多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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今回文中で非常に長い上に読み辛い台詞が
出て来ますが、読むのが面倒なようであれば
あとがきの部分に改行したものが載っていますので
そちらを参照して下さい。


高らかに讃頌せよ

……ぽたり、と血が滴り落ちる。

静寂の中、コツ、コツと規則正しい

硬質な音が響く。

 

人知れず存在していた刑務所。

その中はもう地獄ではなかった。

ただの、屍が入っている大きな箱と化していた。

看守も、受刑者も関係なく。

 

だが、屍のみが存在している訳ではない。

刑務所を歩いているブルーノがその中の

一人であった。

床や壁に夥しい返り血が飛び散っているのにも

関わらず、何故かその身には血の一滴も

付いてはいない。

 

……やがて、彼は刑務所の最奥、

史上最悪の犯罪者、その一人であり

ブルーノが所属する≪KORT≫の首魁、

アンブローズ・エムリスを収容している

小さな牢の元へと辿り着いた。

 

その牢は彼を収容するにあたって

並の伐刀者では破壊することは出来ない

厚さ1m余りの特殊金属の扉で閉ざされ、

南京錠などの古いタイプから最新のものでは

30桁の番号を入力するデジタルロックまで

5重の護りが仕掛けられていた。

 

その牢を見てブルーノは、

「……小虫一匹も入れる気は無さそうですネェ」

といつも通り、笑顔を貼り付けた状態で

言い放った。

 

だが、彼の目的はこの牢の中にいる

エムリスを解放することにある。

故に。

 

「≪穢れた清らかなる糸(ブラッディ・アリアンナ)≫」

 

彼は自らの霊装を顕現する。

 

「さあ、紡ぎましょう……。

不実の機織り(アラーニェ)≫‼︎」

 

そして、自らの手で霊装の糸を手繰り、

引き、絡めて、何かを紡ぎ出してゆく。

こう言うと時間がかかっているように

聞こえるがしかし、彼がそれを全て編み出す

のには5秒とかからなかった。

 

目視すら難しい程細い糸で彼が紡いだのは、

長く薄い両刃の剣である。

しかも糸で編んだのにも関わらず、それは

実物の剣と遜色ない出来映えであった。

 

ブルーノはその剣を片手に持ち、

特殊金属で作られた扉にその切っ先を

突き刺した。

 

音もなく、すっ、と切っ先は扉に

その剣の根元まで差し込まれる。

剣を器用に扱いながら、

ブルーノは人一人が余裕で通れる位の

円を描いた。

そして、剣を解いてあるべき形に戻しながら

扉から数歩離れる。

 

と、ブルーノが円を描いた内側の部分が

ずっ、と押し出される。

そのまま綺麗な切れ口を露出させながら

ずずず、と押し出された扉の一部分は

地響きを立てながら外へと転がった。

そして。

 

「まったく。≪鋼線使い≫なのに

剣の扱いが達者なものですね、ブルーノ君」

 

呆れに近い賞賛と共に、

閉じ込められていた者が、

≪神代の魔術師≫、アンブローズ・エムリスが

扉に開けられた穴をくぐって姿を

現した。

 

彼の見た目は案外若かった。

見る人によっては20代後半と判じる人も

いるかもしれない。

 

刑務所に収容されていたというのに

その格好は白衣にシャツ、下は

黒のスーツパンツとまるで研究者の

出で立ちであった。

しかも温和そうな顔立ちに銀のフレームの

眼鏡と、それが更に研究者……というか

若い教師感をどことなく醸し出している。

 

エムリスはショートの茶髪を直しながら

「ブルーノ君。外の状態を見る限り、非常に

無差別に暴れ回ったようですね。

はっきり言ってやりすぎです。問題の解決には

多少の犠牲は必要ですが、しかし

過剰な殺戮はかえって問題を

ややこしくしますよ」とブルーノを

叱責した。

 

「ドクター!ああ、申し訳ありません」

 

エムリスははあ、とため息を吐いて

「≪KORT≫もやはり、時代遅れの

存在となってしまったのでしょうかね」と

呟いた。

 

「……なァ……」

 

「……?どうしました、ブルーノ君?」

 

その時のブルーノの目は、焦点が

合っていなかった。

 

「いな……いあ、いあ……いなっ

いな‼︎いなっ‼︎いなァ‼︎否ァッ‼︎

ぜええええええええええええええええええええええええええええええええッたああああああああああああああああああああああああああああああいにいぃぃなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎」

 

刹那、刑務所全体が、いや山全体が

揺れるのではないかと思われる程の

大音量でブルーノは叫んだ。

 

