過去と今を繋ぐ者   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

前回はさくらに空也が持っている能力が魔法であることが告げられました。ですが、いきなり『あなたが持っている力は魔法です』なんて受け入れられる人はいないはずです。

では一体どうやって魔法の存在を認めさせるのか、今回のさくらの行動に注目です!

D.C.Ⅲの原作にはまだ入りませんが何卒この作品をよろしくお願いします……!


魔法使い

 俺はさくらの家に来て居間で他愛もない雑談をしていた。けど、その中でようやく本題に入ることになった。なんで俺がここに来たのか。それは向こうの中学校で起こしてしまったことが原因だ。現実のは起こらないであろう風が俺を取り囲んでいた奴らを吹き飛ばした。そのことが原因で俺は向こうの学校で"化け物"と呼ばれていたんだけど、それを引き起こしたものの正体がさくらの口から告げられた。

 

 でも、それは簡単に受け入れるには難しく、中学生の俺には否定すらもしてしまいそうになるほど現実味のない話だった。

 

「空也君があの時にやったこと。それはね……。それはね、魔法なんだ」

 

 魔法。現実に存在するとは想われていないもの。漫画やアニメ、ゲームに小説。いろんな空想上の作品の中で描かれる非日常を表現するものの一つ。そんなものが現実に……ましてや俺の中にあるとさくらは口にしたのだ。

 いくらなんでもすんなり信じるには証拠が少ない。確かに俺があの時に異常な力だとは感じた。けど、それが具体的な現実味のない知っていることに例えられるとどこかそれを信じようとは思えなくなってしまう。

 

「は……? ちょっとからかってるんですか? 魔法なんて空想の産物現実に存在するわけないじゃないですか!」

 

 だから俺はさくらがからかっているのではないかとそう思ったのだ。けど嫌な汗が背筋を伝っている。『魔法』という言葉を聞いた瞬間に俺の心拍数が急激に上がった。つまり俺は本能的に何かを感じているということになるだろう。しかし、言葉では荒々しく反論するように話しているけど頭の中はどういうわけか冷静だった。

 

 だけど冷静という割にはあふれるように言葉が出てきて自分では止めることができなかった。だからだろうか……。

 

「空也君、敬語に戻ってるよ?」

 

 未だ慣れていないのだろう。敬語を外すということを俺は忘れて言葉を放っていた。さくらに指摘されるまで気が付かなかったけど、冷静でも余裕はないという何とも不可思議な精神状態に今はあるようだ。

 ただ、さくらが冷静に指摘する様子を見ているとどうしても止まらない言葉がどんどんと口から漏れていく。

 

「……あぁそうかよ。じゃあ敬語取って言ってやる。本気で悩んでいることを『それは魔法なんだよ』なんて言われて納得できるかよ!!」

 

 そう。ここまで強がって大丈夫だと自分に言い聞かせて幼馴染たちに支えてもらっていたけど、わけのわからないいつ爆発するかもわからない爆弾を持っているような俺からしてみれば深刻な悩みだった。いつ自分の周りに迷惑をかけるかもわからない、そしてそれがその力の正体が子供の夢見るような『魔法』で片づけられるのはどうも納得がいかなかった。

 次から次へと俺の言葉は溢れていく。けど心の中ではもしかしたら、なんて思っている。不安定な自分に少しだけ嫌気がさした。けどそれを落ち着かせるようにさくらが話してくれる。俺の言い放つ否定的な言葉も無理に跳ね除けないように優しく、そして包み込むように。

 

「今の君には確かにそう思ってしまうのかもしれない。ううん、実際そう思ってるんだよね」

 

 多分さくらからしたら俺の反応はもっともなことで、俺と同じ年齢の人は魔法が使えるなんて言っても信じる人はまずいないだろう。きっと信じるのは中二病を拗らせた人か単純に頭の中がお花畑のような人だけ。……一瞬立夏のことが頭に浮かんだけど立夏の場合は前者なんだろうな。

 なんて考えている最中に俺の口から一般的な反応が飛び出した。

 

「あぁ。魔法なんてない。そんなおとぎ話みたいなことが現実にあったらもっと世界は変わっている」

 

 そう。魔法なんてない。子供から成長し始める思春期といってもいいこの年代になれば子供のようなおとぎ話に出てくるものは否定的になる。もしあったらいいななんて妄想はするはずなのにちっともあるなんて思っていない。それが今の俺でもある。

 

