どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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最近特殊タグをイジイジすることにハマりつつあります。表現の幅が広がってとても楽しい。ハーメルンすごい。皆も特殊タグの力を得て遊戯王VRAINS二次創作を書こう!
そして拙作の総合評価を超えるスーパーおもしろ遊戯王VRAINS二次創作が颯爽とハーメルンに現れました。皆も遊戯王VRAINS二次創作を読もう!
ところでデュエルリンクスくん、クラッキング・ドラゴンの入手場所どこ?デコード・トーカーのパズルデュエルにいたのになんで使用可能じゃないの……?


先導者と財前兄妹

 ――それは、鬼塚とアースがデュエルをするより前のとある日の出来事。

 

 

 財前晃は一人で倉庫の中へと入る。プレイメーカーに呼び出されたそこは薄暗く、光源は自身の後ろにある開いたドアから差し込む光しかない。

 人の気配は感じられないが、ここに来たぞと知らせるために虚空へと問いかける。

 

「プレイメーカー、いるのか?」

 

「プレイメーカーはここから離れたところにいるので返事はしてくれませんよ。まあ監視はしていますけどね」

 

 無いだろうと思っていた返事が即座に返ってきたことに驚く。しかもスピーカーやボイスチェンジャーを通した機械音声ではなく肉声だ。つまり、ここに正体不明の何者かがいる。

 

「プレイメーカーの協力者、か?」

 

「まあ声だけじゃ分からないかー。私ですよ、葵ちゃんのお兄さん」

 

 こちらにだんだんと近寄るその声には聞き覚えがあった。バウンティハンターとして雇った一人、妹の葵と同じ高校に通っている女の子。

 

 ――まさか。そんな。その考えを思いつくと同時、声の主の顔が見えた。

 

「元雇われバウンティハンターとして活動していたサブウェイマスターは仮の姿……というかサブ垢の姿。私、今上詩織の正体は元ハノイの騎士現プレイメーカー達への協力者ヴァンガード」

 

 そう言いながら彼女は腕に装着したデュエルディスクに一枚のカードを置く。モンスターのビジョンが現れる。

 ――クラッキング・ドラゴン。ハノイの騎士の象徴。ここまで見せられたら否定はできない。

 

「ブラッドシェパードを利用してバウンティハンターとなりSOL内部へ潜入したという訳か」

 

「いやそこについてハノイの騎士側は何もしてないんですよ本当に……私あの時最初お断りしていたのをお忘れです? 偶然が重なった結果の流れでなっちゃっただけですって。私からしたらどうして誰にもバレなかったのかが不思議なんですけどね?」

 

 リンクヴレインズにて、ヴァンガードとサブウェイマスターが同時に現れたことはない。これは調べたら簡単にわかる。機械族をメインに使用するデッキの傾向も合致する。決定的なのは活動していた時間帯。

 

 ……学業もあるしまあ仕方ないか、と思われていたにしては杜撰ではなかろうか。いやその辺り詰められたら速攻で正体明かされてお縄されてしまうため彼女としては杜撰で助かったのだけれども。

 

「ここで正体を明かして良かったのか? 私が君をここで捕まえようとする可能性は十分にある」

 

 デュエルディスクを装着した腕をゆっくりと上げ、構える様子を見せる財前。詩織は動揺することなく、なんてことないように告げる。

 

「その時はSOLのあんなことやこんなことの大暴露が始まるだけなのでしたいならお好きにどうぞ。ついでにブルーエンジェルの正体もバラす可能性はあったりしますね」

 

 ついで、と告げられたそれは財前晃にとって妹を危機に晒されるのがどれほどの地雷かをわかった上での発言だった。今上詩織は――ヴァンガードは元とはいえハノイの騎士、ブルーエンジェルにハノイの騎士が手を加えたことで起きた出来事を当然知っている。

 睨み合う二人。クラッキング・ドラゴンがグルルル、と唸り声を上げる。先に手を引いたのは意外にも財前晃の方だった。

 

「……それだけの事態が起きた、ということか」

 

 損得で考えると、今敵対するのはどちらにとってもマイナスになる。リンクヴレインズにて何が起きているのかを知らない財前としては無闇矢鱈と敵を増やすわけにはいかないし、勿論プレイメーカー達だって味方になれるだろう人物と決裂はしたくない。

 

「わかってくれて助かります」

 

 クラッキング・ドラゴンのカードをデュエルディスクから取り外したことでビジョンが消える。

 困ったように笑う詩織。最近は気を抜けない出来事が続いていたからその延長線メンタリティのまま、売り言葉に買い言葉な感じでうっかりやらかしそうになってしまった。これは間違いなく怒られるヤツ。詩織、反省。

 

「それじゃ、まずリンクヴレインズに新たに現れたイグニスの話から始めましょうか――」

 

