ゴルゴレムが地上へ倒れ込んだ。
『ベーダズマァァァァッシュ!』 [ULTRAMAN Z! BETA SMASH!]
その直後、タイタス並みに筋骨隆々の赤い通り魔──ではなく、赤いマスクを被ったプロレスラーのような姿をしたゼットが両手をハンマーのように構え、ゴルゴレムの背中の結晶を強引に砕いた。
『ッシャアアァァァァ! ラアッ! オアァ!』
自分の力を誇示するように両手を胸に叩きつけながら声を上げ、更に身体を空色に発光させる。
『宇宙拳法、秘伝の神業っ!』 [ULTRAMAN Z! ALPHA EDGE!]
ゼロのようなスラッガーを頭部に携えた姿になると、両手に船の錨のような形の刃の付いた槍を構える。どことなく何かと似てる気はするが……。
『ストロングコロナ、ゼロッ!』
ゼロはその身を赤く輝かせ、頭部のスラッガーが金色に染まり、身体も赤を基調としたものに変えて荒々しく拳のラッシュをイズマエルに浴びせる。
あちこちに飛び出してる顔の部分を殴られたからか、イズマエルがフラフラと後退しながらも様々な攻撃をゼロへと集中して放つ。
『ガルネイト、バスターッ!』
対してゼロは右腕に超高温のエネルギーを集中して腰あたりまで引き、一気に放射した。
二つの攻撃がぶつかって爆発が起きると同時に青い光が高速でイズマエルの頭上へと躍り出る。
『ルナミラクルゼロ』
先程まで真っ赤な身体をしたゼロが一転してその身を青く染め、これまでとは打って変わって冷静な構えで右腕を眼前に持っていく。
『ミラクルゼロスラッガー!』
ゼロのスラッガーから同じ形をした光の刃が八つに分裂してイズマエルの周囲を飛び回り、その身体を切りつけていく。
『ウルティメイトゼロッ!』
攻撃を加えてゼロは更に姿を変え、翼を模したような形の鎧を身に纏い、右腕に複数の青いクリスタルの埋め込まれた剣を構える。
そして上空でティガとネクサスがルシフェルと速く、壮絶な空中戦を続けていた。
「……うっし! こっちも最後の仕上げと行きますか!」
「「「……え?」」」
両頬を叩いて気合いを入れるとルミアとシスティ、グレン先生が俺を見た。
「お前……あんだけ無茶してまだ何かする気か?」
俺に対して最早気遣うという考えは無くなったのか、呆れる様な目で俺を見る。
ルミアやシスティもここまでくると感覚が変化してしまうのか、片や若干怒り気味。片やグレン先生と同じく呆れで。
「今度こそ正真正銘最後ですよ。いくら集まったとしてもあの集団──特に、今空中戦してる存在が一番厄介なんですから。他はウルトラマン達に任せればいいにしてもあっちは流石に援護なしに任せるのはキツいと思うんで」
ウルトラマン達を信じてないわけじゃない。俺が直接見たわけじゃないが、あらゆる世界で様々な困難を乗り越えてきた戦士達だ。だが、それで何もせず傍観するままでいいとも思っていない。
あんな巨大な存在に俺達で出来ることなどさっきまで相当な無茶をしてようやく他のウルトラマンを呼ぶくらいだが、それでもまだやれることはある。というより、何かをせずにはいられなかった。
「つうわけで……最後の一手を打つために、ちょっと頼まれ事受けてくれませんか?」
俺がグレン先生達とは別の方向へ顔を向けて呼びかけると、さっきまで誰もいなかったはずの場所に第三者の姿が現れた。
背中に蝶のような羽を生やし、銀髪の少女……顔はルミアにそっくりだ。確か、以前タウムの天文神殿で会ったナムルスだったっけ。
『私の知ってることと大きく外れてるところにも驚きだけど、あっさりと私にコンタクトを取れるあんたの存在も大概ね……。で、私を呼び出しておいて何をさせるわけ?』
ナムルスが頭が痛いと言わんばかりに眉間を指で抑え、俺に問いかける。
「俺の伝言を学院にいるみんなに伝えてほしい……それだけです」
『それだけ? 私は伝言板でも伝書鳩でもないのだけど……』
「あの、ナムルスさん……お願いします。お礼はあとできちんとしますので、今はみんなのためにお願いします」
