どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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か……書き溜め……ウオオ我慢できないので投稿だ!


聖天の霹靂

 ヴァンガードがゲートを通った先にあったのは石造りの荘厳な神殿であった。

 

 辺りを見回したが、光のイグニスらはいない。ミラーリンクヴレインズ突入時に襲撃してきたビットとブート、ハル、ウィンディ、ロボッピを除けば残るのはライトニングとボーマンの二人。

 ゲートは四つだったので数が合わないが、それは一人ずつ相手をする、ということなのだろう。

 

 探索しようと取り敢えず神殿の外に出ようとしたが、見えない壁により囲まれていてそれはできなかった。

 精霊の力を借りれば無理やりに壊すことはできるだろうが、それを今する必要性が感じられないので保留。下手に弄れば罠が起動する、という可能性の方が高い。

 

 

 そうして対戦相手が現れるまで待機していたヴァンガードの目の前に現れたのは――味方であるはずのスペクターだった。

 

 

「デュエル開始後に通信が途切れ、再接続が不可能、と。……そうですか、わかりました」

 

 焦った声の三騎士からの通信と、目の前にいる彼を合わせれば自ずと答えは見えてくる。

 スペクターは光のイグニスと戦い、敗れ――洗脳されてしまった。

 

 思い出すのはつい先ほど、ゲート突入前に聞いた言葉。私に殺される前に負けるな、という激励と怒りの混ざっていたあの声はもう、別のものに染められている。

 

「…………そっちが負けたら駄目でしょうが」

 

 手に力が入る。今すぐに光のイグニスに決闘を挑みたい衝動を堪え、彼がどういう状態にあるのかを確認する。

 

「ねえ。スペクター、()()()()()()()

 

「突然何を言っているのですか? そんなもの()()()()()()()()()()

 

 男は本気で困惑した様子の視線を向けている。

 

「ライトニング様のおわす場所に侵入するとはどんな愚か者かと思えば、ただのオカルト信者だったとは。このような馬鹿を倒すだけで良いとは少々興醒めです」

 

 ため息をついたスペクターがパチン、と指を鳴らすと神殿内上部にて複数の中継映像が出現した。プレイメーカーと相対するボーマン、こちらを認識したリボルバーとグラドスの驚く顔、それだけではなく鬼塚とアース、ブルーメイデンが戦う姿も。

 

 ……この中継の目的は公開処刑だ。どちらか、もしくはどちらもが倒れる様を皆へ見せつけるための悪趣味な仕掛け。

 

「絆というくだらないものに左右される程度の力しか持たない奴らには充分な仕打ちでしょう?」

 

「…………ああ、そう。わかった。まさかこうなるとは、ね」

 

 ヴァンガードは明確な返答をせず、デュエルディスクを構え、起動させる。

 

「とっとと終わらせよう」

 

 対戦よろしくお願いします、とわざとらしい礼を入れた後にスペクターもデュエルディスクを構える。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

VANGUARD

4000

VANGUARD

4000

VS

SPECTER

4000

SPECTER

4000

 

「おや、私の先攻ですか。では永続魔法、種子弾丸を発動。そして聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を通常召喚」

 

聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)

星1/攻0

 

《種子弾丸》

プラントカウンター 0→1

 

 種子弾丸――植物族モンスターが召喚・特殊召喚されるたびプラントカウンターが1つ置かれ、墓地に送ることでカウンターの数に応じた効果ダメージを与える効果も持つカードだ。

 スペクターは両手を広げ高らかに声を上げる。

 

「現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 召喚条件はレベル4以下の植物族モンスター1体! 私は聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)をリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク1、聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)!」

 

聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)

Link1/攻0

【リンクマーカー:下】

 

《種子弾丸》

プラントカウンター 1→2

 

 スペクターの背後へと彼が操る聖天樹――その起点となる若木が召喚された。だが、幹にある顔は普段と違いどこか生気がないように見える。

 

聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を素材としてエクストラモンスターゾーンにリンク召喚された聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)の効果で、デッキから聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)を手札に。手札を1枚墓地へ送り、永続魔法聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)を発動。では、そろそろギアを上げましょうか。通常魔法聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)を発動。デッキから聖種の天双芽(サンシード・ツイン)を特殊召喚し、私は1000のダメージを受けます」

 

スペクター

LP 4000→3000

 

《種子弾丸》

プラントカウンター 2→3

 

聖種の天双芽(サンシード・ツイン)

星2/守800

 

 スペクターの身を削り、樹は種をまく。ダメージを受けたことで聖天樹はざわめきだす。

 

