ブラック★ロックシューター Kagero Symphogear 作:イビルジョーカー
シンタローたちメカクシ団一行は、何とか合流を果たすことができた。
そもそも何故、シンタローだけがみんなとは違う部屋に隔離されたのかと言うと実際は一人一人別々にあの部屋へと案内されており、デッド曰く『検査の為』らしい。
ここに来る前にシンタローを含め全員が眠らされた理由は安全に保護して送る為と、ストレスによる心的ダメージで磨耗してしまった精神を緩和・回復させる為だったのだ。
更にカレーも食したおかげでメカクシ団員達は心身共に良好状態と言えた(約1名が少々疲れ気味だが)。
そして今、彼等はあの部屋よりも広くおよそ学校などの体育館の半分はあると思われる、一つのルームに集まっていた。
彼等の両端の傍にはデッドやチャリオットにストレングス。
デッドスカル兄弟。メイコックとショッピングモールに駆け付けたメンバーの他に青いショートヘアに白いコートを纏い、髪と同じ色のマフラーを首に巻いた青年。
そして武者の如き黒を基調とし、端が紫に染まった甲冑を纏い、端と同じ紫色の髪をポニーテールにした青年。
他にもいるが、今は割愛しておこう。
ともかくここにいる人ならざる者達…『ハートレス』たちは皆、ある共通点が存在している。
一つは、『クロワ』というハートレスのみで構成された組織に所属していること。
もう一つは、一人一人が上位戦闘員よりも上…最上位戦士である『精鋭』の称号を持っていること。
つまり、ここにいるハートレスたちは皆組織のトップという事になる。
「集まってくれて……と言うのは少し違いますね。いきなり連れ去ってごめんなさい。私はクロワの最高統率者『ブラック★ロックシューター』。気軽にロックと呼んで下さい」
窮地に陥ったシンタローを救った黒の少女。
一寸さえも違わぬあの時と同じ姿で彼等の前へその姿を現していた。
「で、本当に何の用なんだ? カレーの件は礼を言うけど、それとこれとは話が別だ」
メカクシ団の団長であるキドが目を細めて睨みながら、そう言った。
どうやら完全に猜疑心と警戒心を孕んでいるようで、これに関しては団員たちにとって大小なれど共通認識であろう。
「まず言わせてもらえば……貴方達は全員、“目に特殊な力”を持っていますね?」
その言葉の意味を理解した瞬間、メカクシ団の警戒心は一気に跳ね上がった。
自分達が持つ目の力は誰にも知られることのない、知られてはいけない異端の能力。
それを何故……この少女は知っているのだろうか?
“メカクシ団たちを監視・調査していた”
この解答以外に、彼等の秘密を知り得えている理由はない。
「あ、待って下さい。別に何か企んでるわけではないんです。これは貴方達を一人一人、あの部屋で調べた際に分かったことで詳しい事は分からないんです。信じて下さい」
目を見る限りでは嘘はない。
雰囲気も隠しているという風は見られず、仮に嘘をついていたとしてもセトの『目を盗む』能力で読心できる為、問題はない。
カノとキド、シンタローがセトを見るが首を横に振る。どうやら本当に嘘を吐いている訳ではなかったらしい。
「私達には“アーマメント術式”と呼ばれる技術体系があります。これはあなた方人間で言うところの科学技術に相当するものだと思って下さい。アーマメント術式には様々な系統に分かれていて、各系統に沿った事象や効果を齎しますが、その中には情報を得るものもあります
。それを用いたことで貴方達の持つ力を知りました」
「……本当にそれだけか?」
疑心を織り交ぜた視線を向けるシンタロー。
セトの存在で嘘は通用しないと分かっていても、やはり彼自身の疑り深い性根が無意識に問いを投げかけていた。
内心苦笑する中、ロックは至って間を空けずに答えた。
「本当です」
変に言い訳をするまでもなく、この即答。
どうやら全面的にとは行かずとも、自分たちの力目当てでないことは信用しても良さそうだ。
そう思い、シンタローは少し警戒を引っ込めた。完全にではないが。
