どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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新規機械族やったあああ!サイバー新規やったあああ!
ハノイデッキにオルフェゴール混ぜる!まさかデッキ調整中がここで生きるとは。
よっしゃイラスト見……イヴちゃんにニンギルス……。
えっ、あれ?星遺物またとんでも無いことになってません?


ややこしいにも程がある

 目の前にはVR兄様。壁際に立つ不審者ファッションの、なんか機械族使いそうな気配がする男。右腕が機械なのは触れない方がいいとみた。

 

「――という訳だ」

 

「…………」

 

 ここはSOLテクノロジー本社。財前晃は今上詩織と一対一で話をしようと妹の葵を通じてコンタクトをとった。葵には彼女をバウンティハンターにしようとしている、とは一言も言っていない。彼女のデュエルの腕を見込んで話をしたい、とだけ伝えて呼び出したのだ。

 まだ彼女がバウンティハンターになるとは確定していない。もし葵に教えたら先走って行動する可能性がある。

 葵の思いを理解出来ていなかったあの時、私の言葉は届かず、ブルーエンジェルはプレイメーカーにデュエルを挑んだ。そのことを考えると、余計な情報を伝えるわけにはいかなかった。

 

 こちらの要望を伝えたところで彼女が力を貸してくれるとは限らない。こちら側につく事で発生する利益を、機密情報を出来る限り混ぜずに説明するのには苦労した。

 

「プレイメーカーからイグニスを取り戻す為にも、君の力を貸してくれないか?」

 

「申し訳ありませんがお断りさせて頂きます」

 

 

 意外! それは即答ッ!

 

 

「……理由を聞かせてくれないか?」

 

 会心のプレゼンだと自分では思っていた。が、まさか断られるとは思っていなかった。反応に遅れたものの、何故なのかを問いかける。

 

「列車デッキの強さと、使うのにどれほど気を使うかを知らないわけではないですよね?」

 

 それを聞いて財前は顔をしかめた。

 

 

 ――列車は強い。

 

 

 ライフ4000のこの世界では当然の事だ。グスタフの効果二回でデュエルが終わる。効果ダメージ対策を握っていなければ即敗北。

 こちらとしては勝ったやったー、で終わりかもしれないが相手は違う。理不尽なデュエル、蹂躙に対しての反応は決まっている。

 

 

 ――キレる。そのエネルギーを社会貢献に回した方が有意義ではと思うぐらいキレる。有る事無い事言い出して炎上。関係ない人にも当たり散らして消滅。

 

 

 全てのデュエリストがこうするわけではない。一部のとんでもない爆弾が騒ぎ立てるから総意に見えるだけだ。

 

 数多の列車使いを犠牲にし、そこから誕生した一つの言葉がある。

 

 ――『列車を使うなら相手の事を思いやりましょう。相手の戦略に対してフォローを忘れずに。我々は蹂躙をしたいのではない。デュエルをしたいのだ』

 

 これはこの世界の列車使いの暗黙の了解になった。

 列車を使うのなら強キャラっぽい空気をかもしつつ、相手にフォローを入れなければならない。そうしなければ心無い一部のデュエリスト達によって叩かれ回るのだ。

 と言うわけで、サブウェイマスターとしての演技はヘイトを減らすためでもあった。趣味が七割だが。

 

「バウンティハンターの皆さんが使用するデッキが弱いとは言いません。ただ、列車は強い。一方的なバーンによる蹂躙になる可能性がある。それは即ち、御社のイメージを損なう可能性がある、という事になります。それに私、まだ16才ですよ? 年下が活躍するのに抵抗を持つ人だっている筈です。ある程度軌道に乗っている中突然人を増やすのは博打だと思うんです。前からいる人達と気が合うなら良いですが、合わなければ……まあ、アレですね」

 

 ここからは個人的な考えになるけど、バウンティハンターに選ばれた人達にはプライドがあると思うんですよ。俺たちは選ばれたんだ! 強いんだ! っていうのは心の何処かにあるはず。それ以外には責任とかかな。

 

 

 そんな中颯爽と現れたリンクヴレインズでは男アバターなJK!

 突然の事に困惑するバウンティハンター達!

 新人は列車でドーン、相手は死ぬを繰り返す!

