多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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終焉

……空気が、張り裂ける。

≪玉虫籠手≫と≪紅色鳳(べにいろあげは)≫の

衝突によって。

互いに手心など毛頭ない完全な「殺す」一撃。

周りの地面は吹き飛ばされ、石は砂と化す。

 

「……流石は≪夜叉姫≫、と言うべきですかね」

 

「お世辞はいいんだよクソ野朗。とっとと死ね」

 

≪夜叉姫≫西京寧々と、≪暁学園≫の面々を背後に

≪蟲使い≫ガウェインが各々の霊装を構えて

向かい合っている。

何故、このような状況となったのか。

それはほんの数分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だからァ‼︎アタイは逃げたクロガネを

追うべきだって言ってんだよ‼︎」

 

「いいや、その必要はないと先程から

言っているのだがな」

 

蟲王(ガウェイン)よ、貴様も傭兵稼業をしているのなら

神の宣告(オーダー)を完全にこなす事の重大さを理解して

いるだろう?取るに足らん人間でも追うべきだと

我は思うが?」

 

≪暁学園≫の面々は、刀華を始めとする生徒会、

それに逃げたステラと葉暮姉妹も残さず仕留め、

先程戦線を離脱した黒鉄一輝を追うかどうかに

ついて議論していた。

 

「だから……ああ、クソ‼︎なんでこんな時に

肝心な事が思い出せないんだ‼︎」

 

「いい加減にどっちにするか決めろよ‼︎

ここでチンタラ待ってるか‼︎それとも

さっきのガキを追うかどっちかをよォ!」

 

段々とエキサイトしていく2人を尻目に、

時々口を出す凛奈を除いて全員遠目に

それを見ていた。

 

「大変そうだねー。別にボクとしては

どちらでもいいんだけどさ。

あ、一輝君が苦しむ所は見たいな♪」

 

天音が2人の様子をニコニコと笑いながら

眺めている。

 

「なんか、子供みたいあの2人……」

 

「いい加減に誰か止めろ。うるさくて

構わん」

 

王馬が喧しそうに顔を顰めながら

そっぽを向く。

 

「む、ならばここはこの我に任せよ‼︎

……おい2人共、いい加減に……」

 

凛奈が王馬の言葉を聞いて意を決し、

幽衣とガウェインを止めようとしたが。

 

「「喧しいんだよこのロリッ娘‼︎」」

 

「ろ、ロリッ娘……⁉︎この我がロリッ娘……」

 

何故か息のあった暴言に呆気なく鎮圧された。

ロリッ娘であるのは事実なので否定は

出来ないが。

よろよろと後退して幽衣とガウェインから

離れた凛奈を従者のシャルロットが介抱する。

 

「お気を確かに。確かにお嬢様はロリッ娘ですが

最近のロリッ娘は一部の人間に需要があるので

落ち込む事はありません。私もその一人なので。

更に言うとロリッ娘ロリッ娘に欠かせない

ロリッ娘たる所以は……」

 

「もう止めて‼︎凛奈のライフはゼロだよ‼︎」

 

なまじシャルロットに悪気がなかった分だけ、

凛奈は傷付いた。

何気ないロリッ娘への賛辞が、凛奈を傷付けた。

 

「もう良いもん。……おうち帰る……」

 

「あー、泣いちゃった。

本当に誰か止めなよ」

 

白白雪がそう言って周りを見回すと、

 

「「「……」」」

 

議論している2人を除いた全員が、

白雪をじっと見つめていた。

 

「…え、僕?冗談だよね、僕あれ止められる

気がしないんだけど」

 

「構わん、行け」

 

「遺骨は拾ってあげるからさ、アハハ」

 

死ぬの前提かぁ……とため息を吐きながら

白雪は重い足取りで2人の元へと歩いていった。

2人は未だ激しく言い争っている。

白雪は幽衣の背後へと素早く近づくと、

 

「はむっ」

その片耳を甘噛みした。

「ぴゃあああああああああーーーーーーッ⁉︎」

 

突然の事に幽衣は驚き、へなへなと脱力して

へたりこむ。

しかしそこは生まれながらの凶手。

すぐに立ち上がって、白雪の首根っこを

掴んだ。

 