「まず聖種の天双芽(サンシード・ツイン)で墓地から聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を特殊召喚。次にダメージを受けたことで聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)の効果が発動。その数値分だけライフポイントを回復し、エクストラデッキから『サンヴァイン』モンスター、聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)を特殊召喚。最後に自分が効果ダメージを受けたため、墓地の青い涙の天使を除外してデッキから通常罠、聖花葬(サンブルーム・フューネラル)をセット」

 

スペクター

LP 3000→4000

 

《種子弾丸》

プラントカウンター 3→4→5(MAX)

 

聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)

Link1/攻600

【リンクマーカー:上】

 

「青い涙の天使……聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)発動のコストで墓地に送ったワケね」

 

 聖天樹はスペクターの胴にぐるりと己の枝葉を巻き癒す。ついで、とばかりに伏せられた罠は攻撃力を参照して回復する効果を持つ少々厄介なカードだ。

 

「特殊召喚に成功した聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)の効果をリンク1の聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)を対象に発動。そのリンクマーカーの数×300ライフポイントを回復します」

 

スペクター

LP 4000→4300

 

 追加で回復したことにより、スペクターは初期のライフポイント4000を微量ながら超えた。

 

「先制攻撃といきましょうか。種子弾丸を墓地へ送る事で、このカードに乗っているプラントカウンターの数×500ポイントのダメージを相手に与える。カウンターの数は最大の5つ! 2500のダメージを受けなさいヴァンガード!」

 

 植物が増えるとともに貯め込まれた種がヴァンガード目掛け射出される。ターンが回ってくる前に大ダメージを受けることになってしまったヴァンガードだが、落ち着き払った様子で手札から1枚のカードを出した。

 

「ダメージを与える効果の対策をしていないとでも? 相手がダメージを与える効果を発動した時、手札のジャンクリボーを墓地に送り効果発動! 種子爆弾の効果の発動を無効にする!」

 

 クリクリ鳴く目つきの悪い機械クリボーが種へと体当たりし、爆発。爆風が後続の種も吹き飛ばし、ヴァンガードは無傷で立っていた。

 

「そう簡単にはいかない、ということですか。再び現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 召喚条件はリンクモンスターを含む植物族モンスター2体以上! 私は聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)聖種の天双芽(サンシード・ツイン)聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)の3体をリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)!」

 

聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)

Link3/攻0

【リンクマーカー:上/左/右】

 

「リンク召喚に成功した聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)の効果で墓地から聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を特殊召喚。――三度現れよ、私たちの道を照らす未来回路! アローヘッド確認! 召喚条件は植物族モンスター2体以上! リンク3の聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)をリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク4、廻生のベンガランゼス!」

 

《廻生のベンガランゼス》

Link4/攻2500

【リンクマーカー:上/左/右/下】

 

 連続リンク召喚により現れたのは光属性のリンク4モンスター。緑の葉をマントのように翻し、内に流れる赤い樹液が輝く。右には槍を模した腕を、左には盾を模した幹を担ぐ人型の樹。

 植物族ならば採用可能な緩い召喚条件をしているが、それだけでスペクターのデッキに採用されたわけではない。最も厄介なのはダメージと引き換えに相手モンスターをバウンスする効果だ。

 

聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)の効果発動。墓地からレベル4以下の植物族の通常モンスター、聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を特殊召喚。……このターンはこれで終いにしましょうか。現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 召喚条件は『サンアバロン』リンクモンスターを含む植物族モンスター2体! 私は聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)をリンクマーカーにセット! リンク2、聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)!」

 

聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)

Link2/攻0

【リンクマーカー:左下/右下】

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 スペクターのエクストラモンスターゾーンにはリンク先が2つとも空いている聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)、その真下であるメインモンスターゾーンには廻生のベンガランゼス。

 魔法・罠ゾーンにはシュラインとセットされたカードが2枚、内1枚は通常罠聖花葬(サンブルーム・フューネラル)と分かっている。

 

 ……余計な力を抜くように、軽く息を吐く。

 

「私のターン、ドロー。手札の『帝王』魔法、帝王の凍気を墓地に送って汎神の帝王を発動。デッキから2枚ドローする」

 

 ヴァンガードは手札の補充からスタート。……というよりも、手札がほとんど緑色と魔法カードが占めているのでこの動き出しは仕方がないものであった。

 精霊達の後押しによりドロー運をかさ増しし、相手の展開に合わせてデッキからカードを揃えるためなのだろうがかなり心臓に悪い。

 

