ブラック★ロックシューター Kagero Symphogear 作:イビルジョーカー
大雪で大変でしたが……それが済めば次は寒波。
まだ1月ですが、もう冬は早く終わってほしいものです。
事実は小説よりも奇なり。
そんな言葉があるが、シンタローやメカクシ団員達がこれをよく体現していると言っていいだろう。
何せ、バトル系の漫画やアニメなどに出てきそうな異能の力があり、それを使えるのだから。しかし、彼らの力以上に不可思議怪奇としか言い様の無いものもある。
それが『クロワ』だ。
あのショッピングモールで生命の危機に瀕していたシンタローたちを救った人ならざる者たち。
彼等は実際に人間では無いし、この地球上に存在するどの種の生物でもない。
彼等は、俗に言う『エイリアン』に当たる。
だが地球外の宇宙から来たのではなく、彼等は時空の垣根を超えて宇宙外の異世界より来訪したのだ。
そして彼等の正しき種の名は『ハートレス』。
宇宙の外側…自分達の故郷たる別次元に存在する異世界『クシロロ』からやって来た知的生命体。
その特性は人間に似た姿、あるいは動物などに似た形態を有し、中には機械的な無機系の要素を持った者も少なくなくアーマメントと
呼ばれる技術により、魔法のような事象現象を発動させることが可能だ。
そして何より特筆すべきは、種の特徴として感情面での希薄・欠如があるという点だ。
この感情的な希薄と欠如に関しては個体ごとに違いがあり、ある者は怒り以外に何もなく、ある者は楽の感情は並にあるがそれ以外は極端に薄い。またある者は憎悪と敵意が皆無で、大切な者を殺されても悲しみしか感じられないなど。
そのパターンは個それぞれごとに千差万別。
しかしいかに感情が薄く欠如しているからと言って争いが起きない理由にはならない。
どの世界にも、知能を発達させ文明を得た生命体に争いは付き物だが、彼等の争いの最たる要因は堪え難い闘争本能だった。
ハートレスという種は誕生から当初、黎明の時代においては闘争本能を有していた。自分以外の他者を殺す、まさに戦闘マシーンと揶揄されても仕方ない在り方を持っていたが、ある時期を境に平和主義という概念を持ったハートレスが誕生し増えていった。
この平和主義のハートレスたちによって創立された国家が『クロワ』だった。
クロワが創立して以降、クシロロは劇的に変化を遂げた。
絶え間なく溢れ果てていた死体は無くなり、凄惨な殺し合いもなくなった。
しかし、闘争主義らは消えることなくクロワと戦い続けた。
やがてクロワを真似てコミニティーを形成し集団戦を行うようになったが、大抵の場合は力と我が強い者同士の権力争いが原因で瓦解。
そう長続きはしなかった。
クシロロはクロワにとってまさに平和な時代と言えた。長い月日を経て、クロワは文明的にも大きく発展を遂げたが、栄光なる平和の時代は突如として終わりを告げられた。
少数に分裂していた闘争主義の組織勢力等が次々と一つに束ねられていき、単独で活動していた闘争主義らも取り込み勢力は拡大。クロワの本拠地、クシロロ最大唯一の都市であった『クロワ大都市区画』。
その中小規模の都市区画を一つ、また一つと闘争主義勢力は一切の慈悲も躊躇も持たず、悉く潰していった。
やがて奴等は、自分達をこう名乗った。
“白き闘民”と意味を冠する……“ハクト”という名を。
これがクロワとハクト。
両勢力の800年に渡る戦争の開幕だった。
「と、ここまで説明したけど。何か質問は? 遠慮しなくていいわ」
「……いや、あのさ、うん。説明はいいんだけどさ……ここ何処だよおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーッッッ!!!!」
叫ぶ、とにかく叫ぶ。
椅子に腰掛けていた自分の目の前にあった黒い金属性のような材質のデスクの表面を叩き、シンタローは悲痛の声を上げる。
今自分の前にはデッドがおり、今いる場所は何処とも知れない四角形状の一室。
その角四つには何やら長方形の武器のようなものを所持した警備員らしき黒コートの男が4人佇んでいる。
どうして、こんな事になったのか?
