「私のターン! …………やっぱりか」
初期手札5枚を確認したヴァンガードは相手に聞こえないよう呟く。
クシャトリラ・オーガ。
オルフェゴール・ディヴェル。
オルフェゴール・トロイメア。
速攻のかかし。
クシャトリラ・バース。
「テンション下がってるじゃん……」
何もできなくはないけど、うーん、と悩む手札だ。
オルフェゴールの展開が出来なくもないが、これからを考えるとクシャトリラを中心に使って彼らから認められたい。
やれって言われたからしぶしぶ従います、ではなくいつでもどんなデュエルでもやる気を出してもらえる存在にならないとこれからが困る。だからこそ、どのカードから使うかについてはヴァンガードは特に迷わなかった。
「自分フィールドにモンスターがいないためクシャトリラ・オーガを特殊召喚! 効果を発動しデッキから罠カードクシャトリラ・プリペアを手札に」
《クシャトリラ・オーガ》
星7/守1000
赤い幻鬼は斧を大地に叩きつけ音を鳴らす。その振動がデッキへと伝わり、1枚のカードを飛び出させる。
……テンションが低いため、効果の発動を指示してから動き出すのが少し遅かった。
「永続魔法クシャトリラ・バースを発動し、レベル7のオルフェゴール・トロイメアをリリース無しで通常召喚」
《オルフェゴール・トロイメア》
星7/攻100
オルフェゴール・トロイメアはレベルや展開ルートの都合で通常召喚をする機会が殆どない。滅多にない出来事でテンション上がっているのか髪の毛のウネウネ具合が4割ほど増している。
……その余分なテンションをクシャトリラへ是非とも分けてあげてほしい。
「レベル7のモンスター2体……来るか!」
「それじゃあ、ご期待にお応えしようか」
いつもならオルフェゴールを含む2体のモンスターでオルフェゴール・ガラテアをリンク召喚するのだが、今回は違う。
フィールドに並んだモンスターのレベルはどちらも7。リンク召喚とは異なる召喚法を使うことができる。
「レベル7のクシャトリラ・オーガとオルフェゴール・トロイメアでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! ランク7、クシャトリラ・シャングリラ!」
《クシャトリラ・シャングリラ》
ランク7/守3000
ライズハートとのデュエル時とは異なり、かなり縮小されたサイズで真紅の要塞がフィールドに浮遊する。
クシャトリラ・シャングリラは破壊される場合の身代わりとしてしかエクシーズ素材を取り除かないため、墓地に送りたいオルフェゴール・トロイメアが少しもったいない感がある。
だが守備力3000かつ場持ちは良く、スタンバイフェイズにデッキから新たなクシャトリラを呼べる。耐えてからの反撃にはもってこいのモンスターだ。
「カードを1枚セットしてターンエンド」
サーチしたクシャトリラ・プリペアをセットし、するべきことは全て完了。
……さてはて、ヴァンガードを守るモンスターをどうやって乗り越えてくるのか。相手の言動と実力は釣り合っているのか否か。気を抜かずに待ち構える。
「俺のターン、ドローぅ! オラ気合い入れてくぞお前らー!」
オーウ! とやる気に満ちた複数の返事がヴァンガードを威嚇する。
「スタンバイフェイズにクシャトリラ・シャングリラの効果を発動。デッキからクシャトリラ・ユニコーンを特殊召喚!」
《クシャトリラ・ユニコーン》
星7/守2100
シャングリラより派遣されてきた追加クシャトリラモンスターは幻馬。
「壁モンスターを増やしやがったか……だがな、俺らに対してエクシーズゥ? いいカモだぜェ!」
高いステータスのモンスターが増えたものの、それを気にする必要はないとばかりにワルな鬼は牙を剥き出しにして笑う。
「メインフェイズに入って手札の
「へ? わぁっ!?」
ガボンガの手札から猪に跨がってぶんぶん釘バットもどきを振り回すゴブリンが飛び出す。クシャトリラ・シャングリラの周りを衛星のように回っていたオーバーレイユニットを奇声を上げながら粉砕し、ガボンガのフィールドへと戻る。
《
星3/攻1600
「オーバーレイユニットを使っての特殊召喚!? ……エクシーズメタはちょっと予想できなかったな」
