多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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古巣からの勧誘

既に全ての試合が終了し誰もいなくなった

第2ドーム。

 

そこに二人の影があった。

 

1人は多々良白雪。そしてもう一人は≪蟲使い≫

と呼ばれている男だった。

 

「いつもは東南アジアの辺りで仕事をしている

あなたが、どうしてこんな所に?」

 

白雪の問いに、彼は答えることはなかった。

代わりに、

 

「……その他人行儀な感じ、やめてくれないか?

昔みたいに、“ガウェイン兄さん”と呼んでくれ」

と言った。

 

「……もう昔のことさ。呼ぶ気はないよ」

 

「……そうか。まあお前も仕事でこんな所に

いるんだろうが……どうだ?この学校の生徒は」

 

白雪は、ふっと笑った。

そして壁にもたれかかるとその質問に答えた。

 

「はっきり言えば、弱い連中ばかりだよ。

でも……一人、強いのがいる。それも

とびっきりのがね」

 

「……ほう?誰だ。そいつの名前は?」

 

「黒鉄 一輝……と言えば分かるかな?」

 

その言葉に≪蟲使い≫は腕を組んで、

「≪雷切≫と試合を今している奴か。

お前が言う程だ。相当に強いのだろう?」

と言った。

 

「ああ。そうだよ」

 

「……っと。忘れていた。白雪。

お前、戻る気はないか?私達の所に」

 

「忘れていただなんてよく言うよ。

そっちが本命だろうに」

 

≪蟲使い≫……否、ガウェインは白雪の前に

立つと、いかに自分達の組織に戻った方が

良いかを並べ連ねた。

 

「いいか?≪黒い家(アップグルント)≫は我々の組織とは

違って報酬が少ない。

それに、だ。お前が戻ってきて欲しいと

思っている連中が何人かいるんだ。

今なら、お前が慕っている姉とやらも

我々の組織に迎え入れてもいい。

どうだ、戻ってくる気はないのか?」

 

更に、ガウェインは報酬の金額……

決して安いとは言えない額を……

提示し、白雪に戻るかどうかを考えるように

言った。

 

確かに、悪い条件ではない。

むしろ、良い条件と言えるだろう。

だが……。

 

「残念だけど、戻る気はないよ」

 

白雪は断った。

何故ならばーーーーーー。

 

「姉様は黒い家(アップグルント)の殺し屋としての

プライドがあるから絶対にあなた達の組織には

来ない。そして姉様がいかないのならばボクも

あなた達の組織に戻ることはない。

ただ、それだけ」

 

白雪にとって姉は生きる目的であり

慕うべき存在であり共にいたいと願う存在であり

全てを姉という存在が支配している。

故に彼女は姉がどうするかを想定して答えを

出したのだ。

 

「……そうか。まあ心変わりという言葉もある。

いずれまた会った時に、返事を聞こう」

 

「いつ来ても、ボクの答えは変わらない。

姉様が考えを改めない限り」

 

それだけの問答を終えると、ガウェインは

白雪に背を向けて去っていった。

 

「そのいずれが、すぐ訪れる事を祈っているよ」

 

去り際に不穏な言葉を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寮に戻ってくると、中で蜂谷がクラッカーを

用意して待っていた。

 

「おめでとーっ‼︎やったじゃない白雪‼︎

今夜はあれよ、パーティー‼︎パーティーしよう‼︎」

 

「そんな大げさな……」

 

苦笑しながらも蜂谷の差し出したお菓子……

「ジャパリパリグミ」とか「紅魔の里」とか

いったお菓子をもらいながら白雪はまんざらでも

なさそうな様子だった。

 

「とりあえずボクはいける所まで頑張ろう」

 

「駄目よ‼︎せっかくなんだから、優勝目指して

ファイトしなさいよ‼︎」

 

「……そうだね、というかファイトしろって

どういう事?命令形になってるじゃないか」

 

白雪には、もし決勝まで進めたら望む事が

一つだけある。

彼女の姉、多々良 幽衣とどちらが上か

決勝の舞台で決着をつけたい。

ただ望む事はそれだけ。

白雪にとって姉は自分の全てなのだから。

その思いを胸に秘め、白雪は蜂谷と

乾杯をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、都内の寂れたビルの一角にて。

 

「〜♪」

 

何者かが……恐らくは男だろう……が

楽しそうに、誰かを待っていた。

 

「遅れたな。申し訳ない、ブルーノ」

 

「ヒャヒャ。いいって事サ」

 

≪蟲使い≫ガウェインを。

ガウェインは闇の中相手の姿を確認した。

 

タキシードに蝶ネクタイ。

黒のシルクハットを被り、顔をすっぽりと

覆う仮面をつけている。

 

「相も変わらずふざけた格好だな」

 

「言うネェ。君だって変な格好じゃないカ?」

 

「俺のことはどうでもいい。白雪のことだ」

 

ヘラヘラと楽しそうに、ブルーノは笑って、

ガウェインの話を聞いていた。

 

「あいつ、我々の組織に戻ることを拒んだよ。

なんでも、姉は我々の組織に入る事はない

だろうかららしい」

 

「ヘェ……。どうでもいいけどサ、

今日お客さんが来たんだヨ」

 

そう言いながら、ブルーノはガウェインに向かって

何かを放り投げた。

ごろん、と床に転がったそれは、人間の頭部。

 

ガウェインは知っていた。

この頭の持ち主は≪連盟≫日本支部の連中の一人だと。

 

「フン……赤座め、私達を亡き者にする気

だったか。だがしかし、弱すぎたな」

 

「ちょっとー。倒したのボクなんですけどォ?」

 

「ああ、悪かったな」

 

「まあ楽しかったから良かったんですけどネー。

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼︎」

 

そんなブルーノにガウェインは、

「いずれまた楽しめる機会を作ってやる」と

言った。

 

「どうせ、そのいずれはすぐに訪れるんでショ?」

 

「ハッ。バレてたか」

 

そして、ガウェインは外の夜景を見つめ、

握り拳を作ったのだった。

 

「待っていて下さい、“先生”。

後少しの辛抱です……‼︎」

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