「俺達の力が目的じゃないなら、なんでここへ連れて来た? その訳を聞きたい」
シンタローと同じく完全ではないものの警戒を緩めたキドがロックへそう問いかけた。
確かに彼女の言い分は正しい。
普通、何かしら一般人とは違う何からの特徴…メカクシ団の場合は目の能力だが、関係を有さないのであれば一般人たちと同じように記憶を消し、関わらない方が得策だろう。
情から来るお節介であれ、単に興味であれ。
異世界の事柄・人物に首をつっこんだり、手を出すような真似はご法度。
何気ない接触が未曾有の事態へ繋がることも有り得る。
しかし、彼等はメカクシ団へ接触して来た。
考える理由としては“何らかの緊急事態に対し、メカクシ団員達の力がどうしても必要”か。はたまた、“利用できそうなものを見つけたから
、利用しようとしている”。
この二択くらいだろうか。
だが、ロックの言葉はシンタローの考えた二択のそれとは大きく違ったものだった。
「セトさん。シンタローさんの“目を盗んで下さい”。そうすれば理由が分かります」
目を盗んで下さい。その言葉の意味を理解したシンタローはセトに能力を発動させた状態で自分を見るようアイコンタクトを送る。
意図を悟ったセトはすぐさま瞳を赤く染め上げて能力を発動。セトの目の能力は対象…人であれ動物であれ、あるいは物でさえも情報を得ることが可能なもの。
人間や動物の場合はその心を読み取り、更に意識すれば対象の記憶や過去を垣間見ることができる。
それがセトの“目を盗む力”の性質。
そしてものの数秒でシンタローの首筋に何かが付いているのを発見した。
「これは……」
見れば、それは白い星のシールのようなものだった。
それに意識を集中させ調べて見ると、発信機であり、盗聴器や盗撮機の機能を併せ持ったものらしい。
「ま、まさか、あの時に……」
「いや、違うっす。これ……二週間前につけられてたみたいっすね」
セトの言葉に誰もが戦慄を感じ得ずにはいられなかった。
もしやと思い他のみんなも見てみたが、全員に白い星は付いていた。
ということは、二週間も前から何者かに監視されていたことになる。
勿論、ロック達ではない。
「これは私達が仕込んだものではありません。セトさんの力で得られる情報が証拠です」
「その人の言ってることは正しいっす。これ、間違いなくハクトって連中の仕業っすよ」
ロックの言葉にセトも同調する。セト本人が言う以上、彼女の言葉を信用する他にない。
「……………まぁ、言いたいことは分かった。で、あんたはアレか。余計なお節介で俺達を助けてくれたってワケか?」
「敵が何を考えているのか、理由や目的は不明ですがメカクシ団の皆さんがハクトに狙われている以上、クロワは……私達は貴方達を全力で守ります。それが我々クロワの使命ですから」
「……そうかよ。まぁ、つーか、それよりもここって何処なんだよ? もう居場所は敵が知っちまったんだし、移動しなくていいのかよ」
未だ疑念はあるものの、とりあえず一旦は置いておくことにしたシンタローは改めて今自分達がいる場所を。
そして、先程から敵へ現在位置の情報が露呈してしまったにも関わらず、焦らないどころか何の行動さえも起こさないロック達に問い質した。
「大丈夫ですよ。ここ、異空間ですから」
「……へ?」
「ですから、異空間なんです。これを見て下さい」
なんて事のない風に言うロックだが、そんな答えでは呆気取られるのも無理はない。しかし彼女の言う通り自分達のいる位置から右にある四角い枠のような部分を見る。
するとまるで溶けるように枠の部位のみ壁が消失。外の景色が一望できるようになった。
「う、嘘だろオイ……」
「マジで……」
「………」
「「「ほぇ〜……」」」
『幻想的ですね! まさにザ・異世界ってヤツじゃないですか〜!!』
シンタローとカノは驚愕の声を思わず漏らし。
キドは言葉も出ず。
モモ。マリー。セトは気が抜け出たような声を出し。