エクシーズモンスターはオーバーレイユニットを使うことで効果を発揮するものが殆どだ。そこを妨害してくるこの効果はエクシーズ召喚の天敵と言っても過言ではない。
「特殊召喚した特攻ダグの効果でデッキから
「けど、モンスター効果なのが災いしたね。クシャトリラ・ユニコーンの効果発動! エクストラデッキを確認し、その内のモンスター1体を選んで裏側表示で除外する!」
先程の特殊召喚は効果の発動によるもの。よってクシャトリラ・ユニコーンの効果が使える。
どのカードを除外するのか確認のため、デュエルディスク上部へエクストラデッキの全てが投影される。
――相手が何をしたいのか、その殆どがヴァンガードの目の前にさらけ出された。
「ふうん。ランク3がメインっぽいけど6の展開も可能、なーるほどね?」
エクストラデッキには黒いカードばっかり、つまりエクシーズが中心になるテーマ。
さっき特殊召喚されたのはレベル3のモンスター、ならランク3が中心になるデッキだ。
それだけではなくランク6のエクシーズも存在する。となると、レベル6のモンスターか、レベルを合計する・揃える効果を持つカードが間違いなくある。
「ふむふむふむ」
エクストラデッキから得られる情報を興味深く眺めているヴァンガードの邪魔をするべくガボンガらはヤジを飛ばす。
「そんなにジロジロ見るんじゃねえ覗き魔!」
「すけべ!」
「ドすけべ!」
「すけべじゃないでーす。んー、どれにするかなあ……」
殆どが3枚しっかり積まれているので、クシャトリラ・ユニコーンで1枚使えなくしたところで効き目は薄い……が、ちょっと面倒な効果で1枚のみしかないカードがあった。
「悩むけど、ここは1枚しかない
「とっておきの隠し球がァー!?」
「ヘンタイー!!」
「破廉恥ー!」
「ああもーうるさーい! 相手のカードが裏側表示で除外されたのでクシャトリラ・シャングリラの効果発動! 相手のメインモンスターゾーンを1つ封鎖!」
このデッキはクシャトリラを入れているデッキだが、クシャトリラに特化している訳ではない。
なのでライズハートがデュエル中で見せた戦術のように何度も裏側で除外してフィールドを完全に封じることは狙えない。盤面封鎖もちょっとした嫌がらせ、テンポが乱れたらいいな程度の効果を期待してのものだ。
「魔法カード
《
星3/攻1400
ガボンガが呼び出したのは大蛇を従えるゴブリン。蛇はオーバーレイユニットをペロリと飲み込んで満足げにしている。
2体目の
「特殊召喚した冷血ミアンダの効果で手札から爆音クラッタを特殊召喚!」
《
星3/攻1500
これでフィールドにはレベル3のモンスターが3体。
「レベル3の冷血ミアンダと爆音クラッタでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
「来るか……エースモンスターが!」
エクストラデッキにいるモンスターはクシャトリラ・ユニコーンにより既に確認済み。何を出すのかは予想がつく。
……2体のモンスターが渦を巻く中より、デュエル相手がゆっくりと歩みを進める。
「――我等喧嘩上等
《
ランク3/攻2100
リーゼントに見えるヘッドライトを搭載した魔獣に乗る男こそ、
「エクシーズ召喚に成功した
《
星3/攻1300
「そしてそしてェ! オーバーレイユニットが取り除かれたためクシャトリラ・シャングリラを対象に
ガボンガを乗せている魔獣が咆哮すると、クシャトリラ・シャングリラは吸い込まれるようにしてガボンガの手の中にすっぽり入ってしまった。赤い要塞がフィールドから消えたことでメインモンスターゾーンの封鎖も解除される。
「サイッコーの土産っスね!」
「バラせばどれだけの金になるんだろうな! ワクワクが止まらねぇや!」
「ふーん、あんなに口では嫌がってたけどクシャトリラ・ユニコーンを狙わなかった、か。次のスタンバイフェイズでクシャトリラが増えるのを防ぐためかな。……それともデュエル終わってもカードを返さずにマジで金属製品としてバラすつもりだったりする……?」
それはまずい。よろしくない。とてもよろしくない。
そんなバカなことが、と言いたいが……言動的にマジでやりかねない。