「われらがどくたーよなにをおっしゃるのですあなたはじんるいをすくうであろうおかたむしろじだいおくれはれんめいやれんごうのれんちゅうですじゅうねんまえあなたがていしょうしたあらたなるせかいたいせんがおきるであろうというよそくをやつらはしんじなかったいやそれどころかそのことをいんぺいしあなたをとらえてなにもいわせないようにしたそのときのわれらのいかりがやつらにわかるものかいやないだんじてないないないないないないないかつてわれらがてをかしたくにもにんげんもどくたーをわれらをおそれころそうとしたそれではあきたらずあなたをしんだものにしようとしているぅわれらのちからあってこそやつらはけんりょくをえられたのだどくたーをまっさつしようとしているものよきこえるかぁぁいまものんきにめしくったりねてたりしてるだろうがもはやおまえらなどにみらいはないやがておとずれるであろうたいせんのほのおにやかれてしぬがいいしかしどくたーとわれらがたどるのはえいこうのみちだはんえいのろーどだせかいたいせんのおきるひはちかいそのときがわれらのふっけんのひださんしょうせよさんしょうせよどくたーをあがめよ〜ォはっぴばぁ〜すでーいあらたなるじだいよせかいよ〜ぉはっぴばぁ〜すでぇ〜い

偉大なるドクター・エムリイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィスッ‼︎

 

もはや何を言っているのかすらわからない程の

早口でまくしたてるブルーノ。

 

しかしその様子にエムリスは驚くこともなく

「はぁ……またこれですか。

ブルーノ君、落ち着きなさい。

言いたい事はなんとなく分かりましたから」と

ブルーノを落ち着かせた。

 

「ぜぇっ、はぁぁっ……‼︎

ドクター・エムリス万歳イィィィ……‼︎」

 

だが尚もブルーノは話そうとし続ける。

息が絶え絶えになりながらもエムリスを

讃頌し始めた。

 

「もういいですから。ガウェインから

聞いたようであるならば、貴方以外にも

メンバーが来ているのですか?」

 

「え、ェえ。ランスロットが、万が一

外からの邪魔者を防ぐために来ていますがァ、

彼は負ける事はないでしょう」

 

エムリスはそれを聞いて、

「ならばすぐに行きましょう。

ランスロットが手を汚す事のないようにね」と

言ってブルーノの息を落ち着かせてから

ブルーノを伴って歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー“彼”は、音一つ立てる事もなく

その場に屹立していた。

2mをゆうに越しながらも痩せぎすの彼が

屹立しているその姿は、立ち枯れた木を

想起させる。

 

その顔は絞首刑を執行される人間が被るような

黒い布袋ですっぽりと覆われ、

服装は上半身は何も着ず、下半身は

インドの僧の服装……いわゆる袈裟を

着ていた。

 

「……」

 

彼は喋る事もなく、ただ自らの

主人を捕らえようとする者を防ぐ為に

待っていた。

限界までその気配を殺し、事前に

相手に察知される事のないようにして。

 

ふと、彼の肩に小鳥が止まる。

だが彼は顔を向けることもしない。

それが害意を持たぬ事を知っているから。

小鳥もそれが分かっているのだろう、

彼の肩から離れようとしなかった。

 

だが……飾り気のない害意が、

無邪気な殺意が彼の背後から放たれた。

故に、小鳥は彼の肩から羽ばたいていく。

ざわり、と木々が騒ぐ。

 

彼はその殺意に萎縮することもなく、

ゆらりと背後を振り返った。

 

「おつかれ様ァ、ランスロットちゃん。

立ちんぼで大変だったろうに」

 

殺意の発信源はブルーノであった。

その後からエムリスが姿を見せる。

 

「ランスロット君。久しぶりですね。

何年ぶりでしょうか?7、いや8年ぶり

ですかね。変わらない様子で安心しました」

 

「……」

 

ランスロットはエムリスの言葉に

返事を返す事はなかったが、その身から

発散されている雰囲気からはエムリスに

対する害意は見当たらなかった。

 

「さて、こんな山奥で長居はしていられません。

私にはまだまだやるべき事が残っています。

……行きましょうか。≪暁学園≫に。

久しぶりに()()()の顔も見たいですしねぇ」

 

そういうとエムリスは歩き出した。

自らのやるべき事を行う為に。

≪KORT≫という災厄を引き連れて……。




ブルーノのいっていた事をちゃんと書くと、

「我らがドクターよ何をおっしゃるのです‼︎
貴方は人類を救うであろうお方。
むしろ時代遅れは≪連盟≫や≪連合≫の連中です。
十年前貴方が提唱した新たなる世界大戦が
起こるであろうという予測を奴らは
信じなかった。いやそれどころか
そのことを隠蔽し貴方を捕らえて
何も言わせないようにした‼︎
そのときの我らの怒りが分かるものか‼︎
いや断じてないないないないないないない‼︎
かつて我らが手を貸した国も人間も
ドクターを、我らを恐れ殺そうとした‼︎
それでは飽き足らず貴方を死んだ者にしようと
しているぅ‼︎
我らの力があってこそ奴らは権力を
得られたのだ‼︎
ドクターを抹殺しようとしている者よ
聞こえるかぁぁ‼︎
今も呑気に飯食ったり寝てたりしてるだろうが
もはやお前ら等に未来はない‼︎
しかしドクターと我らが辿るのは栄光の道だ‼︎
繁栄のロードだ‼︎
世界大戦の起きる日は近い……。
その時が我らの復権の日だ‼︎
讃頌せよ讃頌せよドクターを崇めよ〜ォ‼︎
はっぴばぁ〜すでーい新たなる時代よ
世界よ〜ぉ‼︎
はっぴばぁ〜すでぇ〜い(以下略」

との事。自分で書いておきながら
何書いてるんだか。
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