ネギ&千雨アフター   作:◯岳◯

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エピローグ : しあわせのみつけかた

桜の花びらが舞い踊る、雲一つない空の下。椅子に座っている長谷川千雨は純白の衣装に身を包みながら、落ち着かない様子で周囲を見回していた。

 

その様子を見ながら、同じく椅子に座っていた茶々丸はため息をついた。

 

「いい加減に、年貢の納め時だと思うのですが」

 

「だって、その、ほら………分かるだろ!?」

 

「分かりません。大勢の前で熱烈な告白シーンを展開しておいて、何を今更」

 

長いマリッジブルーに付き合わされるのはそろそろうんざりです、と茶々丸は容赦のない言葉で千雨を打ちのめした。

 

千雨は顔を真っ赤にしながら―――胸元と肩が開いている衣装のため、そこも少し赤くなって―――ぶつぶつと呟きを返した。

 

「でも……お前はいいのか? ネギ先生の嫁になるのが、こんな陰険な眼鏡女でよ」

 

「対面倒くさい女友達プロトコルに基づいて最適解を返答します―――“はいはいワロスワロス”」

 

茶々丸が何でもないように答えた。千雨は文句を言うが、どれだけ長い時間一緒に居ると思っているんですか、と茶々丸が慣れた様子でそれをあしらった。

 

「そりゃあ……えっと、なんだ。ひょっとしてエヴァよりも長いのか」

 

「はい……と言っても、ネギ先生には及びませんが」

 

「結局ノロケに自慢かよ」

 

激動の10年の中で誰がネギの背中を支えたのか、という問いかけに対して真っ先に上がる名前が絡繰茶々丸だ。秘書として、常人ならば死ぬであろうスケジュールをきっちりと管理した。その甲斐もあって、遂には軌道エレベーターの開発も峠を越すことが出来た。

 

「ふふ、我が親友には言われたくありませんね……」

 

「照れくさいから止めろって言ってんだろ、その呼び方」

 

10年前より成長し、柔らかい表情を浮かべられるようになった茶々丸に対し、千雨は当時と全く変わらない照れた仕草で茶々丸を止めようとした。

 

それを見た茶々丸は、懐かしいですね、と言いながら窓の外を見た。

 

「あの時、例え話の類でしたが………予知になってしまいましたね」

 

「……ああ、たしか中学最後の体育祭の時だったか」

 

『他の女に先越されても平然としていられんのかよ』という千雨の言葉に対し、茶々丸は『構いません応援させて頂きます、その相手が親友の千雨さんならなお嬉しい』と答えたのだ。

 

それから、12年。遂に二人は、披露宴を行うまでに至ったのだ。茶々丸はその事実を噛み締めながら、呟くように語った。

 

「平然と、なんでもないように………と思うのは難しいですね」

 

「茶々丸……お前、やっぱり」

 

「嬉しさが勝ってしまうんです。苦楽を共にした仲間が結ばれて家族になる。それを近くで見られることが、何よりも嬉しい」

 

笑顔を伴った言葉の不意打ちが、千雨に突き刺さった。たちまち、千雨の顔が真っ赤に染まっていった。

 

「このっ……無駄に成長しやがって!」

 

「そこが嬉しいくせに、とは返さないでおきますね」

 

少し涙目になっている千雨を見て、茶々丸は思った。なんだこの可愛い生き物は、と少しキャラを壊しながら。

 

「しかし、面倒くさい所は変わっていませんね……思えばあの時も……?」

 

茶々丸は言葉を止めると、扉の方に視線をやった。直後に、ノックの音が。茶々丸が入室を促すと、聞き覚えのある声の主達が部屋に入ってきた。

 

「これは……昨日ぶりですね、皆さん」

 

二日酔いは抜けましたか、と尋ねる茶々丸に来客者達は一斉に首を横に振った。綾瀬夕映に宮崎のどか、雪広あやかに古菲は青白い顔をしながらも、千雨のドレス姿を見るなり「また飲みてえ」という表情に変わった後、首をもう一度横に振った。

 

「って、おい……本当に大丈夫か? 先月に開発されたっていう二日酔いを軽減する薬ならあるが」

 

「お、お気遣いありがとうございます。ですが、それはもう飲みましたわ………」

 

「そ、そうか……飲んでそれなのか?」

 

どれだけ呑んだんだ、とは千雨は言わなかった。集まった面々を見ただけで、痛飲に至った理由を何となく察していたからだ。

 

「しかし……綺麗ですね、千雨さん」

 

あやかが、ぽつりと呟く。その直後に、涙を流しながら千雨へと押しかけた。

 

「あの卒業式から10余年……長かったですわね!」

 

「お、おう……そういえばあの時も委員長は」

 

血涙を流してたよな、と千雨が言う前にあやかは千雨の両肩を掴んだ。

 

「おめでどうございます! あれがらいろいろど、ほんどうに色々とありましたが……ようやく、ですわね!」

 

