Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 妹へ送るエール   作:ハープ

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お久しぶりです。何回もリセットして書き直していたのですが、どうしても上手くいかず……。素人の完璧主義ほど面倒なものはない、と我ながら思いました。まぁ、今までがそれに見合っているかと言われたら首を傾げますし、今回はその中でも特にですが。…あまりに上手くいかないので、今回から少し妥協入れました。質は下がりますが、その分ペースを上げられたら、と思っています。では、本編です。


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──爺さんの夢は、俺が、ちゃんと形にしてやっから。

──マスターとして戦う。…俺は、あんな出来事を二度も起こさせる訳にはいかない。

──貴方が、私の鞘だったのですね

──オレは、そんなモノの為に、守護者になどなったのではない!

──あぁ。そして、私の敗北だ。

──大丈夫だよ遠坂。オレもこれから、頑張っていくから。


「……ん、ぅ………」

「───なんだって、こんな夢……」



第11話 揺れる想い

〜エール side 〜

 

 

「じゃ、じゃあ私、学校行くね」

 

「あ…うん。行ってらっしゃい、イリヤ」

 

言い切らない内にバタン、と部屋の扉が閉じられてしまう。続いて玄関が開かれる音がして、そのままイリヤは学校に向かったみたいだった。

 

「───はぁ」

 

布団から出てベッドに腰掛け直すと、思わず溜息が出る。

 

………結局、近づこうともしてくれなかったなぁ。

 

間違いなく昨日の事を引きずっているのは分かるけど、徹底して接触を避けられるのは中々堪える。顔に出すとイリヤがまた落ち込むだろうと思っても押し殺せなかった。

 

「──さて、そろそろお話をお聞かせ頂きたいのですが……」

 

「エール、平気?」

 

と、不意にセラ達から声をかけられる。本気で凹んでたから二人のことが頭から抜け落ちていた。

 

「……大丈夫。問題ないわ」

 

「お話し頂けるなら、また後でも構いませんが………」

 

誤魔化そうとしたけど、声に力が入らなくて逆に心配させちゃったみたい……。

 

気遣いは嬉しいけど、そうも言ってられないから……

 

イリヤについても話さない訳にはいかないだろうし、伝えるなら早い方がいい。それに、ただでさえ夕べ見つかった時にも無理言って待って貰ったんだから、これ以上気を揉ませるのも気が引ける。

 

「本当に、大丈夫だから……。話すよ、夕べの事も、これまでの事も───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「──じゃあ、私はまた少し眠るね。少しでも回復しておかなくちゃ」

 

「え、ええ。それではお休みなさい、エールさん」

 

「……お休み」

 

一通りの事情を説明し終わり、二人が部屋から出ていく。

 

「──ちょっと迂闊、だったね…」

 

魔術云々なんて、普通の人が聞いたら耳を疑うような話をごく当たり前のように話してしまった。

セラはあれでアクシデントに弱いから、魔術の話が出てからずっとワタワタして気付いてなさそうだったけど、リズは多分何かしら勘付いてる。殆どの事には動じないのが普段は頼もしくもあったけど、こんな怪しいタイミングでバレるのは勘弁してもらいたい。

 

………私の事も、その内ちゃんと話さないとね。家族と腹芸なんてやりたくないし。

 

まあ、今はカード回収を優先しよう。幸か不幸か、セラ達は事態が理解できる上、実質美遊一人で戦わせる訳にもいかないから、止めるに止められないって感じだったし。ママ達と相談でもしたらまた意見が変わるかもしれないけど、取り敢えずバーサーカー戦の前に面倒な事にならなそうで良かった。

 

「────もう寝よう。………イリヤ、大丈夫かな……」

 

布団に潜り込み、今はどうにも出来ない事に思いを馳せながら、私は意識を手放した──。

 

 

 

〜エール side out〜

 

 

 

〜ルビー side 〜

 

 

「ここにいたの、姉さん」

 

「おやサファイアちゃん。どうしましたか?」

 

体育の授業でイリヤさんから離れていた私の所にサファイアちゃんがやって来ました。

 

「美遊様に、エール様の様子を聞くように頼まれたから。あの状態のイリヤ様に尋ねるのは、美遊様も憚られたようで」

 

「そういうことですか〜」

 

