この度、D.C.シリーズの作品を投稿していくことになりました。最近は新作も発売され、熱が入ってしまった結果投稿という形になりましたが、以前から考えて会ったストーリーでもあります。
なのでよろしければこの作品もよろしくお願いします!
この俺、
なんで俺がそういうことを想っているのか。それはクラスメイト達に化け物と呼ばれているからだ。でも、俺の周りにいるのは敵だけじゃない。ずっと一緒に入れてくれていた幼馴染の3人がいる。父さんがいる。校長先生だって味方をしてくれている。何か事件を起こしたら何かしらの対処をしないといけないと言っていたけど、俺は化け物と呼ばれる原因となったあの日以降、特に問題は起こしていない。
だから、ずっとこのまま普通とは程遠いながらも楽しい日常を送ることができると思っていた。
そう。思っていたんだ……。
それは突然に、唐突に告げられた。
「え!? 転校……ですか?」
今、俺の目の前には校長先生が難しい表情をして座っていた。服装はいつもはゆるい感じの服なのに、これから何か大事な式に行くのではと思うほどのしっかりとしたスーツで、校長室の机に肘をつきながらじっくりと俺のことを見ているようで見ていない。そんな感じの目で俺のほうを見てくる。違和感しかなかった。
なんでこんな突然に転校をしろなんて言われるのか。転校は基本的に家庭の事情でやるもので他人である先生の、例えそれが学校のトップの先生だったとしても強制できることではない。なのに、どうして……?
分からないことだらけだ。なんでこうなったのかすら分からずに、ただただ話だけが進んでいく。俺の脳内にはクエスチョンマークが何個も生まれては住み着いて、離れようとしなかった。
その答えを知っているのがきっと目の前の校長先生だ。一体これからどんなことを告げられるのか、俺は校長先生の言葉を待っていた。だけど、次の瞬間、今まで自分が我慢していたことが無駄になる、そんな言葉が浴びせられることになる。
「あぁ。現状、君は確かに問題は起こしていない。が、学校の状況的に考えると今はあまりいい状態とは言えない。だから君にはここから遠くの学校に転校してもらう」
校長先生の瞳には全く俺が写っていなかった。俺が化け物と呼ばれるようになった時から俺に干渉しないで欲しいと説得して快く受け入れてくれたこの人が急にそんなことを言うのか? 俺の幼馴染も手が出されないようにしっかりと見てくれていたというのに……。
何が何だか分からなくなる。なんで校長先生は俺を見ようともしないのか眼鏡越しに俺の姿はあるはずなのに、まったく見ている様子もない。その視線の先にあるのは……扉?
「なんでだよ!? 問題を起こさなければ良かったんじゃないのかよ……。だから俺は……」
でもそんなこと、今はどうでもよかった。何も問題を問題を起こさなかったら大丈夫だと話を聞いていた。だからやられてもやり返さずにスルーして回避し続けてきた。我慢してきたんだ。どんなに馬鹿にされても、どんなに恐れられても。幼馴染の3人が父さんが、そして手を貸してくれる先生にも恵まれていたからそれを支えに耐え続けてきたんだ。なのに……なのに!!