だみ声になったあやかに対し、千雨は顔を引きつらせながらも頷いた。あやかはそこでようやく落ち着くと、深呼吸をした後に千雨に向き直った。

 

「……正直、言いたいことは色々とありますわ。何故あの時に頷かなかったのか、お、追いかけてくれたネネネネネギ先生に対してヘタレ全開な言葉で逃げようとした事など、挙げ始めればキリがありませんわ!」

 

あやかによる矢のような言葉が千雨の急所を抉った。千雨自身も自覚があったため、威力は5倍になっていた。

 

「ですが………お礼を、言わせて下さい」

 

「……え?」

 

胸を抑えていた千雨が、聞き返す。その顔を見ながら、あやかは真剣な表情で千雨に頭を下げた。

 

「ネギ先生のことを……私達は色々と誤解していたと、痛感させられました。千雨さんと先生が話されていたことを聞いて、ようやく分かったんです」

 

ネギが二度目の告白をした時の会話を、あやか達は隠れながらも聞いていた。ネギ自身がそれを望んだからだ。その時にあやか達はネギ・スプリングフィールドが抱える闇や孤独というものの本質にようやく気づいた。

 

「好きという自分の感情だけを優先させていた……そう思うのです。当時、まだ11歳だった先生のことを考えずに……私は」

 

自分の感情を押し付けることだけを考えていた、とあやかは当時の己の未熟だった部分を悔やんだ。好きだった。心配はしていた。

 

―――だが、どこかで“ネギ先生ならば大丈夫”という、あまりにも無責任なら信頼を持っていた。寂しいからと、夜な夜な明日菜の布団に潜り込む子供だったのに。

 

「……買いかぶりだ。ネギも私と同じように、面倒くさい性格をしてたからな。似た者同士だから、察することが出来ただけだ」

 

「でも……自分ではなく、ネギ先生の事を先に想っていたのは確かでしょう?」

 

横から言葉を挟んだのは、のどかだった。

 

「卒業式の日、千雨さんはネギ先生のことが好きだった。感情のままで動くのなら、告白を受け入れいていたと聞いています」

 

「誰から……って、そういえば」

 

茶々丸はその時のやり取りを思い出すと、茶々丸の方を見た。茶々丸はそこでちょうど部屋に入ってきた小動物に視線を向けた。

 

「カモさんからの情報ですね。数値的には、のどかさん達と変わりありませんでした」

 

「ん? ……ああ、あの話か! いやー、おれっちもあん時は自分の未熟さを思い知らされたぜ」

 

「はい……好きな気持ちがあるから近づいていくのではなく―――好きだからこそ、遠ざかる」

 

「……そんな大層なもんじゃない。ただ逃げただけだって」

 

「それもネギ先生のことを思って、でしょう? 私であればできなかったと、そう思います」

 

大人になって、職を持った今だからこそ分かることがある。のどかは苦笑しながら、告げた。もしも、あの時ネギが自分の告白を受けてくれていたら、どうだったか。あの責任感が強い少年は、当時まだ子供だった自分に、どれだけの時間を割いてくれていただろうか。その結果、生涯の仕事だと告げたテラ・フォーミング計画に、どれだけの遅れが出たのだろうか。

 

隣に居た夕映も、同じことを考えていた。当時、告白をするしないで騒いでいた自分達に告げたフェイトの言葉は正鵠を射ていた、と。

 

先生と同じ視線でものを見ることが出来て、同じ場所に立つことができる。それができない者が彼の隣に立つことは許されないと言われたが、あれはある意味で正しかったのだと。

 

「……あの時も今も、貴方だけがネギ先生の教え子(ミニストラ・ネギ)ではなかった。そういうことでしょうが」

 

「綾瀬……」

 

「勘違いをしないで欲しいのですが………恨み言はありません。先生が好きになった女性があなたのような人で良かったと、そう思っているんです」

 

受け入れられず、苦しい思いよりも理解が勝るし、納得が出来た。恋に敗れたことが、その理由がストンと胸に落ちる。それが、夕映達の総意だった。

 

「あの夏の告白事件で、色々と悟らされました……面倒臭さが天元突破していた事とか、色々ツッコミたい部分はありますが」

 

「ぐっ」

 

「人の事を勝手に推薦しておいて本人は姿を消すとか、かなり物申したいこともあったのですが………まあ、委員長が最初に言った通りです」

 

「そうアルな」

 

古菲が、しみじみと頷いた。

 

「千雨はとっくに私達を倒していたアル………ネギぼーずを想う者として、完敗アルよ」

 

「いや、ちょっと」

 

「そうですわね……愛しているからこそ、離れる。遠ざかる。並の“好き”じゃできない事ですわ」

 

「だから、な?」

 

「うん、えにっきを使ったらピンク色に汚染されそうで怖いかも。そんなの無くたって、ネギ先生をずっと見ていて、所々で心を撃ち抜いていたようだし」

 

「お前ら、私の話を」

 