今朝からずっと落ち込んでますから、その気持ちは分かりますね〜。ぶっちゃけ言って、私もちょ〜っと居心地悪かったからここにいる訳ですし。

 

「エールさんなら無事ですよ。あの時の怪我も治ってましたし、昨日みたいに熱もなさそうでしたから。精々が治癒直後で身体がだるいくらいでしょうか」

 

「ならいいけど……」

 

ひとまず安心して貰えたみたいで、ホッと息をつくサファイアちゃん。

 

「あれ、じゃあエール様が今日欠席なのって……」

 

「イリヤさんが親バレしてしまいましたからね〜。大事を取って、という名目でしたが、実際は尋問タイムじゃないですか?イリヤさんはもう夜出歩かないと約束しちゃいましたから、深くは追及されませんでしたが……」

 

「そう……」

 

ゲロっちゃわないで欲しいですけどね〜。魔法少女は正体不明でいてもらわないと。

 

「……イリヤ様は、もう……?」

 

そんな事を考えていた私とは違い、話をイリヤさんの方へとシフトしていくサファイアちゃん。

 

「もうムリっぽいですねアレは。セイバー戦辺りから本格的に死にかけましたし、完全な一般人だったはずのイリヤさんがここまで凛さん達に付き合えた事の方が凄いくらいです。おまけに……」

 

あの謎の力でエールさんに怪我をさせてしまったのがトドメになったんでしょう。

 

「やはり、夕べの件で……」

 

言いたいことを察したサファイアちゃんが重苦しげに呟くのに、私も頷きます。

 

「ええ、完全にトラウマになってしまったようです。今朝エールさんの様子を見に部屋までは行ったんですけど、手が届く距離には決して入ろうとしませんでしたから。撫でられるのも避けてましたし」

 

エールさんも勘付いてるようですが、やっぱり結構傷ついてるみたいでしたね〜。イリヤさんは自分の事で精一杯で気付かなかったみたいですが、あのエールさんがイリヤさんの前で顔色を誤魔化せないなんてよっぽどです。

 

「姉さんはこれからどうするの?」

 

「別にどうもしませんよ?イリヤさんが私のマスターである事に変わりありませんし」

 

サファイアちゃん達を死地に送り出して高みの見物というのは気が引けますが、イリヤさんも心配ですし………

 

「という訳で、美遊さんには悪いですが、最後のカード回収はサファイアちゃん達だけでお願いします」

 

「………分かった」

 

それじゃあ、と別れる私達。サファイアちゃんも無理にイリヤさんの参加を言ってこない辺り感謝ですね。

 

「──さて」

 

一度イリヤさんには凛さんと会ってもらわないといけませんね〜。

 

 

〜ルビー side out 〜

 

 

 

〜エール side 〜

 

 

「……辞表です」

 

ルビーに呼ばれてこっそり公園に来てみると、イリヤが凛に辞表を提出しているのが見えた。

 

「ま、こうなるかもとは思ってたけど」

 

「その…最初は興味本位というか、面白半分だったの。昔からお姉ちゃんに守られてばかりだったから、お姉ちゃんの前に立って何かを出来るってことが無性に嬉しくて…」

 

ぽつりぽつりと言葉を漏らすイリヤ。

 

……そんな風に考えてたんだ。自分で思っている以上に過保護になっていて、それがコンプレックスになっていたりしたのかな……。

 

内心で少し落ち込んでいるのをよそに、イリヤの独白は続く。

 

「でも……二回も死にかけて、結局は命懸けの戦いなんだって思い知らされて。………お姉ちゃんまで危ない目にあわせて………私には、それでも戦うような理由も、覚悟もなくて………」

 

段々と声が沈んでいくイリヤ。心なしか身体が震えているようにも見える。

 

「──だから、もう戦うのはイヤです」

 

スカートを握りしめながらそう告げられ、凛は……

 

「分かったわ。辞表を受理する」

 

あっさりとそれを認めた。

 

「いいの……?」

 

「元々小学生に戦闘の代理をさせようっていうのが無理な話だったんだもの。ここまで戦ってくれたことに感謝こそすれ、止めようなんて思わないわ」

 

意外だったのか、戸惑ったような声を上げるイリヤに、あっけらかんと答える凛。

 

「──今までありがとね。貴女はもう私の命令に従わなくていいし、カードの事ももう忘れてくれていいわ。一般人が魔術の事を知っていてもいい事なんてないし、全部夢だと思って、貴女の日常に戻りなさい」

