どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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前回の更新が4月16日……そして今日は12月24日。
大変お待たせして申し訳ありません。この話の後にあるデュエルを考え終わったのでようやく投稿することができました。
なお考え終わっただけであり、執筆が終わったわけではないのでまた更新期間が開くかもしれませんがそう長くはならない……はずです!

それでは久しぶりのバイトハノイ、どうぞお楽しみください。


ミラーリンクヴレインズ

 ハノイの塔を復活させるプログラムが完成した――その報を受け、旧リンクヴレインズに決闘者は集まっていた。ただ、イグニスやハノイの騎士に関わったことのある決闘者全員が来たわけではない。

 

 ゴーストガールとブラッドシェパードはリンクヴレインズに残り、SOLテクノロジー本社にて勤務中の財前晃へいざとなれば連絡できるように。

 外部からのバックアップはハノイの三騎士にパンドール、草薙翔一という優秀なハッカーにプラスアルファで対イグニス用AIを揃えたことでネットと現実、ともに準備は万端。

 ……の、はずなのだが。

 

「んー、もちょっと文章硬めにしとくかなあ」

 

 ヴァンガードは白い紙になにかを記し、満足いく出来になった、と頷いた後細く折りたたむ。数度操作しデュエルディスクから手のひらサイズの動く何かを出し、先程完成した細長紙をくくり付ける。

 スカーフのような結び方で、おしゃれさんになったソレは嬉しいのかちょろちょろと動き回っている。

 

「何やってんだ」

 

「万が一の備え?」

 

 ソウルバーナーが尋ねる。

 備えとして手紙、とくれば誰かへの連絡。たぶん伝書鳩かなにかだろう。だが……なんだかこう、ヴァンガードが手のひらの上に乗せているモノは体がてらてら黒光りして脚が六本あって二本の触角がうにょんと揺れて。

 

 どこをどう見ても一匹見たら、なアレであった。

 

「うわやめろ! こっちに向けるな!!」

 

 都会よりは自然が多い場所で生まれ育ったソウルバーナーだが、不意打ち気味で出てきたアレには流石にびっくりする。

 

「そっか」

 

「こっちに向けるなは野に放てって意味じゃねえよ」

 

 光を浴び、翅を広げ電子の大空に飛び立っていく――増殖しそうなアレ。黒い点が遠ざかっていくのを見守るヴァンガード。冷めた目のソウルバーナー。

 

「ここまで来て追加で変な事するのか……」

 

「変とはなんだ変とは。万が一でしかないけど……出番がない方がいい人達に通達。放置したままだとなんかやらかしそうだし」

 

 リボルバー、鬼塚はヴァンガード配下にいた無駄に濃い決闘者達のことかと思い出し、アースはハノイの騎士に混じり知っている様子の鬼塚を見て首を捻る。なお、スペクターはヴァンガードに関する事を五感で感じ取らないようにかなり距離を置いていたため、幸か不幸かこれらのやり取りを知る事はなかった。

 アースは不器用故にどう聞けばいいものかと悩んでいたが、その様子を察した鬼塚から知らなくていいと先回りで告げられていた。

 

『ヴァンガード。本当に……本当に、大丈夫なんですか? 敵が狙い通りに動くとは限りません』

 

 にゅ、とデュエルディスクから頭だけを出してこっそり問いかけるグラドス。プレイメーカーのデッキに入っているアストラムはサイバースよりも精霊としての側面を強くさせ、姿を隠しながらグラドスの言葉に頷き、共に心配している。

 

「大丈夫かって心配するところはもう超えてる。なんとかするしかないんだよ、ここまで来たには。協力者というか共犯者は向こうにもいるしアドリブ効かせても何とかしてくれるハズ。……失敗したら世界が終わるだけ。いつもの遊戯王でしょ」

 

 呟いた声に、善悪の両極性を表すと言われる幻神獣がばちりと一瞬だけ電気を走らせる。

 

「……アー、ウン。ワンチャンが起きたら神の怒りでこう、巻き込んでいこうかなとは思ってたのは否定しない。だってあいつ間違いなく三幻神を扱う資格持ってないでしょ」

 

『……まあ、いざとなれば私も責任を取りますよ』

 

「ん、助かる」

 

 言いたかった事は吐き出せたのか、グラドスはしゅぽんと音を立てデュエルディスクの中へ潜る。

 

「準備は整った」

 