 話が進むにつれてだんだんと財前の顔は険しくなっていく。無理もない、話の内容があまりにも衝撃的でかつ現在進行系の事実だと知れば誰だって同じ顔をするだろう。

 

「新たに現れたイグニスに、イグニスによる人類への宣戦布告……ボーマンとやらへ手は打った、とのことだがそれで和解は可能なのか?」

 

「無理ですね。光のイグニスはどうやっても説得は不可能。交渉のテーブルに乗せたところで起きるのは一対一のデュエルによる武力行使でしょう。なんの変哲もないお掃除ロボットのAIを洗脳してシモベにしたり、自らのオリジンへ危害を加えた風のイグニスが向こうの陣営に最初から在籍しているってのが全てだと思うんですけどね?」

 

 人間を排することを是としたイグニス、人間と共に生きようとするイグニス、彼らの道が交わることはもはやないと言いきる詩織。

 イグニスが人類を滅ぼす。ハノイの騎士が危惧していたことが現実になりつつある。他人事ではないが、だが、と財前は歯切れの悪い声で呟く。

 

「……私はSOLの人間だ。君達に力を貸すにも手段は限られている。リンクヴレインズのセキュリティーは見直すつもりだが、その過程で闇と炎以外のイグニスを見つけてもバウンティハンターを全て解雇された今ではサブウェイマスター()を動かすことはできない」

 

「いえ、SOLの管轄下じゃなくなった今だからこそバウンティハンターが自由に動けます。イグニスを捕獲してもSOLへ引き渡す義務が無くなりますから。中立である地と水のイグニスの確保・保護を鬼塚さんと……この戦いに巻き込まれても問題がない、かつ財前さんが信用できるデュエリスト一人の合わせて二人にやってもらおうという訳でコレ、鬼塚さんに渡しといてください」

 

 詩織が手渡すのはイグニスを保護するプログラムが入ったカード型の保存媒体。財前は受け取りつつもきょとんとした顔で問いかける。

 

「私からか? 君から渡しても問題はなさそうだが」

 

「いやぁ、イグニスの保護は財前さんから言い出したってことにしておきたいので。鬼塚さんからしたら私はデュエルが強いだけのただの鬼塚さんファンな同僚なんですよ? 突然イグニスを保護してください、なんて言ったら怪しまれますって。今後の事を考えて良好な関係を築いてイグニスの技術を提供してもらう方がいい、という方面でSOLに貢献をしようとみたいな感じで上手いこと話を通しておいてください」

 

「ああ、分かった」

 

 理由を聞いて納得し胸ポケットへと仕舞い込む。

 

「しかし、ブラッドシェパードはどうするつもりだ? 彼のAI嫌いはイグニスを保護するにあたって一番の障害になるぞ」

 

「ブラッドシェパードはいざとなったら私の正体を使えばなんとか止められる……かな? リボルバー様がブラッドシェパードのことを気に入ってるのでそう遠くないうちに接触するはずです。あとゴーストガールと因縁ありそうなのでデュエルさせちゃうのもアリですかね。後は――」

 

 指折り数えながら案を出す今上詩織。バウンティハンターとしてではなく、プレイメーカーの協力者として様々なことを考えるその姿は普通の女子高校生とは遠く離れたものだ。

 彼女が背負うものを少しでも減らそうと財前は胸に手を当て提案する。

 

「ゴーストガールにはツテがある。ブラッドシェパードについても任せてほしい」

 

 彼はかつて、プレイメーカーのことを思って説得しようとして逆鱗に触れる失敗をした。今度は同じことを繰り返さぬよう、相手の地雷に触れないようシンプルに言葉を紡ぐ。

 

「そこまでしてもらって大丈夫です?」

 

「問題ない」

 

 即答。

 

「そこまで言いきっちゃいますか。分かりました、その件は任せます」

 

 これまでとこれからの話についてキリが良くなったので、財前から話を切り上げようと動く。学生を夜遅くまで拘束するわけにはいかない。

 

「これでしたかった話は終わりかな? プレイメーカー達にもよろしく言っておいてくれ」

 

「……リンクヴレインズで何か起きた時、外で動けるのはきっと限られた人だけになる」

 

 足先を光の射す方へ向け、倉庫から出ようとする財前を引き止めるのは深刻なことを告げるように少し低くなった詩織の声。財前が振り向いたその先で今上詩織は腰から上体を曲げ、頭を下げていた。

 

「――その時はお願いします、財前晃さん」

 

 

 

 

 ――かくして鬼塚豪へ地のイグニスが、財前葵へ水のイグニスが渡ることになったのであった。

 