「確かにそうなのかもしれない。けど、ね。魔法はあるよ。ここに魔法が使える人がいるんだから!」

 

 けど否定的な言葉をいくつも並べている俺にさくらは付き添うように言葉をかけてくれる。それが当たり前の反応であることを知っているから、わかっているからできる対応なんだろう。

 

「それが俺だって言うんだろどうせ。あいにく俺は魔法なんて使えないからな」

 

 だけど今の俺にはそれが皮肉を言っているように聞こえて、どうしても普通に話ができるようではなかった。君は魔法が使えるんだ、だから魔法はあるんだよ。なんて言われて簡単に信じるようならきっとその人は素直な故にきっといろんな方向から騙される。証拠も少なく信じるまでに達していないものは疑ってかかる方がいい。

 

「違うよ。ここにいる魔法使いっていうのはボクのことだよ。君は魔法を使えるけど使えない。魔法使いと魔力持ちの中間みたいな存在なんだよ」

 

 そんな俺に対して胸を張るように立ち上がったさくらはそう宣言した。どうやら俺は魔法が使えるだけでは魔法使いではないらしい。魔法が使える=魔法使いのような感じで話を聞いていたから少しだけ違和感を覚えるもののさくらの言葉の様子だと無意識に魔法を使ってしまう魔力持ちという分類に今の俺は属しているようだ。自分の意志で魔法を使える者こそが魔法使いといえる。だから俺は魔法使いじゃないということか。

 

「だったらさくらは魔法が使えるんだな? 見せてみろよ。まぁ、できるわけないんだろうけど」

 

 自信満々に打ち明けてきたさくらが一体どんなことをするのか想像しながら俺はさくらにそう言葉を投げかけた。何度でも口にしたがるかのように魔法なんてありえないということを言葉に出しながら。

 

「じゃあボクの手を見ててね。魔法を使ってあげるよ。ねぇ、和菓子では何が好き?」

 

 笑顔のままさくらは手のひらを俺に向けて出す。そこには当然ながら何もなくただ手が開かれているだけ。そんな中でさくらが聞いてきたことは今からすることに何かしら関係があることなのだろう。けど、和菓子では何が好きか、か……。

 

「和菓子……? 饅頭とかか?」

 

 俺の幼馴染の1人の実家は和菓子屋だ。だから和菓子はよく食べていたし、十分好きだと言える。けどさくらにどんな和菓子が好きかということを聞かれた時にふと、その幼馴染がよく作ってくれた饅頭が頭に浮かんだ。出来立てだから美味しかったのかもしれない。けど一番思入れがある和菓子といえばあの幼馴染の作ってくれた饅頭なのだ。

 

「お饅頭だね。じゃあ……」

 

 俺の好きな和菓子を聞いたさくらは目を閉じて先ほど開いていた手を握り締める。そして手のひらを上にして俺のほうへと差し出してくる。目を閉じて何か集中しているようにしているさくらだけど、当然先ほどまで饅頭を握っていたなんて事実はないし、手を広げたらそこに饅頭があるわけがない。

 俺はきっと否定し続けたいのだ。魔法という未知の力を。

 

「はい! どうぞ」

 

 けど、それがいつまでも続くわけではなかった。笑顔で差し出してくるさくらの手のひらには出来立てのようなさっき俺が好きだと答えた饅頭が乗っていた。

 

「……!?」

 

 当然、突然現れたように見えた饅頭を見て俺は驚く。今までさくらの手のひらには何もなかったことを確認していた。それなのにいま俺の目の前にあるさくらの手のひらにはしっかりと饅頭が乗っている……。一瞬だった。ほんの一瞬の間に手の中に饅頭が出現した。ありえないと思える光景に驚きを隠すことはできない。

 

「マジック……。手品、だよな……?」

 

 それを見てすぐに魔法だという確証は得られない。見ただけの光景を現実的に解釈するのであればきっと手品なんだということにした方が気が楽にもなるし、理解もしやすい。

 

「そんなわけないよ~。パッケージを取って空也君に気付かれないようにこうして出すなんてできるわけないでしょ。これは正真正銘のボクの使った魔法だよ!」

 

 そんな俺の解釈を今回ばかりはさくらが根底から否定をしている。本当に信じられない。だって魔法なんてありえないという俺の固定観念が認めようとしないから。けどさくらの言った通り、包装をとって俺に出すまでずっと見ていたのに気が付かないなんてことはあり得ない。この芳乃宅に来てから特にさくらはどこかに触ってもいなかったし、そうなるとネタを仕込むのにずっと包装を取ったまんじゅうを身に着けていたということになる。