 スペクターを近くへと呼び戻した後、リボルバーが手を上げる。その動作に呼応し、地面にはハノイの騎士のマークを複数組み合わせた五角形が現れる。

 リボルバーによるスキャンプログラム起動の声に応え、ハノイの塔へエネルギーが集まっていく。かつてリンクヴレインズを脅かした禍々しい赤い巨塔は、その真反対の神々しい青い光で染まっていた。

 

「衝撃に備えろ。対閃光防御」

 

 黒色のドーム状が全員を守るように広がる。リボルバーのバイザーも同様に遮光モードへと変化。皆が安全な状態にあることを確認したのち、リボルバーは叫んだ。

 

「発射!」

 

 ハノイの塔が天を貫く青い光を放つ。それはリンクヴレインズ全体への強力なスキャン。大規模なスキャンであるため、SOLテクノロジーのセキュリティ管理部も察知する。財前晃は心の中で戦いに挑む決闘者達の無事を祈っていた。

 

「始まったようだな」

 

「ええ」

 

 リンクヴレインズが大きく揺れた後に現れたそれをブラッドシェパードとゴーストガールが視認。続けて一般人達も騒ぎ出す。

 

 リンクヴレインズのデータに隠れていた、もう一つのリンクヴレインズ――ミラーリンクヴレインズを。

 

 

 

 時間は少し遡り、リンクヴレインズのとある一角。

 

 おしごとしました! と胸を張るヴァンガードからの手紙を託された増殖するG型プログラム。動きがプログラムっぽくない上に感情丸出しなので恐らく精霊入りだろうが、彼がそこを気にする様子は見られない。仲間の前で読み終えた、伝達という大事な役割を終えた紙は畳まれる。

 

「――と、いうわけで。万が一発生の場合、という前置きはあるが邪魔者は好きにして良いと指示が出た。敵はオモチャにしていいが面白半分で首を突っ込もうとした一般人には手加減しろよ?」

 

「そんな! 爆乳褐色ロリ化増殖するG健全本の原稿がまだ仕上がってないのに!」

 

「原稿仕上がってないのに誘惑しかない環境に来るんじゃねえよ原稿落とすぞ」

 

「やめろー! 現実を見せるなー!!」

 

「爆乳ロリ……ヘキの業が深い」

 

「ああ、蠱惑魔のアイツぐらい深いな」

 

「は〜? 俺は擬人化とかしませんが〜? ありのままの蠱惑魔一筋ですが〜??」

 

「俺らの中にまだヤバ性癖持ちが隠れていたってことかよ怖」

 

「ヤバいと決め付けるのはやめろ! 彼は新たな境地に目覚めたのかもしれない!」

 

「誰だ俺をヤバ性癖認定してる奴! 出てこいぶっ倒してやる!!」

 

「何やってるんですかねーあの人たち」

 

「シラネ」

 

「本当に何言ってるんだろうな。爆乳ロリって一般性癖だろ」

 

「えっ」

 

「えっ?」

 

 今日もいつもと変わらない混沌。なおメルフィーの戦闘狂と満足民はヴァンガードからの言伝を聞いた瞬間にさっさと獲物を探しに出て行った。

 

「んじゃ、留守番よろしくな」

 

 わさわさ、うぞうぞと黒光りする昆虫型プログラムが広場を埋め始める。指令を受けて動き出すヒャッハーに向けて前足をうまいこと動かし敬礼ポーズ。

 

「あれ? あと三十分ぐらいしたらブレイブ・マックスくんの番組の時間になるんじゃ……ここ来たら……うん、まあいっか! きっと明日の視聴率はもっと良くなるよねハムダイノルフィア使い!」

 

「ヘケェ♡」

 

「喘ぐな」

 

 わらわらわちゃわちゃ。闘志みなぎる決闘者達は騒がしくてもひっそりと、リンクヴレインズ各地へと散らばって行った。

 

 ……多分こっち、と入り組んだ路地を先導するのはブレイブ・マックス。ここだ! と自信満々に元ヒャッハノイらの居場所を突き止め、二人が放送準備を開始する。勘のみで辿り着くというミラクルを何度も繰り返してきた彼だが、今回ばかりは運がなかった。

 

「たのもーう!」

 

 ばたーん! と大きな音と共に開かれた扉。

 三人はそれを見た。見てしまった。

 

 いよぅ、と前足を上げる増殖しきったアイツを。

 

 三つの悲鳴。パニックにより放送開始のボタンをオン。当然の生放送速攻中止。アイツ飛翔。緊急ログアウト。

 ミラーリンク・ヴレインズの出現やその後に起きる事件などの衝撃でそこまで大きな話題にはならなかったが――その配信(事故)は、ある意味で伝説になった。あーあ。

 

 

 