「なんでかは知んねえが、どうせお前今回もすることなんてねえだろうし、伝言くらい引き受けてくれよ。それで一度コイツを見捨てたことはチャラにしてやっから」
『この……っ! 柄にもないことをしてたのを知りもしないで…………はぁ、わかったわよ。で、何を伝えて欲しいの?』
ルミアとグレン先生も説得に加わってようやくナムルスが引き受けてくれた。
「言うことは一つだけ……俺が合図をしたらある魔術を空中に放ってほしい。それだけです」
「何を打たせるつもりだ?」
「それは……」
俺がどの魔術を使って欲しいのかを言うとみんな怪訝な顔を浮かべた。
「いや、ソレ……今更使う意味があるのか?」
「その……言っちゃあなんだけど、アレに通じるとはとても……」
「流石に街の人全員が使えるとしても……」
「それより私が斬りかかった方が強い」
「うん、お前が言うと本当にそう思えるのが怖いな……」
「別にアイツに当てる目的じゃないんです。あの魔術の特徴を考えるとそれを使うことそのものが重要って感じですね」
あの魔術なら他と違って俺の力がウルトラマン由来だからとか関係なしに手助けができる足掛かりになる。
「とにかく、みんなにはそう伝えてください」
『……えぇ、わかったわよ。それで彼女やグレンが助かるならね。今回は戻ってきたとはいえ、あなたを死なせちゃったのもあるからついでにルミア達も助けるくらいは手伝ってあげるから感謝なさい』
「お前ってさ、実はツンデ──あっぶな!?」
グレン先生が余計なことを言いかけてすぐさまナムルスが魔術をぶっ放して黙らせ、これ以上何も話さない──と言うより、聞きたくないという感じで消えた。
「さて、そんなわけなのでまた無茶させてしまいますが、お礼とお叱りはもう少し後でいいですかね?」
『はぁ……まあこんな状況だから今は見逃してやるが、終わったらたっぷり礼はもらうからな』
「わかってます。俺からもですが、グレン先生を被写体にしたとあるアプリによる合成機能使ってグレン先生のあんな格好やこんな格好をした写真でもプレゼントします」
『ならばよし』
「ちょっと待て! 言ってることはよくわからんが、俺がなんかの取引材料に使われてるのだけはわかった! 何でコイツの礼で俺が贄に出されんだよ!」
『ほら、くだらない言い合いしないでさっさと乗りな。私の身体ももう余裕ないんだから』
「そうですよ。いよいよ大詰めになるんですから余分な会話は今は控えましょう」
「納得いかねえ!」
そんなちょっとした冗談を交えながら再びドラゴンになったアルフォネア教授に乗って(俺はもう飛べるので除外するが)飛翔する。
相変わらず人間視点では光の線にしか見えないほどの高速戦を繰り広げてる中を戦闘による余波を受けない程度の距離からウルトラマン達に呼びかける。
「ティガ! ネクサス! それとウルトラマンのみんな! 俺達が手を出していい領域なのか……手を出して事態が好転するかって自信は正直ない! けど! 俺や、みんなに希望を見せてくれたみんなに応えたい! だから一回だけ! 俺達にも明日への一歩を歩ませてほしい! 俺達にも、戦わせて欲しい!」
俺の力の限りの叫びに数秒の空白が開いて俺の声にウルトラマン達が揃って返答する。
『『『『『『『『『ああっ!』』』』』』』』
その声を聞いたと同時に俺は空中にいるティガとネクサスに呼びかける。
「ティガはみんなのところに余波が行かないように! ネクサスは俺の言う通りにアイツを誘導してくれ!」
『ジュア!』
『シェア!』
俺の言葉に頷いてティガは一旦離れて学院のある方向へ移動して静止し、ネクサスは少しだけ動きを止めて俺の指示を待つ。
「まずは左へ意識を向けるんだ!」
『シェアッ!』
ネクサスは俺の言う通り、左へ移動しながらパーティクル・フェザーを放つ。ルシフェルもネクサスの攻撃を平気で受けながらも追っていく。
「次は上空へ! 右! 急降下! 戻って!」