 そうなれば外気にさらされるわけだから表面がパサつくはず。なのにさくらの手にあったその饅頭は出来立てのようなほくほくとした生地だと見てすぐに分かった。

 

「……待ってくれ。ちょっと理解できる許容量をオーバーしてるみたいだ。少し考える時間をくれ」

 

 これらの情報を確認した俺は今すぐにすべての回答を出せるような状態ではなかった。起きていることが起きていることなだけに少し考えこまないと納得のできる答えは出てこないだろう。だから俺はゆっくり考える時間をさくらに欲した。

 

「うん。じゃあその間にボクはご飯の準備をしておくね。出来たら用意するからここでゆっくり考えててね」

 

 確かに話をしていたから気が付かなかったけど一般的に夕飯になっていてもおかしくない時間帯だ。そう言ってさくらは俺に饅頭を渡してから台所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の時間ができたことで焦ることなく思考に意識を集中させることができる。だから、今さっき起こったことを整理しよう……。俺はさくらにあの時、化け物と呼ばれる所以になった出来事が起こった時に使った力は魔法の力だという説明を受けた。もちろん聞いたときはそんなことあるわけがないと否定したけど、どこか完全に否定できない自分がいたのも事実。それに、あの力を使ったときに普通ではない不思議な力だったというようにも感じていた。でも否定的な俺にさくらが見せてくれた一見手品にしか見えないさくら曰くの魔法。

 

 そしてもう一度、俺が起こしてしまったことについて考えてみる。集団で暴行された時、どこからともなく強い風が暴行していた奴らを吹き飛ばし、跳ね除けた。台風レベルとまではいかなくても普通であれば起きない強さの風だ。そんな風が勝手に吹くようなご都合主義なんてこの世に存在しない。それに、あれは俺がなんとかしたいと思った時に現れた。だから俺はこれが何かの力なのではないかということを仮説したのだ。

 

 であれば、さくらの言っていた魔法が俺の謎の力なんだろう。嘘をついているようにも感じなかったし、何よりこの目で見た光景が魔法の可能性をだんだんと認めている。あれをただの手品で片づけるには不可思議な部分が多くみられるし、何より現実味のない力であるとした方が何かと納得のいく部分が見える。さくらのくれた饅頭を頬張りながらもここまで考えることができた。糖分を取ったおかげか思考がスムーズに巡った気がする。

 

 だんだんと結論が見え始めてきたところで台所のほうからさくらの声が聞こえてきた。

 

「空也君。料理できたよ~」

 

 それは思考中断の合図。料理ができるまでの間考えるつもりだからいったんさくらの作った料理へと向き合う。けど、今までの間にどんなことをすればいいのか、どういう行動をとればいいのかはなんとなくわかった。だから今の俺の中には自分で導き出した答えが確かにあった。

 

「あ、はい……。じゃなくて分かった」

 

 ただ、考えることに夢中になっていた俺はついついさくらに敬語を使ってしまう。だからだろうか、敬語で話してしまったときにさくらの頬が膨らむ。その様子から少し怒っているのは明白。さっきも敬語を使ってしまう場面はあったし、やっぱほぼ同い年の人と話すのと、教師にあたる人に話すのとでは勝手が違うみたいだ。本人がそう呼べっていうからそう呼ぼうとしているんだけど慣れるまでもう少し時間がかかりそう。

 

 言い直したことでさくらの機嫌は直った。その後に手に持ったものをテーブルへと置く。自信満々に胸を張ったさくらの様子が何とも子供らしいというか嬉しいをそのまま体で表現しているようだった。

 

「じゃーん! これがボク特製の料理だよ! たんと食べてね!」

 

 そして余程自信があるのだろうさくらが出した料理は1つ。そして日本人の食卓には欠かせないご飯があった。そしてその料理とは……。

 

「……鍋?」

 

 そう、鍋だ。風邪をひいたときとかは温まり、多くの食材を使っていることで栄養価が高いことから食べる人も多くいるこの料理。それに水炊き鍋なら比較的簡単に作ることができるある意味お手軽な料理だ。でもなんで自信満々に出してくる料理が鍋なんだろう……?