ちゃっかり出て来たエネは、モモが無意識にポケットから取り出したスマホのカメラから光景を見て、異様にテンションを上げているがいつものことだ。
皆が見る視線の先には虹色の空。
赤や青、緑や黄、紫や橙など。
鮮やかな色彩で染まった空は紛れもなく地球には存在し得ない。
虹色の空が無限に広がる空間。
まさしく異空間と呼ぶしかない光景が確かにあった。
「ここは、貴方達の存在する世界から切り離された場所です。世界の何処を探しても存在しないですし、次元の位相座標が複雑な為、容易く侵入することはできないんです」
丁寧に説明してくれているロックだが、驚愕のあまり、彼女の言葉による羅列の数々は彼らの耳には届かなかった。
「では、クロワの精鋭メンバーの紹介に移りましょう。まずはチャリオット。精鋭の中でもスピードに長けていて、このように両足が車輪になっています」
「ど〜もよろしくね!」
チャリオットは元気良く答えるが、彼等は苦笑するしかなかった。
「剛腕の武器『オーガアーム』を持った腕力の戦士ストレングス。パワーで言えば精鋭の中で唯一と言っていい」
「……よろしく頼む」
ストレングスは特に表情を見せず、あくまでポーカーフェイス且つ平坦な口調で答えた。
「彼女はデッドマスター。医療のスペシャリストで、無くてはならない精鋭軍医です」
「よろしく。もし、怪我をしてしまったら私にどうぞ。しっかりきちんと治してあげるわ
」
こちらもストレングスと同じで平坦だが、言葉から医者としての風格が伝わって来る感じだ。
「クロワの様々な剣術・剣法をマスターした剣豪スライザー・カムイ
」
「今後とも、よろしくお願い致す童達。拙者は歓迎でござる」
黒と紫の武者甲冑に時代錯誤としか言いようのない“ござる口調”なものの、デッドとストレングスに比べ活気良い雰囲気の声と言える。
「彼等はデッドスカル兄弟。デッドマスターの補佐で、医療・戦闘においてはデッドマスターに並ぶ実力があります。兄がジニーで、弟がコニーといいます」
「紹介に肖ったジニーだ。何か不備があれば言ってくれ。相談に乗ろう」
「ヨォオオッ!! 俺はコニー!! ロック経由の紹介だが言わせて貰うぜ!! ヨロシクなァ
ァッ!!!!!」
冷静沈着、優雅と呼ぶに相応しい言葉遣いのジニーに対し、コニーは情熱を噴火の如く大爆発させたようなハイテンション。
メカクシ団面々は普通に引いていた。
「遠距離・近接銃器や武器のスペシャリスト
メイコック」
「まっ、よろしくなガキども」
そう言って手に持った長方形型の銃器をこれ見よがしに見せ付けるが、その様子にロックは非難的な視線を向けた。
一般市民にとって兵器・武器はそう容易く身近にはない代物。アメリカのように銃を購入できる国や地域もあるが、団員達が住んでいたのは銃刀の所持がご法度な日本。
縁などないにし、そもそも人を殺すことのできる物を他者が持っているというのは恐怖と不安しかないだろう。
「メイコック。武器をしまって」
「そんな怒るなって。ちと自慢したかっただけだよ」
僅かばかりの怒気と共に釘を刺すロック。
相手が相手にメイコックは苦笑しながら言う通りにし、武器を何処へと転移させた。
「最後にカイト・ストローク。水と氷を自在に操り、水中戦ではまず最強と言っていい」
「ははっ、よしてくれロック。そんな言う程じゃないよ」
やや苦笑気味に言う白マフラーに青髪の青年カイト。
これで今いる精鋭メンバーは以上だ。
「さて、一通り紹介しましたが、何か質問は
ありますか?」
特にない。とは言えないが、それでも今この場で言う気にはなれない。未だ色々と心情的に混乱しているメカクシ団面々(エネは平然そのものだが)は、とりあえず首を横に振ったり、ないと言って次に進ませようとした。
「では、今後について話し合いましょう……と言いたい所ですが、ひとまず整理が必要な筈です。今日のところは一先ず貴方達を家へ返しますが、何かあった時の為に護衛を付けさせてもらいます」
そう言って、一先ずだが団員達は家へと帰る事となった。