多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

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Let’s party‼︎その2

白雪は、破軍学園時代のルームメイト、蜂谷由奈と

向かい合っていた。

 

何故そんな事になったのかと言えば、それは

少し前、白雪の姉、幽衣がパーティ会場で問題を

起こして出て行かざるを得なくなった所まで遡る。

 

 

 

……幽衣は、自らの思惑通りに行かなかった事を

イライラした表情で……時折壁を蹴り上げながら

廊下を歩いていた。

身体中から殺気が立ち昇っていて常人が見たなら

逃げ出したくなる様子だが、

 

「姉様可愛いよ姉様……ハァハァ」

 

「寄るな触るな近付くな暑苦しい‼︎」

 

白雪にとってはそんなもの気にも止めなかった。

精々、姉がいつもより少しだけイライラしている

だけという印象しかない。

 

「ああもう、今日はオフだってのに‼︎クソッ‼︎

あのスカした野郎に止められるわ白雪は

ボディタッチしてくるわ‼︎やってられるか‼︎」

 

スカした野郎、というのは≪七星剣王≫こと

諸星雄大の事である。

 

「姉様、悪かったよ身体中弄ろうとしたのは」

 

「今度からやったらその首刎ねるぞ」

 

「分かった。やったとバレないようにやるよ」

 

「馬鹿かテメェはッ⁉︎」

 

もしもそうなったら暫くは眠る事すら出来ない

状態に陥る事必至だ。

どうしてくれようかこの少女、と幽衣が頭を抱えた

時だった。

 

「……ん?」

 

白雪の声に前を見やると、そこには1人の少女が

オドオドした様子でこちらを見ていた。

幽衣は知らないものの、白雪の方は知った顔らしい。

 

「白雪……知り合いか?」

 

「うん、まあ……破軍にいた頃、少しだけね」

 

それを聞いて、幽衣が僅かに口端を吊り上げたのを

白雪は知らなかった。

 

「キキッ。少しの間話でもしてやったらどうだ?

どう考えてもテメェを待ってたに違いねェ」

 

「うーん。そうかなぁ……。まあ取り敢えず

話でもしてくるよ。先に部屋戻ってて」

 

その言葉に幽衣は「これで安心して休める」と

心の中でほくそ笑みながら了承した。

 

幽衣が立ち去るのを見送ってから白雪はその少女、

蜂谷を見やった。

そうして冒頭のシーンにもどる訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に口を開いたのは、蜂谷の方であった。

 

「久しぶり、だね。白雪」

 

「ふふ、どうしたのさ。忘れたのかな?

僕に撃たれた事をさ」

 

白雪は酷薄な笑みを努めて出した。

努めて、というのはいつもならすぐにでも

出せるはずのその笑みが、何故か

浮かんでこなかったからである。

 

「忘れてはいないわ。……でも、その時の

あんたの顔が、あたしにはどうにも……」

 

「その顔が見たくってまた来たの?

マゾじゃないの?」

 

白雪のそういった類の笑みは、

大抵標的を殺す時にしか出ないようなものだ。

蜂谷がその笑みを見たいというのならば、

彼女かあるいは別の誰かが白雪の拷問を受ける

必要がある。

……だが、蜂谷の返事は白雪にとって

予想だにしないものだった。

 

「違う。その逆よ。……あんな笑顔見たくない。

あんな……悲しげな笑みなんて」

 

「……?」

 

何と言ったのか、と白雪は自らの耳を疑った。

白雪は過去に姉や他の人から「イイ笑顔してる」

と言われたことはあるが、「悲しげな笑顔」と

言われたのは初めてのことだった。

蜂谷が顔を伏せる。

 

「うん。あんたは分からないだろうけどね。

あの時のあんたの笑顔は、

()()()()()()()()()()()()()笑顔だった。

本当の白雪が何をしてるかは知らないけど……。

これだけは言わせて……これ以上……これ以上

自分の心を殺すようなことはやめて……‼︎」

 

蜂谷が伏せていた顔を上げた時、白雪の胸は

これまで感じたことのない類の痛みが走った。

蜂谷は泣いていた。珠のような涙を流し、

嗚咽を繰り返していた。

それを見た途端、どうしようもなく白雪の身体は

凍りつかされ、言葉一つ紡ぐことも指一本

動かすことも出来なかった。

 

……何故、そんな顔が出来る。

自分を殺そうとした相手に。何故その相手を

想って泣くことが出来る⁉︎

自分にはこの生き方しかないのだ。

他に、他に何か道があるというのか⁉︎

 

そんな心からの想いが、白雪の喉で違和感となって

凝り固まっていた。

彼女がそれを嚥下しようと四苦八苦しているうちに、

蜂谷はいなくなっていた。

何か話したのか、それとも無言で去ったのか

白雪は覚えていない。

ただ、彼女が自分に何かを握らせたことのみは

辛うじて覚えていた。

恐る恐る、その手を開く。

中のぐしゃぐしゃな紙には、

今日の11時、大阪の某所にて待つ。と

書かれていた。誰かに頼まれたらしい。

白雪は筆跡から、そのメッセージを書いたのが

ガウェインであると理解した。

 

(そうとも。僕には、この生き方しかないんだ)

 

白雪はそう思いながら、しかし覚束ない足取りで

ガウェインが指定した場所へと向かうのであった。

 

そして……それこそが、白雪と幽衣の運命を

大きく変えることとなるのは、その時の白雪は

知るよしもなかった……。

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