ブラック★ロックシューター Kagero Symphogear 作:イビルジョーカー
自分の予想より遅くなってしまいましたが、次話です。
感想をいただければ幸いです。
※題名変えました
齢18の少年、如月伸太郎は今日という日を心底と言う程に後悔したかもしれない。
いや、もはや十分後悔していると言う方が適切か。
何故なら自分の目の前で謎の白装束の連中が黒いツインテールに黒のパーカーらしき服装を身に纏った少女に、その手に持った大砲のようなもので胴を撃ち抜かれ、首を落とされる。
そんな非現実的光景が広がっているのだから。
時を遡れば、全ては今日の朝から始まった。
「お、俺のパソコンがァァァァァーーーーーーーーー!!!!」
少年、如月伸太郎ことシンタローの悲痛と絶望を織り交ぜた叫びが部屋どころか外へと響き渡る。
原因は彼のパソコンに置いてあったコーラが大量に溢れ見事に故障。パソコンがウンともスンとも言わなく成り果てたからだ。
しかも大切なデータもいくつかパソコンの中にあった為、故障したとなるとデータの復元は難しい。
とは言え、復元できる可能性は決してゼロではない。
確率で言えば……0.03%だろう。
もはや“絶望そのもの”としか言えないが。
《あ〜あ。またやっちゃいましたね〜ご主人》
床に蹲るシンタローの耳に呑気な少女の声が届いた。
急いで近くに置いてあったスマホを手に取り画面を見れば、ホームのディスプレイ画面の中をまるで魚のように舞う青いパーカー姿の少女が一人、同じ青のツインテールを靡かせシンタローに悪戯っ子な笑みを見せつける。
「笑い事じゃねーぞこれは!! どーすんだよ?! また何時ぞやの時みたいに買いに出る破目に…」
《よかったじゃないですか。せっかく外に出るんですから、メカクシ団の皆さんと一緒にお出掛けしましょう!!》
何がよかっただ。最悪の事態の間違いだろ。
声に出して叫びたいのを堪え押し込み、とにかく今問題とすべきはパソコンだ。
壊れたパソコン。その中のデータは復元できる可能性がもはやゼロに近いと言っていいほど低い数値。
ならば、どうすればいいか。
どう考えても“外に出て買い行く”という選択肢しかない。
「はぁぁ………分かった行くよ。行けばいいんだろ」
「おおッ!! ヒッキーなご主人がそんな簡単に……さては偽物ですか?!」
「アホか。俺だって変わるんだよ色々」
シンタローは、ほんの数年前まで俗に言うところのニートに属する人間だった。
当然ニートである以上、他人と接触する機会なんてものは幻想に等しく存在せず、あったとしても実妹だけというのが関の山だった。父は幼い時に他界しており、母は入院しているため妹以外の人間には会っていなかったし、そも彼自身が会うことを頑なに拒んでいたからだ。
そんな彼がエネと出会ったのは一年前ほど。
最初こそ自分のパソコンに来てしまった悪戯メールの類だと思っていたのだが、これが大間違いだった。
メールの中身はエネそのもので、なんと自称『スーパープリティー・電脳ガール』と呼ぶ奇天烈で異様な存在だった。
ただのAIプログラムやウイルスとは思えないほど情緖に溢れ、まさにハイテンションが
鰻登りも同然。
悪く言えば小悪魔的迷惑電脳ガール(シンタロー曰く)。それがエネという、説明し難い存在にして少女というわけである。
そんな彼女との望まなぬ日々を過ごす中で、今回のようにパソコンを壊してしまった時があったのだ。
そして何という災難か。買いに出かけたデパートに強盗団が押し入りシンタローは人質として捕まってしまったのだ。
そんな危機的状況でシンタローを救ったのは、メカクシ団だった。
その後は恐ろしい速さで妹とのモモ共々メカクシ団にエネの脅迫と言う名の説得もあって入団。
現状において彼はそのメカクシ団という一風変わった集団に一員として、組みしているのである。
《あっ、どうせならモモさんやメカクシ団の皆さんと一緒に行きましょうよ!》
「やだ。一人がいい!絶対!!」
エネの提案に時間をかけず簡潔に三拍子で即答するシンタロー。
異議あり! と言いそうな感じを匂わせる。
《ええ〜!! 行きましょうよご主人!! ね?絶対楽しいですってホントマジで!!》
「集団行動のデメリットを知ってるか? 個人の自由が制限されるし、相手を待たなきゃいけない。そんなんだったらソロで行くのが吉ってもんだろ?」
ドヤ顔で正論を口にするシンタローだが、逆にそれが“なんぼものもんだ”と言いたげな顔のエネはすぐさま反論した。
《ご主人は青春の波に乗り遅れてしまった、言うなれば人生の遭難者なんです! みんなと一緒に楽しんで色々して、時には甘く切ない恋なんかも…》
「いや、ねーから。あんまし妄想垂れ流すなよキモい」
《き、キモいとはなんですか!! 私はただご主人の今後の為を思ってですね…》
「オカンかおのれは!! 余計なお世話だっつーのそんなん!!」
あー言えば、こー言う。
そう言えば反論する。互いに。
言葉と言葉の応酬は、不毛な平行線を辿るだけで決め手に欠けていた。
しかし、このまま不毛に続ける訳でも無意味に終わらす気もないエネはある策に打って出た。
《いいんですか〜ご主人。実は私、こ〜んなこともあろうかとご主人の誰にも見せられないデータ満載の秘蔵フォルダをこのスマホに写したんですよ? ああ〜拙いですね〜》
誰にだって見せたく物の一つや二つある。
そんな代物を秘密裏に手中に収め、脅迫紛いな言葉で心を翻弄させる手口というのはやはり末恐ろしい所業と言える。
だが、それをエネはしているわけだ。
ご主人と嘯く元ニートに勝つ為に。
しかし、シンタローに焦燥や危機感はなかった。
彼女の行動をよく把握しているし、これは前にもあったからだ。故に打開策を持っていたのだ。
「おいおい、エネよ。俺が二度も同じ手にひっかかるバカとでも思ってたのか? 秘蔵フォルダのデータは、この中にある!!」
勝機は我にあり、とその手に握ったある物を見せつける。エネが目を凝らしてみればそれは何処にでもある一般的なもの…USBメモリだ。
「二度あることは三度ある。逆に一度起きれば、二度同じようなことが有り得る。先手を打つってのはよ、先を見据えた者こそが成せる技なんだよエネ」
《プッ、プフフ。その中に入ってるの、私が予め用意しておいたダミーですよ?》
………………………へ?