俺の指示する方向へ誘導しながらも攻撃を加え、ルシフェルの俺に対する意識が薄れる瞬間を待つ。
何秒かの誘導をしてようやく俺が指示を出してるだけと思ったのを表情を見て察した俺は最後の一手にでる。
「よし……俺のところへ!」
『シェアッ!』
高速で俺の背後にネクサスが移動し、遅れて発生した空気の流れに押されそうになるも堪えてルシフェルが追うのを待つ。
ルシフェルがネクサスを追ってこちらへ接近してき、最適な距離感を注意して見た。そして、今の俺が覆える範囲内に入る一歩手前まで来た。
「ここっ! 《氣弾》っ!」
俺は上空へ向けて黒魔[マジック・バレット]を打ち出した。それを合図に学院のある方向からも俺のいる場所へ向けて同様の魔術が撃ち放たれる。
俺がさっきナムルスに頼んだ事というのはこれだ。やってもらうことは単純……合図を出したらみんなに[マジック・バレット]を上空へ打って欲しいというものだ。
これだけじゃ作戦とはいえないし、攻撃に使うにしてもウルトラマンが攻めあぐねた相手に今更俺たちの魔術は通用しないと思われてもしょうがない方法なのだが、本当に大事なのはむしろここからだ。
「頼むぞ、『晦冥』っ!」
俺は無手の状態から両手に剣を構え、そのうちの片方を上へと掲げた。すると、空中へ放たれた[マジック・バレット]の雨が晦冥目掛けて降り注がれていく。
さっき見せたように、紫紺の剣『晦冥』はエネルギーを吸収する能力を持っている。それは飛び道具的な攻撃であれば超能力みたいなものだろうが、魔術だろうが大抵のものはこの剣で吸い取ることができる。
だが、上空へ放つ魔術を何故[マジック・バレット]に限定したかというと、それはこの魔術の特徴を思ってのことだ。
この魔術はこっちの世界の東方……地球でいう東洋の思想に基づいて伝えられてる氣という概念に近しい要素が多くはらんだ魔術だ。つまり、使い手の純粋なエネルギーをそのまま弾丸にして放つようなものだ。
下手な属性をはらんだ魔術に比べればエネルギーに還元しやすいだけでなく、ウルトラマン的な観点で見れば人の心がこもりやすいものでもある。それが狙い目だった。
「覆い尽くせぇ!」
俺は吸収したエネルギーを使って右手に力を込めると右手の甲にある宝玉がいっそう蒼く輝き、同時に見える視界の半分も青く染まり、俺を中心にして特殊なフィールドが広がっていく。
これが今の俺自身が使える固有の能力だ。俺の中にあるエネルギーを大気と混ぜることによって海中とほぼ同じ状態のフィールドを形成する能力だ。
水が水素と酸素が結合した物質だというのはみんな知っての通りだが、このフィールドと本来の水で違うのはこのフィールドはその二つの分子を繋げて密集させ、似たような環境を作り出すが本当の水のように息ができないわけではない。
空気中にある二つの原子を密集させて水中にいるような状態にするだけだ。それでも水中にいるのと同じような感覚だから大抵の陸上の生き物が閉じ込められれば動きを抑制し、逆に使い手の俺は水中で動くのが得意になったので有利に動ける。
まあ、これで覆えるのは今の俺じゃ半径20メイルが限界なので目の前のいるやつみたいな巨大な存在を覆うには足りない。だからこそコレだ。
みんなが上空へ打った[マジック・バレット]を晦冥で吸収し、そうしてブーストしたエネルギー量でその範囲と密度を一時的に高めた。
そうしてレベルアップしたフィールドにルシフェルは捕らえられ、その動きが瞬間的に著しく落ちた。向こうからすれば一時水中に飛び込んだだけだろうからこんなフィールドなど数秒もすれば抜け出すだろう。
だが、その数秒があればよかった。
「今だぁ!」
俺の叫びをきっかけに背後に感じる二つの巨大な気配が動いた。
『テヤァッ!』
『シェアッ!』
ティガとネクサスが左右に広がり、エネルギーを集中する。
ティガは両腕を水平に広げてから腕をL字に組んで必殺技のゼペリオン光線を、ネクサスは右腕に備わった手甲部分に鳥のような形をしたエネルギーを顕現させ、必殺のオーバーアローレイ・シュトロームを撃ち放つ。