ガボンガの手元にある元クシャトリラ・シャングリラ現オーバーレイユニットがぷるぷる震えている気がする。
「レベル3の特攻ダグと
《
ランク3/攻1700
現れたのはカメと、三傑の名の通りその上に乗る3人のゴブリン。乗り手の体長の3倍以上はあるイカしたサイズのハンドルにした結果、手はまったく届いていない。
「フィールドにオーバーレイユニットが3つ以上ある場合、グリアーレ三傑の効果で『ゴブリン』モンスターはダイレクトアタックが可能になる! さあさあ行くぜ総攻撃だ! ダイレクトアタックだァ!」
総攻撃力3800。全ての攻撃を許してしまったなら一気に敗北が近付くだろう。
攻撃が通れば、だが。
「直接攻撃宣言時、手札の速攻のかかしを捨ててその攻撃を無効に。その後、バトルフェイズを終了する」
「チッ……セコい手を使いやがる。カードを3枚セット。エンドフェイズに
舌打ちと乱暴な物言いによるターンエンドだが、ヴァンガードはペースを乱すことなくいつものようにターンを開始する。
「私のターン、ドロー! うん、デッキの調子は戻ってきたかな。オルフェゴール・プライムを発動。手札のオルフェゴール・ディヴェルを墓地に送って2枚ドロー!」
ヴァンガードはドローした2枚のカードを見て微笑む。
「クシャトリラ・ユニコーンの効果でデッキから
「なんだぁ? またエクシーズ召喚の準備かぁ? どんなんだろうとメッタメタのギッタギタにしてやるけどなぁ!」
「チューナーモンスター、レボリューション・シンクロンを通常召喚」
《レボリューション・シンクロン》
星3/攻900
「レベル7…………いや3だぁ!?」
揃っていないレベル、そしてチューナー。てっきりエクシーズ召喚が来ると思っていたガボンガはびっくり仰天。
「悪いけど急いでるから雑にいかせてもらうよ! クシャトリラ・ユニコーンとレボリューション・シンクロンでフルール・ド・バロネスをシンクロ召喚!」
《フルール・ド・バロネス》
星10/攻3000
シンクロ召喚の光の後に現れたのは
「フルール・ド・バロネスの効果をガボンガを対象にして発動、破壊する!」
まず厄介なモンスターを片付けるべくヴァンガードは命令する。
「させるか! 永続罠
「ここは絶対に通す! バロネスの第二の効果でその発動を無効にし破壊する!」
「ぐぬぬっ……なら、グリアーレ三傑のオーバーレイユニットになっている
一連のチェーンブロックが積み終わり、逆順処理が始まる。
まず最初に現れたのはガボンガの呼び出したモンスター。
《
星3/守0
自らの操る風により迫り来る罠の妨害を払い除けたバロネスは止まらず、誤ることなく、手に持つ槍でガボンガを殴り飛ばした。
「ぐほぁー!!」
ガボンガは打撃に苦しむ様子を見せるが、すぐに起き上がり指示を飛ばす。
「まだまだァ! 頼むぞクラッタ! 特殊召喚したクラッタの効果で墓地の
《
ランク3/守0
ぶん殴られたため大きなたんこぶをこさえてしまいヘロヘロになりながらも、ガボンガは再びフィールドへと戻ってきた。
「自分フィールドにレベル7以上のシンクロモンスターがいるため墓地にいるレボリューション・シンクロンの効果発動。デッキの一番上のカードを墓地に送りレベル1になって特殊召喚」
《レボリューション・シンクロン》
星3→1/守1400
「クシャトリラ・バースの効果で墓地のクシャトリラ・ユニコーンを特殊召喚」
《クシャトリラ・ユニコーン》
星7/攻2500
バロネスを呼び出すためのシンクロ素材になり墓地にいた2体がどちらもフィールドに戻ってくる。
「ウゲーッ! そんな効果まであんのかよその永続魔法! またシンクロで暴れるつもりか!? させねえぞ! 墓地の
《
星3/守0
「モンスター効果を使ったことでクシャトリラ・ユニコーンの効果発動! 2枚目の
「関係ねえ! オーバーレイユニットが取り除かれたことで
クシャトリラ・ユニコーンをオーバーレイユニットに変え、再びのシンクロ召喚を防ぐ。
モンスター効果やセットカードを消費し、大型モンスターの侵攻を何度も凌いだガボンガの顔にはだんだんと疲れが見え始めていた。
「へ、へへ……どうだ。流石にもう終わるだろ」