「あと、裏で麻帆良を守ったのは先生のためと聞いています。そしてヨルダの件も……かなり重いですね。一歩間違えればストーカーになっていたのでは? 技能を考えると、シャレになりませんね」

 

「いや、それは」

 

「だというのに、他に女が居るだろ。流石は我が親友、面倒くささと重さは太陽系で最強かもしれませんね」

 

「………」

 

千雨はついに涙目になって、黙り込んだ。千雨をそこまで追い込んだ5名は顔を見合わせた後、おかしそうに笑いあいながら、冗談だと告げた。

 

「別に、責めてる訳じゃないんです……ただ、確認したかっただけで」

 

「……なにがだよ」

 

ジト目になった千雨に、のどかが笑顔で告げた。

 

「先生が、千雨さんのどこを好きになったか……うん、今分かったような気がします」

 

「だから、そんなヘタレな顔をしないで欲しいのです。もっと、堂々としてください―――今更、責めたりはしませんよ」

 

何故自分達は負けたのか、その納得に至るまでを。本当は4年前に分かっていたのだけれど、とは乙女の意地として言葉にせず。

 

同じ想いを持っていた4人は、誤魔化すように腕時計に目をやった。

 

「あっ、もうこんな時間」

 

「そろそろ魔法世界組が来る予定ですね」

 

「それはいけませんわ、すぐにでもいかなければしゅうしゅうが」

 

「おい待て、なんだその棒読みは。特に委員長」

 

「いやー、そういう事アル……しかしここでツッコミとは、千雨はやっぱり律儀アルな」

 

古菲は失踪しながらも道場建設の助言や資料を送り届けてくれた千雨に苦笑しながら、片手を上げた。

 

「それじゃあ、私達は先に行ってるアル」

 

「ですね。あ、もう逃げるんじゃないですよ」

 

「ですわ。そんな事したら、今度こそ我が流派の奥義を」

 

「だね。えにっき使ってみんなの前で朗読会とかしちゃうかも」

 

純朴な者一名に、釘を刺すものが三名。たくましくも見事な連携で言葉を制された千雨は、彼女達が部屋を去る背中を見送ることしかできなかった。

 

入れ替わるように、明日菜が部屋に入ってきた。

 

「こんにちはー。あ、千雨ちゃんここに………うん、綺麗だね」

 

明日菜は太陽を思わせる笑顔で千雨に笑いかけると、腕を組みながらしみじみと頷いた。

 

「ネギから好きな人を聞いた時は、どうなる事かと思ったけど……」

 

「そういや、神楽坂には言ってたんだっけか……意外だっただろ?」

 

「うーん、今思えばそうでも無かったかな。魔法世界でネギと合流した後、初めて闇の魔法を見せられた時のやりとりとか思い出すと、ね」

 

明日菜は闇の魔法という危険な技法を修得したネギを頭ごなしに叱ろうとして、千雨が止めたことがあった。

 

「ああ……あの時は、差し出がましい真似かと思ってたんだけどな」

 

「そんな事無いわよ。あの時に、ちょっと気づいたことがあったし」

 

心配して叱る自分と、経緯を見た結果、信じてやってくれないかと訴えた千雨。明日菜は客観的に見て、腑に落ちることがあったという。

 

「やっぱり、私にとってネギは家族なのよね。すーぐ危ないことしようとする、あぶなっかしい弟って感じの」

 

「……ああ、そんな風だったな。高畑に懸想していた時のように、暴走する事とかあんまり無かったし」

 

「うん……って、容赦ないわね千雨ちゃん。何か、怒られるようなことしたっけ?」

 

「……エヴァの奴がな? 最近、お前のナギさんに対する面会が増えたとかでな? 不機嫌なあいつが、私と茶々丸を一緒にな?」

 

「え……い、いや、そっ、そういうんじゃないのよ?」

 

明日菜は誤魔化すように答えた。だが、千雨は知っていた。最近になって髭を生やしはじめ、渋さが増しつつあるナギに時間が出来れば会いに来ている明日菜の内心を、何となくだが察しつつあった。

 

(まあ、ラカンのおっさんから聞いた、神楽坂の黄昏の姫巫女時代を思うとな……ナギさんは間違いなく、ヒーローだった訳だし)

 

家族愛か、あるいは。千雨はそこまで考えた後、ふと呟いた。

 

「ナギさん、ロリババァ二人にロックオンされてんのか………強く生きてくれよ」

 

「ん、なんか言った千雨ちゃん?」

 

「いや、なんにも」

 

千雨は今世紀稀に見るほどの綺麗な笑顔で誤魔化した。茶々丸は察知されないよう、千雨の呟きを静かに録音していた。これで宴会時の余興が増えましたね。とナチュラルに外道なことを考えていたりもした。

 

「ともあれ……あいつのこと、頼むわね。私なんかに言われるまでもないだろうけど」

 

「いやいや。ネギにとっての神楽坂の存在は並大抵のもんじゃねーぞ」

 