俺の包んだフィールド内で二つの技を受けたルシフェルは更に上空へと飛ばされ、ティガとネクサスはそれを追ってもっと高く舞い上がる。
「いっけえええぇぇぇぇっ!」
俺が渾身の力を込めて叫ぶと同時に変化が起きた。俺の背後からまた大量の光が二人のウルトラマン目掛けて飛んでいっていた。
作戦は終わったのにと思って背後を振り返ってみれば飛んでいる光は[マジック・バレット]によるものではなく、かといってルミアの異能が作用したのもでもない……純粋な、人の心が生み出した光だというのが感覚でわかった。
ルシフェルに一矢報いたことがきっかけで人の心にまた更に光が灯り、それがウルトラマンへと向けて輝きを増したことでウルトラマンに力を与えるに足るほどのものへと高まって飛んでいる。
それらの光を背に受けて二人のウルトラマンの姿が更に変化する。
ティガはその身を黄金へと輝かせ、更に巨大な姿のグリッターティガへ。ネクサスは全身を白銀に輝かせ、その背に一対の翼のような突起を生やしたウルトラマンノアへと。
共に人々の光を受け、光そのものに非常に近しい神々しいまでの存在へと昇華した余波が地上で闘っている他のウルトラマンにも降り注がれていく。
『来た来た来たぁ! フルパワー充電だ! みんな、一気にカタをつけるぜ!』
『『『『『『はいっ!』』』』』』
ウルトラマンゼロは身に纏ったウルティメイトイージスを巨大な弓形へと変え、オーブは本来の姿であるオリジンへと戻って最大の武器であるオーブカリバーを上空に、ジードもプリミティブに戻って赤と青の混じった閃光を迸らせ、タイガ・トライストリウムは赤・青・黄の三色の炎を纏って、ゼットは両手を斜めに伸ばしてエネルギー光がZの字を描いた。
『ファイナルウルティメイトゼロッ!』
『オーブスプリームカリバーッ!』
『レッキングバーストッ!』
『トライストリウムバーストッ!』
『ゼスティウム光線っ!』
各々の光線がそれぞれ対峙していたスペースビーストへと打ち込まれ、瞬く間に爆散して倒れていく。
残るは上空に放り投げられた状態のルシフェルだけだった。
『テヤッ!』
『シュアッ!』
ティガが再び両手をL字にして先程よりも強化されたグリッターゼペリオン光線を、ノアは右手に左拳を叩きつけてノアライトニングをルシフェルに向けて撃ち放ち、身を投げられて防御体制も取れなかったルシフェルは二つの強力な光線をまともに浴びた。
『ウアアアァァァァァッ!』
数秒も浴びるとスペースビーストよりも一際大きな断末魔を上げながら爆発四散していった。
地上付近の俺達も思わず目を覆いたくなるほどの眩しい爆発をして数秒……沈黙が周囲を包む中恐る恐る目を開けると、先程まで街や空を覆っていたはずの赤い壁が消え、清々しいまでの青空が広がり、その中を金と銀の巨人が浮かんでいた。
更に何秒もすればウルトラマン達が、人々が勝ったというのをようやく認識できた。
『『『しゃああぁぁぁぁっ!』』』
それを理解した学院にいるみんなが喝采をあげ、互いに抱き合うものもいれば緊張が解けて座り込む者も、ウルトラマンへ向けて礼を叫んだり泣き崩れたり……様々な声と場面が街を包んでいた。
視線をティガとノアへと戻すと一瞬こちらを見たと思えばすぐに視線を外し、そのまま空の彼方へと何も言わずに去っていった。
出現もいきなりと思えば去り際も突然と慌ただしい気もするが、それでこそとも思う。
もう今回は色々ありすぎてと一杯一杯だなと思いながらそろそろ落ちそうだとフラつきながら学院へと飛んでいった。
戻れば一足早く戻っていただろうグレン先生達が胴上げされているのが見えた。更にルミアには何人かが謝っている姿も見えた。聞こえる会話から察するにどうやら異能者であるのが周知されて一悶着あったようだ。
だが、あの姿を見るとその辺りの心配ももうないだろう。
