ーーーーーー目覚ましのアラームが鳴る。
その音に顔をしかめながら幽衣は起き上がった。
白雪が去ってから数日になる。
今日は≪暁学園≫としての行動を起こす前日だ。
それ故か、≪暁学園≫に集まるように昨日、
≪道化師≫平賀玲泉から連絡があった。
同時に既に白雪と≪血塗れのダ・ウィンチ≫
サラ・ブラッドリリーは到着しているとも。
(あいつ……≪暁学園≫に泊まってたのかよ。
まあ、妥当な判断と言えるかもしれねェが)
自分もそろそろ行かなければ、と幽衣は
身支度を整え始めるのだった。
前回来た時とそう変わらない時間をかけて、
幽衣は
≪暁学園≫へと到着した。
「……よう。≪血塗れのダ・ウィンチ≫」
「……ん」
そこで彼女を待っていたのは、
≪血塗れのダ・ウィンチ≫ことサラ・ブラッドリリー
だった。
「お出迎えかァ?ご苦労なこって」
その幽衣の言葉に、サラは「……違う」と
返した。
「私がここにいるのは、約束を守る為」
「約束?何の約束だ?」
「あなたの妹に賭けで負けたから約束した。
あなたの絵を描かなきゃいけない」
「……テメェも、大変だな」
「……賭けに負けたから」
幽衣は同情するようにサラにそういうと、
≪暁学園≫の中へと入っていく。
否、入ろうとした。
「多々良 幽衣とかいうのは、お前か?」
背後からの声に幽衣が振り向くと、
そこにはガスマスクを被った黒いコートの
男がいた。
そして、その奇抜な格好を幽衣は知っていた。
「テメェは……確か
「ガウェインだ。
正確には、
方に所属している」
「……ケッ、≪
それは
中期にかけて戦争に利用した傭兵集団の名だ。
彼らは全員が全員≪連盟≫基準としては
Bランク以上の実力を持ち、
参加した悉くの戦争で組した国家に
勝利をもたらしたと言われている。
だがその栄光も、暗殺の需要が増え始めると
≪
追われる事になり、今や彼らが活躍する
機会は少なくなってしまった。
「その
所にいやがるんだ?戦争屋のくせによォ」
「戦争屋とは人聞きの悪い。
我々は今回この計画の「教師役」として
呼ばれたんだ。だから、私に対して口に
気をつけるんだな、お嬢さん」
その言葉にイラッとしながらも、幽衣は
≪暁学園≫の入り口へと今度こそ入って
ゆくのだった。
一方その頃、白雪も
接触していた。
「久しぶりだァねェ白雪ィ。
何年ぶり?何年ぶりかネェ?
4、5年?そんぐらいになるのかナァ?」
≪奇術師≫ことブルーノ。
ニタニタと目を細めながら白雪を睨め付ける。
「ブルーノ兄さん、その癖変わらないね。
ボクは毎回それが嫌だって言ってるのに
あなたは聞きやしなかったね」
「ヒャー。そりゃァ失礼失礼。
でもサァ、白雪が去ってからオレちゃん
寂しかったんだゼ?」
演技たらしく泣く振りをしながら、
ブルーノは白雪にそう言った。
「だから、戻って来て欲しいって?
……嫌だね。ボクは
戻る気はない」
姉以外、誰がなんと言おうと。
それだけは曲げる気はない。
そう、かつてガウェインの前で言ったように。
白雪はそう言い放った。
「……白雪ィ。テメェそんな事考えてたのかよ」
ブルーノとは正反対の方向から白雪に
かけられた声。
その声に白雪は振り向いた。
「てっきり、
思っちまった。悪りぃ」
「姉様……‼︎」
自分と瓜二つの姿。
白雪が愛して止まない存在、多々良 幽衣の
姿がそこにあった。
「……にしても、変な格好してる奴だな」
「ありゃまー。オメーが言うのかァ?」
確かに真夏なのに防寒着を纏った少女と
よくあるマジシャンの格好をした仮面の男が
話しているのはかなり異様な光景であった。
「ガウェインの奴から聞いたゼェ。
オメーのおかげで白雪がオレ達の所に
戻って来てくれないんだって?」
「そうなのか?」
「そうだよ」
白雪の言葉を聞いてブルーノが杖の
「だーかーらーよーォ?オメーをぶちのめせば
白雪を取り戻す事が出来るんじゃねェかなーって
オレちゃん思いついた訳ヨ」
杖の先端を幽衣へと向けながら、
「頭いいよなァオレちゃん。惚れ惚れしちゃう」
などと自画自賛しているブルーノ。
「馬鹿かテメェは?そんな事して白雪が
テメェらの所に戻る訳がねェよ」
幽衣はそうブルーノを嘲ると、睨みつけた。
「……でもよォ。アタイはテメェらの傲慢さが
気にいらねぇ。……だからその馬鹿な
提案に乗ってやるよ」
そういうと幽衣は自らの
≪地擦り蜈蚣≫を顕現する。
「アタイら
そのチンケな脳みそに叩き込んでやるよ」
「ヒャハハハハハハハハハハハ‼︎
馬鹿かオメーは⁉︎オレ達
最強だって事を教えてやるヨォ‼︎」
もはや衝突は免れないと思われた刹那。
「……教師役とあろう者が、何をやっている。
大馬鹿者が」
その怒声と共に、隻腕の老人が現れた。
ヴァレンシュタインだ。
「ミスター……。
オレちゃんの闘いに口出さないでよネェ」
「恥を知れ痴れ者が。
そいつはこの計画に欠かせない人材だ。
貴様はこの計画をおじゃんにする気か?」
ブルーノとヴァレンシュタインは睨み合って
いたが、やがてブルーノが舌打ちして
自らの
「ちぇっ。あーあーわかりましたよォ。
止めます止めます」
やれやれと肩をすくめてヴァレンシュタインの
傍を通り越してブルーノは去っていく。
「……全くあの男は。いつもあの調子だから
扱いに困る。すまなかった。
私の監督不足で嫌な目に遭わせたな」
「……ケッ。あの野郎にキツイの一発
食らわせたかったんだがなァ」
そう言い放ってから幽衣は白雪の元へと
歩き出す。
「姉様……ごめんなさい、ボクのせいで
迷惑かけて」
「いや、テメェは悪くねェよ。
悪りぃのは、さっきの野郎だ」
そう、幽衣は白雪に言い聞かせてから
ブルーノが去っていった方向を
睨み続けるのであった。