どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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今回のデュエル、相手はアニメカードを使用しています。ご注意を。


目指すは勝利、出発進行ーッ!

「さあかかってきな! まとめて相手になってやる!」

 

 二対一でスピードデュエルを挑むのは自信の表れか、それとも無謀か。イグニスを持っている時点でロスト事件の関係者であることは確定している。となれば、恐らく前者なのだろう。

 

「覚悟しろ、ソウルバーナーは情け容赦ない男だ。お前達を完封してやる!」

 

「そこまでは言ってない」

 

「む? そうなのか?」

 

 ソウルバーナーと不霊夢の会話……あれ、いつの間に漫才フェイズに移行したんだろうか。あと不霊夢クールキャラじゃなかったんかい!

 二人が会話する中、ずっとビットブートコンビを見ていたクラッキング・ドラゴンが一言。

 

『ご主人、あれかじっていい?』

 

「ダメです」

 

『片方赤くていちごみたいだから多分おいし』

 

「くないから絶対! ウイルス混じってたらどうするの!?」

 

『むー、その方が情報奪うの早いのに』

 

 クラッキング・ドラゴンはそう言うとぷう、と頬を膨らませる。

 

「何のためにデュエルがあると思ってるのか、この精霊……」

 

 デュエリストからは無理やり情報を奪うより、デュエルで勝って情報を貰う方が丸く収まる。それにそんな事言ったら……。

 

「流石ハノイの騎士のしもべ、だな」

 

 ああほらソバに睨まれるー! 早く不穏な空気が流れるこの場所から移動してプレイメーカー!

 敵の事情は関係ない、とばかりにビットとブートは行動を始める。

 

「目的を変更、追加。イグニスの回収、及びヴァンガードの尋問」

 

「しかし二人か」

 

「あの作戦で行くぞ」

 

 二人目を合わせ頷く。

 

「特別合体シーケンス」

 

「……開始!!」

 

 両腕を地面と水平になるように伸ばし、二人の間に光が繋がる。

 

「なっ!」

 

 あ……ありのまま今起こったことを以下略。ビットとブートが真ん中から綺麗に半分に分かれて『合体』した。まるでブロックのおもちゃを組み替えるみたいに。二人が一人になったのではなく、二人が組み替えられて二人になった。

 

「我らはビット」

 

「我らはブート」

 

「「合わせてビットブート!」」

 

 合体したデュエリストはビットブートと名乗った。片方は右が赤で左が緑。もう片方は右が緑で左が赤。こんなことが出来る、ということは人間じゃなくてAIの可能性が高い。

 

「なんだこいつら、合体したぞ!」

 

「合体程度で驚いたらまだまだデュエリストとして未熟。本気出すためには必要なことだよ、合体は」

 

『うんうん』

 

「……何を言っている?」

 

 この意味がわからないソバと不霊夢は遊戯王過去作を履修するのをお勧めします。

 

「チッ、お前の手は要らない。俺一人で……!」

 

「……どうやら向こうはそう思ってないみたいだけど」

 

 二人のビットブートが私達の間を割くように走る。タッグデュエルではなく、一人一人別々に戦うということだろうか。

 

「イグニスの回収は我らが」

 

「ヴァンガードの尋問は我らが」

 

「フン……お前が負けた後は俺が引き継いでやる」

 

 本当は関わりたくない、と言わんばかりの嫌そうな顔しながら言われた。

 

「もし君が負けたら……なんて、私は言わないよ。ソバ」

 

「誰がソバだ!!」

 

「初対面の女性にひどい態度するヤツはソバで十分でしょ」

 

 彼との並走をやめ、後ろ側へ回る。その殺意と勢いのままデュエルをワンキルで終わらせてほしい。

 

「イグニスを持っていないが、お前はハノイの騎士。何かしらイグニスへ繋がる情報を持っているはずだ」

 

「……さあ、どうだろうね?」

 

 に、と口角を上げる。

 

「ねえクラッキング・ドラゴン、このスピードデュエルはいつも使ってたのと違うデッキ使うけどいい?」

 

『もちろん! 僕がやられた時のこと考えたら当然!』

 

 もしデュエル中クラッキング・ドラゴンが戦闘破壊、効果で除去されたら地面へ真っ逆さま。それは避けたい。

 

「それは負けた時の言い訳か?」

 

「まさか。デッキを言い訳にする気はさらさらないよ」

 

 デュエルディスクを操作しデッキを入れ替える。今までと違い情報アドは無し。なら後は全力でぶつかるだけだ!

