どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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ああーー安心した。(スペクターが触手に巻きつかれているのを見て)
やっぱりいつもの遊戯王だった。年末落下はホーリーエンジェルの闇堕ちでしたねー。


幹部の思案

「これで大丈夫、かな」

 

 久々に引っ張り出したデッキ。スピードデュエルで使わなかったのはいくつか理由があるけど、一つはスキルとの相性が良くないから。私のスキルは墓地の機械族を蘇生させるからね。このモンスター達のほとんどは基本、フィールドを離れるとEXデッキに行くから。デュエル禁止令は解けているので誰かに調整お願いしようかな、と部屋を出る。

 

「随分と楽しそうですね、ヴァンガード」

 

「……スペクター様? どうしてここにぇ」

 

 部屋を出てすぐにスペクター様がいたと思ったら、いきなりほっぺをむにっとされて言葉がおかしくなった。

 

「何、貴方の処分が軽減されたことを伝えに来ただけです」

 

 だけ、とは? じゃあこの手は何なんでしょうか。趣味です?

 

「あの洗脳未遂からハノイではなくヴァンガードの名を求めてやって来たクズが増えましてね、その増えた分のまとめ役になってもらおうかと」

 

「? ……増え?」

 

「貴方、洗脳解除してからデッキ回収してませんでしたよね」

 

「………………」

 

 あ。

 

「忘れてた、といった顔ですね」

 

 呆れられてる。うん、こんな事されてても仕方ないわ。ミスしてばっかりだし。あれ、そうだったら処分重くならない?

 

「他人のデッキでやっと戦えるようになったクズがそっくりそのままハノイの戦力になってるんですよ、今」

 

 それって、ずっと自分が使っていたデッキから、私が作ったデッキに乗り換えた人が多くいたってことですよね。うーん、ハノイの騎士としては戦力が増えて良しだろうけど、デュエリストとしては複雑だー。

 簡単にデッキぽんぽん変える人いるっちゃいるけど、それはより強くなりたい、とかこのカードを使ってみたいとかいった理由がある。でも今回は違う。いきなりもらったデッキ、回し方もいつのまにか頭の中にあった。……普通怖くない? デッキは複製カードで構成された物、がっつり違法です。ちょっと調べたらわかるだろうに。それを使い続けることを選んだ、それがデュエリストとしていいことだろうか? エラー出ないようにしてあるとはいえ、ね。

 

「まあクズには期待していませんがね」

 

「デスヨネー」

 

 それでこそスペクター様です。私も彼らがプレイメーカーに勝てるとは思っていない。あの洗脳兵士はプレイメーカーを消耗させることを目的としていた。負けることが仕事だった。あれからカード入れ替えてデッキを調整していたら別だけど、もらったものを何の疑いもなくそのまま使い続けるデュエリストが勝てるとは思わない。

 

「そして、前回の失敗をリボルバー様が許してくださったから貴方はまだハノイの騎士にいられる。……ハノイの騎士の名に泥を塗ったこと、お忘れなきように」

 

「しょれはわかってまふフへクター様」

 

 なされるがままに頬をいじられているヴァンガード。

 

「しかし無駄に伸びる頬ですね」

 

 みょーん、と横に引っ張られる。

 

「やめてくらふぁいフへクター様」

 

 地味に痛いです。私が抵抗しないからって楽しんでますよねスペクター様。笑った、今笑いましたよね!

 

「そういえば貴方、何をするつもりだったんですか」

 

 やっと離してくれた。

 

「ちょっと誰かにデッキ調整に付き合ってもらおうかな、と」

 

「ああ、それが例のデッキですか」

 

 私がスピードデュエルとマスタールールとでデッキを使い分けていることは最近ハノイの間で知られました。具体的にいつかと言うと、アポクリフォート・キラーで遊んでいたところから広まりました。

 

「ペンデュラム……まさか使う人がいるとは。正直驚いてますよ」

 

「私も、私以外にペンデュラム使う人見たことないですから。フィールドから離れてエクストラデッキに行ったら、エクストラモンスターゾーンかリンクマーカーの先に召喚するしかないのが一番痛いですし。リンク召喚するためにペンデュラム召喚をしないといけない、ペンデュラム召喚するためにリンク召喚をしないといけない。ジレンマですね。……まあ無理にペンデュラム召喚しなくてもいいんですけどね、このデッキ」

 

 リリース素材さえ確保できればいいし、フィールド魔法で召喚権を増やせる。それに、あのモンスターを出して対処できるデュエリストは今までいなかった。皆何もできずに倒れていった。

 

「スピードデュエルで使っていたデッキはハノイの騎士になってから構築したもの。ヴァンガード、貴方の本気……期待してますよ」

 

 口の端を上げて笑うスペクター。ヴァンガードはリボルバー様が直々に引き入れたデュエリスト。金で引き入れた当初は正直期待していなかった。他の有象無象と同じく、好き勝手した後直ぐに消えるものと思っていた。その予想は良い方向に裏切られた。命令に忠実、ハノイの騎士の為に活動し、今や有象無象をまとめ上げる象徴となった。ハノイの騎士が何を目的として作られた組織なのかも知らないのに。

 彼女がハノイの騎士から離れることはないだろう。彼女は優しい。それは長所でもあり短所でもある。それに、自分がハノイの騎士を辞めた後部下がどうなるか、それが想像できないほど馬鹿でもない。

 

 ハノイの騎士になるための腕試しをする必要はない。彼女は既にハノイの騎士になくてはならない存在となった。

 ハノイの騎士はヴァンガードを信頼している。優しい貴方は、それを理解している。期待には応えなければいけない、それが当然だと心の底で思っている。

 

「ご期待に添えるよう、精一杯頑張らせていただきます」

 

 ほらね、と心の中でスペクターが思っていることにヴァンガードは気付いているのかいないのか。それでは、と言ってスペクターはその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイラは悩んでいた。このまま作戦を決行してもいいのか、もしこの作戦が成功すれば、リボルバーは大犯罪者として歴史に名を残す。あの洗脳未遂の後、ヴァンガードは言っていた。

 

「マイナスはマイナスなんですよ。他の良いことをしたからってプラスにはならない、そう見せかけているだけ。……私の失敗はずっと私が背負うものです」

 

 彼女は優しい。それなりの地位となった、ならばその地位に見合う活動をしなければならない。そう考えて洗脳ウイルスを作らせ、それを使用した。その結果、ハノイの騎士とデュエリストとの間で揺れ動き、苦悩し、自分で洗脳を解除した。罪の意識を自分だけ背負って。

 リボルバーもそうなるのだろうか。ハノイの騎士のリーダーとして、ずっと責任を背負うのだろうか。ヴァンガードはあの時苦しんでいた。あの子も苦しみ続けるのだろうか。誰にも打ち明けず、たった一人で。

 

「プレイメーカーは私が倒す」

 

 イグニスさえ手に入ればそれで終わる。これ以上彼らに背負わせる必要は無い。そう結論を出し、バイラはリンクヴレインズへと足を踏み出した。




スペクターのキャラ掴めない……アニメの情報が濃すぎる。心理フェイズ上手そうな感じ出たかな?そしてあの次回予告、あれスペクターの事では?

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