Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 妹へ送るエール 作:ハープ
〜エール side 〜
「あ、お帰りなさい、エールさん」
「ただいま〜、って、え?」
想定していなかった声に迎えられて、つい素っ頓狂な声を上げる。
「お久しぶりです。思ったよりも元気そうで良かったです」
そう微笑んで顔をを上げるのは……
「桜⁉︎」
私の年上の妹分、桜だった。
この世界の桜は魔術との関わりはほとんどないといっていい。髪色は変色しているけど、臓硯は第四次の時に既に死んでいるらしく、私が来た直後にはもう衛宮家に通い始めていた。
虚数魔術の危険性を考えれば、制御の為に習っている可能性もあるけれど、切嗣もママもいない以上、その可能性も低い。
魔術絡みの事に首を突っ込んでいる今、桜とはあまり会いたくはなかったのだけど……
「?どうかしましたか?あ、やっぱりまだ休んでいた方が…」
「う、ううん。平気。それより今日はどうしたの?」
そんな事を考えていたら、体調が悪いと思われて心配されてしまった。
「あ、それはですね…」
「俺がエールが熱出したって言ったら、心配して来てくれたんだよ」
「あ、士郎いたんだ」
適当に話を誤魔化そうとしたら、台所から士郎が出てきた。
「って、また夕飯作ってるの?当番じゃない日にやるとセラがうるさいよ?イリヤは喜ぶけどさ」
「桜が来てるからな。久々に一緒に作りたいって言ったら許してくれたよ」
「すみません、先輩…」
その代わり後で一日譲る事になったけどな、と笑う士郎に、申し訳なさそうにしつつも頰を染める桜。
……こんなにわかりやすい上にいい雰囲気になるのに、なんでこの朴念仁は気付かないのかしら。
いや、まぁイリヤの士郎愛を考えたら、今の状態がある意味ベストなのかもしれないけどね。
「あ、先輩…」
「ん?あぁ、これか?」
少しズレた事を考えていると、いつの間にか二人は台所に戻っていた。
桜の言わんとしている事を察して、必要なものを即座に用意している士郎。相変わらず呆れた以心伝心っぷり。
「……こう台所で一緒に作業してると、最早夫婦にしか見えないよね」
「んなっ⁉︎」
「ふ、夫婦⁉︎」
「お姉ちゃん⁉︎」
ふと思わず言葉を漏らすと、盛大に反応する三人。
ん?三人?
「………覗くくらいなら堂々と入ってきなさいよ、イリヤ」
「あ、いや、その…ハイ、スミマセンデシタ」
ため息をつきつつ階段の方を見てみると、バツが悪そうにイリヤが降りてくる。
「まったく、せっかく来てくれてるんだから挨拶くらいしっかりなさい」
「う…ハイ。でもあの桃色空間に近づくのは私の精神力が保たないッ!」
「「イリヤ(さん)っ⁉︎」」
イリヤの告白に更に顔を真っ赤にする士郎と桜。
見事に息ぴったり。
「あ〜……じゃあしょうがないか。まったく、桜もなんでこんな朴念仁に引っかか「わー!わ〜!え、エールさん⁉︎」…フフッ。そんなに必死になって。やっぱり桜は可愛いよね?士郎?」
「なんで俺に振る⁉︎いや、まぁ桜は可愛いけどさ」
「〜〜〜!//」
「むぅ〜…」
流れを利用して桜をからかう。
………うん、やっぱりこういう日常っていいな。
こんな何気ない毎日をずっと過ごせたらどんなにいいか。
そう、何度も考え続けてきた。
今はその日常から少しばかり外れた事をしてるけど、この思いだけは決して変わらない。
私達の日常を守るために、一刻も早く今の異変を解決する。そして、美遊も一緒に、みんなで平和な日々を過ごせるようにする。
三人の笑顔を見ながら、私は決意を新たにした。
〜エール side out〜
日常謳歌するなら士郎はやはり桜とですね。
原作プリヤでは番外で姿だけ出てきましたが、こうはっきりとは出てこないので出してみました。
まぁ、どう頑張っても本編には組み込めないのですが^_^;
次回、カード回収再開です。