多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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計画前夜

ブルーノと幽衣との間で諍いが起こってから

数時間後。

≪暁学園≫の“生徒”は全員集合していた。

 

彼らを前にして、ヴァレンシュタインは

全員を見据えながら話を始めた。

 

「既にこの場にいる全員が知っているだろうが……

この計画に携わっている同士、有栖院が

裏切るとの情報が入った」

 

そう言いながら、ヴァレンシュタインは

とても残念そうに、口元を歪める。

事実、彼は未だに信じられなかった。

彼が育ててきた暗殺者の中でも、

有栖院は特に目をかけていた存在だからだ。

 

「飼い犬に手を噛まれましたか……心中、

お察しします」

 

ガウェインが彼の顔を見て事情を理解したのか、

哀れむようにヴァレンシュタインを労った。

 

「ですがまあ、紫乃宮君のお陰で

有栖院君の奇襲が必ず行われるという事が

分かっているのですから、

我々もそれに合わせて奇襲を行えば良い」

 

そう言うと≪血塗れのダ・ウィンチ≫こと

サラと、≪道化師≫平賀玲泉に目をやり、

 

「例えば……そう、“木偶”を使ってみるのは?

サラさんと平賀君の能力ならば簡単な事でしょう」

 

「フフフ、木偶ですか。なるほど、ボクの

地獄蜘蛛の糸(ブラックウィドウ)≫と、サラさんの

能力で偽物を作り、それで裏切り者の

有栖院君を騙すと……そういう訳ですね?」

 

 

その通り、とガウェインは平賀を指差して

彼の答えに丸をつけた。

 

「……ところで、有栖院君はどうしましょうかね。

その場で殺すのが一番いいのですが。

どうしましょうか、ミスター・ヴァレンシュタイン」

 

「……奴の始末は私が付ける。

生徒の不始末は教師であった私が

蹴りをつけなければならないからな」

 

ヴァレンシュタインはそう言うと、

計画の手順について話し始める。

 

「さて、今回の作戦だが、標的は破軍学園。

念のため教師を一人引率させたいのだが……

ガウェイン、貴様に頼めるか?」

 

「謹んでお受け致します。私の仲間ですが、

ブルーノには引率は任せられませんので」

 

その言葉に、奥で椅子に座りつまらなさそうに

していたブルーノがガウェインの方を見やり、

「酷い事言うネェ。オレちゃん傷付いちゃう」

と言った。

だがしかし、その言葉とは裏腹にケタケタと

ブルーノは笑っていた。

 

「というかサァ、誰かオレちゃんと付き合ってよ。

暇で暇でしょうがないやー」

 

その言葉に、なんと王馬がブルーノの方を

見やり、「オレが付き合ってやろう」と

言い放つ。

 

「おろ、いいのォ王馬ちゃん?

やる前に大怪我したって知らないよォ?」

 

「単に肩慣らしがしたいだけだ……。

それよりも自分の心配でもしたらどうだ?」

 

「ひょー、かっこいいネェ。

オレちゃんそういう人大好きよ?」

 

「……気色悪い事を抜かすな」

 

ブルーノは椅子から立ち上がると、

王馬を伴って外へと出て行った。

 

「……あのバカ、身の程知らずにも程があるだろう」

 

「だが、仮にも教師役の人間。

そう簡単に死ぬほど弱い人材ではあるまい?」

 

「……まぁ、確かに簡単に殺せる輩では

ありませんが」

 

ガウェインはそう言ってブルーノの背中と

王馬の背中を交互に見やり、ため息を

つくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

計画の手順の確認も終えて、白雪と幽衣は

同じ部屋に泊まっていた。

 

「ったく……さっきっからオウマとブルーノの

野郎、ガンガンやっててうるせェなァ‼︎」

 

その幽衣の言葉と同時に、ズンッ‼︎という

地ひびきが二人の身体を揺らした。

そう、ブルーノと王馬は先のやりとりから

3時間以上もの間殺し合いを続けているのだ。

おまけに彼女達のいる部屋は一番そこから

近いので、時折ブルーノの喧しい声が聞こえてくる。

 

『ちょッ……死ぬ死ぬ‼︎

死んじゃう‼︎そんなの食らったらオレちゃん

死んじゃうからアッー‼︎』

 

「……本当、喧しくて寝られないね」

 

やれやれとばかりに白雪は肩を竦めて、

幽衣に同意を示した。

 

「テメェも災難だな。切ったと思った

腐れ縁がこんなところで復活するなんて

思ってなかっただろ」

 

「うん。もう会う事なんてないって、

そう思ってたんだけど。

やっぱ甘かったなぁ、ボクは……」

 

幽衣は白雪のその様子を見てにへら、と笑うと

「まぁ今回の件、とっとと終わらせて

帰るぞ。アタイもあいつらとは長くは

付き合いたくねェ」と言った。

 

「……うん、そうだね。

ボクはそろそろ寝ようかな。

愛してるよ、姉様。おやすみ」

 

そう白雪は幽衣に告げて、寝室へと

向かっていった。

 

「ああ。……おやすみ、白雪」

 

幽衣は白雪の背中に、小さくそう呟いた。

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