「墓地の帝王の凍気の効果! 墓地にあるこのカードと汎神の帝王を除外し、フィールドにセットされたカード1枚を対象としそのカードを破壊する。破壊するのは青い涙の天使でセットしたカード()()()()方だ!」

 

「……っ! 聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)が……ッ!」

 

 順風満帆であったスペクターの先攻展開、それを崩しにかかる。スペクターがぎらりと睨みつける。

 青い涙の天使の効果により伏せたカードはその場所がわかっているので、もう片方の謎の伏せカードは確実に狙える。

 

 ……まさかアニメオリジナルカードの中でも少々ヤバめな効果をしている聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)だとは思わなかったが、これでヴァンガードは安心して展開ができる。

 

「相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多いため、速攻魔法緊急ダイヤを発動。機械族・地属性、レベル4の銅鑼ドラゴンとレベル5のクリフォート・ツールをデッキから効果を無効にして守備表示で特殊召喚。このカードを発動するターン、私は機械族モンスターでしか攻撃宣言できない」

 

《銅鑼ドラゴン》

星4/守2100

 

《クリフォート・ツール》

星5/守2800

 

 魔法カードによりフィールドに現れた銅鑼ドラゴンとクリフォート・ツールはどちらも通常モンスター。ベンガランゼスの効果は『効果モンスター』を対象にするため、このタイミングで効果の発動はできない。

 

 ベンガランゼスでモンスターをバウンスしダメージを受け、聖天樹(サンアバロン)による回復が起き、回復に連鎖して聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)でダメージを与え――というコンボをヴァンガードは一番警戒していた。

 

 というのも、永続罠聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)にある回復分ダメージを与える効果には()()()1()()()()。ライフポイント4000のアニメ世界では非常に脅威となるカードだ。

 

 まあ、とりあえず。今回は最初に破壊できたのでヨシとする。

 

「通常魔法、マジカル・ペンデュラム・ボックス発動! デッキから2枚ドローし、お互いに確認する。確認したカードがペンデュラムモンスターだった場合、そのカードを手札に加える。違った場合はそのカードを墓地へ送る」

 

 ヴァンガードはドローしたカードを見て――ふっと微笑む。

 

「ドローしたのはEM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)とオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。どちらもペンデュラムモンスターのため手札に加える」

 

 スペクターへと見せたカードはどちらも確かにペンデュラムモンスター。気になるとすればクリフォートとは無関係のモンスターであることぐらいか。

 

 ハノイの騎士と協力するにあたり、ヴァンガードはデッキの構築を明かし続けることを決めた。が、それはスピードデュエルのデッキのみ。マスターデュエルのデッキについては誰も何も知らない。何をしてくるのか予想がつかない。

 

「先駆けとなれ、我が未来回路! 召喚条件は機械族モンスター2体! 私は銅鑼ドラゴンとクリフォート・ツールをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク2、クリフォート・ゲニウス!」

 

《クリフォート・ゲニウス》

Link2/攻1800

【リンクマーカー:左下/右下】

 

 クリフォート・ゲニウスがリンク召喚され、ペンデュラムスケールに置くであろうカードを2枚既に手札に揃えた。ペンデュラム召喚とそれに伴うサーチが確定――スペクターは動いた。

 

「ベンガランゼスの効果をクリフォート・ゲニウスを対象に発動。私はそのモンスターの攻撃力分のダメージを受け、そのモンスターは持ち主の手札に戻る」

 

「……クリフォート・ゲニウスは自身以外のリンクモンスターが発動した効果を受けない」

 

「ええ、分かっています。故に私はベンガランゼスの効果で1800のダメージを受けるのみとなる。――ダメージを受けたことで聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)の効果が発動。ライフポイントを1800回復し、エクストラデッキから聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)を特殊召喚!」

 

 自傷、からの展開。スペクターが受けたダメージはすぐに消え、聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)に実っていた果実が地面に落ちる。中から現れるのは攻撃を担う剣士。

 

聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)

Link1/攻800

【リンクマーカー:下】

 

聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)は特殊召喚に成功した場合、フィールドの『サンアバロン』リンクモンスター1体を対象とし、攻撃力をそのリンクマーカーの数×800アップする効果がある。私が対象にするのはリンク2の聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)。よって聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)の攻撃力は1600上がり2400に!」

 

聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)

攻800→2400

 

 力を得た剣士は片刃の剣を構え、母なる樹を守る騎士として立ち塞がった。

 ヴァンガードは手札から2枚のカードを取り、デュエルディスクの両端へと置く。

 