これでは、まるで事情聴取を受ける犯罪者の姿じゃないか。
そう思うシンタローだが、ここへ連れて来られた経緯はあまり覚えていない。理由はいきなり手を自分の顔へ翳された瞬間、突然意識が朦朧とし始め、そのまま意識は暗転。
そして気が付けば、この場所で椅子に座らされていた。
何とも容認し難い事柄かもしれないが、ともかく、状況は最悪を去ってまた最悪を迎えたと言えた。
「いきなりやってしまったのもあるし、混乱するのは分かる。けどお願い。落ち着いて」
「………みんなは無事なんだろうな?」
とりあえずは深く空気を吸い込み吐き出し、深呼吸の応用で少しながらも落ち着きを取り戻した。
興奮して喚いても何も始まらない。
それを理解しているからこそ、こうして何とか湧き上がる激情を抑えているのだ。
「貴方の友達に関しては安心して。何もしていないわ」
「信用できる証拠は?」
「この映像を見て」
そう言ってデッドはシンタローの前へ手の平を見せるようにして翳す。するとパッという効果音が付きそうほど一瞬にしてモニターのような半透明の長方形が出現。
そこに映し出されたのは、メカクシ団の皆だ。
『このカレー美味しい! おかわり!!』
『……イケる』
『本当だね。疑ってたけど、これ、昔キドが
失敗して作ったカレーより…』
『フンッ!!』
『ふごぉぉッッ!!』
『美味しいっすね!』
『うん。辛口だけど……辛さがあんまり続かなくて、甘口の私でも食べられる』
付け加えると、和気藹々とカレーを仲良く食べている皆の光景だが。
「………」
「この世界……特に日本ではカレーが人気のようだから、友好的好意と安全の意を込めて作ってみたの。貴方も食べる?」
さも、それが当たり前の事だと言う風な体で話して来るデッドだが、シンタローは片手で顔を覆い隠しており、もう一方の手では固く握り拳を作り震わせている。
もう、どうもにでもなっちまえ。
真面目に色々考えてた自分がバカだ……。
そんな心の声が今にも聞こえて来そうだが、しかしシンタローの心情を察してあげられるほどデッドは空気を読めないし、ここにいる男性ハートレスたちもそういった類だ。
「ともかく、今から貴方の友達に会わせてあげる。その後は私たち『クロワ』のリーダーに会ってもらうわ。重大な話があるの」
☆☆☆☆☆☆☆
「問う。あのような凶行に走った理由を聞きたい……言え」
「別に? ただ暴れたかった。そんだけだ」
白い空間。
そう表現する他ない場所で座禅を組むのは、少々筋肉質な上半身を半裸の状態で、惜しむことも、ましてや恥じて隠そうともせずに曝け出した初老男性。
その目前で対しているのは、ショッピングモールで数多の血が流れる騒ぎを引き起こした異形の髑髏男、フォメトスだ。
「ほう。それだけの為にか?」
「ああ、それだけだ。文句あるか?」
ただの老人とは思えない鋭利で冷たい殺気が白亜の空間を支配していく。
あくまで冷静を取り繕うフォメトスだが内心、恐怖はあった。
人間なら冷や汗が滝のように流れ落ちて止まらなかったことだろう。
「貴様は幹部より下位の者だ。それを随分と
幹部並みに大きく出れたものだな」
「俺は俺だ。幹部より上の“元帥”の地位だからって指図する気か? ホワイト様ならともかく、な」
フォメトスはバードの部下であるが、本人にバードに対するの敬意は皆無だ。それは他の幹部も同じこと。
そしてその幹部達を束ねる眼前の初老の男性“管理元帥”の『ザハ』も
、彼にとっては従うに値しないのだ。
まさに傲岸不遜な男だが、そんな彼でも唯一従う者がいた。
その存在は……
「そう熱り立つな。らしくないぞ、ザハ」
凛とした、しかし確かな重圧を秘めた声。
それはザハの後方から発せられていた。
姿勢を変えることなく流れるように振り返ったザハの目には、1人の少女が映り込んだ。
そして、フォメトスもまた。
「あ、あんたはッ!!」
「んん? どうした。まさか、この妾が死んで化けたとでも言いたそうな面構えじゃないかフォメトス」
それはまるで、ブラック★ロックシューターを反転させた影写しのような白の少女だった。
ただ髪型や瞳、人相などは全てにおいて別物と断じることはできる。
青く慈悲を表したような優しげなロックの瞳とは違い、白の少女の瞳はまるで憎悪の炎を滾らせる激情の赤。
