週末の東京。ボクは駅でとある人を待っていた。
ホームに電車が止まり、自動ドアが開く。
そこからわらわらと出てくる人混みの中で、
ボクと同じく防寒具を夏に近い季節だというのに
身体中に纏った少女の姿をボクは見逃さなかった。
そう、ボクの姉……多々良 幽衣の姿を。
「姉様」
「ギッ……⁉︎くそッ、白雪ェ……テメェ
待ってやがったな⁉︎」
「もちろん。姉様と一緒に行きたかったからね」
にっこりと笑うボクを忌々しそうに見ながらも
姉様はボクの隣に来てくれた。
「ねえ、姉様。その……腕組んでもいいかな?」
「……勝手にしろ」
ボクは姉様と腕を組んで駅を出る。
ああ、なんと幸せなのだろう。
姉様と二人きりで街中を歩くことがこれほどまでに
幸せに感じるだなんて……。
ボクは暫しの間天にも昇るような思いを
味わうのであった。
東京郊外。
ボクと姉様が所属している「暁学園」の建物は
山をいくつか超えたところにあった。
ボク達はそこまで行くのに途中でヘリを使用し、
暁学園まで移動した。
「にしても、だ。クライアントは何考えてんだ?
ヘリなんざ使わなくても、陸路で行けんじゃ
ねェか陸路でよォ」
ヘリはクライアントである人物が用意したものだ。
その点に関してはボクも同意見。
目立つような移動方法を使用するなんて本当に
何考えてるんだと言わざるを得ない。
「ヘリに“風祭”ってあったね、そういえば」
「≪
なると相当重要な依頼なのだろう。
そう思うとボクは気が引きしまった。
「緊張するね、姉様」
「アァ?アタイはプロだから緊張なんてしねーっての」
「……姉様、かっこいいです」
さて、気が引きしまった状態のままヘリは暁学園
へと到着した。
ボクは姉様の他にもどんな手練れがいるのかと
胸を膨らませながら地面に降りたヘリから
第一歩をーーーーーー、
「はーっはっはっはっは‼︎よくぞここまで来たな
≪
我が真名は常人には解せぬ故、ここでは
風祭凛奈とでも名乗っておこう‼︎」
危うく踏み外しかけた。
なんだ、
そんな二つ名持ってないぞ、ボク。
恐らく、目の前にいるライオンとメイドを
従えたあの小さな少女がボク達の仲間なのだろう。
にしてもだ。
……少々イタいのはどうにかならないのだろうか?
「そして隣にいるのが我が右腕、シャルロットだ」
「シャルロット・コルデーです。
以後、お見知りおきを」
そして、隣にいる長身のメイド。
ボクは彼女を見るなり、思わず彼女の元へと
歩き出していた。
そして、コルデーの前に立つと。
「……よろしく、コルデーさん。
ボクの名前は多々良 白雪。
お互い、
「……‼︎ええ、こちらこそ」
熱い握手を交わした。
「? シャル?何かあったのか?」
その様子に凛奈は当惑し、
「あぁ……類は友を呼ぶ、かよ……」
何故か姉様は顔を抑えていた。
「既に皆様お集まりしております。
どうぞこちらへ」
「うむ、その通りだ。既に我ら≪暁≫の戦士は
揃っておる。貴様らが最後だ」
既に皆揃っているのならば、ここで立ち話を
している訳にもいかない。
「姉様、早く行こう」
「分かってるっての」
バリバリと後頭部を掻きながら姉様が歩き出す。
ボクもそれに続いて歩き始めた。
「あ、雛祭も来るんでしょ」
「風祭だっ‼︎」
……あ、この人意外とイジりがいがあるわ。
あとで色々とイジってやろう。
「よおーこそ、白雪さん、幽衣さん‼︎
ボクが今まで暁の連絡役を担当していた
平賀です。いやあ、会えて嬉しいですよ、フフフ」
「……どうも」
「……ギギ、白雪ィ。テメェもしかしてだけど
苦手かそいつ?」
平賀と握手しているボクに姉様がそっと囁く。
無論、苦手だ。だって……。
「何処か“先生”と似た感じがする」
「……ハン、そうか」
おまけに、平賀だけではない。
暁メンバーの一人、紫乃宮 天音からも同じ感じが
するのだ。もう嫌で嫌で仕方ない。
唯一の救いは同志シャルロットとイジりがいの
ありそうな風祭がいることだ。
「ま、イカれた野郎の一人や二人ぐらい、
この世界じゃいたっておかしくはねェ。
我慢しろ」
「うん、我慢する。夏祭とかコルデーもいるし」
「……夏祭じゃなくて雛祭じゃねェのか?」
「夏祭でも雛祭でもなくて、我の名は
風祭だーッ‼︎」
「お嬢様、落ち着いて下さい。ジョークですよ、
きっと」
やっぱりイジリがいのある人物だ、風祭。
「皆様、クライアントが到着しましたので、
こちらへ集まって下さい」
遠くから平賀の声が聞こえた。
クライアントは誰なのだろうか?
とりあえずボク等がやるべきことはただ一つ。
クライアントが望む結果を出すことだ。
「ギギギ……行くぞ、白雪ィ」
「分かったよ、姉様」
ボクは姉様の声に応じ、共に暗い闇の奥へと
歩き出すのだった。
まるで、ボク達の住む世界を表すような
昏い闇の奥へ。