どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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AIデュエリストに名前が付きます。え、元ネタのキャラとAIデュエリストのキャラが違うって?
……知ら管。


サイバー&サイバース

「ちょうどよかった遊作、これを見てくれ」

 

「これは……プログラム、なのか?」

 

 ハッカー御用達のハッキングフォーラムにあるメッセージが届けられた。一度でもそのフォーラムにアクセスしたことがある人物全員に送られたそのメッセージは、差出人不明、内容もプログラムとは言えない記号の羅列。普通なら即消去するようなものだった。

 

「お前のリンクセンスで何かわからないかと思ってな。……その様子だと何もハノイの騎士に繋がる手掛かりは無さそうだな」

 

 何度見返しても意味の無い塊にしか見えない。

 

「あいつらがこうやってメッセージを送るとは考えづらい。ハノイの騎士と関係ない別人からの嫌がらせじゃないか?」

 

「かもなぁ……時間とらせて悪かった。休んでてくれ」

 

「いいや、休んでいる暇はない」

 

 草薙さんの隣の席に座って作業を始める。

 

「ハノイの騎士はファウストが倒れたのを境に姿を消した。ヴァンガードも何処かへと身を潜めている。……そして、リボルバーも。ハノイの騎士はこのまま終わる奴らじゃない。何か事を起こす前に見つけないと、あの時よりも恐ろしい事が起こるかもしれない」

 

 リンクヴレインズを震撼させた洗脳ウイルス。ヴァンガードが事件を起こしてから他のハノイの騎士は使ってこなかったが、ずっとそうだとは限らない。一部地域でのみあのウイルスは使用されたが、もし範囲が拡大したら? プレイメーカーがリンクヴレインズのどこにログインしようと逃げ場が無い状況を作るのも時間があれば可能なはずだ。ハノイの騎士を見つけるのに手間取っていたら俺以外全員敵、という事になる可能性はゼロではない。

 

「そのメッセージは消去して」

 

 くれ、と言い終わるよりも早くAiが声を上げた。

 

「ちょい待ち! これってもしかして、ほほう? もうちょい下にスクロールしてー、あーそこそこ。オッケー」

 

 ふむふむ、と頷きながら一人納得がいったようだ。

 

「ははーん? なるほどね」

 

「……何か分かったのか?」

 

「分かるも何も、これは俺にしか分かんねえよ。AIの言葉、って言った方が人間には分かりやすいか?」

 

「Aiにしか分からないAIの言葉。つまり、送り主は」

 

「AIデュエリスト!」

 

 このメッセージの意味を理解できるのはここにいるAiだけ、つまり。

 

「探してるのは俺を持ったデュエリスト。つまりプレイメーカー様ってことだな」

 

「何て書いてあるんだ?」

 

 草薙さんが疑問を口にする。

 

「最初らへんのは時候の挨拶から始まってる、手紙のテンプレートそっくりだな」

 

「重要な部分だけでいい」

 

「AI使いが荒いったらありゃしない……場所だよ、場所。そこでプレイメーカー様と話がしたいだとさ」

 

「そうか」

 

 デュエルディスクを装着して立ち上がる。

 

「もう行くのか!? 流石に休憩はした方が」

 

「ハノイの騎士の手掛かりが掴めるかもしれない。だからこそ、この機会を逃すわけにはいかない」

 

「……気をつけろよ遊作」

 

 その注意に頷いて返事をし、スライド式のドアを通り部屋へ入る。

 

「デッキ、セット! イントゥザヴレインズ!」

 

 リンクヴレインズにログインし、すぐに周囲を確認する。罠は仕掛けられてはいないようだ。

 

「……来ましたか、プレイメーカー」

 

 ジジ、と空間にノイズが走りそこからAIデュエリストが姿を現した。

 

「何の用だ、AIデュエリスト」

 

「私は貴方と協力関係になりたい」

 

「それだけではない筈だ。直接会って話すことがあるからここへと俺を呼び出した、違うか?」

 

「……お見通し、ですか。ヴァンガードについて少々気になることがありまして、それをお伝えしようと」

 

 そう言うとAIデュエリストは手のひらの上にデータを浮かべる。

 

「ヴァンガード、彼女は突然現れた。ハノイの騎士を纏め上げるカリスマ。現実世界でも彼女を慕う者は少なくない」

 

 データを開く。今までのハノイの騎士のデュエルログと出現場所、それをグラフと地図に纏めた物だった。

 

「彼女が現れてから、ハノイの騎士のデュエルは強化された。……ここで疑問に思いませんか? 何故、最初から強化された状態では無かったのか、と」

 

「……それは」

 

