多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

35 / 52
前回前書きであんな事言っときながら
そんな出せてない……。
すいません許して下さいなんでもしますから‼︎
(必ずとは言っていない)


時間稼ぎ

ーーーーーーホテルから走り出た少女は、

夏特有の照りつく日差しに嫌悪感を覚えながら

タクシーを止めた。

タクシーのドアが開き、中に入ると同時に一言、

「湾岸ドームへ」

 

少女は普段の彼女にしては珍しく焦っていた。

タクシーの運転手もその様子をなんとなく

感じ取ったのだろう、すぐさま車を発進させた。

その時、車内に付けられていたラジオの実況が、

≪紅蓮の皇女≫が≪魔獣使い≫をKOした事を

甲高い声で叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーその頃、湾岸ドームでは。

 

「……ふう。こんなものかな。まずは、一人」

 

もうもうとリング上に煙がたゆたう中、ステラは

悠々と≪妃竜の罪剣(レーヴァテイン)≫を下ろした。

彼女はつい先程、伝家の宝刀である伐刀絶技(ノウブルアーツ)

天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)≫を()()()放つ離れ業を

やってのけたのである。

そもそも≪天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)≫そのものが

先程敗れ去った凛奈の最強の手駒である

シャルロットが全魔力を以って創り出す最硬の

守りである≪千弁盾花≫と相打ちする程の代物。

それを何発も放てるのだから、どれほどの強さか

はっきりと先の攻防で観衆は理解した。

彼女は、ステラ・ヴァーミリオンはこの変則試合で

ようやく相手と()()()()()()のだ、と。

 

無論その強さは相手である平賀、鶴屋、多々良にも

充分に、いや観衆より間近な分より鮮烈に

伝わっていた。

 

「こ……こんな強いなんて……」

 

震える声で鶴屋が呟く。

恐らく心の奥から真にそう思っているのだろう。

彼女の声には拭いきれない絶望感があった。

 

「大丈夫、勝てますよ。ボクの切り札を使えば、

それこそ一撃でカタがつきます」

 

それを嘲笑うかの様に、彼女の後ろから声が

かかる。平賀の声だ。

 

「……何か策でもあるの?」

 

「ええ、もちろん。ただ、いかんせん時間が

かかるものでしてね。ですが完成すれば

間違いなく≪紅蓮の皇女≫を粉砕出来る。

だからお願いがあるのですが、少々時間を

稼いでくれませんかねェ。

お互いの利になること、ここは協力しましょうよ」

 

全てを嘲笑するかのような平賀の声に不快感を

覚えながらも、鶴屋がそれに従おうとした、

まさにその時。

 

「リンナの奴、五分も持たなかったな。

……しょうがねえアタイが時間を稼ぐ。

ヒラガ、その間にその切り札とやらを完成させろ」

 

「おや、タタラさん。……なら、お願いしますよ」

 

その言葉に牙向くような笑みを浮かべると幽衣は

魔力による加速を施して一人ステラへと突進した。

 

「ギャギャギャギャーーーーーーッッ‼︎‼︎」

 

ステラは幽衣の姿を認めると、≪妃竜の罪剣(レーヴァテイン)

を幽衣の方へ正眼に構えた。

 

『今度は多々良選手が吶喊‼︎ステラ選手、これに

向かいたちます‼︎』

 

「はあああああああああああああああっっ‼︎‼︎」

 

ステラは正眼に構えた≪妃竜の罪剣(レーヴァテイン)≫を振り上げると

向かってくる幽衣へと思い切り

その豪剣を振り下ろしーーーーーー。

 

 

 

 

 

真っ二つに斬り裂いたーーーーーーはずだった。

 

ステラが斬り裂いたはずの幽衣の姿が。

斬り裂いた刹那、ゆらりと歪み、消えたのだ。

 

「『「「なっ⁈」」』」

 

そして、幽衣本人はと言うとーーーーーー。

 

「……≪猪突≫ッッ‼︎」

 

「が、ァッ⁉︎」

 

いつのまにかステラの左側に移動し、その脇腹を

鋭い一撃で撃ち抜いていた。

 

