多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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対話

ーーーーーー模擬戦から数十分後。

白雪は一輝から飲み物をもらい、一休みしていた。

 

「……ふう……」

 

喉を潤して、一息つくと白雪は一輝を見やった。

 

「ありがとう。わざわざ手合わせに付き合ってもらって

その上水まで奢ってもらっちゃって」

 

「ああ、いいよいいよ。ボクも学べることが

たくさんあったし」

 

一輝はそう言いながら白雪へ質問した。

 

「そういえば手合わせの途中で多々良さんが

発動した魔術だけど……あれは一体何?」

 

「あちゃー、やっぱりバレてたかー……」

 

顔を手で覆ってため息をつき、それから

一輝へ白雪は質問の返答を返す。

手合わせの途中で発動した魔術の名は

石化の魔眼(ガンド・ロック)≫だということ。

相手の動きを束縛することのできる魔術で、

標的を見ることで発動できること。

使用し過ぎると眼に副作用が出るということを

伝えた。

 

「≪石化の魔眼(ガンド・ロック)≫って……

何よそれ、そんなの聞いたことないわよ⁉︎」

 

「まあ……ボクも教えてもらった身だからね」

 

「教えてもらった?」

 

一輝の言葉に頷きながら白雪は続ける。

 

「そう。かなり昔……5、6年前だったかな?

“先生”に教えてもらったんだ。

石化の魔眼(ガンド・ロック)もそうだし、体術とかも色々と」

 

「へえ……そうなんだ」

 

「あ、あと日本にはTSUBAMEとかいう

ありとあらゆる攻撃を回避する化け物が

山に住んでるって聞いた」

 

「うん、どこのマンガかな、それ」

 

そんな生物が存在していたら今頃世の中は

大騒ぎになっている。

 

「……え、いないの?」

 

「いるわけないってば‼︎」

 

「ええ……ニンジャも?」

 

「いない」

 

がっくりと肩を落とす白雪。

どうやら本気でいると信じていたらしい。

彼女はステラと同じく海外からの留学生と聞いて

いたので、この辺りの誤解は世界共通なのかも

しれない。

 

「ところで、シラユキが教わったって言う

“先生”って誰かしら?」

 

「言ったって誰だかわからないと思うよ。

地元でもそうだったんだから日本じゃ尚更」

 

「……そう。残念ね。私もそんな魔術を

教えてもらいたいものだけど」

 

心底残念なのだろう、ステラはしゅんとした様子で

呟いた。

 

「……会わない方がいいと思うよ。

先生は技術は確かに素晴らしいけど、人間としては

唾棄すべき人物だから」

 

ステラに対して、白雪は諌めるように言った。

それが本当に“先生”という人物に対して心底

軽蔑しているように聞こえ、一輝は驚いた。

人に対して余り興味のなさそうな彼女にそこまで

軽蔑させる何かをその人物はしたのだろうか?

 

「今日はもうそろそろ帰らせてもらうよ。

本当にいい体験が出来た」

 

「また手合わせできたらお願いします」

 

「あはは、気が向いたらね」

 

白雪は笑いながら……正確には上っ面だけ

笑いながら一輝達と別れた。

心の中で思案しながら。

 

(今、先生は日本にいるんだよな。

刑務所だから会うことはないだろうけど)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー日本某所、とある刑務所。

その地下奥深くに彼は禁錮刑に服していた。

 

「……そういうわけで今日本に私の愛弟子が

来ているというのかね、≪蟲使い(べルゼブブ)≫」

 

『ええ、その通りです。今は白雪……、

多々良 白雪と名乗っているようですが』

 

長身の青年に話しかけてくる声。

牢の中には彼一人しかいないというのに、である。

もしも誰かがその声の発信源を見つけたなら

必ず驚くだろう。

 

「しかし、君の能力は季節の縛りがあるにしろ

非常に強力だね。こうして私の元に情報を

伝えてくれるのだから」

 

『……私はあくまでも情報を伝えるだけです』

 

青年の耳元に止まっている蝿。

声はそこから発信されていた(・・・・・・・・・・・・・)

 

『≪群雲(レギオン)≫は完璧な仕事をしていますよ。

一人で世界中173ヶ所(・・・・・・・)

要人の動向の監視を行っているのですから」

 

「奴の仕事ぶりは分かったから、とりあえずは

今日本にいる白雪の目的について調べろ」

 

『……御意』

 

蝿が青年の耳元から飛び立つ。

青年は笑いながら、壁一面に書いた数式に

新たな数字を加えた。

 

「さて……今回は私を動かすに値する、

価値あるものはいるのだろうか?」

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