そんな間抜けな心内の呟きと共に一瞬、世界が凍てつくかと思うほどにシンタローは銅像の如く固まってしまった。
《疑うんでしたら、証拠をどうぞ》
そう言って、エネは画面に明確な証拠となる本物の秘蔵フォルダの中身をスマホの画面いっぱいに表示した。
その内容は……想像にお任せ願おう。
「な、なっ、なんでだ! 確かに……」
《行動が遅いんですよご主人は。何事も早い段階から動くべし! 理解しました〜?》
驚愕を隠せないシンタローにしてやったりとエネは口の両端をこれでもかと吊り上げ、ニヤリとした邪悪な笑みを浮かべてはこれ見よがしに見せつけている。
その様、悪戯的という可愛いらしい領域を飛び越えて、もはや悪魔的な次元に入っていると断言していい。
そしてこの状況を見た者は、すぐにある事を察するだろう。
どちらが勝者で、どちらが敗者か。
もはや軍配は決したのだ。
「で、こうなるわけか……」
シンタローは溜息を吐き、何もかも諦観と化した状態で空を明るく照らす太陽の下を歩く。
メカクシ団という集団は、その活動内容に決まったものはないが、主に人助けを生業にしている。
とは言え、別段今日は困っている人などいない為、メカクシ団全員でお出掛けしようと言うことになった。
ようするに、用無しの暇という訳だ。
「ほらほらお兄ちゃん! そんな亀みたいに歩いてたら置いてっちゃうよ?」
「むしろ置き去りにしてほしい。全てがちっぽけに見えちまうくらいの高い所で」
某錬金術師アニメの有名なOPっぽい事をほざくシンタローに対し、彼を亀の歩みと酷評する妹の如月桃こと『モモ』は自身の兄を一瞥する。
「相変わらずダウナー全開だね。何かあったの?」
「前の時みたいにパソコンがぶっ壊れてよ、しかもその時に行ったショッピングモールにまた行く羽目になったわけだ。これ、気が急転直下しない理由あるか?」
「前向きに考えようよ。同じ事が起きる可能性なんて天文学率的数値なんだって」
「お前の口から天文学率なんて言葉が出るとは。お兄ちゃんビックリ」
兄と妹でそんな会話を繰り広げている内に、一名ノリ気でないメカクシ団一行は目的のショッピングモールへと無事到着。
ここは以前、シンタローが前回パソコンを買いに行った際に強盗団が押し入り、そしてメカクシ団に出会うキッカケとなった場所だ。
故にテンションをダウンさせるも道理で、やはりここには行きたくなかったのが本音ではあるが、みんなの意向によりシンタローと言う一人の人間の拒否表明は却下された。
多数とは、ある意味暴力なんだなと感じ入るシンタローを他所に、メカクシ団のメンバ
ーらは和気藹々とした空気を形成させていた。
「そーいや、ここって僕等とシンタロー君が出会った思い出ある場所だよね〜」
「おい、皮肉みたいに言うな」
ニヤニヤとした顔を浮かべてシンタローを一瞥しながら言う鹿野修哉こと『カノ』の姿は、まさに団員内でよく例えにされている猫のそれだ。
猫は猫でも、人を誑かす化け猫の類とでも言うべきか。
身に纏った黒のフード付き半袖パーカーを靡かせては、してやったりと笑う姿にシンタローは苛立ちを覚えつつも何とか堪えた。
「調子に乗るなカノ」
そう言って、カノの鳩尾へ拳を叩き込んだのはiPodをあしらった絵柄の薄紫のパーカーを目深く被り纏った、ボーイッシュな緑色長髪の少女。
木戸つぼみ。通称『キド』だった。
「い、いっつつ……いや、そんなに怒んないでよキド。これはアレ、ホラ、ちょっとしたジョークだよジョーク。知ってるだろ?」
「ああ。よく知ってる。けど、だからこそ、意外とムカッと来るものなんだ」
「ぐぼぁっちょッ!!」
思わず笑いで吹き出してしまいそうな奇声と共にキドのアッパーを顎に受けて軽く上昇
。
そんな光景を眺めつつ、やはり溜息しか出ないシンタロー。同じく光景を見ていた深緑色のツナギに黄色のヘアピンをした少年、瀬戸幸助こと『セト』と。
もう一人、白い髪に水色と白のエプロンドレスと言う、まるで童話不思議の国のアリスが現実世界に飛び出したかのような風貌の少女。
本名小桜茉莉、団員通称『マリー』。
この二人は眼前の光景に対し別段思うところは無かった。これが日常的に繰り返されている一種の日課と化しているからだ。
故にのほほんとした両者の空気は変わらず、ただ『カノがいつもより吹っ飛んでるね』や『そうっすね〜』という会話が成立しているだけである。
慣れとは、恐ろしいものだ。
感想待ってます!