多々良幽衣の妹(自称)は平穏に過ごしたい   作:ストスト

7 / 52
選抜戦

今日はなんだか、学園の生徒たちがざわめいている。

まぁ無理もないことだろう。今日から、

選抜戦が始まるのだから。

 

「……ボクの初戦の相手は二年生の

竜崎、とかいうのだったかな……?」

 

 

マフラーに顔を埋めながらボクは相手の情報を

確認した。

 

竜崎 大、破軍学園の二年生。Cランク騎士だ。

校内序列は9位の男性で固有霊装(デバイス)

ナックルダスター。

≪重力使い≫の伐刀者で、伐刀絶技(ノウブルアーツ)

暴君顎門(ディノサウルバイト)≫。

 

「ぶっちゃけ……ボクにとっちゃ相性良すぎて

楽なんだよなぁ……」

 

ボクの固有霊装(デバイス)は狙撃銃。

相手の能力範囲外まで出てしまえば煮るなり

焼くなりどうにでもできる。

くああ……と欠伸をしながらボクは試合場へ

向かう。これからその竜崎と試合だからだ。

 

(にしても、喉乾いた……)

 

防寒具を纏っているこの姿だと異様に暑いし

喉は乾くわ汗はかくわでまだ夏でもないのに

大変だ。

これから夏となると考えると今から気が重い。

 

「ああ、嫌だなあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

控室にはエアコンがついていて、ボクは

冷房を入れて試合の時間までゆっくりすることに

した。

 

ボクの前は前回七星剣武祭に出場した

≪狩人≫こと桐原静矢と、≪落第騎士≫黒鉄一輝の

試合であり、客席は生徒で満杯であった。

 

一応、黒鉄はボクと一緒のクラスなので応援

させてもらう……心の中で。

あんな人がいっぱいいるところで応援してたら

ボクは人酔いして吐く自信がある。

 

(大変だなぁ黒鉄君。初っ端から七星剣武祭

出場者と当たるなんて)

 

まぁボクも校内序列一桁と当たるのだからそう

変わらないが。

ああ、なんて面倒なんだ。

こういう時は早く終わらせるに限る(・・・・・・・・・・)

そして、とっとと帰るのが一番だ。

 

(最も早い手順で終わらせることにしよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、白雪の試合の時間が訪れた。

 

『さあ、先程の≪狩人≫桐原静矢選手と≪落第騎士≫

黒鉄一輝選手の試合から若干観客の数が減ったように

思えますが、張り切っていきましょう‼︎

赤ゲートから姿を見せたのは校内序列9位、

竜崎 大選手です‼︎』

 

そのコールと共に、黒髪の偉丈夫……竜崎が

姿を見せる。

 

『前年度の模擬戦では自身の能力と

強烈な攻撃力を持つ伐刀絶技(ノウブルアーツ)

暴君顎門(ディノサウルバイト)≫で驚異の勝率8割5分を

誇っているパワーファイター‼︎

今回もその伐刀絶技(ノウブルアーツ)で勝利を

決めるのでしょうか⁉︎

続いて青ゲートからも相手選手の多々良 白雪選手が

姿を見せました‼︎』

 

 

竜崎が出て来たゲートの反対側から、防寒具を

纏う小柄な少女が観客の前に現れた。

 

『今年からこの破軍学園に入学した1年生‼︎

その実力は全く以て未確定です‼︎

さあ、両者がスタートラインにつきましたッ‼︎』

 

10m程の距離を置いて二人が向かい合う。

 

「いけーダイナソー‼︎お前なら余裕だぞー‼︎」

 

「捻り潰してやれー‼︎」

 

『観客からのコールを受けて、竜崎選手が

古代の大牙(ティラノファング)≫を顕現しました‼︎

しかしッ‼︎白雪選手それを見ても自らの霊装を

顕現する様子が見受けられない‼︎これは

どういうことだろうか⁉︎」

 

実況の言う通り、白雪はじっと竜崎を見つめ

霊装を顕現しようとしない。

 

「ねえ、今からでも遅くはないから。

……降参しない?」

 

「あ?何言ってんだお前。するわけねーだろ。

アホが」

 

竜崎がそう言うのも当たり前だろう。

白雪はまだ実戦すら経験していない1年生。

しかしそれに比べ自分は学園序列一桁。

負ける道理が見つからないからだ。

 