もう無駄になるってことなのか? 俺はあいつらと一緒に過ごせなくなってしまうのか? まだ助けてもらったときのお礼もできていないのに……。
俺の考えがどんどん沈んでいくことが分かる。それに反して頭の中は怒りでいっぱいになっていた。が……
「…………。行ったか」
その俺の感情を打ち払うかのように校長の重苦しい雰囲気が一気になくなった。そしてそれと同時に放たれた言葉に俺は理解が遅れてしまう。
「え?」
校長先生は何かに気が付いていた……? でも何に? 行ったかって言ったか? じゃあ、誰かが盗み聞きをしていた、または見ていたということ? さっき疑問が尽きない。というか尽きるどころか増えてる気がする。
「すまない。扉の前でこちらの話を聞いている者がいたみたいなのでな。ちょっとだけ嘘を付いた。が、転校については本当だよ」
盗み聞きをしている人がいた? もしかしたらいじめをしているやつらかもしれないけど、それだったらこの発言はやつらの餌食になりかねない話で、たとえ幼馴染でも話を聞かれること自体にあまり危機感を覚えるようなものだとは思えなかった。でも、校長先生の真剣な表情から、余程秘密にしたいことなのだということが伝わってくる。
「聞かれちゃまずい内容なんですか?」
つまりはそういうこと。秘密にしたかったからこういった嘘を付いた。気が付けば校長先生の目にはしっかりと俺が写っていた。今までずっと扉のほうに意識を集中させてたみたいだ。……けど転校の話は本当か。何があるのかわからないし聞いてみないことには何も話は進まない。だから質問攻めになるだろうけど今はとにかく状況を把握しないといけない。
「私にはわからない。が、向こうがあまり本当の理由を広めるなということだったのでな。この転校の話もこれから君の行く学校の学園長からの提案なんだ」
俺の質問に校長先生はそう答えた。向こう側の学園長……。一体どんな理由があるんだろう。
「向こうの……?」
しかも、なんでよりにもよって俺なんだ? 校長先生の話を聞いているとどうも俺個人を指名してきたように感じられる。真剣な表情のままだからそれは嘘じゃない。でも何が起こっているのかはわからない。どうしてという疑問がいまだに解消されなかった。というか向こう向こうばかりだからどこに行くのかすらわかっていない。
「あぁ。向こうの……これから君の通ってもらう瀬戸内にある初音島の学校……『風見学園』の学園長が君の話を聞いて自分のところに少しの間招待したいということだったんだ」
校長先生も話していないことは重々承知だったみたいで、ようやく学校の名前を教えてくれる。そしてその学校がある島の名前は何度か聞き覚えのあった。それは……
「……初音島。確か昔は1年中桜が咲き乱れていた島でしたっけ。でもどうして……」
桜の観光名所として全国的に、世界的に有名なその場所は昔の不思議な出来事から一気に注目を集めていた。今はただ春に咲いて、枯れていく普通の桜だが、昔は1年中ずっと咲き誇り続けていたというある種の伝説的出来事があったのだ。でも、余計気になる。なぜその場所にある学校に行かなくてはいけないのかということに。
「詳しくはわからない。でも、君がこうなる原因になったことへの解決をするとても大事なことだと聞いている。だから転校はすでに決定事項。新年度が始まると同時に向こうに転校する予定だから、今年度まではしっかりとこっちで生活してくれていい。……何の力にもなれなくてすまない……」
「っ!? ……大丈夫ですよ。ここを離れるのは……、何時も会ってるあいつらに会えなくなるのは寂しいですけど、話を聞く限り理由があるみたいですから。それに、これまで特に問題にならずに生活できたのも校長先生のおかげです」
この現状の原因になったことを解決する!? つまりは何か俺にある不思議な何かを解決できるすべを持っているということなのか? その方法はわからない。けどあの動画はこの校長先生に頼んで消してもらった。しかも、あまりに何もしていないのに相手が吹っ飛ぶといった現実にあり得ないことから転載されたものでさえ作りものという話になっている。
なのにそれを現実の話だと認識して俺にそういう提案をしてきたのならもしかしたら本当に知っているのかもしれない。だから十分この話に乗る理由になった。自分でもよくわかっていないこの力をどうするのかすら今の俺にはわかっていないのだから。
「……そう言ってくれるとありがたい。あぁ。そう言えば、向こうの学園長が君に転校してもらえるように交渉材料として1つ出してきたものがあったよ」
