藤木遊作。遊戯王VRAINSの主人公にして、リンクブレインズで活躍するデュエリスト、プレイメーカーの正体。凄腕ハッカーというメ蟹ックと同じ特技を持つ。髪型を海産物で例えるとロブスター、またはウミウシ。髪型トマトな遊矢がますます浮いてくる。確か遊矢のキャラデザは三好先生が考えたんだっけ? 歴代主人公とは違い、復讐のためのデュエルを行う。
そして私にとって一番重要なのは、ハノイの騎士とは敵対関係にあること。私はバイトとはいえハノイの騎士。もしばれたら……ろくなことにならないだろう。とても気まずい、なんて言葉じゃ言い表せない学校生活になってしまう。いや学校生活どころじゃない。ゴヨウされてしまう。
「なんで席替えしたんだよー……」
誰が席替えしようって言い出したんだ。何度見返しても席順が変わるはずもなく。頼むから書き換えてくれ、ドン・サウザンドー! さあ、我が脳内ドン千の返事は?
『え、我関係ある?』
ちくしょう!
お見舞い来るのを楽しみに待っていたのに、死刑宣告を待つ死刑囚の気持ちになってしまった。気分転換の手段、病院には全然ないんだぞ!? テレビのニュースは暗いものしか取り上げないし。その時間をもふもふ動画に変えたらもっと視聴率上がると思う。……本でも読むかな。
「ん?」
メールが来たのでしおりを挟む。島君から、何か欲しいものがないか、とのこと。お見舞いついでに買ってきてくれるらしい。
「んー、何かあったっけ……あ」
入院中に発売された本。シリーズ物でずっと読んでいたやつの最新巻。たしかタイトルは『戦国決闘物語』だった。この本、合戦がデュエルに置き換わった架空の日本史を書いたもので、歴史好きもしっかり楽しめる内容になってるんだよね。私はゲームから戦国時代に興味を持ったタイプです。政宗がパーリィ言うやつね。返事を打ち込んで読書に戻る。
「本?」
「あいつ、初めて会った時は一人で本読んでたんだよ」
「そうなのか?」
「一人で寂しいんじゃないかと思って話しかけたんだけどさ、こっち見てすぐ本に目を向けてさー」
島から今上と友達になるまでを聞いていた遊作。それは話しかけないでほしいというアピールではないのだろうか。そう思ったが、その言葉を遊作が言うことはなかった。
本を読み終わってひと段落。さあ、今日のバイトを始めましょうか。今回のお仕事は〜?
「偽プレイメーカー、これで十七人目か……」
偽物多すぎ。誰かのサイトでアバター配布してるんじゃなかろうか。とすると、非公式なハノイの騎士のアバターもあるんだろうなー。ハノイの騎士で働いてないのにハノイ名乗る奴もいるんだろうなー。
……増殖するハノイ達よ、コナミのハノイを見習え! 礼儀正しいハノイだぞ! ちゃんとチェーンあるか確認してくれるんだぞ!
そんで、色々偽物倒して回った感想。クオリティ高いアバターと低いアバターの差がひっどい。アニメで見た偽物達より雑なのいたし。今日一番酷かったのは、やっぱあれだな。うん。
偽物同士で「俺こそが本物のプレイメーカーだ!」って争っている姿見て草生えた。
そして使っているデッキが『マドルチェ』対『ゴーストリック』だったんで吹いた。
ファンタジーな召喚口上きっちりどっちも言ってたから腹筋が死んだ。
お前らせめてデッキはまだ納得がいく『サイバー流』とかにしろよ!!
……はっ、なぜ私は乱入して倒した偽物達に説教かましているのだろう。そしてなんでこいつら「ハノイの騎士もいいかも」とかなってるんだ。やめて! 絶対君らヒャッハノイになるだろ!! 古参のハノイの気持ちを考えろ!!
……動画とか、撮られたりしてないよね……? 私にはその事を確認する勇気はない。寝て忘れるに限る。おやすみー。
「草薙さん、見てほしい動画って?」
「……ああ、これなんだがな」
「何なに〜? またハノイが何かやったの?」
「…………これは」
「ぶっふぉ! 何だコレ!」
どちらが本物かを決めるための、偽プレイメーカー同士のデュエル。デッキも俺が使うはずがない『マドルチェ』と『ゴーストリック』。そこにハノイの騎士が乱入してくる。くるのだが……。
「説教して頭抱えて帰っていったなー。あんなハノイもいるもんなんだな、プレイメーカー様?」
「……なぁ。これ、どう思う?」
「…………」
……俺に聞かないでくれ。
「……はっ」
すっごい変な夢見た。マリク、斎王、アポリア、カイトの顔芸がヒマワリの花の部分に置き換わったものが一面に咲く中、あははうふふと笑いながらスキップで駆け抜けるズァーク。『ペンデュラムに救済をー!!』と叫んだ後爆発した。
疲れてるのかな、私……。
なお、古参ハノイ達も動画を見た模様。
「頑張れ新人……! 他の奴らと比べてかなりまともな君が俺たちの希望なんだ!」