第一次鎮守府ヤンデレ大戦   作:笑顔の侍

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浴場ニテ修羅場アリ

 

風呂場に向かう道すがら、私は一部艦娘達の様子がおかしい事について、改めて考えていた。

 

彼女達はつい数ヶ月前までは、妙に態度が可笑しかったり、すぐに喧嘩を始めたりしない、普通の良い娘達だった、はずだ。

それなのに、色んな艦種の色んな娘達が、急に今の様に様子がおかしくなってしまった。

原因など予想もつかないが、一つだけ、ありうる可能性がある。

それは、

 

(私が、彼女達の機嫌を損ねるような事をしてしまった)

 

というものだった。

と言うよりも、それしか理由が思いつかない。

しかし、仮に私が何かをしてしまった、と考えても、彼女達は何かに怒っているという様子ではない。

それではやはり、私が彼女達を怒らせた、という訳では無さそうなのだが…

 

いくら考えても答えは出ない、が、今すぐ答えを欲しがっている訳でもないのだ。

可及的速やかにこの問題を解決したいとは思っているのだが、今の所艦隊運営に支障はない、どころか、戦果は常に上昇し続けている。

このペースでもう少し戦果を挙げると、中将に昇格出来ると大本営に打診もされたほどだ。

 

それに、この状況は多少危険だとは思うが、誰かが怪我をしたり、問題を起こしたりなど、取り返しのつかない事は起きていないので、今の所は問題解決を急がなくても良いと思っている。

さて、風呂場に着いた、が。

 

「ん、クズ司令官じゃないの、アンタもこれからお風呂?」

 

前方から一人の駆逐艦、霞が向かって来た。

 

「あぁ。霞もか?」

「えぇ、まぁそんなところかしら」

「そうか、ならば私は遠慮しておこう、先に入るといい」

 

どうやら、霞も風呂らしい。

我が鎮守府の風呂は、入りたい時に入れるようにしており、特に制限はない。

長風呂しすぎると注意が飛んでくるぐらいだ。

そんな中で、女所帯に男一人である私としては、当然、難しい問題の一つである。

 

私が入る時は、他の娘達が入れないので、なるべく人がいない、今のようなまだ食堂にあの娘達が集まっていたりする時間帯にそそくさと風呂を済ませているのだが、何故こんな微妙な時間帯に霞は来たのだろうか?

彼女はほかの鎮守府等では、提督に非常に強い態度で当たったり、中々心を開いてくれなかったりと、扱いが難しい娘だという話をよく聞く。

実際、少し前まではここの霞もそうだった。

ここまで来たらもう分かると思うが、彼女も数ヶ月前から様子がおかしくなってしまった娘だ。

 

しかし、霞は他の娘達のどこか恐ろしさを感じる変貌とは違い、私に対する態度が変になったり、という顕著な何かはない、偶にブツブツと一人事を言っている所はあるが、そんなに回数が見られる訳では無いので、問題は無いだろうという程のものだ。

それに、確かに様子が可笑しくなってしまったのだが、それは、元の霞からしたらという話であり、彼女の場合は…

 

「別にいいわよ、一緒に入りましょ?今更アンタと私の関係でそんなこと気にしなくていいったら」

 

…このような感じで、元の彼女より、おおらか、と言うかなんというか…

言葉で表すのであれば、『母性』を、それも飛び切り強い母性を感じる様になったのだ。

確かに霞という娘は、何だかんだで面倒見が良く、母親の様な性格ではあった。

 

しかし、今の霞は、母親の様な、ではなく、もはや本当の母の様に振舞ってくる。

最大級の愛情(?)を感じる笑みで私を見つめてくる様はまるで聖母のようである、が、そんな小さな娘に子供のように扱われるのは、若干30代後半の私としては、なんともむず痒い。

 

いつの間にか私の身の回りの世話を初めていたりすると、私が幼い頃の記憶が蘇ってきて、本当にむず痒いのだ。

完全に子供扱いされている。

霞が私の面倒を見てくれるたびに、せめてその子供扱いは止めてくれ、と言っているのだが、いつも

 

