カルン達が去るのを確認したコルトは吹き飛ばした相手のトラックがこちらに敵意を向けて来てるのがわかった。
相手はトラックから生えた、出て来たとも言える銀色の両腕を自分の手のようにボキリボキリとならした。
どこかの部品が壊れたんじゃねぇか、と見ているこっちが不安になる音だった。
それにトラックからプロペラが生え腕が生え大砲が生えるのはかなりシュールであった。こちらのトラックも大砲以外向こうと同じだが。
だがそんなことは今のコルトにはどうでもよかった。
「さーてと、てめぇらが俺のストレス解消サンドバッグしてくれるんだよなぁ!」
コルトはトラックを前身させ、
「オラァ!」
トラックの右拳を相手に叩き込んだ……が受けとめられハンマー投げのように投げ飛ばされた。
「貴様ごときゴミがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………貴様ごときゴミが女神の行く道を省くなぁっ!」
このトラックには通信機能など高価な物は存在せず、普通の相手の叫び声であった。
目が回り、吐き気を感じながらも宙で体制を取り直した瞬間にガクンと揺さぶられるような強い衝撃を感じた。
運転席のミラーを確認すると後ろを取られていた。ついでに両腕で捕まっている。
「チィッ!」
両腕を使い反撃しようと考えたが背後にまで届かなかった。
「これ使えねぇなオイ!」
プロペラ全快でも抜け出せない。徐々に掴まれた腕の力が強くなり潰れていくようメリメリとトラックが悲鳴をあげていった。
「クソ他にねぇのかよビームとかミサイルとかよォ!」
適当にレバーやトラックの部品を動かして行くと「ういーんがしゃん」と典型的起動音が聞こえてきた。
「しゃあ! これでぶっ潰して……」
フロントから大砲の先端が現れた。
ばばばばばばば!
緑色のボールサイズの弾丸は前にしか飛ばなかった。
「ふざけぇんなぁ! ここは機転が利くパターンだろ普通! 今更前に撃っても意味ねぇんだよ!」
相手のトラックからはもう描き誇った男の笑い声がこちらまで響いてきた。
ここは空の上、現在人間体の自分がトラックから飛び降りたらミンチになり助かる見込みはないだろう。
「フハハハハハ! 貴様は聖なる道から外れた堕天使、その命、女神に返すのだ!」
「うるせぇぇぇぇぇ! てめぇはさっきからボリュームたけぇんだよ! というか隣の奴てめぇの声で倒れてるじゃねえか!」
トラックの悲鳴はしくしくから大泣きに変わっていった。
ストレス解消の為(本音はカルン救出)に来たのに寧ろ追い詰められストレスと苛立ちと焦りがトップギアに達しそうなその時、ケータイから通話の着信音が鳴った。
「んな時になんだよ! はぁ? あのクソ神か……」
待てよ、元はあいつが持ってるトラックだ。他のこの状況から脱するシステムを知っているかもしれない。
「もしもし! 今やべぇんだよ! なんかトラックにすげぇやつねぇのか?」
ケータイ先からはのほほんと落ち着いている神の声がした。
「あー知っとる知っとる、今露天風呂から見とる見とる」
風呂にくつろぐように浸かり、おちょこで酒を飲み自分の様子を楽しむ神が脳内で想像できた。
「何てめぇだけ風呂入ってんだよクソジジィ! 今俺はそれどころじゃ、ぎゃああああああドアが剥がれたーっ!」
相手のトラックは普通に潰して破壊するのは無理と察したのか、鋼鉄の鎧を剥いで行く行為に変化した。
「そうそう、修理代はお主の給料から抜いておくわい。おーハリウッドに負けず劣らずの高クオリティじゃな」
ケータイ先からの神の声は本当に他人事で、なんでこんな野郎が神様やってんだと文句言いたくなったがここは耐える。
「お、お願いしますからなんか教えろォ!」
「教えろ? うーん……最近耳掃除してないからかのお、変な単語が聞こえた気がするが……」
「やべぇガラスがァッ! あークソォ! すみません! 教えてくださぃ!」
「ほうほうなら教えてやろう……そこにクラクションがあるじゃろ?」
「ああ、あるけどそれになんの意味が……」
「三回ブーブーブーと押すんじゃ」
ブーブーブー
「三回押した! 一体何が起きるんだよ!」
「自爆装置じゃ」
コルトの意識はゲーム機の電源のように切れていた、数秒立つと再起動した。
「……………………………………………………はぁ!? 今なんつった!」
「自爆装置じゃよ」
自爆装置とは自らの身を犠牲にして爆発させる行為である。
流石に冗談だろうと思ったその時。
『後自爆まで30秒、運転手はただしに避難してください』
「ァァァァァァァァァァァァァァ!」
コルトは喉が千切れるような声を鳴らした。
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「むにゃ……? 今自爆装置とか言ってなかったかあいつ」
気絶していた赤髪の妹は揺らぐ視界をハッキリするために手で擦り、兄に問いかける。
「妹よ、自爆装置というそんな愚かなものは無い。奴は私のトラックと同タイプだ、マニュアルにはそんな物は一切載ってはいなかった」
兄は妹に束のトラック操作マニュアルを手渡した。
『残り20秒』
これも奴が逃げる為の愚かな芝居、恐らくケータイという物から発信しているに違いない。
「ふっ、悪あがきなど女神の加護を受けた私の前では通用するはずがない」
兄はトラックの両腕のパワーをよりあげて、剥がす行動からまた握り潰す行動へ戻した。
『残り10秒』
「あ、兄貴…………このマニュアル本に、袋とじがあったんだけど」
妹は全身が震えながら兄の視界を隠す勢いでマニュアルを見せた。
「やめろ、袋とじになんの意味があるのだ」
兄は袋とじと聴くと嫌な記憶が思い出すのだ。
それは思春期の頃、少年雑誌のお色気袋とじの中身を少し覗こうとしただけで万引き扱いされたのだ。
だから袋とじなどこの世に必要ないと思っている、
「デデ、デ、デウス様からの……重要メッセージ書いてるんだけど……」
「なにぃっ!?」
『はーい、デウスちゃんよん。このトラックはね貴方達だけに教えるけど、クラクションを三回鳴らすと自爆するのよん』
『残り5秒』
逃げようとトラックを動かそうとするが、両腕がトラックにめり込んで簡単に外れなかった。
兄は相手の運転手に向け声荒げた。
「謀ったな! 貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
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コルトはあーどしようどうしよう、と考えを膨らませていくと既に遅し、残り10秒になってしまった。
「他になんかねぇのかよ!」
「ないのぉ、仕方ないが犠牲になってくれ」
『残り5秒』
その時、向こうのトラックから野獣の咆哮如きやかましい声がなった。
「謀ったな! 貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
『残り3秒』
「それは俺のセリフだぁ! というかうるせぇぇぇんだよさっきから!」
『残り2秒』
「これも全て貴様のせいなのだァァァァァァァ! 貴様が存在しなければ女神が救ってくださるというのにィィィィ!」
「だからなんで俺のせいなんだよォォォォォォォ! 勝手に責任転嫁してんじゃねぇよ!」
『残り1秒』
コルトは相手に向かって今までの鬱憤を晴らそうかと思ったその時、残酷にもタイムは止まってくれない。
「あ…………」
チュドーン!!!!!!!!