今日の今日まで何の大きな問題を起こさずにやってこれたのは校長先生のおかげだ。先生たちへの俺に対しての不干渉、そしてその空いた時間で幼馴染に対して見守ってもらっていた。それも校長先生の一声がなければできなかったこと。だからそれなりの恩義は感じている。自分のためにも、そしてお世話になった校長先生のためにもこの話は受けたほうがいい。そう思った。
けど、校長先生はまだ言ってなかったことがあるみたい。興奮気味にまるで自分のことのように喜んでいるそんな感じで話している。それを交渉材料と言ってるからきっと俺にとってプラスになることだとは思うんだけど……。
「もう行くって決めたのにですか?」
俺はもう行くと決めた。だからその交渉材料はあまり意味がないと思うんだけど、校長先生の話し方からするとかなりいい条件みたい。場所が場所だから住む場所の家賃がタダになるとかか? いや、それは校長先生が喜ぶほどのことでもないか。
「行くならこれを受け入れるのか入れないのかは君の自由だ。それで、その内容は……『転校時に1学年上の学年に編入させる』とのことだった。……つまり飛び級できると考えてくれていい」
確かに校長先生の言う通りか。交渉材料を受けて決めたのと、最初から決めていたのとでは向こうは知る由もないだろう。だったらこれを聞いてから受けるか受けないかを決めればいい。
そう納得した後に、信じられないことが告げられた。……飛び級。
「……最近の私立校では飛び級制度が導入されたとは聞いていましたが。ということは風見学園という場所は私立ということになるんですが学費はどうなるんですか」
最近は学力があれば飛び級も可能になるという新制度。海外ではよく聞いていたけど日本でこういったことになるとは思わなかった。ただ、この制度はまだ私立校しか導入されていない。だからこういった提案をしてきているということはその学校は私立校であるということになる。嬉しい提案ではあるけど学費がどうなるのかはただ気になった。
「そっちも向こうが負担してくれる。何の問題もなく、君は向こうに行ける。……勉強のほうは頑張ってもらうけどね」
流石に呼ばれたのに学費は自分で負担しろとは言われないか。確かに向こうに行くのにあたり問題は一切ない。勉強に関したって……、
「そっちは問題ないです。むしろ今の勉強じゃ物足りないくらいですから……。じゃあ、俺は来年度から中学3年生として風見学園で過ごせばいいんですね?」
今のままでは余裕すぎてつまらないとさえ思っていた。だから勉強のランクが上がるのは正直嬉しいと感じている。抜けてしまう部分も今からやっておけば間に合うだろう。あとは幼馴染たちのことが気になるけど、それは何とかできる方法を思いついた。だから、安心して向こうに行くことができる。
「あぁ。期間は1年間。そのあとはこっちに戻ってこれるみたいだ。そのまま向こうで高校1年生として進級してもいいし、こっちに戻ってくるときにもう一度中学3年生をやってもいい。それは君に任せるよ」
1年。長いようで短い期間で俺はこの不思議な力とワンランク以上上の勉強をこなしていかなくてはならない。大変だし、くじけるかもしれないけど、安全に安心してすごくには大事なことだった。それと校長先生から告げられたもう一つの俺に与えられた選択肢。
「選択権は俺にあるんですか。じゃあ、その時になったら決めますよ。今はどうなるかわかりませんし」
このまま上の勉強を続けるのもいいけど、まだ何もわかっていない自分では決めかねる。だから卒業間際には決めないといけないだろう。けど、今はとりあえず自分の現状について理解をしなくてはならない。
「それもそうだな。では、話は以上だ。さっきの嘘で君にまた迷惑をかけてしまうかもしれないが、あと少しだけ我慢してくれ……」
俺の保留のこともすぐに校長先生は理解してくれた。それと、最初に会った嘘についても謝ってくる。本当に悪いと思っているから出てくる真剣な謝罪。一番深いお辞儀を生徒である俺にしてみせたことからそんなことはひしひしと伝わってくる。
「といっても後10日もないじゃないですか。その程度なら大丈夫ですよ。俺には友達がいますから」
俺が言うのは何だけど校長先生はまだ若い。こういったことの経験なんてそうないだろう。でも、やってくれたこと自体本当に助かっている。だからその感謝として俺は笑顔のまま校長室を後にした。
これから慌ただしい日になるだろうけど、もうあの時のように人を信じなくなるなんてことは起こらない。だって俺には大切な友達が、家族がいるのだから。
それから10日間は想像通りいろんな意味で濃い日々だった。
クラスメイトからはいろいろな罵倒を受け、俺の転校を知った幼馴染3人からは何があったのかを聞かれ。中学1年の終わりと同時に初音島に行くことになってるから身支度もしないといけない。