「はいはい、分かってるわよー」

 

と、流されてしまう。

…こちらとしても、多少自分がずぼらだという自覚があるので、そういうのは有難いのだが、うむ、有難いのだがな…

 

「全く、何してんのよさっきから、さっさと入るわよ、他の娘達が来ちゃうじゃない」

「なっ!ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「待ちません、早くしなさいな、それとも何?そんなに色んな娘達と一緒にお風呂に入りたいの?」

 

クスクスと笑われた、馬鹿にしている様な目ではなく、何とも、生暖かい目をしている。

 

「そ、そういう訳では無く、単に私が後から入れば良いという事を言いたくて…」

「アンタが後から入るより今私と一緒に入っちゃった方が掃除当番の娘が早くお風呂に入れるでしょ、今終わらせた方が迷惑も掛からないんだから、そっちの方がいいんじゃなくて?」

「それはそうなのだが…」

「じゃあ決まりね、ほら、早く入るわよ」

「…ぬぅ」

 

結局、押し切られてしまった。

まぁ、相手が相手なので、何か問題が起きるというのは無さそうなのが安心できる唯一の点だ。

…そもそも駆逐艦娘と風呂に入ると言うのが問題だという事に関しては、今回は触れない様にしよう。

 

着替えている所は見るのも不味いし見られるのも少し不味いので、脱衣場にまとめて置いてある風呂セットをささっと手に取り、急いで服を脱いで腰にタオルを巻き、風呂場に向かった。

後ろから暖かい視線を感じるが、気にしない様にした。

 

さて、体を流そうか、と行くところで後ろから引き戸が開く音がして、次にヒタヒタと無駄に可愛らしい足音が聞こえてきた。

それはこちらに向かってきており、私の真後ろで止まった。

 

「それじゃあ背中を流しましょっか、ほら、タオル貸して」

「そ、そこまでしてもらわなくても良いのだが…」

「別にこのくらいいいじゃない、それに、他に誰もいないんだから恥ずかしがる必要も無いわよ」

 

またもクスクスと笑われる、慈愛の念を感じる柔らかい笑みで。

 

「むぅ…それじゃあ、頼んだ、が、背中だけでいいからな?」

「えぇ、分かってるわ、それとも…

 

前も洗って欲しかったかしら?ふふふっ」

「ぬおっ!?」

 

急に耳元で囁かれ、驚きから情けない声をあげてしまった。

冗談もそれくらいにして欲しい。

 

「そ、そんなことは一言も言っていないだろう」

「ふふっ、分かってるったら」

「…」

 

完全に遊ばれている、もはや鎮守府のトップとしての威厳の欠片もない。

ここまで子供扱いだと、いっそ清々しいほどだ。

 

(そう、それでいいのよ、アンタの面倒は全部私が見てあげるから)

「ん?何か言ったか?」

「いえ、何にも?」

「そ、そうか」

 

何か聞こえた気がしたんだが…気のせいだろう。

いやしかし、先程から霞がタオルで私の背中を流してくれているのだが、これがまた何とも心地よい。

労わってくれているというか、慈愛というか、そのような感情が直に伝わってくるような優しさは、日々の執務と大本営への対応で疲れた私の体をとても癒してくれる。

 

今は、彼女の容姿も相まって、母ではなく小さな娘に背中を流して貰っている様な気分だ。

…私にも娘がいたら、このような感じなのだろうか。

まぁそんな事は考えても詮無きこと、無駄である。

 

「…はい、終わったわよ」

「うむ、有難う、霞」

「別にお礼なんていいわよ、私が無理やりやったことなんだから」

「それでも感謝の気持ちを伝えるのは大切だろう」

「…ふふっ、分かったわよ、受け取っておくわ、感謝の気持ち♪」

「…?」

 