クラスのみんなが俺の存在に気づくと即座に駆けつけてきた。ついでに胴上げ最中のグレン先生は地面に叩きつけられたが。
みんな俺に寄ってきては戻ってきたことの喜びや心配させた事への苦言など様々だが、これを受けるたびに戻ってきたことが実感できるから多少の痛い言葉とドツキは見逃そうと思った。そう考えるとクラスのみんなをかき分けてルミアが顔を出した。
「リョウ君……やっと、終わったね」
「ん……ああ。みんなや、ウルトラマン達には感謝しかないな」
ついでに俺の中にあったベリアル──の残留思念にも。こっちに戻れるきっかけになったのは主にあの人のおかげだからな。
「みんな、私の事受け入れてくれたよ。今までみんなのために演じた聖女みたいな私じゃない……本当のルミア=ティンジェルのことを」
「……そっか」
見れば以前所々で感じた妙な違和感みたいなものがすっかり消えてる。俺が感じたのはルミアの本当の顔が隠れてしまってたからなのかもな。
「だから、これからはもう少し素直になるようにしたいんだ。すぐには戻れないかもしれないけど、これからはそうしたい」
「そう、だな。うん、それがいい」
「だから、今からでも私の素直な気持ち、言わせてもらうね」
「え……?」
ルミアが笑顔で意味深なことをいってきた。あれ、その言葉を聞くとある場面を想像しちゃうんだけど、つまり……と思ってた矢先だった。
「リョウ君、そこに正座して」
「……はい?」
予想の斜め上を通り越して何をいってるのか一瞬理解できなかった。
「いいから正座して! 止めたいのも聞かずに、何度も何度も無茶してどれだけこっちが心配したと思ってるの!?」
「え、いや……あの場合、しなきゃみんなが危なかったってか……」
「死にかけ──ううん、一度は死んじゃったのに戻ってきても命懸けの無茶ばかりして、私もその……人のことは言えないけど、リョウ君のはもっともっと無茶が過ぎたんだから少しは反省して!」
「そ、それについては同じくああしなきゃルミアが──」
「いいから正座っ!」
「ハイっ!」
あまりにもすごい迫力に従うしかなかった。下手すればベリアルより恐ろしい。みんなもルミアの迫力に押されてか徐々に遠ざかっていくのが見えた。どうやら助ける気はないらしい。一部はニヤニヤしてこっちを見てるし……みんな終わったら覚えてろ。
『お〜お〜、尻に敷かれてるなあいつ』
『それにしてもすごい迫力だな。怒ったの時の婆ちゃん並みじゃねえか?』
『ふむ……ぶつかることは多そうだが、中々いい関係に見える』
『ちなみにあの少女……接触する前に聞こえた話だと元王女様だとよ。姫を怒らせると恐いのはどの宇宙でも共通してるんだな』
『へぇ〜』
『元王女様、ねぇ?』
『二人共、何故そこで私を見る?』
『いやぁ、タイタスが以前言ってた王女様のことを思い出してさぁ』
『ネフティだっけ? その人とは少しは会ったりしてねぇか、旦那?』
『いや、だから私とネフティはそういうのではなく……』
『なんか、色々話を聞きたかったのに……入りづらいなぁ』
『ま、いいんじゃねえのか。こういうのも仲間って感じで。ところで、ジードはああいうのはないのか?』
『僕ですか? まあ、ライハやモアにお説教されることはあるけど……そういう関係みたいなのはないかな? そもそも地球でもそんなモテる方じゃないし』
『……いや、明らかにモアの方は……いや、やっぱなんでもねえ』
ウルトラマン達の方も俺を見ては何かブツブツ言い合っていた。
「うっし、あの二人はしばらく放置して俺達もさっさと帰るか!」
「いえ、先生! 休息は必要ですけど、せめて学院に通える程度には片付けないといけませんからね!」
「オッス! 復興作業なら自分もお手伝いします!」
「「「いや、誰だアンタッ!?」」」
もうしばらくこのてんやわんやな空気は続くようだ。ハハハ……どんなに騒動が起こっても最終的にはこういう空気になるのはどの宇宙でも創作でも現実でも共通みたいだな。
ルミアの説教を受けながらしみじみ思った。