多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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プロローグ

ーーーーーー伐刀者(ブレイザー)

それは魔力を用いて異能の力を発揮する特異存在だ。

古き時代には「魔法使い」、「魔女」と呼ばれて

きた者たちは、人智を超えた力を持っていた。

彼らは自らの魂を武装……固有霊装(デバイス)として

顕現でき、その力は武道や兵器を軽く凌駕出来た。

それ故にーーーーーー、現代では警察や軍隊、

果ては戦争ですらも伐刀者なしでは成り立たない

状態であった。

 

だが、世の常として大きな力には相応の責任が

伴われる。

その一つとして、≪魔導騎士制度≫がある。

それは、国際的な機関の認可を受けたた伐刀者の

専門学校を卒業した者にのみ「魔導騎士」の

社会的な立場を与え、固有霊装の使用も認可する、

というものだ。

 

 

 

 

 

 

その専門学校の一つ、≪破軍学園≫に「彼女」の

姿はあった。

 

 

 

 

 

 

 

その姿は、極めて面妖というか……かなり目立つ

格好であった。

まず、全身にありとあらゆる防寒具を纏っている。

イヤーマフにネックマフラー、厚手の手袋、

ダッフルコートにウォーマーキャップと、

最早それのおかげでその姿はまるで羊のように

もこもこした感じになっていた。

 

ウォーマーキャップから出ているその長髪は

シルクのように白く、さらさらとしていて、

また防寒具から僅かに伺える蒼色の瞳、

真っ白な肌は北国……ロシアとかフィンランド、

スウェーデンとか……の出身を想起させる。

 

もうすぐ7月に入るというのに、防寒具を、

それも全身に纏っていて、彼女は汗の珠一つ

その顔にかいていなかった。

 

 

 

しかし、だからといって。

 

 

 

 

(……あづい……)

 

汗をかいていない=暑くないというわけでは

なかった。

確かに顔には汗をかいている様子は見えないが、

防寒具を着ている体の方はというと下着が

肌に引っ付くレベルで蒸れていた。

 

(喉乾いた。体蒸れる。日本の夏辛い)

 

顔では全くそんな様子を見せず、心の中で

不平不満を呟き続ける。

だったらその防寒具脱げよという話になってくる

のだが、彼女の中にはそのような選択肢はなかった。

 

彼女の名は、多々良白雪。

破軍学園では(・・・・・・)Dランクの魔導騎士であり、

また貪狼学園の≪不転≫多々良幽衣の(自称)妹でも

あり、そして。

 

 

 

 

≪暁学園≫8人目の生徒……つまり、≪解放軍(リベリオン)≫の

凶手である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の中で日本の夏に悪態をつきながら白雪は

自らのクラス、一年一組の扉を開けた。

 

「おはよー」

 

「白雪さんおはようございます」

 

既に先に来ていた数人の生徒が彼女に

挨拶をよこす。

 

「……ん」

 

それを白雪は分かるか分からないかというぐらいの

小さな返事と、軽い首肯をした。

それから、自分の席である1番右側の最も後ろの

席へと座る。

 

教室も暑いことに変わりないが、教師が来れば

エアコンがつけられるのでそのうち楽になる。

 

(選抜戦も、残り数回。≪暁学園≫からのオーダーは

なんとかいけそうかな)

 

机に突っ伏しながら彼女は自分のスマートフォンの

画面を見た。

画面には次の選抜戦の相手の名が記載されている。

相手は3年のDランク、弓使い。

 

(今回も≪落第騎士(ワーストワン)≫と当たらなくて

良かった)

 

そう思い、僅かに白雪は安堵の溜息をついた。

 

「おはよう、白雪さん」

 

背後からの挨拶に振り返ると、噂をすれば影という

べきか、そこには件の≪落第騎士≫こと黒鉄一騎の

姿があった。

 

「ん……おはよ……」

 

気怠げに一騎に挨拶を返し、再びスマホの

画面へと顔を向ける。

今度は選抜戦のことではなく、最近の習慣として

彼女にとってたった一人の“姉”である多々良幽衣へ

メールを送るためだ。

 

(姉さまがいなければ、ボクは人形のままだった)

 

メールの内容を打ちこみながら白雪は昔のことを

思い出していた。

 

(本当に、感謝してもしきれないくらいに、ボクは

姉さまに人形から人間にしてもらった)

 

それ故に、白雪は幽衣に対して異常なまでの

愛情を注いでいるのだが、白雪は自分の愛が

“重過ぎる”ことには全く気付いていない。

 

(あぁ、姉さま……)

 

白雪は、自らの姉の元気を祈りながら、

まさかそれが元気を奪っているとも知らず

総文字数1万字越えの文面を送信するのだった。

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