 それはさておき決戦の舞台へと話を戻そう。

 

「ここが光のイグニス達が潜む場所か」

 

 プレイメーカーは辺りを見回す。事前に知っていなければリンクヴレインズだと判断できるほどに全く同じ街並み。違うのはログインしている一般人がいないことだけだ。

 

「っ!?」

 

 Dボードで地に足をつけず進む彼らめがけ、目を刺すような強い光が放たれた。

 誰もが目を瞑り、光源に対し手で影を作ろうとして……ぐん、と下方向に思いっきり引っ張られた。

 

『此処、危険地帯! 罠!』

 

 耳に届く不思議な声と皆の体に巻き付く影の糸。

 どうやら星なる影(ネフシャドール) ゲニウスが精霊界に来た時のなんやかんやでヴァンガードの手に宿らせた破壊の力モドキを媒介にして自分から出現。強い光により出来た濃い影をシャドール的パワーで操作し、皆を無理やりに回避させたようだ。

 ヴァンガードの魔力(ヘカ)を使わずに出てきたため、ゲニウスはすぐに実体化できなくなったが、皆が光に目を慣らす時間は稼げた。

 

「……おいおい、なんだこりゃあ」

 

 例えるなら光を細長く伸ばして作られた鎖。それが地面から、建物の壁から――とにかくいろんな場所から生え、人の間を縫うように伸びて空間を狭めていく。

 明確な意思をもって動く光の鎖は間違いなくライトニングによるものだろう。

 

「フン、避けたか。運のいいヤツ……。まあいい、ここからは僕たちが相手だ」

 

 背後から大量のビットブートを引き連れたハルが現れる。その間にも光の鎖は増え続けている。デュエルで対処するにしても、これほど多くの決闘者に攻められては時間が掛かる。特にビットブートは何度も倒したことのあるAI――量産が可能、ということは延々と増援がやってくる可能性すらある。

 

「私が行くわ!」

 

「これだけの量、ブルーメイデン一人に任せられるか! 行くぞアース!」

 

「無論!」

 

 カリスマデュエリストの二人はこの場に残り後続を断つべきと判断した。急ごう、と残された者達がDボードの速度を上げようとして――。

 

「テメェの相手は俺だよソウルバーナー!」

 

「ウィンディ!? ぐっ!」

 

 黒い眼帯とマントを纏い、見目を変えたウィンディがソウルバーナーの目の前に現れ腕を振るう。強風により手荒に吹き飛ばされ、ウィンディの手で開かれたゲートの中へと消えて行った。

 

「ライトニング様の邪魔をする馬鹿はお掃除してやるでーす!」

 

 ロボッピが引き連れるのはデフォルメされ目玉のついた家電たち。歌いながらこちらへえっちらおっちらと走ってくるその姿は不気味だ。

 

「ロボッピ……」

 

「私が出ます! 後は任せましたよ!」

 

 プレイメーカーとハノイの騎士、どちらがロボッピと戦うことになってもAiの精神ダメージは大きくなるだろう、と判断したグラドスが自分から打って出る。

 

「ゴメン、グラドス! 頼んだ!」

 

 ……一人、また一人と分断されていく。残るはプレイメーカーとAi、ヴァンガード、リボルバー、スペクター。

 一向に姿を現さない光のイグニスとボーマンを探す彼らを誘うように、四つのゲートが用意されていた。

 

「それぞれが繋がっている先の解析は時間をかければ可能、とのことだ」

 

「追加連絡。リンクヴレインズ全体も不安定になってる。この状態が長続きするのはマズイ」

 

 デュエルディスクを介してハノイの三騎士と草薙翔一からの連絡が入る。

 

「迷う暇はない。行くぞ」

 

 最初にプレイメーカーが足を進める。

 

「ああ」

 

 続けてリボルバーが。

 

「ヴァンガード、私に殺される前に負けるんじゃありませんよ」

 

「そっちこそ」

 

 スペクターとヴァンガードもそれぞれ別のゲートへと消え――今此処に、AIと人間による決戦の幕が上がった。

 


 

次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
自分は賢いのだから偉い、と

名乗りを上げる家電の王様。

ただ一人の言葉から意思を得た決闘者。

イグニスに届き得る性能を持つ

AI同士のデュエルが今、始まる。

 

「お前を倒して、もっと賢くしてもらうです!」

 

次回
どうも、ハノイの騎士(バイト)です。

 

クレーバー・マシン
クレーバー・マシン
クレーバー・マシン
クレーバー・マシン
クレーバー・マシン
クレーバー・マシン

 

「Into the VRAINS!」

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