「皆、今回は招集に応じてくれてありがとう。
私が今回の依頼主こと、月影だ」
そう、優しい声でボク達暁のメンバーに話しかけた
男が、今回の依頼主、月影 漠牙。
日本国の総理大臣だ。
まさか国のトップが依頼をしてくるとは……よほどの
目的なのだろうか?
ただ、ボクや姉様は凶手。
個人の思う事には深入りはしない。
その他のメンバーも彼の目的には興味はないらしく、
月影に問うようなことはしなかった。
「今回の依頼にあたって、遵守してもらいたい
ことがある。……誰も殺すな」
殺すな?まさか、聞き間違いか?
彼は殺し屋であるボク達に向かって「誰も殺すな」
と、そう言ったのか?だとしたらそれは……。
「ッざッけんじゃねェぞこの野郎‼︎」
ヴオォォンッ‼︎という音と共に、月影の目の前に
あった木製のテーブルが両断された。
姉様の
仕業だ。
「殺すなだァ?誰に依頼してると思ってんだ。
アァ?アタイ等はなァ、殺し屋なんだよ‼︎
その所分かって依頼してんだろうなァッ‼︎」
額に青筋を立てながら姉様はまくし立てる。
姉様にはプロの殺し屋としての想いがあるから
こういうことが大嫌いなのだ。
ボクは姉様の所……≪
所属する前の所ではなんでも行っていたから
そういうことにはあまり抵抗はないのだが。
「……喧しいぞ、餓鬼。少し黙っていろ」
「アァッ⁉︎」
そんな時、姉様の隣にいた和装の男……黒鉄王馬が
姉様を制した。
「テメェ、やるってんなら今ここで」
ブオンッ‼︎という音と鋭く空気の斬れる感触と共に
姉様の円筒帽子の角が落ちた。
王馬の手には霊装である野太刀が握られている。
「ッ、〜……。クソがッ‼︎」
敵わないと悟り、姉様は霊装をしまった。
王馬の実力はこのメンバーの中ではトップだ。
おそらくボクと姉様の二人がかりでどうにか
互角に渡り合えるといったところだろう。
姉様の判断は間違ってはいない。
「……そこの白い餓鬼。少し付き合え」
「……え」
月影の話の途中で、姉様を制した王馬は
ボクを部屋の外へと連れ出した。
「さて、単刀直入に聞くが……貴様、
あの時何をした?」
「あ、あの時って?」
「とぼけるな」と鋭い眼光で王馬はボクを
見下ろす。
「あの時オレは
刀を振るった。だが、結果は帽子の角を
斬り落としただけ……。
メンバーの中で貴様だけがあの餓鬼と関係がある。
だから聞いたんだ。……あの時、何をした、と」
どうやら、バレていたらしい。
これから先、少なからずとも付き合う仲だ。
能力程度は教えてあげてもいいだろう。
「……参ったな。こればかりは教えたくは
無かったんだけど。うん、そう。ボクがやった。
君の刀の軌道を
「曲げた……だと?」
訝しげな声を上げる王馬。
まぁ仕方ないだろう。ボクの能力は非常に
珍しいのだから。
「概念干渉系≪湾曲≫。それこそがボクの能力さ」
単純ながらこれは非常に多様な応用が利く。
弾道だって自在に曲げて狙いたいところに
当てられるし、相手の攻撃だってさっきみたいに
曲げて強制的に外させることも出来る。
果ては光の反射を曲げて姿を消す芸当も可能だ。
「フン、小細工か。くだらんな」
だがしかし、王馬はそれを一笑に付しボクの
元から去っていった。
彼の力量ならばボクの能力の応用程度分かるはず。
それでも尚あの反応だったということは……。
「恐ろしいなぁ。あいつ」
思わず、そんな思いが口を突いて出たのであった。
それから数分後。
ボクは姉様と風祭、コルデーと共に話をしていた。
「フハハハハ‼︎先程はよくも散々愚弄してくれたな
白の死神よ‼︎」
「さっきと二つ名が違うんだが」
姉様のツッコミにも動じる事なく、風祭は
片目の眼帯に手をかけた。
「我が黄昏の魔眼を今、解放して……」
「どれどれ」
「ちょ、勝手に触れるな!我が黄昏の魔眼に‼︎」
ボクは風祭の眼帯を掴んで、限界まで
引き延ばす。
それと共に風祭の顔色が青ざめていく。
「そ、それ以上はよせ……そんなところで
離されたら……目がマズイことに」
「離すって、こう?」と、ボクは眼帯を離した。
ボクの手を離れた眼帯は一直線に、
風祭の、
黄昏の魔眼へと向かって。
バチイイイインッ‼︎
「ちょtア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!
イイッ↑タイ↓メガァァァ↑⁉︎」
同時刻、≪連盟≫日本支部。
昼間だというのに薄暗い印象を受ける建物。
そこの駐車場で、二人の人間が話していた。
「んっふっふ。これで外堀は完全に、
埋めることが出来ましたよぉ。
ありがとうございますぅ、≪
ひらひらと、写真を手に持ち笑う男が一人。
それを冷ややかに見つめる男が一人。
「……フン。礼を言うなら学園に潜伏している
仲間に言え。私はそれを渡しただけだ」
写真を持つのは樽のような肥満体の恵比寿顔の男。
そしてもう一人はガスマスクに黒のコートという
奇抜な格好をした痩躯の男。
「この仕事を終えたら貴様とおさらばか。
なんとも寂しいな」
「こちらこそ、貴方がたには色々お世話に
なりましたよぉ。いやぁ、寂しいですなあ」
その声色からは寂しいと思っているような
気持ちは微塵も感じない。
むしろ、喜んでいるように聞こえる。
「それでは、私は用事がありますので」
「赤座」と痩躯の男は引き止めた。
「毎回くどいようだが伝えておこう……。
失敗すれば……。
我々が、全力を以てお前を消す」
そうしなければ、自分達の情報が流出し、
裏の仕事を受け持つ彼らにとばっちりが
くることになる。
「んっふっふ。分かってますよぉ」
そう言いながら赤座は黒塗りの乗用車に
乗って、去ってゆく。
その後ろ姿を痩躯の男は、ガスマスクの
奥から鷹のような眼光で見送るのだった。