 

「うん! 鍋だよ。同じ鍋を囲むことででより親睦を深めようって思ってね。これから少なくても1年間は同じ家で過ごすんだから早くなじめるようにってね」

 

 でも鍋を出してきたことは単純に簡単だからという意味ではなかったみたい。確かに俺は今日からさくらの言うように少なくとも1年間はここに住む。だからこの家の家主であるさくらと親睦を深めるのは当たり前のことだ。それに鍋という食べ物にも相撲部屋によく出てくるちゃんこ鍋のように連帯感を高めるためという意味もあるし、一つの鍋を囲むということは一つの心をつかむのと同じ効果があるということが心理学上で分かっている。これは1つの鍋を囲むことで周りに気を配り、協調性ができ親密度が上がるという研究結果らしい。

 

「だから鍋……? 安直すぎないか?」

 

 いろんな鍋という1つの食べ物がもたらす効果があるけど、その根底にあるのは仲良くなりたいというさくらの純粋な想いだった。それが分かったからだろうか、さくらが歩み寄ってくれているというのが嬉しくなって必死に考えていたために忘れていた笑顔に俺はなっていた。

 

「そうでもないよ~。ボクが風見学園に通ってた時は毎日屋上で違った鍋を囲んでいる姉妹がいたんだから」

 

 そう言いながらも俺は鍋をつつきながらさくらの話を聞いていた。屋上で鍋を囲んでいた姉妹というのは私立学校が故にできたことなのか、そんな深いところまではよくわからないけど、楽しそうに笑顔で語っているさくらの様子を見ていると楽しい学園生活が送れるのではないかと心が弾むような気がした。

 

 それから食事をしている間はさくらの風見学園の思い出をいっぱい聞いた。この家に住んでいるさくらの息子が所属するクラスでやったお化け屋敷の話とか、在学中に兄のように接していた人と学校中を走り回ったとか。そして学園長室で家族同然の人たちと居間みたいに鍋を囲んだとかいろんな思い出があの学校にはつまっているらしい。

 けど、そんな話を聞いているとさくらの年齢って何歳なんだろうという疑問が失礼ながら出てきてしまう。見た目的には30代くらいに見えるけど、息子までいてその息子さんは結婚しているとのこと。……見た目通りの年齢じゃない? にしてもわからないことだらけだ……。多分さくらも謎が多く包まれているんだろう。その謎もきっと魔法と関係しているはずだ。

 

 そして俺の中には先ほど出した答えがある。これからどんなことが起きたって、今自分の置かれている状況を解決するために向き合おうと決めた。今までは目をそらして何もできないままではいられない。はじめてこの力を使ってしまったときから今日にいたるまで何も問題が起こらなかったのはある種の奇跡なんだと思う。

 

 けどそれがいつまでも続くわけがない。わけがわからないままずっと放置し続けたら絶対にどこかで綻びが出てしまう。であれば、何とかしてその綻びが出ないようにしないといけない。そこで俺は一つの決断をした。それが俺の出した答え。

 

 それは……

 

「なぁ、さくら。俺に魔法を教えてほしい」

 

 魔法が使えるというさくらに教えてもらった自分でもよくわかっていないこの力を制御すること……いいや、完全習得することだ。

 生半可に習得したって今までのように綻びが出てしまう可能性がある。であれば完全に習得した方がいい。そうすれば不測の事態に陥ったとしても自分で解決することができるからだ。暴走なんてした日には周りにだって被害が出てしまう。そんな爆弾のようなものを俺は持っているのだ。だから何とかしないといけない。

 でも、あれが本当に魔法なのかは実際まだ少しは疑っている。けど、魔法のような普通ではありえない力なのではないかということはわかっている。であれば、さくらの教えを受けて何とかすることができるのであれば俺はこの力がどんなものかを理解することができるかもしれない。

 

 だから俺は歩き始める。目を背けていたこのわけのわからない力を理解するためにも。

 

 




はい! いまだに原作(ゲーム)のシナリオに到達しません。これから空也が魔法を習得することができるのか、これからお楽しみに!

さてさて、さくらの思い出話にいくつかわかるものはありましたかね? 鍋を屋上で囲む姉妹、"お兄ちゃん"と追いかけっこをするさくら。そして学園長室で鍋を囲んだこと。書いてる最中、懐かしいなと若干感傷に浸ってました……。

とうとう動き始めるこの物語、空也のこれからはどうなるのでしょうか、そしてさくらは何を知っていて立夏の言葉が示すことは……?

それでは、次回もお楽しみに!!
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