ネギにとっての神楽坂明日菜の名前は、3-Aの中でも特別な位置にある。信頼と、好意まで。それを聞いた明日菜は、照れたように笑った。

 

「ま、まあ……血縁、って意味でしょ。姉みたいなもんだと思うし」

 

「正式には叔母さんだけどな……いえ、何でもないです」

 

右手に魔力、左手に気と呟いた明日菜を見て、千雨はすぐに自分の言葉を撤回した。

 

「ふーん………あ、でもそういえばだけど、千雨ちゃんがネギと結婚したらさ。私って、その」

 

「……そういや、そうなんのか。あ、でも叔母さん呼ばわりはするつもりねえぞ。違和感が半端ねえし……そうだな、神楽坂姉さん、とか」

 

「うん……でも、もう一声!」

 

笑顔で催促する明日菜に、千雨はため息一つを零しながら、告げた。

 

「それじゃあ……これからもよろしく頼むぜ、アスナ姉さん」

 

「うん!」

 

明日菜は元気一杯に、返事をした。それを見て、千雨はにやりと笑いながら告げた。

 

「姉さんじゃなくて義母さんになる可能性が、無きにしも非ずだけどな?」

 

「えっ?! あ……いや、でも、そんな」

 

「どっちが良いかは、先に決めといてくれよ。若干一名、手強いライバルも居ることだしな。まあ、ナギさんみたいなタイプを手っ取り早く捕まえるには、押して押して押し倒す方法が一番だと思うが………いっちょやっとくか?」

 

「にゃっ!?」

 

明日菜は真っ赤になって絶句した。そのままからかい倒された明日菜は、頭から湯気を出しながら手をわたわたさせ、遂には涙目になった。

 

「うー……千雨ちゃんの意地悪」

 

「悪かったな、それが私だ」

 

「でも、私は好きだよ。3―Aのクラスメイトの、神楽坂明日菜として」

 

先程とは異なる、優しい笑顔。千雨は言われている意味が分からず訝しげな表情になったが、はっと思い出して口を抑えて。

 

「もしかして……誰かから、聞いたのか?」

 

「うん、昨日に………いいんちょからね。“100年とかそんな誇大妄想ファンタジーなんか知らん”、だったっけ?」

 

それは概念結界に囚われた明日菜を助け出すため、クラスメートの皆で明日菜に話しかけた時のこと。姫巫女の100年に比べれば、明日菜の人格は僅か数年の経験により構成されているもの。仮初めだと言われた千雨は、『私達にとっちゃあいつは3―Aのクラスメート神楽坂明日菜だ』と答えた。

 

「……悪口ばっかだぞ。ちょいアホでガサツで、いっつもいいんちょと喧嘩してウザくてはた迷惑だって」

 

「でも自分を曲げない事と底抜けに前向きな所は評価できる―――最後になんて言ったっけ、千雨ちゃん?」

 

「ぐっ、そこまで喋ったのか」

 

その後に続く言葉は、“大切なクラスメート”というもの。千雨はらしくねえ事言っちまったと後悔しながら、視線を逸した。その様子を明日菜と茶々丸がにやけながら眺め、千雨は誤魔化すように扉の方を指差した。

 

「そんな事よりも、早く会場に言った方がいいんじゃねーか、ナギさんとかもう来てるだろうしな」

 

「えー。でも、千雨ちゃんからかうと面白い反応してくれるし」

 

「今日だけじゃねえから、良いだろ。さもなくば披露宴の後にアスナ義母さんとか呼ぶぞ」

 

「へっ!?」

 

「いえ、それは―――マスターが暴走しそうなので」

 

茶々丸が制止するも、一歩遅かった。扉の向こうから春らしくない冷気が漂ってきたからだ。それが誰であるか、よく知っている3人は息を呑んだ。

 

「……じゃあ、私はこれで」

 

「ちょっ?! 引っ掻き回すだけ回しといて―――おいこら、逃げんな!」

 

止めようとするも、アスナは見事な速度で窓から逃げていった。千雨はパンツ見えたぞ、と呟きながらも生き残る方法を模索した。だが、その全てを読んでいたかのように、入室した人物は千雨の前に立ち塞がった。

 

その金髪の美しい幼女は―――エヴァンジェリン・|A・|K・マクダウェル肩を震わせながら千雨に詰め寄った。

 

「おい―――どういう事だ。何故、貴様があのバカの事を母などと呼ぶ」

 

「えっと、それは………ってちょっと待てエヴァ、お前、泣いて」

 

「な、泣いてない! 泣いてないぞ、私は! ええい、それでどうなんだ!」

 

「あー、悪い。なんていうか売り言葉に買い言葉でな。つまり、冗談の類だ」

 

その後、千雨と茶々丸は見事なコンビネーション話術で涙目になったエヴァンジェリンを何とか落ち着かせると、椅子に座らせた。

 

「ふう……そういう訳だ。つーかそんなに泣きそうになるんなら、もっとアタック仕掛けとけよ」

 