儚げな白髪を荒々しいポニーテールへと纏め上げ、ニヤリと笑う口から覗かせる歯は凶悪な猛獣を彷彿とさせるには十分の鋭さを有していた。
ロックの優しい笑顔とは、まったく正反対の笑顔と称していい。
「妾が死ぬとでも思うたか? 確かにこの世界に来る前は致命傷と言っていいダメージは受けたが……それはもう過去の話だ。こうして、妾は復活を果たした」
ゆっくり、ゆっくりと。
一歩一歩進みザハを通り過ぎて、フォメトスとの距離を縮めていく白き少女。
フォメトスは抵抗もせず、言葉も出さない。
ただ素早く頭を垂れ下げて傅くだけ。
「言え。此度の件は妾の耳にも聞き及んでいる。言いたい事があるならば答えろ」
「分かりました」
やっと出た台詞は、普段の彼の素行や性根を知る者からして見れば、驚愕の一言に尽きるほど丁寧なものだった。
「私的な娯楽気分でやった事については相違ありません。俺も部下達も何も知らぬ異世界 へ来てからというもの、待機や偵察、調査等の地道で面白味もない役回りでしたので息抜きが必要でした。今回の一件はそれ故です」
「……」
「ほう。それだけの理由でか?」
「はい。クロワとの戦闘では個人的に俺自身が気に食わなかったからで、そこに合理的な意図や目的は一切ありません」
さも当然と言うが、その答えに不愉快を示したのはザハだ。
彼は冷静な思考と寡黙の雰囲気を持つ男だ。今も不愉快さを感じこそすれ言葉として出してはいない。
だが、目は違う。
発する圧力も違う。
貴様如き黙らす事など蟻を潰すに等しいほど容易い。
無言に秘めた意はこれと同じ意味合いを忍ばせていたのだ。
「まぁいい。今回の件は不問しておくが、次からは弁えろよ? 万が一でもストックどもに気取られるわけにはいかないからな」
「分かりました」
「よろしい。行くがいい」
主君の言葉を聞き、転移によって数秒と経たずに消えたフォメトスを見届けたホワイトは踵を返して自らもこの空間内から去ろうとする。
が、その前に自身が最も信頼する腹心の1人であるザハに声をかける
。
「何か不満か? 遠慮はいらない。言ってみるがいい」
フォメトスに対し不快な感情を抱いているのは知っているし、先ほどから滲み出していた殺気やら目付きがそれを嫌というほど示しているのは明白だろう。
「……僭越ながら申し立てれば、あの不届き者を始末すべきかと。上司たるバードは貴方様の命を狙い、姑息な策を常に考えている愚か者
。バードやそれに下する者等はハクトにいらぬ輩共かと思い致しています」
「なるほど。確かにその意見は合理的だ。しかし我々は“闘争主義”のハートレス。今も昔も自しか認めず、他を敵とみなしては戦い続ける闘争の民。妾やお前は後天的なものだが、奴等は先天的…生まれ持っての闘争主義者なのだ。その在り方を変える事はできんだろうさ」
ハートレスという種は遥か昔……地球の時間感覚で言えば、およそ一万年から闘争主義と平和主義に分かれていた。
種が誕生して久しい時代は皆平等に闘争本能に従い、自分以外の他者を敵と見定めて殺し合いを勃発させるのが当たり前だった。
やがて平和主義が出現し、他を認めた集団における戦法を用いるようになるとそれに習う形で集団を成すようになった。
が、エゴイストの最高潮とも言える彼等闘争主義に集団という手段は相応しいものとは言えなかった。
そんな彼等は現在、少数ながらも逸れはいるが大多数がホワイトの支配下にあり、統制はそれなりに取れてはいる。
だが、所詮はホワイトという存在の抑止力があってこそに過ぎない。
フォメトスもそうだ。
ホワイトという絶対の支配者なしにハクトは存在し得ない。
闘争主義とは、そういう生まれ持った揺るがぬ在り方に縛られた存在なのだ。
「………」
「そう深く考えるな。きちんと手綱は握るし、お前やナフェの尽力は知っている。些細な事柄で瓦解などさせんさ」
そう言って笑う顔は、家族に向けた優しい物だった。
クロワと敵対し、ハクトの“総督”として破壊と虐殺を平然と行って来た者とは思えないであろうその顔は、欺瞞ではない確かな暖かい情念が通っていた。
ホワイトはそれだけを言い残しフォメトスと同様に消失。白亜の空間に残されたザハは静かに目を閉じ、ふと呟く。
「ワシも、まだまだ……か」
誰に聞かせるわけでもなく吐露した言葉は、当然ながら誰の耳に届くことはなかった。
感想待ってます!!