今回の転校で家を離れるのは俺一人だけ。あいつら幼馴染は俺が近くにいるから手を出されることがなかった。それは何かをしようとしていた本人たちが自分の口から言っていたことだ。つまり、この地を俺が離れれば何とかしてでもあいつらに手を出すだろう。だから俺は父さんにあることを依頼して、この東京の地を離れることにした。
話によるとどうやら住む場所も向こうが用意してくれるということなので、安心して初音島に向かえる。
そして俺は初音島に向かうために空港まで来ていた。俺を見送ろうと、父さんや幼馴染の3人が俺にいろいろなことを言ってくる。
「健康には気を付けるんですよ」とか、
「絶対に連絡してね!」とか、
「はい! これお饅頭!」とか、
「安心しろ。依頼はしっかりとこなしてやる」とか。
父さんの言葉に安心して、通常運転の幼馴染に苦笑いを浮かべながらも俺は3人の瞳が涙ぐんでいるのが分かった。
……俺だって悲しいさ。いつまでも一緒に生活できると思っていたから、別れがこんなに早くに来るなんて予想もしていなかった。
けど、俺の中にある何かを理解するためには向こうに行かないといけない。それに1年もすれば帰ってこれるし、長期休暇に戻ってくることだってできる。今生の別れではないんだ。それに今ではスマホという文明の利器もある。いつだって連絡を取ることができるのだ。ならば今は涙をこらえて旅立とう。
そう決心しているはずなのに、俺の目頭がだんだん熱くなってくるのが分かった。……わかってはいてもやっぱりうつっちゃうよな。俺のことを大事に想ってくれた幼馴染たち。特に、人を信じることを一度はやめかけた俺を元に戻してくれた彼女とは離れたくないとそう思っていた。
けど、いつまでもよくわからない力を放置しておくわけにもいかない。遅かれ早かれきっとこういった別れが来たのだ。それは仕方のないこと。だから俺は父さんと3人の幼馴染に"また今度"といって飛行機の搭乗ゲートをくぐった。
飛行機に乗れば目的地の初音島に着く……というわけではなくそこからフェリーに乗ってようやく到着する。3月末のこの時期になると桜が本格的に先始め、桜が観光資源であるこの初音島には多くの観光客でにぎわっていた。
フェリーから降りると俺は風見学園に案内してくれる人をフェリー乗り場近くに連れてきてくれるということだったので、その人物を探してみた。送られてきた写真に移っている人は風見学園付属の女生徒の制服を着ている。
付属というのは他の学校で言う中等部に位置するもので風見学園は中等部のことを付属、高等部のことを本校と呼ぶようになっているようだ。
確か見た目は金髪で黒いリボンで髪を結んだ人だったよな……。あまり参考になるかはわからないけど今度から俺と同学年として勉強をする生徒でもあるみたいだ。……つまり年上の女性ということになる。
周りを見渡すと1人だけ風見学園の制服を着て俺のことを見ている生徒がいることに気が付いた。髪は金髪で黒いリボンで結んでいる。胸についているリボンの色は水色。現段階で2年生、俺が編入すれば3年生、つまりは俺と同級生になる女の子だ。その姿はあらかじめ写真で見ていた人の特徴と同じ人物だった。
その女生徒は俺を見て少しだけ驚いた表情を見せた後、足早に駆け寄ってくる。その時の表情は懐かしい人と出会ったかのようにやさしい笑顔でやっと出会えたと思わせる。
彼女は俺に駆け寄ってくると抱き着いてくるのかと思ってしまう跳躍を見せた。それが青く澄み渡る空をバックにしてまるで空から降ってくるようにも見えて不覚にも見惚れてしまう自分がいた。走ってくる姿を見ていたというのに。
「あなたが時坂空也君、よね?」
俺の一歩前に着地した彼女はやっぱり俺のことを迎えに来た女の子のようで名前を言い当てる。ふわりとなびく髪がとてもこの世のものとは思えないほど美しく、彼女の笑顔を一掃に引き立てていた。
「はい。そうです。えっと……?」
確かに俺の名前は時坂空也では間違いない。……けど相手の名前が分からない以上どう呼んでいいのかすら考えつかないのが現状だ。
「あぁ、私の名前? 私はね
俺がどう呼べばいいのか迷っていた俺に森園立夏と名乗った彼女は本当にうれしそうに語りかけてくる。何が何だかわからない。けど、初めて会うにしてはとても親し気に話しかけてくるその姿は俺の幼馴染にどことなく似ていた。この島に来て初めてこの土地に足を踏み入れたことで緊張していた俺にとってそれは安心できることだった。
「森園……立夏先輩ですか。わかりました」
これから同学年として同じ学校に通うんだ。今から仲良くなっておくことに越したことはない。ただ、年齢としては森園先輩のほうが上。だから敬意を払ってしっかりとした呼び方で読んだんだけど……。