「………その結果が落とし穴にニンニク・ネギのコンビネーション、最後に理不尽極まる呪いだとしても貴様はそう言えるのか?」

 

「ごめんなさい」

 

全面的に悪かった、と千雨は素直に頭を下げた。あと、前々から何度も聞かされてたけどやっぱりないわ、と呟いたとか。

 

「でも、ずっとこのままで良いのか? なんつーか、付かず離れずの距離を保ってるようだけどよ。さっきの話、あながち絵空事とは言い切れないんだぜ」

 

「……何度も言うようだがな」

 

「“人並みの幸せを得るには殺し過ぎたし長く生き過ぎた”、だったっけか……何度も聞いたけど、理屈としちゃあ破綻してると常々思ってたんだよ」

 

「ほう? なんだ貴様、幸せの絶頂で上から目線で説教でも垂れようというのか」

 

いつにない強い物言いをした千雨に、エヴァンジェリンが反発の言葉を返した。だが、それなりに付き合ってきた千雨はこれが威嚇ではない拒絶を示すものだと見抜いていたため、言葉を続けた。

 

「殺した、っていっても自分を殺そうとした奴らだけだろ……なんて、平和な時代に生きてる私達にゃあ、そんな世界で生きてきた奴にあれこれ言う資格は無いんだけどよ」

 

「分かっているではないか……いや待て、ならば何が言いたい?」

 

「人殺しって観点なら、ナギさんも同じだろ。別に特別な訳じゃない………私だって似たようなもんだ」

 

防諜の仕事で、直接誰かの命を奪ったことはない。だが、自分が原因で何人の人間が路頭に迷うことになるか―――死ぬことになったのか。千雨は、そこまで理解した上で告げた。

 

「殺したから幸せになる資格が無い、っていうんなら私達みんな同じだ。いや、ずっと前のご先祖サマも同じだろ?」

 

「……なに?」

 

「極端に言えば、戦国時代とかだな。敵を殺して、生き残った。なら、もう誰かを好きになる権利さえ奪われるってのか?」

 

そして大名だけではない、戦場で生き残るために敵を殺した足軽まで罪を思い続けて不幸せにならなければいけないのか。千雨はそう前置いた上で、尋ねた。

 

「だったら、私達は生まれてねえよ。つーか、人類の大半がアウトだろ」

 

「……そんな屁理屈を、私が飲み込むとでも?」

 

「思ってねーよ。ていうか、この問答も何度目だよ。でも……そんなに肩肘張る必要はないんじゃないか、っていつも思う」

 

闇の福音じゃなくて、悪の魔法使いではなくて、真祖の吸血鬼ではなくて、と千雨は告げた。

 

「それ以前に、エヴァは女の子だろ。小難しい理屈を考える前に………好きだ、って伝えることさえ許されないなんて話は、無い。絶対にだ」

 

断言する千雨に、エヴァンジェリンは眼を丸くした。

 

「好き、だと? あいつに、面と向かって、言葉………いいいいやでも態度で何度も示していると思うんだが」

 

「1000%伝わってないぞ。なんていうかナギさんは鈍感で難聴な主人公タイプだからな。勢い余って押し倒すぐらいがちょうど良いと思う」

 

千雨の言葉を聞いたエヴァは椅子ごと後ろに下がった。茶々丸が疑問符を浮かべながらマスターと呟き、首を傾げた。

 

「おっ、押し倒すだとっ!? そそそそそんなことできるはずが……っ!」

 

「いいか、よく聞けエヴァンジェリン。力には力を、だ。言ってもダメなバカはぶん殴ってでも分からせる―――世の真理だぜ、何が悪い?!」

 

「そ、そうか………だが、確かにあいつにはそれぐらいせねば伝わらんような……」

 

「ああ。首根っこひっ掴んででもこっちに向かせる。資格だの何だの語るのは、それからでも遅くはない」

 

千雨はエヴァに熱弁した。横で聞いていた茶々丸は『ネギ先生以外に恋愛経験が無いのにどの口で語るのでしょうか』と思いつつも、話が良い方へ向かっているため、黙って成り行きを見守っていた。

 

「それに……同窓会の前日に、お前も言ってたじゃねーか。“わずかな勇気が本当の魔法、少年少女よ大志を抱け”って」

 

「む、それは……だが、少女という年齢でも無いぞ、私は」

 

「違うぞ、よく聞けエヴァンジェリン―――恋する乙女はいつだって少女なんだ」

 

言葉が、空気を凍らせた。エヴァは戦慄の表情で、答えた。

 

「貴様………よくも素面でそんな恥ずかしい台詞を吐けるな」

 

「冷静になんな、恥ずかしいじゃねえか」

 

パクリだし、とは千雨は言葉にせずに。ただ、誤魔化すように、それでいて挑むように言葉を付け加えた。

 

「だけど………エヴァは魔法使いだろ? 勇気っていう本当の魔法を使えない奴が、最強の魔法使いを語るなんて、片腹が痛過ぎて困るんだけどな」

 