 それを考えたことは無かった。ヴァンガードはハノイの騎士の中でも浮いているとは思っていたが、それだけだ。

 

「そこで、私はこう考えました。彼女はハノイの騎士に最初からいた存在では無い。ごく最近ハノイの騎士に入った人の中から選ばれた存在。……恐らく、年齢もそう高くはないでしょう」

 

 ハノイの騎士の一人、バイラのアバターは現実の姿とそう変わらなかった。ハノイの騎士である程度の権力を持つ者は、現実とほぼ同じ姿のアバターを使っている可能性がある。それに、あの時言った事件について知らないとはアナザー事件だけでなく、ロスト事件のことも含むのでは? 流石にこれは考えすぎだろうか。

 ……ここからは遊作の考えではなく、蛇足となる。もし現実の姿と違うアバターだったとしたらあのハノイの騎士達はそれに気付くだろう。変態はそういうことに対する嗅覚は鋭い。謎の信頼。

 

「それは全部考察だ、証拠はあるのか?」

 

「いいえ、何も。彼女の正体について深入りすると痛手を負います。何人もの電脳トレジャーハンターが廃業に追い込まれるほどの防御プログラムが常に働いている。その事もプレイメーカーに伝えておこうと思いまして」

 

「ヴァンガードの正体分からないんだったらやっぱり唯の考察。あのメッセージに書いといてよかったんじゃないか? やっぱり他にも理由あるんじゃないのか、AIデュエリスト?」

 

 そうAiが尋ねるとAIデュエリストは恥ずかしそうに目を逸らした後、先ほどまでより小さな声で話しだした。

 

「……実際に話してみたかったのです、プレイメーカーと。……あの時、プレイメーカーをおびき出せたのだから、彼女が直接デュエルをすればそれで終わった。でもそうしなかった。人海戦術を使って消耗させようとした。ヴァンガードがそれだけ警戒するデュエリストなのか、この目で確かめたかった」

 

「ほーん? で、プレイメーカー様はお眼鏡にかなったワケ?」

 

 プレイメーカーとAIデュエリスト、二人とも相手の目の光を見て確信した。確かな信念を持っている者にしかその光は出せない。AIデュエリストはハノイの騎士の一人、ヴァンガードを倒すという信念を。プレイメーカーはハノイの騎士を倒し真実を知るという信念を。

 

「信念を持ってハノイの騎士を追う、紛う事なきデュエリストの魂を持つ者。……今の私にはその全てが分かった訳ではありませんが」

 

「元がAIでも、お前はデュエリストだ。いつか必ず理解できる時が来る」

 

「……ありがとうございます」

 

 こうして反応を実際に見ると、元がAIだとは信じられない。だが、人間には理解できず、Aiには理解できる言語でメッセージを送ってきたという事実がある。

 

「うーん、いつまでもAIデュエリストって呼ぶのもアレだよな。AIの先輩として俺が名前付けてやろうか?」

 

「その必要はありません。あるスレッドにて名前は決定しました」

 

「スレッド? どうやって?」

 

「安価です」

 

「…………安価?」

 

 彼の口から恐らく出ないであろう、安価という言葉が出てきたことに驚くAi。

 

「安価で決めるのは由緒正しき事だ、と調べた結果にあったのですが……違うのですか?」

 

 どうやらネットのふざけた紹介文を鵜呑みにしているらしい。AIなのにネットに向いていない性格とはこれいかに。

 

「……あー、うん。間違っちゃいないな。で、何て名前になったんだ?」

 

「グラドス、です。GLADOSと綴ります」

 

「変な名前だな。まあAiほどカッコ良くはないがな! そういやお前、あのメッセージに時間指定無かったけどいつから待ってたんだ?」

 

「……? メッセージを送ってからずっと、ですが」

 

「馬鹿だろお前」

 

 呆れた声のAi。

 

「馬鹿は禁止用語です」

 

「あのバカッピと同レベルのデュエリストとか信用できねえよプレイメーカー様。やめといた方がいいぜ絶対」

 

「なら、証明すればいい」

 

 デュエルディスクを構える両者。デュエリスト同士が相対してする事は一つしかない。

 

「「デュエル!」」

 

 その日、彼ら以外は誰も知らない一戦がリンクヴレインズにて繰り広げられた。




彼らのデュエルは脳内補完でお願いします。

メガフリート日本に早く来てくれませんかねぇ……。エクストラモンスターゾーンのモンスター食って出てくるキメラテックなのでかなりVRAINS映えするんですが。

君の名は見て思いついたネタ

「確かなことが……一つだけある。私たちは、会えば絶対、すぐにわかる!」(ヴァンガードは武内さんの良き声で。リボルバー様は主人公の身長で)

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