『な、なんとステラ選手、痛恨のミスッ‼︎

脇腹にキツい一撃をもらってしまいましたッ‼︎』

 

実況が叫び、観衆のボルテージが上がる中、

観衆の一人、黒鉄一輝は信じられぬとばかりに

目を見開いていた。

 

「あの技は……⁉︎」

 

「どうしたのですか、お兄様?」

 

見れば、黒鉄の隣にいる黒乃も驚愕の表情を

していた。

 

「黒鉄、気付いたか」

 

「ええ……さっき多々良さんがやったのは、

足捌きだけですが、間違いなく僕の≪蜃気狼≫です」

 

≪蜃気狼≫。黒鉄一輝のオリジナル技の一つ。

急激な緩急をつけた足捌きを以って自らの

目前に幻影を作り出す技である。

 

「多々良さんにあの技を見せたのはほんの

数分前。そんな時間で真似出来るものじゃない。

どうやって……」

 

困惑する一輝。しかしそれは、彼の反対側の席に

いるエムリス達にとっても同じだった。

 

「馬鹿な……≪猪突≫、≪猪突≫だと⁉︎

あの技は我々≪KORT≫以外門外不出だぞ⁉︎

どうやって身につけた‼︎」

 

≪猪突≫。一見ただの突き技に見えるが、

その実は全く違う。

≪猪突≫の一番の特徴は加える力をたった

()()()()()()()に集中させることだ。

そのため、側から見れば中指の関節のみを

突き立てるように見える。

力が一点に集中するため威力は凶悪の一言。

魔力のこもったものとなれば厚さ5cmの鋼板をも

易々と貫く程だ。

 

「……白雪は彼女に贈り物をしたわけですか」

 

そのエムリスの一言で、ガウェインは得心が

入った。成る程、白雪は≪猪突≫を覚えている。

幽衣が白雪からその技術を盗んだと考えれば

ごく自然ではないか。

 

「ふふ、成る程。俄然面白くなってきましたね。

幽衣さんがどれだけ白雪さんから技術を盗んだか

とことん見物させて頂きましょう」

 

エムリスはそう呟いて、幽衣の一挙一動を

見逃さぬべく身を乗り出した。

 

 

 

 

 

こうして周りが騒いでいる間にも試合は

刻々と続いているのだが、趨勢は幽衣の優勢で

進んでいた。ステラも≪妃竜の罪剣(レーヴァテイン)≫を

駆使して立ち回るが、幽衣は小柄を生かし

ヒットアンドアウェイを繰り返していた。

ただ、ステラは纏っている魔力のおかげで、

最初に食らった≪猪突≫以外ロクなダメージを

負っていなかった。

 

「アンタ、舐めてんの……‼︎霊装なしで

闘うなんて、妹譲りじゃないの⁉︎」

 

「違えよ。テメェにゃこれ()一つで

充分だからなァ。ギャギャギャギャッ‼︎」

 

多々良のその言葉には真実味があった。

それを立証するように、実況が告げる。

 

『えー、多々良選手は先程の試合でも

同じように相手選手を徒手空拳のみで

KOしていますね』

 

『恐らくよほどの相手でなければ霊装は

出さないでしょうね。ひょっとすると

徒手空拳のみで優勝するかもしれませんよ?』

 

『そうなったら何の大会なんだ、って話に

なりそうですがねえ』

 

ステラはようやく、目の前の少女を敵と認識した。

だがそこで、幽衣は平賀の方を向くと、

「ヒラガァ‼︎出来たかァ⁉︎」と叫ぶ。

 

平賀がそれに手を上げて肯定すると、幽衣は

笑みを浮かべた。

 

「ギギッ。どうやらここまでらしいなァ、

≪紅蓮の皇女≫。まあ精々頑張って足掻きなァッ‼︎」

 

その言葉と共に、会場に影がかかる。

次の瞬間、リング上に大量の瓦礫が降り注ぎ、

組み合わさり、巨人の形を成す。

 

「タタラさん、お待たせ致しました。

それでは始めましょうかステラさん。

この≪機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)≫で‼︎」

 

作り上げる際に中に入ったのだろう。

巨人の中から会場中に嘲笑うような平賀の声が

高らかに響き渡るのだった。




感想やご意見お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。