「ふん……それで、上手いことを言ったつもりか?」

 

「まあな。でも……私にできるのは、提案ぐらいだ」

 

「そういうのを無責任な扇動者と言うんだよ、長谷川千雨。いや、もうすぐ千雨・スプリングフィールドになるか」

 

「責任なら取る、というか嫌でもそうなるっつーの。ナギさんと結婚してエヴァンジェリン・(アタナシア)(キティ)・スプリングフィールドになるならな」

 

「なるほど……貴様が義娘になるからか」

 

「そうなったら、無関係とは言えなくなるだろ。それに……いい名前だと思うぜ」

 

春の原(スプリングフィールド)に丸まった、不死(アタナシア)(キティ)っていうのもおつなもんだ。

 

冗談交じりに告げる千雨に、エヴァは呆れたように告げた。

 

「また、そんな言葉遊びを………しかしいつまで経っても物怖じせんな、貴様は」

 

「それは……まあ、クラスメートだからな」

 

「よくも、言う。しかし……まあ、貴様には色々と借りがあるからな」

 

エヴァは呟きながら、色々所ではないが、とひとりごちた。ヨルダの目論見を破ったこと―――最後に忌々しい怨敵に一泡吹かせることが出来たこともエヴァにとっては大きかった―――や、意識を取り戻す前のナギへの暗殺計画を阻止したことなど、長谷川千雨という存在は自分の矜持にかけて無視できないものになっていたからだ。

 

「……幸せになる資格、か。そんなもの、とうに捨てたものだが」

 

「捨てて後悔してるんなら、拾えば良い。それだけの話だろ」

 

「身も蓋もないことを……先程の強引すぎる物言いといい、年々ラカンに似てきているぞ貴様」

 

「はあっ!? 私の何をどうすればあんなバグキャラに似てるって話になるんだよ!」

 

「鏡を見ろたわけ、としか答えようがないな」

 

エヴァは面白そうに笑いながら、そういえば、と千雨を見ながら告げた。

 

「クラスメートとして、言って置かなければならん言葉があったな―――結婚、おめでとう。ぼーやを頼む、というのは今更になるか……あと、非常に似合っているぞ、そのドレス」

 

「……ありがとよ。モノホンの金髪外人のドレス姿には勝てる気がしねえけどな」

 

「こんな時ぐらい素直に受け取れんのか、まったく」

 

呆れるように、少し笑いながらため息をついた後、エヴァンジェリンは去っていった。茶々丸にだけ聞こえるように、「ありがとう」と小さな声で呟きを残して。

 

入れ替わるようにやってきたのは、クラスメートではない人物―――それでもここ数年で関わりが深くなった―――フェイト・アーウェルンクスと、犬上小太郎だった。

 

開口一番、小太郎は驚きの声で告げた。

 

「おー………なんや、こういう時にはなんて言えばいいんやったっけ、フェイト」

 

「馬子にも衣装、という奴だよ小太郎君」

 

「嘘教えんなよ、アーホルンクス。こいつバカだから信じちまうだろうが」

 

「ああ、失礼。ぼくとしたことが、まちがえてつかってしまったよ」

 

「いつにも増して棒読みになってんぞ、おい」

 

はっはっはと乾いた笑いを応酬しあう千雨とフェイト。小太郎はそんな二人を見て、はぁとため息をついた。

 

「また夫婦漫才になってんで。こんな日にまでそれやるのはあかんやろ」

 

「……それも、そうだね」

 

「ああ………酷いことになるからな」

 

具体的にはネギの内心が。以前、完全に誤解なのだが麻帆良の防諜機関の新人にそう言われた時のことを思い出した3人は、顔を青ざめさせた。

 

「……今日は一時休戦としておこう。高価な衣装が汚れるのは、よろしくないからね」

 

「こっちの台詞だ。で、ネギはもう会場の方に行ってんのか?」

 

「いやいや、流石のアイツもそれはせえへんやろ―――って言ってる内に来たで」

 

直後、お待たせしましたと大声で告げながらネギが部屋の中に飛び込んできた。

 

そして千雨の姿を見るなり、駆け足で詰め寄った。

 

「遅れてすみません。でも……似合っています、千雨さん」

 

「あー……べ、別に無理して褒める必要はねえんだぞ? らしくないならはっきり」

 

「なんでそうなるんですか。本当の本気でそう思っていますから……僕の瞳を見て下さい」

 

本気度を伝えるために、ネギは千雨の両手を掴んで顔を近づけていった。フェイトと小太郎はため息をつきながら、茶々丸と一緒に呆れ顔で部屋を去っていった。

 

「お、おい! おまえら、助け―――近い、近いから! それに、今日はこんなことしてる時間は無いって」

 

「分かっていますけど、こうでもしないと―――」

 

続きを言おうとしたネギの鼻に、窓の外から花粉が飛び込んだ。ネギはいけないと思いつつも完全に不意を打たれて、くしゃみをしてしまった。

 