 活躍する新人に対し怒りが湧き上がるバウンティハンター達!

 あいつ頭高くね?

 どうする皆? 処す? 処す?

 

 

 ……うん、この流れで間違いないと思う。絶対ヘイト溜まるよね。絶対に邪魔者扱いされ続ける気がする。前世でも今世でも嫉妬は怖いし恐ろしい。

 

「……と、以上の理由で辞退させていただきます」

 

 詩織は男の目を真っ直ぐに見つめ言い切った。正論で固めた彼女の言葉を聞き、推薦したブラッドシェパードも仕方がない、と財前に目で伝える。

 本人が断っている以上、無理矢理引き入れるのは危険だ。引き止めるのは難しいな、と結論を出し、財前は口を開いた。

 

「……決意は固いようだな、わかった。今回の事を部外者に口外しないと誓約書を」

 

 書いて、と続くはずだった言葉は、ドアがウィーンと開く音に消された。

 

「財前! これはどういうことだ!?」

 

「な、Mr.鬼塚!? これは――」

 

「……えっ、えっ。……えっ?」

 

 思わず三度見してしまった。Go鬼塚さん最近見ないなーと思っていたら、まさかまさかのバウンティハンターになっていたとは。いつもの衣装ではなく防弾チョッキを着ている。カッコいー!

 鬼塚さんの後ろに隠れるようにいる早見さんはわたわたしている。財前部長の為を思ってした行動が裏目に出たと空気感で察したようだ。

 

「こんな子供の手を借りないといけない程俺が弱いと思っているのか!?」

 

「お前が弱いとは誰も言っていない。……チッ、空気の読めんヤツめ……!」

 

 それならしょうがないなという空気をぶち壊して登場した鬼塚さんに対し、怒りをあらわにするブラッドシェパード。

 

「(個人的な依頼ならば可能性があったものを……!)」

 

「(はわわ、す、すいません財前部長ー!! 私とんでもないことしちゃいました!?)」

 

「(……あれ、これ逃げ場ない? ヤバイ?)」

 

 だんだん私に男性二人が寄って来ている。圧迫感がすごい。

 

「俺だけで十分だとわからせてやる! デュエルだ! 俺が勝ったらこいつはバウンティハンターから外させてもらうぜ!」

 

「俺の上官でもないお前が勝手な口を利くな! 最終的な決定権は財前にある!」

 

「え、あのー……」

 

 高身長男性に挟まれあわあわしている150cmのJK。その内心は――。

 

 

 

「(……駄目だこれ。なんかバウンティハンターにさせられそうな気配がする)」

 

 

 

 頼まれると断りきれないのを何とかしようと即興で考えた理由だったけど納得してくれた。

 ほとんどの人は現実の私の裏の顔を知らない。デュエルが強い機械族好きのオタクな女子高生が基本的な認識になる。社会人なお二人は仕方ないな、と広い心で対応してくれた。そこまでは良かった。

 ……なんで来ちゃったかな鬼塚さん。もうちょい空気読んでほしかったなー。

 頑張って僕らのGo鬼塚! サイン欲しいです!

 

「……お、おう、後でな」

 

「あ、最後の声に出てました? ………………おおう」

 

 ……恥ずかしい! 顔があっつい!

 真っ赤になった顔を手で覆い、顔を周りに見られないように下を向く。

 

「デュエルしても良いですけど、今、バウンティハンターは辞退させていただく方向の話をしていた真っ最中だったんですよ……」

 

「口だけなら何とでも言える。その嘘を俺の手で真実にする、それ以上にお前を外す確実な方法はないだろう」

 

 話! 聞いて!! あと周り見て、証人がいるよ!