「流石にもう仕方ないので墓地のオルフェゴール・ディヴェルを除外してデッキから
《
星4/守0
相手が疲れていようとヴァンガード的には知ったこっちゃないし、使える効果がまだあるので、忘れ去られていたオルフェゴール達による展開がスタートする。
「まだ続くのかよッ!!」
相手は疲れている様に見えるが、ツッコミができる元気はあるしセットカードが1枚残っている。油断はできない。
「特殊召喚したギルスの効果でデッキからオルフェゴール・スケルツォンを墓地に送る。――先駆けとなれ、我が未来回路! 召喚条件は『オルフェゴール』モンスターを含む効果モンスター2体! 私はレボリューション・シンクロンと
《オルフェゴール・ガラテア》
Link2/攻1800
【リンクマーカー:右上/左下】
「こうなりゃ仕方ねえ! 速攻魔法エクシーズ・インポート! そのかわい子ちゃんを
まさかの効果にガラテアがジタジタばたばたするが、残念ながら彼女に魔法への耐性はない。ひゅいーん、と相手の方へ吸い込まれていく。
「うわーっ人攫いーっ!」
まさかのセットカードによりオルフェゴール展開をしようとしていたヴァンガードの足元を掬う。
ヴァンガードのデッキは相性が良さそうだなーで思いつくものを全部ぎゅぎゅっとまとめた混沌。それゆえカードは殆どが1枚のみのハイランダー寄り構築。オルフェゴール・ガラテアもピン刺しだ。
墓地のオルフェゴール・トロイメアを使えばまたオルフェゴール展開は可能だが、ガラテアが奪われた以上リンク3のオルフェゴール・ロンギルスを経由せねばディンギルスは出せない。
なのでエクストラデッキ内でガタガタ暴れ始めているディンギルスの出番は残念ながら無い。ステイステイ。
「ぜえぜえ……どーだ! これで今度こそ何も手はねえだろ!」
「何も手はない……それはそっちのセリフじゃない? 最後のセットカードを使ったんだから、さ――セットされているクシャトリラ・プリペアを墓地に送り、手札から
《
星7/守2000
可能性の真紅の竜がメタルコーティングされた爪を見せびらかす感じのポーズで登場。
「があああああ!! まだ展開を見せつけられるッッ!!!!」
「効果で墓地のメタル化・強化反射装甲をフィールドにセット!」
「ぐあああ! いつそんな罠が墓地へ行って……あ、あのちびドラゴンメカの効果かぁ!?」
いくらなんでも都合が良すぎると頭を抱えたが、はっと気付く。
「だが罠カードってことは使えるのは次のターンからだ! それなら別になんもできねぇ――」
「
「何ィーーーーッ!?」
ガボンガはマズイマズイヤバイヤバイと慌てている。
このカードが通りさえすればヴァンガードは勝てると確信している、だから使うのを最後に残していたのだ、と理解してしまったから。
「メタル化・強化反射装甲発動!
《レッドアイズ・ブラックフルメタルドラゴン》
星8/攻3400
メタル化のコーティングがドラゴンの全身を覆い、新たなるモンスターへ変貌する。
真紅の眼を持つ黒鉄の竜。
種族をドラゴンから機械へ――その昔、とある決闘者の手で得た可能性をさらに進化させた存在へ。
「その後、メタル化・強化反射装甲を装備! これによりレッドアイズ・ブラックフルメタルドラゴンは攻撃力・守備力が400アップし、さらに魔法・モンスターの効果では破壊されず、相手は装備モンスターを魔法・モンスターの効果の対象にできない!」
「攻撃力3800に耐性付与だとぉ!? グリアーレ三傑の表示形式変更効果が……クソ、今あーだこーだ言ってもどうしようもねぇ!」
ヴァンガードのターンになってから特殊召喚した
「バトルだ! レッドアイズ・ブラックフルメタルドラゴンでグリアーレ三傑に攻撃!」
「グリアーレ三傑の効果! オーバーレイユニットを取り除いてその攻撃を無効にする!」
モンスターを対象にするわけではなく、攻撃そのものに作用する。だから効果はある。ダメージを減らし次のターンへと繋げればきっと。
「ブラックフルメタルの効果! 相手が効果を発動した時、その発動を無効にする! さらに相手フィールドにいる攻撃表示モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!