EM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)とオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 ヴァンガードの背後、左右離れた位置で立ち昇る二つの光の柱。その中に浮かぶのは二色の眼を持つ竜と、逆光によりその顔がはっきりとは見えないエンターテイナー。

 ペンデュラムモンスター達は互いに視線を合わせた後、頷き、ヴァンガードの指揮下で敵を打破するべく気合を入れる。

 

「2枚のペンデュラムスケールは8と4、よってレベル5から7までのモンスターが同時にペンデュラム召喚が可能になる――このままならね! 永続魔法、魂のペンデュラムを発動!」

 

 それは、ペンデュラム召喚を世に広めたとある決闘者に由来する永続魔法。

 

「ペンデュラムゾーンのカード2枚を対象とし、対象のカードのペンデュラムスケールをそれぞれ1つ上げるか下げる。この効果で稀代の決闘者(デュエリスト)のスケールを8から9に上げ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのスケールを4から3に下げる。これにより、私はレベル4から8までのモンスターが同時にペンデュラム召喚可能になった!」

 

 ヴァンガードのエクストラデッキに加わったペンデュラムモンスター2体どちらもペンデュラム召喚が可能になり、クリフォート・ゲニウスによるサーチを経由したクリフォート・エイリアスのアドバンス召喚がほぼ確定した。

 

 クリフォート・エイリアスはアドバンス召喚が成功した時フィールドのカード1枚を手札に戻すうえ、その効果の発動に相手は効果発動ができない。スペクターはここしかないか、と青い涙の天使の効果で伏せた罠を発動する。

 

聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)を対象に罠カード聖花葬(サンブルーム・フューネラル)を発動! そのモンスターと同じ種族のフィールドのモンスターの攻撃力の合計分ライフポイントを回復する!」

 

 いわずもがなスペクターが選んだのは植物族。同じ種族となる廻生のベンガランゼスの攻撃力は2500、聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)の攻撃力は2400。合計4900もの回復を1枚のカードで行った。

 

スペクター

LP 4300→9200

 

「ゲニウスの効果を相手フィールドの聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)と自分フィールドのペンデュラムゾーンにいるオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを対象に発動。2枚の効果をターン終了時まで無効にする」

 

 ゲニウスから漏れ出た影のようなものが纏わりつき、その効果を蝕む。ただでさえ生気がなさそうな聖天樹がさらに弱々しくなっていく――それに対して、スペクターは特に反応しない。いや、効果を無効にされて大変だ次のターンにどう巻き返そうか、ぐらいは考えているかもしれないが、それだけだ。

 

 

 ……今の彼は、よくも我が母なる樹を穢したな、という怒りを一切抱いていない。

 

 

「光のイグニスが非科学的な現象を嫌って洗脳ついでに記憶を消したことで精霊の力も弱くなった、ってこと? ――なら、精霊がいる事の強さってものを見せてあげる! 振動せよ、起動せよ! 集え、私のモンスター達! ペンデュラム召喚! 来て、銅鑼ドラゴン、クリフォート・ツール! そしてクリフォート・ゲニウスのリンク先にモンスター2体が同時に特殊召喚されたことでデッキからレベル5以上の機械族モンスター、クリフォート・エイリアスを手札に加える!」

 

《銅鑼ドラゴン》

星4/守2100

 

《クリフォート・ツール》

星5/守2800

 

 緊急ダイヤで呼び出され、リンク素材として活用した通常モンスター2体が再び並び立つ。

 

「魂のペンデュラムの効果! 自分のペンデュラムモンスターがペンデュラム召喚される度にこのカードにカウンターを1つ置き、フィールドのペンデュラムモンスターの攻撃力はこのカードのカウンターの数×300アップする!」

 

《魂のペンデュラム》

カウンター 0→1

 

「クリフォート・ツールに装備魔法機殻の生贄(サクリフォート)を装備。機殻の生贄(サクリフォート)を装備したツールを2体分のリリースにし、クリフォート・エイリアスをアドバンス召喚!」

 

《クリフォート・エイリアス》

星8/攻2800→3100

 

 クリフォートの中核を担うモンスターと十の輝石を贄とし、巨大なステルス機が出撃。魂のペンデュラムにより強化されたことでその攻撃力は3000の大台を超えている。

 

「フィールドから墓地に送られた機殻の生贄(サクリフォート)の効果でデッキからクリフォート・アーカイブを手札に加え、アドバンス召喚に成功したエイリアスの効果でベンガランゼスを手札に戻す!」

 

 聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)をこちらの効果でフィールドから退かせば聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)は自身の効果により破壊されるが、ヴァンガードは廻生のベンガランゼスを退かすことを優先した。ベンガランゼスは墓地にある時、他の墓地の植物族リンクモンスターを除外することで蘇ることができる。

 だからこそ、簡単な再利用がしにくいバウンスで今のうちに処理するべきとヴァンガードは判断した。

 

「クリフォート・ゲニウスで効果が無効となっている聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)に攻撃!」

 

 聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)の攻撃力は0。攻撃力1800の前に抗う術はない。クリフォート・ゲニウスの放ったレーザー攻撃を受け、樹は焼け落ちる。

 

スペクター

LP 9200→7400

 

「クリフォート・エイリアスで聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)に攻撃!」

 

「くっ……! 自分フィールドの植物族リンクモンスターが戦闘または相手の効果で破壊される場合、代わりに墓地の聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)を除外する!」

 

攻撃力3100対2400。本来なら戦闘破壊できたはずが、スペクターの墓地にあった魔法カードが身代わりとなる。

 

スペクター

LP 7400→6700

 

「サーチ可能かつ身代わり効果持ちの展開札……厄介な」

 

 スペクターのフィールドにモンスターを残してしまったままバトルフェイズを終え、メインフェイズ2に入る。

 

「先駆けとなれ、我が未来回路! アローヘッド確認! 召喚条件はペンデュラムモンスターを含む効果モンスター2体以上! 私は銅鑼ドラゴンとリンク2のクリフォート・ゲニウスをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)!」

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)

Link3/攻2000

【リンクマーカー:左下/下/右下】

 

 白の三角帽子に赤い髪、ペンデュラムの赤と青をモチーフとした装飾を持つ魔法使いが剣を片手に舞い降りる。

 ……ペンデュラムスケールにいる2体が魔法使いの顔を見てどこか固まっているように見えるけれども、多分、気のせいである。

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)がリンク召喚した場合に効果発動、自分のEXデッキから表側のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。私はクリフォート・ツールを手札に。また、奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)は自分フィールドのペンデュラムカードの数×100攻撃力が上がる」

 

 今、ヴァンガードのフィールドにはペンデュラムスケールの2枚とペンデュラムモンスターのクリフォート・エイリアス、合計3枚のペンデュラムカードが存在する。よって魔法使いの攻撃力は2000から2300に上昇する。

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)

攻2000→2300

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 声には出さず、おのれ、とスペクターは歯噛みする。

 墓地の聖花葬(サンブルーム・フューネラル)にはさらなる効果――墓地のこのカードを除外し、このターンに発動したお互いの墓地の魔法・罠の合計枚数のレベル以下のモンスターを破壊。さらに破壊されたモンスターのコントローラーへ破壊された自身のモンスター数に応じ効果ダメージを与える――があった。

 だが、ヴァンガードは帝王の凍気の墓地効果で魔法を2枚除外していたため、レベル4のペンデュラムモンスターを破壊する妨害ができなかったのだ。

 

 ヴァンガード自身に向いたリンクマーカーとペンデュラムスケール、ある程度の下地が整えば出てくるのは高レベルモンスターばかりになり、墓地の聖花葬(サンブルーム・フューネラル)の効果は使用するチャンスはほぼ無いだろう。

 

 ……スペクターの手札は0。ドローするカードによっては巻き返すのに厳しくなる。それは困る。ライトニング様に顔向けできなくなる。

 

 デッキを睨みつける。

 道具は道具らしく、私の望みのまま使われるべきなのだ。突然非科学的だの精霊だの、意味のわからないことを言うあいつごときに負けてはならない。

 

 

 私を救ってくださった、ライトニング様のためにも!

 

 

「私のターン。ドロー。……これはこれは、良いカードを引きました。ですが使う前にある程度は済ませておきましょう」

 

 ドローしたカードを確認したが使わずに、今フィールドに残っているカードのみでスペクターは展開を開始する。

 

「永続魔法聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)の効果で墓地の聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を特殊召喚。現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)をリンクマーカーにセットし、聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)をリンク召喚! 効果でデッキから聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)を手札に加えます」

 

 先攻1ターン目と同様に現れるリンク1の聖天樹。

 

「さあ、再び現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)をリンクマーカーにセット! リンク2、聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)をリンク召喚!」

 

聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)

Link2/攻0

【リンクマーカー:左下/右下】

 

聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)発動。効果により1000ダメージを受け、聖種の天双芽(サンシード・ツイン)をデッキから特殊召喚。特殊召喚した聖種の天双芽(サンシード・ツイン)の効果で墓地から聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を特殊召喚。また、聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)の効果により、受けたダメージ分回復しエクストラデッキから聖蔓の守護者(サンヴァイン・ガードナー)を特殊召喚」

 

スペクター

LP 6700→5700→6700

 

聖種の天双芽(サンシード・ツイン)

星2/守800

 

聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)

星1/守600

 

聖蔓の守護者(サンヴァイン・ガードナー)

Link1/攻600

【リンクマーカー:上】

 

 瞬く間にモンスターがフィールドに計4体並ぶ。

 

「三度現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 聖種の天双芽(サンシード・ツイン)聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)聖蔓の守護者(サンヴァイン・ガードナー)をリンクマーカーにセット! リンク3、聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)をリンク召喚!」

 

聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)

Link3/攻0

【リンクマーカー:上/左/右】

 

 聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)の左下向きのリンクマーカーの先――フィールドの真ん中にリンク3が陣取る。

 

聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)の効果で墓地の聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)を蘇生! 四度現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)より聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)をリンク召喚! 効果はリンク3の聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)を対象にし、攻撃力は800から3200へアップする」

 

聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)

Link1/攻800→3200

【リンクマーカー:下】

 

 聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)のリンク先へとリンク召喚され、かのモンスターを万全に使う準備は整った。

 怒涛の連続リンク召喚は終わり、スペクターは謎だった1枚の手札を明らかにする。

 

「では参りましょう。魔法カード、貪欲な壺を発動! 墓地の聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)2体、聖種の天双芽(サンシード・ツイン)聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)をデッキに戻して2枚ドロー!」

 

「ここでリソースの回復、ね」

 

 連続でリンク召喚をすれば当然、墓地に大量のモンスターが眠ることとなる。使い切ったはずの聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)もエクストラデッキに戻り、次のスペクターのターンでまたリンク召喚が可能となった。

 

聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)の効果を聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)を対象に発動。このターン、そのモンスターは『サンアバロン』リンクモンスターの数まで攻撃可能になる。私のフィールドにいる『サンアバロン』は聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)聖天樹の灰樹精(サンアバロン・メリアス)の2体、よって2回攻撃が可能に!」

 

 高い攻撃力を持つモンスターが連続攻撃できるようになったのを受け、ヴァンガードは動く。

 

「相手メインフェイズに奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)の効果発動。手札からクリフォート・アーカイブを守備表示で特殊召喚する」

 

《クリフォート・アーカイブ》

星6→4/守備1000

 

 特殊召喚されたためクリフォート・アーカイブのレベルは4となり、また、ペンデュラムカードが増えたので奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)の攻撃力が変化する。

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)

攻2300→2400

 

 ヴァンガードのフィールドにはリンクモンスターとペンデュラムモンスターが2体。聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)の効果もあり、一番狙われるだろうリンクモンスターの攻撃力を少しでも上げ、ダメージを抑えようとしたのだろう。

 

「壁を増やそうと狙いが変わるわけではないのですがね。バトル! 聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)に攻撃!」

 

「攻撃宣言時に罠カード、パワー・フレーム発動! その攻撃を無効にし奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)にこのカードを装備する! このカードを装備したモンスターの攻撃力は、その時の攻撃モンスターと攻撃対象モンスターの攻撃力の差の数値分アップする!」

 

 魔法使いを囲むように出現した直方体の形をしたフレームが攻撃を阻んだ後、空いている片手でフレームをがっしり掴んで装備、ストロングに。……そのカードはおそらくそういう使い方をするものではない、とツッコミをする者はいなかった。

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)

攻2400→3200

 

「ならばもう一度聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)に攻撃! 攻撃宣言時に手札の六花精エリカをリリースし、剣士の攻撃力をターン終了時まで1000アップする!」

 

聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)

攻3200→4200

 

 攻撃力を上げての二度目の攻撃。ヴァンガードにはもうセットカードはない。この攻撃は通る――そう、スペクターは確信していた、が。

 

「モンスター同士が戦闘を行うダメージステップ開始時にEM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)のペンデュラム効果発動! このカードを手札に戻し、デッキから魔法カードを除外。奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)は戦闘破壊されず、戦闘で発生するダメージは半分にな――おっと!」

 

 効果により除外するはずのカードがデッキから飛び出していったが、それを稀代の決闘者(デュエリスト)はアクロバティックな動きで追いかけ手に取り、自身のデュエルディスクで発動するような動きを見せた後に手札へと戻っていった。