なぜ急に機嫌が良くなったのだろうか、分からないが、まぁいいだろう。

……む、一つ、悪戯を思いついた。

散々私をからかってくれた事に対しての小さな復讐だ。

 

「そうだ、霞」

「?、何よ」

「次は私が背中を流してやろう、さぁ、後ろを向け」

 

そう、それは、今度は私から霞に背中を流すことを持ち掛ける事だ。

何だかんだで彼女も年頃の女の子だ、私をからかっている内は余裕もあったが、こんな時は対応し切れまい。

霞の焦った顔を思い浮かべ、そろそろ冗談だ、と告げてやろうと思っていたら

 

「あら、イイの?じゃぁお願いしようかしら」

 

…極めて楽しそうな顔でこう言われれば、流石の私も固まるしかなかった。

ど、どうする、、いやどうするも何も、早く冗談だと伝えなければ、しかし、こんなにも楽しそうな顔をしているのに、今更それはどうなのだろうか…いや、しかし…

 

「くふふふっ♪冗談、冗談だってば、そんなに怖い顔しないでよ」

「……そ、そうか、冗談か、それじゃあ、私は先に風呂に入っている」

「分かったわ、ふふっ」

 

そそくさと、逃げるように私は湯の張られた風呂に向かう。

…からかおうとしたら、逆に手玉に取られていつの間にか立場が逆転し、こっちがからかわれてしまった、どう言うことなのだ。

ちゃぽん、という音と共に、体が暖かく包まれていく。

心が安らぎ、今日一日の疲れが吹き飛ぶようだ。

 

やはり風呂はいい、我が国日本の伝統的文化である所の風呂は、本当に素晴らしい。

これだけでも日本に生まれて良かった、と思えるほどだ。

まぁ湯に浸かる、という文化は日本だけのものでは無いが。

そうして暫く湯に体を浸らせていると、隣で水音が響いた。

 

「ふぅ、やっぱりお風呂はいいわね」

「…そうだな、体だけではなく、心まで綺麗にしてくれる、風呂はいいものだ…」

「本当ねぇ…」

 

霞が体を流し終え、風呂に入ってきたようだ。

そこからは二人して、ゆっくりと、特に会話もなく風呂に浸かる。

…うむ、これに関しては特に問題という訳ではないのだが、少しお互いの距離が近すぎではないだろうか。

 

すぐ横を振り向けば、目と鼻の先に霞がいる程だ、肩が少し触れている。

嫌ではない、決して嫌ではないのだが、これは倫理的にアウトだろう。

だから、私は少し距離を取るように横に移動しようとしたのだが、急に霞が私の腕を掴んで、それに抱きついてしまい、動けなくなった。

 

「やっぱりおっきいわねぇ、アンタの手、ゴツゴツしてて、固くて、熱い」

「か、霞?離してくれないか?流石に不味いだろう」

「だーかーら、今の時間帯に私達以外の娘何か来ないわよ、だから大丈夫」

「だから、私が言っているのはそういう事ではなくてだな…」

「もう、少しくらいいいじゃない、それとも、私に触られるのって、そんなにいや?」

「ぬぐっ…い、嫌では、ない、が!」

「ふふふ、ならいいでしょう?」

「…いや、ダメだ、断固拒否する」

「…え?」

 

流石にこれは不味いだろう。

誰かに見られる云々関係なしに、だ。

それに、いくらタオルを巻いているとはいえ、女子は女子。

見た目駆逐艦とはいえ、彼女も女性なのだ。

…この発言には既視感があるが、まあそれはいい。

ともかく、色々な事を言っても、結局は私としてもこれは恥ずかしいのだ。

だから本当に止めてほしいのだが…

 

「……」

「…霞?どうした?」

 

先程から霞は急に黙ってしまい、私の声にも反応してくれない、それに、離してもらうどころか、私の腕に抱きつく力がどんどん強くなっている気がするのだが。

ぬぐっ、そ、それ以上は不味い、関節が!