 私以外目に入っていない様子の鬼塚さんはデュエルディスクを構えて戦闘態勢に入っている。

 

「あ、もし良かったらなんですけど……デッキは列車から変更してもいいですか?」

 

「サブウェイマスターは列車使いだと聞いたが……俺を舐めているのか?」

 

「ファンとして、個人的に鬼塚さんと戦わせたいデッキがあるんです。いや、駄目なら列車使いますけど」

 

 ファンと聞いてたじろぐ。少しの間考え、口を開く。

 

「…………分かった、いいだろう」

 

 鬼塚さんと言えば剛鬼! 列車よりも戦っている姿が似合いそうな機械族がいるのでそっちにチェンジ。

 

「準備は出来たか? ――行くぞ」

 

「よろしくお願いします」

 

 大人な二人の申し訳ないという視線を受けながら私もデュエルディスクを構える。

 

 

「「Into the VRAINS!!」」

 

 

 ばさり、とコートを翻しデュエルボード上に着地。帽子を整えるのを忘れない。現実とかけ離れた身長だが、アバターの操作は問題なし。違和感があるのならハトと山本先輩のコンビはとんでもない動きをすることになる。

 前方に見えるはGo鬼塚。カリスマデュエリスト期と違い、現実の格好と同じバウンティハンターとしてのアバターだ。

 

「映像で見るよりも随分ひょろっちいな、そんなんで本当に賞金稼ぎとしてやっていけたのか?」

 

「失礼ながら、デュエルに見た目は関係ありません。大切なのはその身に宿した力、ではないでしょうか」

 

 表情を全く変えずに話すサブウェイマスター。

 

「……ふっ。確かに、違いないな!」

 

 それを聞いたGo鬼塚はにい、と笑う。

 

 

「「スピードデュエル!」」

 

 

Go鬼塚

LP 4000

 

サブウェイマスター

LP 4000

 

 

「先行は俺がもらう! 俺のターン! スキル発動、ダイナレッスル・レボリューション! デッキからフィールド魔法、ワールド・ダイナ・レスリングを発動する!」

 

 

《ワールド・ダイナ・レスリング》

フィールド魔法

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「ダイナレスラー」モンスターが存在する場合、

お互いのプレイヤーはバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できない。

(2):自分の「ダイナレスラー」モンスターの攻撃力は、

相手モンスターに攻撃するダメージ計算時のみ200アップする。

(3):相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、

墓地のこのカードを除外して発動できる。

デッキから「ダイナレスラー」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「……なんと、デッキからフィールド魔法とは。ブラボー!」

 

 なんか便利そうですねそのスキル。……あれ、待って? 鬼塚さんのスキルは闘魂じゃなかったっけ? それにダイナレスラー? 剛鬼は?

 

「フン、デッキを変えたのがお前だけと思うなよ。俺は更に、ダイナレスラー・カポエラプトルを召喚!」

 

 

《ダイナレスラー・カポエラプトル》

効果モンスター

星4/地属性/恐竜族/攻1800/守 0

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):攻撃表示のこのカードは戦闘では破壊されず、

相手モンスターに攻撃されたダメージステップ終了時にこのカードを守備表示にする。

(2):このカードがモンスターゾーンに守備表示で存在する場合、

自分・相手のスタンバイフェイズに発動できる。

デッキから「ダイナレスラー・カポエラプトル」1体を特殊召喚する。

 

 

 フィールドに現れた二足歩行のカポエイリスタな恐竜。はいはいどーせあの見た目でも戦士族か獣戦士族で……え? 恐竜族?? まさかの恐竜さんザウルス!? 恐竜さん新規!? あれってことは剛鬼リストラ!?

 ……落ち着け私。心の中のティラノ剣山よ安らかに眠れ。

 

 いやーこれは予想してなかったわ。剛鬼一筋でやっていくものと思っていたから。……いや、勝手な押し付けは良くないな。それよりも恐竜族増えるのに感謝を。

 

「カードをセットしてターンエンド。さあ、お前の本気を見せてみろ! それをねじ伏せ、俺だけで十分だと証明してやる!」

 

「見せてあげましょう、私の力を! 私のターン! ドロー!」

 

 ドローしたカードは古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)。このカードで分かるだろうが、今回使用しているデッキは古代の機械(アンティーク・ギア)

 剛鬼と古代の機械(アンティーク・ギア)という大型モンスター同士の殴り合いが見たかった、のだがダイナレスラーというテーマに相手は変わっていた。無念。でもダイナレスラーにも大型モンスターいそうなので良しとする。

 

 お互いの使用デッキがいつもと違うこの状況。早くもこのデュエル、予測不能な展開になりそうだ。




剛鬼ではなくダイナレスラー対古代の機械になりました。楽しみにしていた方、申し訳ありません。
まさか使用デッキが剛鬼から変わるとは思ってなかったんだよ……!

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