 ペンデュラム効果で戦闘破壊は防げるようになったが、ペンデュラムカードであるEM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)がフィールドから離れたので奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)の攻撃力は100下がってしまう。

 

奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)

攻3200→3100

 

 花の精の後押しを受けた片刃と、決闘者の加護を得た両刃の剣がかち合う。数号の斬り合いの後、軍配は聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)に上がった。

 攻撃力4200と、攻撃力3100。ヴァンガードへ発生するダメージは1100の半分、550。

 

ヴァンガード

LP 4000→3450

 

EM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)の効果により除外した異次元からの宝札の効果で、次の私のターンのスタンバイフェイズに異次元からの宝札は手札に戻り、戻った時互いに2枚ドローできる」

 

「……おや。互いに、ですか。私はカードを1枚セットしターンエンド。ターン終了時に聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)の攻撃力は戻ります」

 

 複数のカードを使いリンクモンスターを守り抜いたことで、ヴァンガードはエクストラデッキからのペンデュラム召喚が可能となった。が、現在エクストラデッキに存在するペンデュラムモンスターは少ない。

 

「私のターン、ドロー! スタンバイフェイズ、異次元からの宝札が私の手札に戻る。そして互いに2枚ドローする」

 

「では有り難く」

 

 これでヴァンガードの手札は6枚、スペクターの手札は2枚に。

 

「スケール8のEM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)をペンデュラムスケールに再びセッティング!」

 

 手札にはクリフォート・ツールもあるが、そちらをセットした場合はクリフォートのみしかペンデュラム召喚ができなくなるため、今回はスケールに使うのを見送った。

 ペンデュラムカードが増えたことで奇跡の魔導剣士(エクシード・ザ・ペンデュラム)の攻撃力が変化、パワー・フレームの後押しもあり聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)に並ぶ3200へと上昇する。

 

「振動せよ、起動せよ! ペンデュラム召喚! 来い、銅鑼ドラゴン! ペンデュラムモンスターがペンデュラム召喚されたことにより、魂のペンデュラムにカウンターを1つ置き、ペンデュラムモンスターの攻撃力はさらに300アップする」

 

《銅鑼ドラゴン》

星4/守2100

 

《魂のペンデュラム》

カウンター 1→2

 

《クリフォート・エイリアス》

攻3100→3400

 

「クリフォート・アーカイブと銅鑼ドラゴンをリリースし、クリフォート・シェルをアドバンス召喚!」

 

《クリフォート・シェル》

星8/攻2800→3400

 

 守備表示のモンスター2体をリリースして現れたのは攻撃的な効果を備えた、巻貝のような見目のクリフォート。

 

「『クリフォート』モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功したクリフォート・シェルは2回攻撃と貫通効果を得る! また、クリフォート・アーカイブがリリースされた場合の効果を聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)を対象に発動、そのモンスターを手札に戻す!」

 

 フィールドから離れたアーカイブからの砲撃に対し、スペクターは抵抗しない。

 

「……チェーンはありません。聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)が効果でフィールドを離れたので聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)が自身の効果で破壊されます」

 

 たとえ他に『サンアバロン』リンクモンスターがいようと、1枚でも相手の効果で離れれば『サンヴァイン』達は自壊してしまう。

 そして、『サンアバロン』達は攻撃対象にならない効果を持つが、この効果が適用されたモンスターのみの場合、直接攻撃を許してしまうというアニメ版の地縛神に似た能力となっている。

 

 ライフポイントを削る絶好の機会。ヴァンガードが逃すはずがなかった。

 

「クリフォート・エイリアスでダイレクトアタック!」

 

スペクター

LP 6700→3300

 

 クリフォート・エイリアスの攻撃は通った。一撃で3400を削ったうえに、まだ攻撃可能なモンスターは残っている。

 次の攻撃が通れば、ヴァンガードが勝つ。

 

 ――このままならば。

 

「ああそんな、私が、負ける…………? クッ、ハハハハハ!」

 

 突然にスペクターは笑い始める。この状況で精神がやられた? そんな筈はない。芯になる存在が確かならば、スペクターの精神は盤石となる。となれば、残る可能性は。

 

「まさか!」

 

「ええ、そのまさかですよ! ダメージを受けたことで永続罠、聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)発動! 聖蔓トークンを特殊召喚、そのままリンク素材とし聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)をリンク召喚! その後、受けたダメージの数値分、私のライフポイントを回復する!」

 

聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)

Link1/攻0

【リンクマーカー:下】

 

スペクター

LP 3300→6700

 