「テメェ何考えてんだ⁉︎変な声出しちまった

だろうが‼︎へんなちょっかい出すなよ‼︎」

 

「ごめん。でもさ、……姉様、これ結構

ハマるよ」

 

「何言ってんだよお前はァァァァッ⁉︎」

 

訳が分からないとばかりに幽衣が

頭を抱えて叫ぶ。

 

「大体女同士で愛し合うなんて可笑しいだろ‼︎」

 

「あっ今姉様、僕を含め世界の同性愛者を

敵に回したね?容赦しないよ僕は」

 

白雪と幽衣が取っ組み合いを開始する中、

議論から解放されたガウェインは

疲れたようにため息を吐いていたが、

ふと、顔を上げた。

 

「……何か、来る」

 

王馬もそれに気付き、顔をその方向へと

向ける。

その方向の空から、何者かが高速で

向かってきていた。

 

日本では知らぬ者のいない伐刀者……

≪夜叉姫≫西京寧々の姿が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして冒頭に戻る。

 

「いやいや全く、少しばかり予想よりも

お早い到着でしたね」

 

ガウェインが寧々の霊装を己が霊装、

≪玉虫籠手≫で受け止めたまま話を始める。

 

「……皮肉にしか聞こえないねぇ。

とりあえずは、なんでこんな馬鹿騒ぎしたのか

聞かせてもらいたいものさね」

 

「ではこうしましょう。代わりに、

……今すぐにでも黒鉄一輝をこちらへと

連れてきて欲しい、というのは」

 

刹那、ぎしりと空気が音を立てて

張り詰めーーーーーー。

 

「たかだか20そこらの若僧がいっぱしに

大人ぶってんじゃねぇよ」

 

≪暁学園≫の面々を異常な重圧が襲った。

 

「「「………ッ‼︎」」」

 

寧々の伐刀絶技(ノウブルアーツ)≪地縛陣≫。

突然10倍近い重力を叩きつけられた

≪暁学園≫の生徒達は耐え切れず

地面へと這い蹲る。

 

だがしかしそれでもガウェイン、王馬は

顔色一つ変えず体勢を維持し、

這いつくばっていた白雪が≪歪曲≫の異能を

以って立ち上がった。

 

「……何故私の歳が分かる?」

 

「そんぐらい分かんなきゃ強くなれねーよ。

さて、今からてめーら潰すけど遺言は?」

 

明らかにイライラした様子で寧々は

片方の鉄扇を開く。

 

「遺言とは違いますが、今この場で

闘ったら……貴女は無事でも背後の彼女達が

無事では済みませんよ?」

 

背後のステラや刀華を見やりながら

ガウェインが受け止めていた寧々の霊装を弾いた。

それに伴い空気が険悪となる。

と、ガウェインの持っていた携帯から

着信音が聞こえてきた。

 

「はいもしもし……ええ……良いのですか?

では速やかに対応します、はい」

 

ガウェインは早々に通話を終了させると、

背後にいた王馬と白雪に対して

「もう良いとの事です。私としても

スポンサーの意向に逆らいたくはない。

早々に退散しましょう」と言い放った。

 

「貴女はどうされますか?我々を

逃がすか、それとも殺すか。

どちらにしますか?」

 

寧々は、少し考えてから自らの霊装を

だぼだぼの袖の中へと隠した。

殺しにかかればこちらも相応の代償……

生徒達の命を払う事になるからだ。

それは教師の身である寧々からすれば

避けたい事態であった。

 

「……うちがたまたま教師であった事に

感謝しなよ、餓鬼共」

 

「ご理解感謝します」

 

この一言を以って、≪暁学園≫の計画、

その≪前夜祭≫は終了の幕を下ろした。

ガウェイン達は素早く夕焼けの中、

破軍学園の校門の方へと向かっていった。

 

それを見ながら寧々はぽつりと呟いた。

 

「“スポンサー”、ねぇ……こりゃ

面倒な事になりそうだぜぇ、くーちゃん」

 

ひどく苦々しい表情で、天を仰いで。

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