 

「か、霞、よく分からんが落ち着いてくれ、落ち着いて、手を離すんだ、霞?」

「…………ねぇ」

「な、何だ?」

「どうしてそんなこと言うの?今までは私に反抗もせずしっかり言う事を聞いてくれてたのにっ!!」

 

な…いったいどうしたと言うのだ、急に黙り出したと思ったら、訳の分からない事を…

これはもしや、霞も他の娘達の様な変貌を遂げていたと言うのか?

だが、それならばなぜ急にこんな事に…

 

「…そう、ね、そうよ、きっとそうだわ、うん、それしかない」

「な、何を言っている?」

「他の娘達の事が頭にあるから私の言うことを聞いてくれないのよね、なら…

 

 

私のこと以外考えられないようにして上げる」

「っ!?」

 

またもブツブツと、先程風呂場の前で会った時とはまるで正反対の様子で何かを呟く霞は、唐突に私の腕を離した、と思ったら、今度は真正面から馬乗りのような体制で覆いかぶさってきて、私の両腕を押さえ込んできた。

 

「くっ!何をする、んだ、霞!止め…んぶ!?」

「んっ…れろっ…んちゅ…」

 

な、何が、起きている、いや、今起きていることを理解はしている、が、頭がそれを拒んでいた。

しかし、現実は非情である。

霞が、私に、キスを、していた、いや、している、今も。

 

「んんっ、ちゅ…ぶはぁ…ふふふっ♪」

「か、霞、何を」

「何って…今ので分からない?そんな訳ないでしょ」

「どうして、こんな」

「…アンタが悪いのよ?今までは私に素直に従っていたのに、他の娘なんかにうつつを抜かして、急に反抗するんだから」

「反抗…?何を言っている、んだ?」

「とにかく、アンタは大人しく私の物になればいいの、さて、続きを始めましょうか」

 

続き、という言葉にとてつもない恐怖を感じた私は、今まで彼女を傷つけないように使わなかった、拘束脱出系の技を使うのを決心した。

もちろん、この道二十年の経験を総動員し、霞を傷つけないようしながらだが。

 

一瞬、拘束されている腕に全力で力を込め、相手がそれに気づき押さえつけようとする僅かな隙を狙い、全力で拘束から逃れる、「落葉」という技だ、相手が力を込め始めるタイミングを見極めるのが非常に困難で、通常、習得には二年を要する技である。

 

「あら、いつの間に抜け出したの?」

「霞、落ち着いてくれ、なにか誤解があるに違いない、話し合おう、そうすれば解決するはずだ」

「誤解なんてないわよ?話し合う必要も無いわ」

 

…これは、一度時間を置くしか無いようだ。

今ここで、ヒートアップしている霞と話し合いを求めても、きっと平行線だろう。

そう判断した私は、全力で風呂場の出口に向かいダッシュした。

 

「霞!一度時間を置けば頭も冷えるはずだ!また今度話し合おう!」

「……」

 

返事は聞こえなかったが、しょうがない、ここでもう一度捕まったら、先程リスクを犯してまで霞から逃げた意味がなくなる。

明日にでもなれば流石に冷静になって、元の…と言ったら語弊があるが、元の母性溢れる霞に戻ってくれているだろう。

…恐らく、多分。

 

そんな楽観的な思考をしながら、問題を明日の私に丸投げし、急いで最低限の身なりを整え、脱衣場を出た。

追ってくる様子はない。

…もし元に戻らず、今の様に暴走したままだったらどうしようか、考えて見るが、答えは出なかった。

まぁいい、自室に戻るとしよう。

 

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「……ふふ、ふふふふふ、なんで逃げるのかしら、まぁいいわ、チャンスなんていくらでもある、他の雌共が多少邪魔だけど、そんなの関係ないわ、彼を本当に愛しているのは、この私だもの、いつか、他の雌の事なんか忘れさせて、私だけのものにして見せるわ、ふふふっ、くふふふふっ♪」

 

彼女は笑う、自分以外誰もいない風呂場で、延々と、果てしなく不気味に、笑い続ける

 

 

 

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