聖天樹の輝常緑(サンアバロン・グローリアス・グロース)の効果! ライフポイントが回復した分、3400のダメージをヴァンガードに与える!」

 

 報いを受けよ、とばかりにカードから放出された無数の電撃がヴァンガードを貫く。

 

「ぐっ、うああぁああぁ――っ!」

 

ヴァンガード

LP 3450→50

 

 ダメージを受けた証である無数のノイズがアバターの全身に走る。痛みで身体を支えられなくなったのか膝を折るも、倒れ伏す訳にはいかないと気力で耐える。

 

「まだ、まだだ……っバトルフェイズを終え、メインフェイズ2、に……移行! 一時休戦、発動! 互いに1枚ドローし、次の相手ターン終了時まで互いに受けるダメージは0になる……!」

 

「おや、そうきましたか。ではドローを」

 

 残り50――効果ダメージを与えるカードとしてよく知られる火の粉でも、使われてしまえば簡単に吹き飛ぶ数字だ。直接効果ダメージを与えるカードでなくとも、スペクターが回復すればそれが効果ダメージになり敗北に繋がる。

 受けるダメージを0にする一時休戦であれば、この状況でもなんとか凌ぐことができる。限界での延命措置が吉と出るか凶と出るかはまだ、二人にも分からない。

 

 痛みが引いてきたのか、息を整えた後にヴァンガードはドローしたカードを使う。

 

「左腕の代償を発動。手札を全部除外しデッキから魔法カード、天空の虹彩を手札に。また、除外された異次元からの宝札は次の私のターンに手札に戻り、スタンバイフェイズに互いに2枚ドローする」

 

 左腕の代償を発動するターンは魔法・罠のセットができない。が、一時休戦により攻撃を防御するカードを用意する必要は薄くなっている。

 

 ヴァンガードが左手に持っていた手札たちは代償として全て消えたが、それにより手札にあった異次元の宝札がまた除外され効果を起動する。

 

「またですか……少々しつこいですね」

 

 前髪を弄りながら、スペクターは鬱陶しそうに呟く。

 どこからでも除外さえできればドローに変わる。相手にもドローさせてしまうデメリットはあるが、使用するカードの傾向を把握している相手ならば対策はなんとでもできる。

 

「フィールド魔法、天空の虹彩を発動!」

 

 フィールド魔法の発動で、空に模様が浮かび上がる。

 それはペンデュラム召喚の演出と非常によく似た、幾度も描かれた振り子の軌跡。

 

「天空の虹彩の効果でEM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)を破壊し、デッキからオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンを手札に加え――ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 大仰に一礼し、一人は決闘の舞台から降りる。

 次に現れるのは巨大な水晶を背に負うドラゴン。ペンデュラムスケールにいるオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと似た名前と体躯をした暗色の竜は一鳴きし、光柱の中で浮遊する。

 

「エンドフェイズにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果を発動。自身を破壊してデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター、エキセントリック・デーモンを手札に。また、『オッドアイズ』が効果で破壊されたのでアークペンデュラムのペンデュラム効果が発動。デッキからオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!」

 

《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》

星5/守2400

 

 EM(エンタメイト)稀代の決闘者(デュエリスト)の後を追うようにしてオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンもフィールドから消え、アークペンデュラムの水晶が輝き、新たなオッドアイズを呼ぶ。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 一時休戦の適応下であっても油断はできない、とヴァンガードが特殊召喚したオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンにはエクストラデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果を無効にできる、という防御に向いた効果を持つ。

 

 スペクターのフィールドには未だ聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)がある。再び種子を蘇生させ、連続リンク召喚をしてくるだろう。そうなれば、きっとまたリンク4を出してくるに違いない。

 

 ライフポイントの差は歴然。

 余裕を見せるスペクターに対し起死回生の一手となる神は――未だ、デッキの中にて時を待つ。

 


 

次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
次回予告
ヴァンガードの抵抗虚しく、

スペクターはエクストラリンクを完成させる。

ラスト1ターン、再起を図るは

機殻(クリフォート)妖瞳(オッドアイズ)――そして善と悪を表す幻神獣(オシリス)

電脳世界に、真の神が降臨する。

 

「3体のモンスターを生贄に捧げる――!」

 

次回
どうも、ハノイの騎士(バイト)です。

 

幻神招雷
幻神招雷
幻神招雷
幻神招雷
幻神招雷
幻神招雷

 

「Into the VRAINS!」




次回の3つ(3体の生贄)

次話はまだ書き上がってないのでデュエル後半の更新はまだお待ちください……!
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