『さあ、今回は竜崎選手が上級生の格を

見せるのか‼︎それとも1年生の白雪選手が

大番狂わせを起こすのか⁉︎

試合開始のコールが……今鳴りましたッ‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

「シャアアアッ‼︎」

 

開始早々に竜崎は自分の周りの重力を倍加させ

白雪の機動力を奪う。

 

(舐めた真似してる奴には少し痛い目に遭って

もらうぜっ‼︎)

 

続いて竜崎は白雪に≪暴君顎門(ディノサウルバイト)≫を見舞おう

として……

 

 

姿を見失った。

先程まで自分の正面にいたというのに。

 

(なっ⁉︎)

訳が分からない。どうやったら正面に、

それも10m先にいた敵が、

 

「遅い」

 

自分に気付かれず(・・・・・・・・)目の前に

現れるなどという芸当が出来るのだろうか?

竜崎は接近を許してしまった白雪を迎撃しようと

するが間に合わず、腹に思いっきり

抜き手を叩き込まれた。

 

「がッ……⁉︎」

 

その強烈な痛みに思わず重力倍加を解除して

しまう。それによって白雪は奪われていた

機動力を取り戻し、次の瞬間魔力による

加速を使用して竜崎に高速の攻撃を仕掛ける。

 

『開始早々白雪選手ラッシュラッシュラッシュウウウウウウウウッ‼︎竜崎選手たまらず防御に

徹しますが構わず白雪選手攻撃を続けるッ‼︎』

 

「おいおい嘘だろ⁉︎」

 

「頑張れダイナソー‼︎」

 

観客から聞こえてくる応援に竜崎は、

(無理に決まってんだろバカヤロウッ‼︎)と

心の中で吠えた。

白雪とかいう対戦相手、中々に拳打の威力が

ハンパではない。魔力による強化も伴っている

だろうが、それを差し引いてもかなりの威力だ。

おまけに反撃に入れる隙が全くない。

 

(こいつ、ホントに1年坊か……⁉︎)

 

だがそうそう殴られてばかりでは上級生の

メンツがズタボロだ。

 

(校内序列一桁の底力、てめーに見せてやるよッ‼︎)

 

「ウ、オオオオオオアアアアアアアアッ‼︎」

 

『おおっとっ⁉︎竜崎選手、ラッシュを受けながらも

雄々しく雄叫びを上げました‼︎

さて、どうやって白雪選手の攻撃を

止めるのでしょうかッ⁉︎』

 

竜崎の雄叫びに顔を顰めながら白雪が

距離を取る。ようやく、竜崎に攻撃のチャンスが

訪れたのだ。

 

(さっきは不覚を取ったが、二度も同じ手は

食わねえ。今度はてめーの姿を見失いは

しねぇぞっ‼︎)

 

竜崎は白雪へ渾身の一撃を叩き込もうと

走り出し、

 

 

再び白雪に懐に入り込まれて今度は首の後側面に

強烈なパンチを撃ち込まれ、その意識を

徹底的に破壊された。

 

 

『あ……圧倒的イイイイッ‼︎竜崎選手、

まるで手も足も出ず‼︎白雪選手のラビットパンチに

よってKOされましたアアッ‼︎

白雪選手、竜崎選手に目もくれず踵を返して

ゲートへと戻ってゆきます‼︎』

 

「マジかよ……ダイナソーが肉弾戦で負けた⁉︎」

 

「油断してたんだろ……そうとしか思えねえよ」

 

「やっぱり、今年の1年は化け物揃いだな……」

 

観客達が騒ぐ中、白雪は飄々とした様子で

ゲートの中へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、ちょっとばかし相手がタフだった……」

 

そう言いながら白雪は首を回した。

本来ならばもっと早い時間で終わらせるはず

だったのだが、竜崎が思ったよりも体力が

あったために時間がかかってしまった。

 

「伊達に序列一桁じゃない、か。

まぁ、頑張ったよ、彼は」

 

白雪は、今頃治療を受けているであろう

竜崎へ人知れず賛辞を送るのだった。

 

(にしても、昔“先生”が教えてくれた

ニンジャが使うっていうウォーク・ジツだったか。

効果は本物だけどネーミングがな……)

 

白雪は試合中に使ったウォーク・ジツが日本発祥で、

しかも古流歩法「抜き足」と呼ばれていることを

のちに知ることになるのだがそれはまた別の話。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。