多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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燃え尽き症候群にかかってました。
本当に申し訳ないです。ごめんなさい。


悲観せよ、己が運命を

「はぁああああああああああ‼︎」

 

その頃、破軍学園では、黒鉄一輝を筆頭とする

選抜メンバーの面々が、≪暁学園≫の裏切り者

有栖院の協力を得て、他の≪暁学園≫の面々を

霊装で打ち倒していた。

……正確に言えば、≪暁学園≫の面々を模した

“人形”を、だ。

 

「……簡単に引っかかるなんて馬鹿だねあいつら」

 

「まぁその方が楽で良い。先に有栖院の始末だ」

 

破軍学園の屋上、そこで≪蟲使い≫ガウェインと

≪白き死神≫多々良白雪は彼らを見下ろしていた。

姉の幽衣を含む他の≪暁学園≫の面々は

メンバーの一人、サラの能力で姿を隠して

一輝達の近くに潜んでいる。

 

「……OK。狙いは心臓?脳天?延髄?

それとも……全て?」

 

「どれでも良い。ただし、確実に仕留めろ」

 

白雪はゆっくりと頷いてから己が霊装、≪銀雪≫を

顕現させると、その銃口を有栖院へと向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有栖院の裏切りによって≪暁学園≫を打ち倒す事が

出来た破軍の生徒達は安堵していた。

 

「ふう……後ろからやられたらどうなるかと

思ったの」

 

「何はともあれ、これで彼らの目的は潰えました。

七星剣武祭に邪魔が入る事もないでしょう」

 

「それを聞いて安心したわ。ね、一輝。

……一輝?どうしたの?」

 

そう、ただ一人、黒鉄一輝その人を除いて。

 

(おかしい)

 

一輝がそう思ったのは有栖院の協力によって

自らの兄、王馬を斬った時である。

 

(僕の知っている王馬兄さんなら……

()()()()()()倒されるはずがない)

 

自らの前に倒れている王馬を見下ろしながら、

一輝はその違和感を感じていた。

だがそれだけではない。

 

(それに……危険は排除した。

暁学園の生徒は倒した。そのはずなのに、

……先程から重圧感が変わっていない)

 

何か嫌な予感がする。

その違和感を伝えようと一輝が口を開いた刹那。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー有栖院の心臓が撃ち抜かれた。

 

「……は?」

 

それは誰の言葉だったであろう。

有栖院自身か、はたまた他の誰かの声か。

だがそれは重要な事ではなかった。

 

何故なら、直後に有栖院の総身を弾雨が

襲いかかり、貫き、抉ったからである。

 

「かっ……ぁ」

 

有栖院は僅かな呻きを上げ、その場に

倒れ込む。

突然の事に誰もが黙り込んだ。

 

 

「アリスッ‼︎」

 

その中で一人だけ、一輝の横から珠雫が飛び出す。

だが、今度こそ一輝は行動を間に合わせる事が

出来た。

珠雫の襟首を掴んで、引き戻す。

 

一瞬の後、何もない空虚から風圧と共に

斬撃が降り落ち。

……≪暁学園≫の面々が再び姿を現した。

 

「なっ……⁉︎さっき倒したはずじゃ⁉︎」

 

「残念。先程貴方達が倒したのは我々の

『人形』です。我々から出た裏切り者(有栖院)

行動を失敗させて、始末を……いや、この場では

殺しませんがね?まぁとにかく、貴方達は

ものの見事に罠に引っかかってくれた訳ですよ」

 

まるで愉しそうに、平賀が語る。

有栖院の裏切りは想定内であった事。

それは≪暁学園≫の一人、紫乃宮天音の

能力で分かった事を。

 

「……平賀。その裏切り者を本校へと

連れて行け。ここは私が引き受ける」

 

その背後から、2人の人間が降り立つ。

その内の一人の顔を、一輝達はよく知っていた。

 

「多々良さん……‼︎」

 

