多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

31 / 52
≪KORT≫の人間

≪七星剣武祭≫まで残り4日と迫った日の事。

破軍学園の理事長、神宮寺黒乃は黒鉄兄妹を

自らの部屋へと招いた。

 

「すまない」

開口一番、黒乃は二人にそう詫びた。

 

「そんな、理事長が謝るような事じゃないですよ」

 

「ええ。ですが驚きですね……まさか裏にいたのが

()()()()()()()だったなんて」

 

珠雫の言葉に黒乃は苦々しい表情で深く頷く。

≪暁学園≫の襲撃後、その理事長と名乗る人物が

表舞台へと姿を現した。

日本の総理大臣、月影 漠牙である。

彼は己が権力を持って暁学園に対する責任追及を

止め、結果として≪暁学園≫は何のペナルティもなく

≪七星剣武祭≫へと出場することに相成った。

一方で破軍学園の面々は一輝、ステラ、そして

有栖院から出場権を譲り受けた珠雫以外は

全員が棄権。その他の学園でも棄権者が相次いで

いるらしく、今回の大会は波乱の幕開けと

なりそうであった。

 

「まさか月影先生がこんな事をするなんて……。

まだ信じられん」

 

「先生は月影総理をご存知なのですか?」

 

「私が学生だった頃の理事長だった。

優しかったあの人が、一体どうして……」

 

黒乃はそう言いながら頭を抱えた。

2人はその姿を見て黒乃に心の底から同情した。

裏切りを受けるのは誰であろうと心に傷を

受ける事だ。しかもそれを行ったのが

信じていた人間ならば尚更のことである。

 

「……すまん、お前達には関係ない事だったな。

とりあえず≪七星剣武祭≫が始まる前に一つ、

注意してほしい事があって呼んだんだ」

 

黒乃は冷静を取り戻してから真剣な表情で

2人を交互に見やった。

 

「破軍襲撃時、ガウェインと名乗る人物がいただろう」

 

その言葉に、一輝はピクリと眉を寄せた。

知っている。ガスマスクと黒のコートを纏う

異様な風体の男。

 

「はい。彼は自らを“教師”と名乗って、戦闘には

参加しませんでしたが……」

 

「アレが戦闘に参加していたら、

間違いなく全員やられていた、と言いたいのか?」

 

その黒乃の言葉に首肯する一輝。

 

「……無理もない。奴は≪KORT≫の人間だ。

むしろ無事だった事を喜ぶべきだろうな」

 

「≪KORT≫……‼︎あの最恐の傭兵集団ですか⁉︎

なんでこんな所に……‼︎」

 

「ここからは、一部の人間にしか知られていない

話になるが」と黒乃は前置きして話し始めた。

 

 

ーーーーーー数年前、≪連盟≫は1人の

凶悪な犯罪者を捕らえる事に……表向きは

捕らえた事になっている……成功した。

 

彼の者の名は、エムリス・アンブローズ。

齢100を超え、世界に強大な影響力を持つ

怪物。

彼は高齢でありながら、過去に自身のみに

施した不老化の技術によって20代の体を持ち、

傭兵集団≪KORT≫を束ねる長でもある。

≪連盟≫は当時最新鋭の設備を持っていた

日本の某所にある刑務所に彼を幽閉。

いずれ彼を処刑するはずであった。

 

「……だがしかし、奴は解き放たれた。

≪KORT≫の総意として。

ガウェインとは別の奴らにな。

そして今奴は……≪暁学園≫の教師として

日本にいる」

 

「ッ‼︎」

 

「あと数日で≪七星剣武祭≫が始まる。

その時は≪KORT≫の連中に対しては

絶対に気をつけておけ」

 

その言葉には、重圧感があった。

 

「……もし、もしもです。

奴らと戦闘になったらどうすれば良いですか」

 

「逃げろ」と黒乃は言い放った。

 

「今日本にいるのはエムリスにガウェイン、

狂笑(メフィスト)≫ブルーノと≪悪食(アメイモン)≫ランスロット。

ブルーノとガウェインは数人がかりでなら

なんとかなるだろう。

……だが、ランスロットとエムリスと万が一戦闘に

なるようであれば“戦う”という選択肢は真っ先に

捨てろ。そして逃げろ。目の届かない所まで、

息が切れるまで全力で走って逃げろ」

 

そう黒鉄達に忠告しながら、黒乃はかつての

光景を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

黒乃の幾千もの弾丸を、寧々の鉄扇による

斬撃を、ありとあらゆる異能の力を

その身に受けながら一歩たりとも退く事のなかった

≪KORT≫きっての怪物……ランスロットの姿を。

 

黒乃は自分の攻撃を悉く受けて、尚も

進む事を辞めなかった彼の姿に恐怖を刻まれた。

今だからこそ分かる。

あの時の自分と寧々ではアレには到底敵わないと。

そして……彼の最強の≪伐刀者(ブレイザー)≫、

≪比翼≫にも匹敵する力を持っていたであろう事を。

 

「……だが、奴らが干渉してくる事などほぼ

ないだろう。≪KORT≫に関しての事は我々

大人が対処する問題だ」

 

故に、黒乃は決意する。

彼らに自分の様な恐怖を与えさせる事はさせないと。

もし≪KORT≫が干渉してくるようならば、

この命を懸けて守り抜いてみせると。

 

「お前達は何も考えず、

七星の頂を目指して走り抜けろ‼︎」

 

「「はいっ‼︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーその頃、≪暁学園≫では。

 

「だーーかーーらーーッ‼︎アタイは白雪とは

付き合ってねェッてば‼︎いい加減にしろよ‼︎」

 

「冗談が上手な事で。車の中でもイチャイチャ

していた癖にどの口が言うのやら」

 

ガウェインがため息を吐きながらやれやれと

ばかりに口を開く。

 

「おや、それは本当ですかガウェイン?

これが噂の“ツンデレ”とか言うものなのですかね」

 

「違う、違うって⁉︎マジで違うから‼︎」

 

だが幽衣の反論は聞き入れられない。

唯一ランスロットだけが反論を聞いてはいたが、

悲しいかな彼は喋る事が出来ない。

 

「……」

 

「これは赤飯炊いてお祝いですかねェッ⁉︎

盛大に≪KORT≫の皆で呪ってあげましょうよ

彼女達の結婚を‼︎」

 

「ちょ、本当に……あ、おい、白雪‼︎

テメェからも何かアイツらに説明を……‼︎」

 

困り果てた幽衣は通りがかった白雪に

誤解を解くように頼んだが。

 

「?なんで本当の事言ってんのに説明しなきゃ

いけないの?ボク達愛し合ってる仲でしょ?」

 

にべもなく断られた。

 

「えっ、ちょッ……⁉︎待っ⁉︎白雪、待て!

行くな行くな行かないで下さい頼みますから‼︎

せめて、せめて結婚だけは延期の方向で

調整するように頼んでええええええええええッ‼︎」

 

幽衣のその心からの叫びは、周りの山中に

響き渡る事になったのであった。




リクエストとか待ってます。
活動報告で募集してますのでどうぞご自由に。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。