「……確かに年齢で行ったら私のほうが年上なんだけど、同学年ってことなんだしどうにかならない?」
確かにこれから同学年として生活しているのに敬語なのはおかしいか。だったら直しておこう。
「じゃあ、森園でいいか?」
あくまで友達に話しかけるように、幼馴染に話しかけるように。軽く、けど失礼にならないように森園のことを呼んだ。
「……いきなり変わるわね。話し方。その話し方でもいいけど、……私の呼び方は却下。あなたには苗字で呼ばれたくないわ」
ただ、急にフランクな感じになった俺に苦笑いを浮かべた森園は少しだけ考えるそぶりを見せていた。
あ、話し方はこれでいいんだ。でも、苗字に何かコンプレックスでもあるのか? それとも、みんなに名前で呼ばれているからなのか。まぁ、何はともあれ嫌がっているようであれば続けるのは失礼だし、要求は受け入れよう。断る理由もないし。
「話し方はこれでいいのか……。じゃあ立夏って呼ぶしかないか。それとも立夏ちゃん、がいいとか?」
とりあえず考えつく呼び方を試してみることにした。……多分、今の俺の顔は最高の笑顔なんだろうな。
普段"ちゃん"なんて使わないんだけど頼まれたら仕方ないなぁ~。それになんだか立夏ちゃんとは長い付き合いになりそうだし、仲良くなれるきっかけには十分だ。
「……相変わらずふざけるところはふざけるわね。普通に立夏でいいわ。さて、行きましょ。これから、君の通うことになる風見学園へ」
ありゃりゃ……。どうやらお気に召さなかったみたいだ。じゃあ、ご要望通り呼び捨てで立夏のことを呼ばせてもらうか。なんか立夏も立夏で好意的だから仲良くなることはできたかな?
「よろしく頼む。……って相変わらず?」
でも俺は立夏の言葉のフレーズが気になっていた。
おかしいな。立夏とは初対面のはずなんだけど。なのにあいつは俺を知っている? ……なんでだ? まぁ、単に言葉の綾かもしれないからツッコむのも野暮か。
「はぁ……。学園長、なんで私にお願いしたのかしら? 確かに空也と出会えたのはプラスだからいいんだけど……。かったるいわ。学園長に好かれているっていうのも考えものね……」
軽い挨拶を終えた俺たちは風見学園に向かうべく立夏は踵を返した。その後ろ姿を見ると肩を落としていることが分かる。……脱力をしているのはわかるけど立夏の声はしっかりと聞こえていた。
「いきなり呼び捨てになるんだな」
そこに出てきた俺の名前がさっきまでなかなかに苦戦していたことを普通にやっている。
「あ~……。えぇ、呼び慣れてたからね」
その事を立夏に話してみると立夏の口から聞こえたフレーズは先ほどよりも気になるものがあった。
「……さっきから立夏が言っていることがよくわからないんだが? 俺たちって今日が初めまして、だよな?」
絶対に俺は今日初めて立夏と出会ったわけだから"相変わらず"や"慣れている"などの言葉は初対面の会話として不適切な表現になる。2度までなら言葉の綾、勘違いとして考えることができるのかもしれない。けどそれだけじゃない。そんな気がしていた。
「えぇ。この時間軸では初めましてね」
……この時間軸? そう言っている立夏の瞳は真剣そのものだった。だけど現実でそんな単語を聞くことになるとは……。このことが意味すること、それはつまり……。
あ、立夏はイタい人だったってことか。納得した。まぁそんな時期だもんな俺たちの年代って。
「あ~。そういう人ね、立夏は。うん。どんな設定でも俺は付き合うよ」
独自の世界観、設定の下で
「設定ゆ~な! 本当なんだから! それはこれからわかるわよ。きっと」
だけど俺の言葉に入っていた"設定"というフレーズを聞いた立夏は猛反論をし始める。
「……わかりたくないっていうのが本音なんだけど、まぁとりあえずは到着ってことでいいのかな?」
そんな話をしていると目に見えてきた1つの施設。門の部分には『風見学園』と書かれている。つまりこの場所が……。
「えぇ。ここが私の通う、そしてあなたがこれから通うことになる風見学園よ。それじゃあ引き続きついてきて。学園長室に案内するわ」
この場所が俺がこれから通うことになる学校……。不思議な力の原因を突き止めるために来たこの学校にいよいよ足を踏み込むということを理解しているのか、俺の体に力が入るのが自然とわかった。
これから新しい、今までとは全く違う生活が待っているとそんな気がしていた。
立夏しか出てない!? けどそれでいい!!
登場時には原作通り私の中では『私には見えない』が流れました。もちろん他のキャラたちも後々登場してきますのでお楽しみに!
それでは次回もお楽しみに!