「アァ?呼んだか?」

 

その言葉に、姉の幽衣の方が反応する。

 

「いや姉様じゃなくてボクの方だから。

……改めて、こんにちは黒鉄君。

それとも……さようならというべきかな?」

 

マフラーの上からでも分かる程口端を上げ、

白雪は笑った。

それは、幽衣とガウェインを除く全員が

初めて見たーーーーーー、

嗜虐に満ちた笑みであった。

 

「……ッ、シラユキ、あんた……‼︎」

 

その顔を見て、ステラの表情が忿怒に染まる。

白雪とは一輝との手合わせから

何回か能力の特訓を一緒に行った仲であり、

一概に浅い仲とは言えなかったから。

この裏切りは彼女にとっては到底許す事の

出来ないものだった。

 

その表情を見ても白雪は笑った顔を崩す事なく、

淡々とした様子でステラの瞳を真っ直ぐに

見つめていた。

 

「ああ、ステラさん。この事を知った時、

絶対にそんな顔すると思ってたよ。

君はどこまでもまっすぐだからね」

 

それを聞いて、ステラはギリッ、と歯を

食いしばった。

 

「……白雪、長話もほどほどにしろ。

時間を食う事程嫌な事はない」

 

ガウェインはそう白雪を窘めてから、

隣にいた平賀に素早く耳打ちした。

 

直後、平賀が素早く動く。

≪幻想形態≫での攻撃により気絶している

有栖院の元へと駆け寄ると抱き上げた。

 

「フフ、では後は頼みますよ。ガウェイン先生」

 

「言われるまでもない」

 

その僅かな問答を交わして、平賀は有栖院を

抱えたままその場から離脱した。

 

「ッ……待てッ‼︎」

 

当然、一輝達が黙っている訳がない。

有栖院を取り戻す為に平賀へ突撃しようとし、

 

「ーーーーーー≪翠の烈風(パズズ)≫ッ‼︎」

 

ガウェインの伐刀絶技(ノウブルアーツ)によって

その足を止められた。

彼らの前に、突如として大量の……それも大型の

ものばかりの……飛蝗がまるで暴風の如く

吹き荒れる。

 

だが、それも一瞬の事。

次の瞬間には、ステラの妃竜の罪剣(レーヴァテイン)から

放たれた高熱でその暴風圏に穴が開いた。

その穴から一輝が突入し、数瞬間の後に

突破する。

 

「ッ‼︎」

 

そこで彼が見たのは……目の前で自らの霊装を

振りかぶる自らの兄、王馬の姿。

 

「……散れ」

 

「くっ‼︎」

 

強襲の一撃。これに一輝は守勢に回らなければ

死ぬと予感し、全力で守りの姿勢を取ろうとした。

 

「イッキ‼︎」

 

だが王馬の一撃は、ステラに止められ、

一輝にかすり傷すら負わせる事はなかった。

 

「まずいわ‼︎こいつらシズクを素通しにした!

きっと行った先に罠があるんだわ‼︎」

 

見ると、蟲の暴風圏をいつのまにか突破したのか、

珠雫の姿が平賀の消えた方向に小さく見えた。

 

「一緒に行ってあげて‼︎ここはアタシが

なんとかするから‼︎」

 

「……すまない、ステラ‼︎」

 

一輝は一瞬躊躇したものの、ステラの

真剣な表情に押され、珠雫を追って戦線離脱した。

ステラはそれを見送ってから王馬へと目をやり、

「オウマ。ずっと視線を感じていたわ。

アタシと戦うのがお望みなんでしょう⁉︎」と

言い放つ。

先刻戦った“人形”。あれは本物を完全に

模倣したものだった。

ならばあの時の視線もまた、本物の感情を

模倣したものだろう。

それならばーーーーーー。

 

「受けて立つわ‼︎≪風の剣帝≫‼︎」

 

ステラはそう宣言して、最愛の人に酷似した

敵に向かって突貫していった……。




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