ガボンガが手にしようとしたわずかな希望を、轟轟と燃え盛る黒い炎が焼き尽くす。
「あっづあぁー!?」
結果として、彼のヘアースタイルをアフロっぽく上手に焼くことになった。
ガボンガ
LP 4000→1900
あぢゃぢゃ、と手で消化しているガボンガだがそんなことをしている場合ではない。攻撃を無効にできなかったのだから。
「グリアーレ三傑の効果は無効になった、故に攻撃は止まらない! ブラックフルメタルドラゴンでグリアーレ三傑にそのまま攻撃だ!」
黒光りする爪を大きく振りかぶりカメに向かって切りつける。頑丈な甲羅を破壊することはなかったが、攻撃の勢いでカメは高速スピンを始めた。
ガボンガ
LP 1900→0
「ぐあー!! やっぱり黒魔女がいないと駄目なのかー!?」
回転するカメにホーミング機能でもついていたのか、何故かガボンガにぶち当たり、ガボンガは叫びながらギャグみたいな吹っ飛び方をしていく。
……頭から落下し、ずぼっと上半身が綺麗に埋まった。慌ててわっせわっせうんとこしょと頼れるリーダーを
「どう見てもギャグだよねー……」
「ギャグじゃねえよ! ワルだよぉ!」
救出され黒焦げアフロになったガボンガのセリフである。
……残念ながらどう見てもギャグだ。
「いやーそれにしてもすんごい力でしたね! よっ、ニュー姉御!」
「ニュー…………姉御?」
見た目ギャグなガボンガが突然、ヨイショしてくる手のひらくるくるなガボンガにジョブチェンジ。当然、仲間の皆さんが詰め寄る。
「ちょっとニュー姉御ってどう言うことよ! なんでこんな強いだけのおチビを担がなきゃいけないワケ?」
「だからこそだろ。褒めまくって持ち上げまくって油断したところで持ってるオタカラを丸っと頂いちまえばいいんだぜへっへっへ……」
「なるほどさっすがぁ!」
「いや聞こえてる聞こえてる、ってあーわー邪魔! 急いでるのに!」
新たな姉御を祝って胴上げじゃあい! とわっしょいわっしょい。背丈は小さめだが流石モンスター、力はあるのでちゃんと持ち上がる。
うわーどうしたらいいんだろこれ、と考える中――デュエルディスクに着信が入る。
「グラドス……あ、仁くんは無事そうでデュエルはもうちょいで終わりそうなの? よかったぁ」
胴上げの声で向こうの声が聞き取りにくいが会話は可能。
「…………そっか。精霊が精霊を狙った、ね。ライズハートの世界を襲った侵略者と関係あるかどうかは直接聞いて調べてみる」
「おっ、どこかに行くんですかい?」
「どこまでも乗せていきやすぜ!」
「……随分と能天気な奴らだ」
唐突に現れ会話に乱入するのはちょっとキレ気味のライズハート。
「この女、力にならないヤツは洗脳して手駒にするぞ」
「えっ? またまたそんなご冗談、を…………」
言われたヴァンガード本人は過去を思い出し頭を抱えて苦しんでいた。
「黒歴史にしときたいあの時の話をいつ知っていやデュエルディスクにいる皆から話聞いたのねわかったもうしないでお願い」
「……えっマジの話なんスか」
「過去にしているから忠告として言ってるんだが」
この反応は演技では無い。マジのマジでデジマで本当にあったことらしい。
ゴブリンと魔獣は全員身を寄せ合い、ぷるぷると震える。
「と」
「……と?」
「とんでもねえ人の下に就いちまった〜! これならディアベルスターにパシられてた方がマシだったかもしんねえ〜!!」
ライズハートの発言をきっかけにヴァンガード株価は印象最悪にオールベットサヨナラホームラン。青い空にぎゃおぎゃおわおわお鳴き声が響き渡る。
「なんで今言うのさぁ……」
「フン」
口をつぐんでいるがなんとなく予想はできる。ガボンガがシャングリラをバラして売り飛ばそうとしたからだろう。人の黒歴史を腹いせに使わないでください。
というかヴァンガードがとんでもねえ極悪人として認識されてしまった。困る。
とりあえず精霊界、って雑に扱ったら捨てられた〜! なんてまた泣き出すかもしれないし、精霊界よりスプリガンズのいる自分のデュエルディスクへ放り込んどくのが一番かもしれない。
スプリガンズなら自分よりも気が合うんじゃないか、と期待はある。……流石に
「やったねしおちゃん、仲間が増えたよ」
『それ良くない時のセリフぅ』
出番のなかったクラッキング・ドラゴンがデュエルディスクからツッコミという役割を果たしていた。
ヴァンガードを出迎えるのは見知らぬ精霊達。
『白』の魔法使いから語られるは
世界に起きている異変と謎の機械の侵攻。
先導者は新たな世界の危機と直面する。
〜デュエルディスクの中であった一幕〜
クラッキング・ドラゴン「ちょっと前に
ライズハート「いいのか……?」
イヴリースは「ヴァンガードは極悪人ですよ。私に希望を与えてそれを奪う所業をしたんですから」などと証言しており……。