 

 

 

「「デュエル!」」

 

 

ヴァンガード

LP 4000

 

ビットブート

LP 4000

 

 

「我らが先攻でいく。手札よりDスケイル・サーベルサーディンを召喚」

 

 

《Dスケイル・サーベルサーディン》

効果モンスター

星2/水属性/サイバース族/攻 600/守 300

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):500LPを払って発動できる。

自分フィールドに「Dスケイルトークン」(サイバース族・水・星1・攻/守100)1体を特殊召喚する。

 

 

 魚の姿をしたモンスターだが、種族はサイバース族。となるとサイバース族特有の展開力を持っている、と見て間違いはないだろう。

 

「サーベルサーディンの効果発動。ライフを500払いDスケイルトークンを特殊召喚する」

 

 

ビットブート

LP 4000→3500

 

 

 これでフィールドにはモンスターが2体。当然次に来るのは。

 

「「現れろ、我らのサーキット!」」

 

 両手を頭上に掲げ、赤と緑の光が空へ登る。その先にあるのは当然リンクサーキット。

 

「召喚条件はDスケイルモンスター2体! 我らはDスケイルトークンとサーベルサーディンをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 現れろ、リンク2! Dスケイル・バトルシーラ!」

 

 

《Dスケイル・バトルシーラ》

リンク・効果モンスター

リンク2/水属性/サイバース族/攻 1800

【リンクマーカー:左/下】

「Dスケイル」モンスター2体

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このカードの位置を、このカードのリンク先のメインモンスターゾーンに移動する。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このカードの位置を、このカードとリンク状態のカードのリンク先の自分のメインモンスターゾーンに移動する。

 

 

「魚か……」

 

 サイバース族でも見た目は魚。マジックコンボしてきそうだな、なんて思ったのがフラグだったのか。

 

「装備魔法、Dスケイル・トーピードをバトルシーラに装備! 更にバトルシーラの効果! 1ターンに1度、バトルシーラを自身のリンク先であるメインモンスターゾーンに移動する」

 

 

《Dスケイル・トーピード》

装備魔法

「Dスケイル」モンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このターンに装備モンスターの位置が移動した回数×800ダメージを相手に与える。

 

 

「……移動? いや待てよ、リンク魔法か!」

 

「ご名答! スキル発動、マーカーズ・ポータル! デュエル中に一度、自分のライフが元々の数値以下になった時、デッキからリンク魔法一枚を選択して発動する!」

 

 デッキから一枚のカードを引き、掲げる。

 

「輝け三本の矢! 行く手を阻む敵を射よ! リンクマジック、裁きの矢(ジャッジメント・アローズ)!」

 

 

裁きの矢(ジャッジメント・アローズ)

リンク魔法

【リンクマーカー:上/右上/左上】

(1):「裁きの矢」はリンクモンスターのリンク先となる自分の魔法&罠ゾーンに1枚しか表側表示で存在できない。

(2):このカードのリンク先のリンクモンスターが戦闘を行うダメージ計算時のみ、

そのリンクモンスターの攻撃力は倍になる。

(3):このカードのリンク先にモンスターが存在し、

このカードがフィールドから離れた場合、そのリンク先のモンスターは全て破壊される。

 

 

 バトルシーラのリンク先である魔法・罠ゾーンの右端で発動。これでバトルシーラが攻撃する時、その攻撃力は効果で3600になる。

 

「先攻ではバトルフェイズは行えないが、我らの最強コンボは完成している! 続けてバトルシーラの効果発動! バトルシーラは1ターンに1度、自身とリンクするカードのリンク先に移動することができる。裁きの矢(ジャッジメント・アローズ)のリンク先に移動!」

 

 メインモンスターゾーンの右端から中央へ移動するバトルシーラ。

 

「また移動……? 何を考えてる?」

 

「恐れおののけヴァンガード。我らの脅威のコンボを見せてやる! バトルシーラに装備されたDスケイル・トーピードの効果発動! このターン装備モンスターの移動1回につき800ダメージを相手に与える!」

 

『移動をバーンに変えるカード!?』

 

「移動回数は2回、合計1600のダメージ……!」

 

 トーピードの効果で放たれたミサイルが迫る。そんな窮地に似合わない声がした。

 

『クリクリ〜ッ!』

 

「手札のジャンクリボーを墓地へ送り効果発動! トーピードの効果発動を無効にし破壊する!」

 

 

《ジャンクリボー》

効果モンスター

星1/地属性/機械族/攻 300/守 200

(1):自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果を相手が発動した時、

自分の手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 

「何!?」

 

 ジャンクリボーがバリアでミサイルを跳ね返し、彼らのコンボの核となっていた一枚を破壊。

 

「くっ……我らはこれでターンエンド!」

 

「私のターン、ドロー!」

 

 いつもスピードデュエルで使用していたデッキとは異なる。けど動くのに問題はない。

 

「手札から影依融合(シャドール・フュージョン)を発動! 自分の手札・フィールドからシャドール融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り融合召喚する。だけどそれだけじゃない! 相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する時、自分デッキのモンスターを融合素材にすることができる!」

 

 

《影依融合》

通常魔法

「影依融合」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールドから

「シャドール」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、

自分のデッキのモンスターも融合素材とする事ができる。

 

 

「デッキ内融合だと!?」

 

「デッキのシャドール・ビーストと無頼特急バトレインで融合! 出ておいで、エルシャドール・シェキナーガ!」

 