同時に高まった魔力が荒れ狂い、周囲に余波として飛び回った。

 

昔であれば武装解除の魔法も伴い、飛び散っては近づくもの皆すべてを全裸にしていたくしゃみによる一撃。

 

ネギは、いつもの如く抑えきれずに―――だが、成長を遂げたものがここに居た。

 

「ふ………いつまでも昔の私のままだと思うなよ」

 

15歳の時ならともかく―――それでも明確に犯罪だが―――公衆の面前で全裸にさせられる趣味はないと、千雨は20代になってから魔法の研究に手をつけはじめたのだ。そして、先月に完成した。周囲から魔力を吸い上げて自動的に防御の魔法陣を展開する装置が、運用可能な段階にまで至っていた。

 

ネギは携帯端末上に浮かび上がった魔法陣を見て、驚きながら尋ねた。

 

「いや、凄すぎますって……ちなみに、これの名称は?」

 

「魔法アプリ。そのまんま過ぎて仮の名称だけどな。まだ未完成な部分も多いし」

 

千雨が使うのは、周囲の魔力を吸収した電子精霊に魔法陣を展開、携帯端末上に浮かび上がらせ、効果を生み出すものだった。

 

誰でもお気軽に、という段階には至っていないが、それでも画期的と呼べる発明だった。

 

「でも、意外です」

 

「なにがだ?」

 

「千雨さんが、魔法に関する技術を開発されるとは思っていなかったので」

 

「……切っ掛けは学園都市結界を弄った時にちょっと、な。神楽坂を閉じ込めた概念結界にハッキングを仕掛けたことも、ヒントになった」

 

強力極まる結界も、電子精霊を使えば抜け道は見出せた。アーティファクトも、ハッキングを仕掛けることができた。ならば、と千雨は考えたのだ。

 

電子精霊を使いこなせば、魔法に干渉することができるのではないか。

 

―――ネギやエヴァンジェリンの呪いを、不老や不死を何とかすることができるのではないか、と。

 

「それは……いえ、理論上は可能かもしれませんが」

 

「まあ、道は遠いだろうけどな……でも、やる前に諦めるのはもう止めだ。それに……まあ、その、なんだ。私がしたいことだからな」

 

「………やっぱり、千雨さんは千雨さんですね」

 

「そこで謎掛けかよ」

 

ツッコミを入れる千雨だが、ネギは笑顔のまま困っていた。何にも諦めず、打開策を練り続ける強い姿勢を崩さない千雨を見ながら。

 

それでいて、どうしようもなく元気付けられるのは何故だろう―――これ以上好きになれるなんて何故だろうと、答えの出ない問いを考えながら。

 

「敵わない、なんて思わされます………超級のハッカーをウィザードと呼ぶらしいですが、千雨さんは文字通りですね」

 

「言っておくけど、私に魔法の才能はねえぞ」

 

「知っています……そもそも、必要としていないように見えるんですが」

 

長谷川千雨は魔法を使わない。精霊に力を借りない。必要ないとばかりに超常の力を使わず、自分の心と言葉で誰かの中にある何かを変えてくる。

 

「わずかな勇気が本当の魔法、ってやつか? ……でも私は魔法使いじゃねえぞ。所詮は一般人だし」

 

勇気を出してたった一歩、踏み出すだけで世界を変えられる程のものじゃないと、千雨は言う。

 

「ただ………立ち止まって、振り返ることは出来た。怖いものが見えると、確信していた時でも。何もかも勇気が必要だったけど……それだけは、やろうと決めていた」

 

大仰な魔法など使えない。何かを壊すことさえも。

 

ただ、諦めなかった。振り返れば、辛い思いをする。見て見ぬふりをした方が、自分は傷つかない。そんな忘れたいもの、認めたくないものに一つ一つ対処してきただけ。3―Aの中で、ネギと出会ったから漠然と歩くのではなく、時には立ち止まり、振り返ることが出来るようになった。問題を正面から見据え、道を見つけようとしたから、進むことが出来た。

 

一歩だけで変えるのは無理だった。ただ、遅くとも歩くことを止めなかったことだけは自慢できると、千雨は小さく胸を張った。

 

「今でも、足は遅いんだけどな。今も、こうして走りにくい衣装着ているし」

 

「それでも……助かりますよ。足でまで負けたら、僕の立つ瀬がないですから」

 

「ああ、そうだな……面倒くさいだろうけど、引っ張ってくれたら助かる」

 

あの日、部屋の中に居た自分を引っ張り出してくれたように。そう告げながら千雨は手を差し出した。ネギは分かっていたように微笑み立ち上がると、千雨に向かって手を差し伸べた。

 

千雨は顔を赤くしながらもその手を掴み、立ち上がった。

 

自然と、二人の視線が交錯しあう。横からは木漏れ日と、風が僅かに運んできた桜の花びらが二人を包み込むかのように踊っていた。

 

合図するでもなく、ネギと千雨は窓の外を見た。

 

外には、日本の春らしい美しい光景が。

 