 裏であれこれ動いた結果、今上詩織の休息の時間は削れ、流石に疲れが見えるようになってきた。ハノイの騎士を追っていた復讐の使者時代の藤木遊作はもっとハードスケジュールだったというから驚きだ。ちゃんと寝れてたの? と聞けば悪夢を見るからあんまりだったとのこと。……そっかぁ……。

 

「眠いー」

 

 目をしぱしぱ、ふぁあと欠伸。ちょびっと涙が出る。デュエル部の部室で眠気と格闘しつつデュエルをする今上詩織の姿がそこにあった。

 カードを手札からフィールドへ墓地へ動かし、特殊召喚して、盤面を見て。

 

「……あっ展開ルート間違えた」

 

「いつもとなんか違うと思ったらやっぱりミスしてたのか。やり直していいぞ、俺まだこのターンカード何も使ってないし」

 

「えっいいの? それじゃお言葉に甘えて途中までフィールドのカード戻すね。……いやあちょっと夜遅くまで起きてた日が続いただけでここまでやらかすとは不覚」

 

「分かった。今日から早めに寝ろ」

 

「ぐうの音も出ない正論。あ、TG(テックジーナス) ワンダー・マジシャンがシンクロ召喚に成功したことでそのセットカード対象に効果発動、破壊するね。チェーンありますか?」

 

「なにい!? ……無いです……」

 

 島直樹、展開し直しを許したことをちょびっと後悔していた。

 

「にしてもなんか最近忙しそうだよな今上。バイトもあんまりやってないんだろ? ショップに行く機会も減ってるし機械族のオススメ(布教)も控えめになってきたしよー」

 

「機械族成分はリンクヴレインズのデュエル見て補充しているから問題無いって」

 

「機械族成分ってなんだ……? 機械族って言われてもヴァンガードしか思い浮かばねえんだがなぁ。さては今上がヴァンガードだったりするんじゃないだろうな?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。もし私がヴァンガードだったとして……は現実味がないから百歩譲ってハノイの騎士に関わっていたとしてだよ? あのカッコいいクラッキング・ドラゴンを持ってるんだぞって皆に自慢してない時点で違うでしょーよ」

 

「だなー」

 

 デュエルよりも会話がメインになりつつあったその時、財前葵のデュエルディスクが振動した。誰からだろうとなんの気無しに送られてきたメッセージを開き、固まる。

 

『葵、このメッセージは絶対に他人に見せないようにして下さい』

 

 間違いない。これは自らのデュエルディスクにいる水のイグニス、アクアからのものだ。わやわや楽しそうにしている彼らからこっそりと離れて……またメッセージが届く。

 

『くれぐれも反応しないように。落ち着いて読んでください。先ほどの会話の中、嘘をついた人がいます』

 

 何故この状況で誰が嘘をついた、と教える必要があるのだろうか。いつも通りの部活動、いつも通りの部員。まず、嘘をつく箇所があったとは思えない。

 

 

『島直樹の問い「今上詩織がヴァンガードか?」に対して今上詩織は否定しましたが、それが嘘です。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 思わず声が出そうになったが、手で押さえて事なきを得る。目を左右に向け、誰もこちらに注目していないことを確認し、息を吸って、吐いて。元いた場所へと戻る。

 二人のデュエルはそろそろ大詰めのようだ。アクアから伝えられたことを表に出さないよう、笑顔を作って話しかける。

 

「今上さん、後でデッキ調整の相手を頼んでもいいかしら? 初めて使ってみたデッキなんだけど難しくて……デュエルに集中したいから見学を入れずに一対一でお願いしたいのだけど」

 

「うん? そのぐらいならべつに問題ないよ」

 

 デュエルディスクにいるアクアは気付いた。気付いてしまった。財前葵がじわじわと怒りを溜めていることに。過去にヴァンガードと何があったのかは知らないが、このままでは大変なことが起きてしまう気がする。

 それに……初めて使うデッキ? 作った、ではなく? 人払いの理由として使うには少し弱い気もするが、もしかして。

 

 アクアはあわあわおろおろしながら、この後のデュエルの約束をする音声を聞き取ることしかできなかった。

 


 

次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
なんの変哲もない日常の中、

真実を見抜く力を持つ

水のイグニスがその力を発揮する。

それは今上詩織がヴァンガードである

という衝撃的なものだった。

真実を探るため、財前葵は今上詩織へ決闘を挑む。

 

「まさか、貴方がヴァンガードだったなんてね」

 

次回
どうも、ハノイの騎士(バイト)です。

 

馬鹿正直な嘘吐き
馬鹿正直な嘘吐き
馬鹿正直な嘘吐き
馬鹿正直な嘘吐き
馬鹿正直な嘘吐き
馬鹿正直な嘘吐き

 

「Into the VRAINS!」




特殊タグの力は素晴らしいですよ……というわけで次回予告再現。
いやあ葵ちゃんは何ンセスのデッキを使うんだろうなあ。
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