 

《エルシャドール・シェキナーガ》

融合・効果モンスター

星10/地属性/機械族/攻2600/守3000

「シャドール」モンスター+地属性モンスター

このカードは融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):特殊召喚されたモンスターが効果を発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

その後、自分は手札の「シャドール」カード1枚を墓地へ送る。

(2):このカードが墓地へ送られた場合、

自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

 

 

 アポクリフォート・キラーに捕らえられたエルシャドール・ネフィリムの姿をしたモンスター。その顔にはうっすらと笑みを浮かべている。

 

「お前は機械族使いのはず、シャドールだと!?」

 

「驚くのはまだ早い! 効果で墓地へ送られたシャドール・ビーストの効果で1枚ドロー! 更に自分フィールドに機械族・地属性モンスターが特殊召喚されたことで、手札から重機貨列車デリックレーンを特殊召喚!」

 

 

《重機貨列車デリックレーン》

効果モンスター

星10/地属性/機械族/攻2800/守2000

「重機貨列車デリックレーン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに機械族・地属性モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

(2):X素材のこのカードがXモンスターの効果を発動するために取り除かれ墓地へ送られた場合、

相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

 

「……さあ、ここからが本番だ! レベル10のエルシャドール・シェキナーガとデリックレーンでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 出発進行、超弩級砲塔列車(ちょうどきゅうほうとうれっしゃ)グスタフ・マックス!」

 

 

《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》

エクシーズ・効果モンスター

ランク10/地属性/機械族/攻3000/守3000

レベル10モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

相手ライフに2000ポイントダメージを与える。

 

 

 バーンの代名詞、列車が誇るランク10。超弩級の名に恥じぬ砲塔に巨体。そして素材にはデリックレーン。ここまで言えばわかるよね?

 

「オーバーレイユニットを一つ使い効果発動! 2000ポイントのダメージを与える!」

 

「ぐううぅっ!」

 

 

ビットブート

LP 3500→1500

 

 

「そしてオーバーレイユニットとして取り除かれたデリックレーンの効果、相手フィールドのカード1枚を破壊する! 破壊するのはバトルシーラだ!」

 

「ば、馬鹿な……!」

 

 バトルしたら裁きの矢の効果で攻撃力二倍になったバトルシーラに負ける? ならバトルしなければいい。

 

「バトル! グスタフ・マックスでダイレクトアタック!」

 

 相手に伏せカードは無し。この攻撃を防げなければ負ける。そう、この攻撃が通れば――。

 

「あ、あ…………!」

 

「――ファイアーッ!」

 

 攻撃は命中。ビットブートは煙に覆われて見えない。何のカードを発動していた! するのかと警戒を解かずに構える。

 

 

 ――煙が晴れる。そこには誰もいなかった。

 

 

「…………あれ? 本当に終わり?」

 

 手札誘発か手札から罠飛んでくると思っていたんだけど。

 

「完封したのは私だったか。その……ゴメンね?」

 

 ソウルバーナーはまだデュエル中。何かいちゃもんつけてくるかな、と心配だったのだが。

 

「後攻ワンキル……!?」

 

「馬鹿な! 我らが負けただと!?」

 

 二人とも驚いた顔をしていた。ここで止まっている訳にはいかない。早くプレイメーカーを助けないと!

 

「クラッキング・ドラゴン!」

 

『了解! 飛ばすよご主人!』

 

 ビルの隙間を縫い、追いついたのはハルとボーマンが進入禁止エリアの壁を開き逃げる瞬間だった。プレイメーカーが赤い壁をそっと手で触れるが当然弾かれる。

 

「進入禁止エリアに逃げたか……」

 

『無理やり壊して入るのも可能だけど?』

 

 えっへん、と胸を張るクラッキング・ドラゴン。

 

「確かにそうすれば追えるだろうが、それだと時間がかかる。入れるのは奴らがもう追跡できない所まで逃げた後だ」

 

『進入禁止エリアへの違法アクセスが確認されました。緊急防衛プログラムを作動します』

 

「ここまで、か……すぐにログアウトしよう」

 

 ログアウト操作をしようとした瞬間、待て! という声とともにソウルバーナーがやって来た。

 

「今すぐハノイの騎士と手を切れ。奴らがしたことを忘れた訳じゃないだろう、プレイメーカー」

 

「待ってくれ、お前の名前は? 何故俺を助けた?」

 

「俺はソウルバーナー。理由についてはそいつ抜きで、また会った時に教えるよ」

 

 そう言うと彼はピ、とデュエルディスクにタッチしログアウトした。

 

「ソウルバーナー……何者だ?」

 

 元ハノイの騎士であるヴァンガードに強くあたり、サイバースを使うデュエリスト。その側にはイグニス――不霊夢がいる。ここまで情報がそろえば出る答えは一つ。

 

「……あー、私のせいで関係がめんどくさくなるかな、これ」

 

 これから今まで以上に苦労しそうだな、と空を見上げてため息をついた。


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