「……いい天気ですね。なんていうか、今までも色々と辛い事がありましたけど」

 

「ああ。残業に残業に残業とかな」

 

「せめて今日だけは忘れさせて下さいよ……いえ、千雨さんの方が辛そうなんで何も言えないですけど」

 

「どっちもどっちだ。それでも、計画は本格的に動き始めた……各国との関係も良好だ」

 

「まだまだ油断はできませんけどね……また来月には、別の勢力が動き始めそうだし」

 

色々と未来に対する不安材料は多い。味方ばかりではないため、時には弁舌で相手をやりこめる他に手はなく。その結果から、やりきれない事態や納得できないものは雨のように増えた。もう止まれない、そんな道を進んでいるけれど。

 

「それでも、なんつーか………幸せ、っていうのはこういう事を言うのかもな」

 

「そう、ですね……今、この瞬間に死にたいぐらいに」

 

離れたくない人と、試練ばかりがある世界で、それでもと手を繋ぐ。大切な人達と一緒に、傷を負いながらも前へ、ずっと笑い合うために。

 

掌からその実感を得たネギは、たまらずに千雨に告げた。

 

「なんの脈絡もなくて申し訳ないんですが………愛していますよ、千雨」

 

「……こまかいことはいいんだよ。でも…………わ、わたしも愛してるぜ、ネギ」

 

「………」

 

「無言で泣くなよ!」

 

「いやでもだって、滅多にそういう事言ってくれない千雨さんがこうしてこんなおめでたい日にこんな爽やかな陽気に包まれて」

 

「落ち着けって……まあ、その、なんだ。これから、何度も言ってやるから………私の出来うる範囲で、可能な限りは」

 

「………政治家みたいにそこで言葉を濁す必要はないと思うんですが」

 

「いや、でも、まあ……そういうのは、私らしくないと思うし」

 

「それは、そうかもしれないですけど……」

 

「寂しい顔すんな、って………ほら」

 

千雨は慰めるように、ネギの頭を撫でた。

 

「千雨さん……僕はもう22なんですが」

 

「ああ、私なんて27だ……いや違うぞ、ガキ扱いなんてしないって」

 

「根に持ってる訳じゃないですけど……でも、忘れられないんですよね」

 

ちょうどこんな春の日でしたし、とネギは少し死んだ眼に。千雨はその様子を見て胸に痛みを覚えるも、誤魔化すように笑った。

 

「なんて、いつも通りだな、私達も」

 

「そう、ですね……じゃあ、いつもの流れでしますか?」

 

「……そうだな。」

 

二人は、小さく笑い合うと、見つめ合った。

 

そのまま、二人の唇と唇の距離は段々と短くなっていき。

 

―――直後に、空気感を台無しにするかのような音量での爆笑が、会場から響いてきた。二人は硬直した後、至近距離で呟きあった。

 

「おい……披露宴、まだ始まってないんだが」

 

何が起きた、と視線で問いかける千雨に、ネギは首を傾げた。

 

「僕にも分かりません。なんで、あんなに笑ってるんでしょうね……って、そういえばラカンさんが何かを企画しているとか、聞いたような」

 

二人はしばらく考えた後、頷きあった。このままでは拙いことになると、言葉ではなく心で理解していた。

 

「―――行きましょう、千雨さん。出来る限り迅速に」

 

「ああ、手遅れになる前にな―――って、おまっ!?」

 

いきなり横抱きにされた千雨は、抗議の言葉を発した。

 

「お姫様だっこぉ?! ちょっ、待て! いくらなんでも―――」

 

「急ぎますから、しっかり捕まって!」

 

扉が開かれると同時、ネギは会場に繋がる廊下を走り始めた。

 

千雨の悲鳴がだんだんと低くなっていく。

 

後ろでに押された扉は、ぱたりという音と共にあるべき場所に収まった。

 

 

そうして会場の大きな笑い声は、主役の登場によって更に大きい歓声と変わり、建物の壁という壁を芯から響かせた。

 

 

窓からは、空の果てまで続いている高き塔の勇姿が見え。

 

 

残された部屋の中に舞い込んできた桃色の花弁が、会場の大きな歓声と笑い声に呼応するかのように、舞い踊っては、二人が出会った街の空へと還っていった。

 

 

 

 




あとがき

・最低限しか書いていません。千雨がエヴァンジェリンをエヴァ呼びする経緯とかは、省いています。あとは妄想で補えばいい!(暴論

・その他、大人になった彼女達とかも同じです

・この後、UQ holderの15巻で出てきたあの写真に繋がります

・3-Aの面々から、それはもう盛大に祝われたそうな

・そしてラカンによる、闇の魔法修得時のネギと千雨のやり取りの上映会が開かれたとか

・アスナ→ナギは、15巻の二人を見たから。入院→リハビリ→パーティの、どのコマにも一緒に映っていたので、何となく。惚れる要素は満載だし。

・僭越ながら、感想 or 評価などを頂けると、とても嬉しいです。

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