 

──これでいい。ありがとね、凛。

 

夕べのことを問い質したいだろうに、そんなことをおくびにも出さずに労う彼女らしい気遣いに感謝する。

 

イリヤが戦いから離れれば、もう戦いや自分の力に怯えるような事は起こらない。あとは、私がバーサーカーを倒せばそれで終わる。

 

そんなことを考えている間に一悶着あったのか、ルビーが地面に叩きつけられていた。

 

「─さて、そういう訳なんだけど、貴女はそれでいい?()()

 

凛は一呼吸置いて自分を落ち着かせると、イリヤの後ろに向かって呼びかける。

 

「───はい。問題ありません」

 

「ミ、ミユ……」

 

「……貴女はもう戦わなくていい。後は、私が全部終わらせるから」

 

美遊はそれだけ告げると、踵を返して去っていってしまう。戦うのをやめた後ろめたさからか、イリヤはただそれを見送るしか出来ないようだった。

 

──私が終わらせる、か……

 

一人でなんでも背負う必要はないって言ったのに、不器用なんだから。

突き放すような態度だけど、イリヤに戦わせまいという思いがありありと見てとれる。

 

……貴女に背負わせたりなんかしないわ。

 

改めてそう思いながら、イリヤにバレないようにこっそりと家に戻った。

 

 

〜エール side out〜




〜夜 衛宮家〜

「本当に、行くのですか?」

「──うん。じゃあ、イリヤのことお願いね」

「あ、エールさん!…行ってしまいましたか」

「……良かったの、セラ?」

「旦那様に止められてしまった以上、仕方ありません。宝石翁の絡んでいる事件で身バレがまずいのも事実です」

「…………」

「……わ、私だって納得出来ている訳ではありません。ですが…イリヤさんのケアも必要です。恐らく、これもそのための物でしょうし」

「……ボイスレコーダー?」

「ええ、何が入っているのかは分かりませんが。………今は、エールさんを信じるほかありません」

「……分かった」


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エール「じゃあ、第2回プリエ座談会を始めましょう?進行は私エール、そしてゲストは」

セラ「アインツベルン家のメイド、セラです」

リーゼリット(以下リズ)「同じく、リズ」

エール、セラ、リズ「よろしくお願いします」

リズ「で、なに話す?」

エール「うーん、取り敢えず、私が事情説明した後の二人の反応が知りたいかな?セラ、お願い」

セラ「分かりました。…とは言っても、旦那様に電話をかけて、一先ず手を出さないようにと言われただけなのですが」

リズ「嘘。セラ、ずっとパニックだった。何故、とか、どうして、とかばっかり」

セラ「なっ…!そ、そういうことは言わなくていいのです!」

エール「うん、予想通りね。ところでママはなんて言ってたの?」

セラ「予想通り…⁉︎い、いえ。奥様はいらっしゃらなかったのです。電子機器に弱いらしく、携帯は旦那様が持っていれば連絡に困ることはない、と普段は言っていたのですが……」

エール「見事に困った訳ね……。っていうかどこ行っ…いや、やっぱりそういうこと?まぁ、私でも分かるんだし、不思議はない……?」

リズ「……エール?」

エール「あ、ううん。なんでもない」

リズ「………やっぱり、怪しい」

エール「アハハ…バレてます?やっぱり」

セラ「私はリーゼリットが言うまで気付きませんでしたが、やはり何か……」

エール「まぁ、その辺は本編でいつか教えるから。ここではちょっと、ね?」

セラ「……分かりました」

エール「さて、今回はこんなものかな?」

セラ「イリヤさんのことはよいのですか?」

リズ「………セラ」

エール「仮にも主の長女の心の傷を抉るのはやめなさい?物理に変換して返すわよ?」

セラ「も、申し訳ありません。失言でした」

エール「…まぁ、いいわ。ちなみにイリヤ達だけど、学校での様子はほぼ原作通りよ。強いて言うなら美遊が一人になるのは拒絶というより傷心のイリヤを気遣って、というのが分かりやすめになっているくらいね。……ホント、美遊には感謝しかないわ」

美遊「これくらい、普通」

エール「それでも。ありがとね、美遊」

美遊「……♪」

セラ「突然美遊さんが来るなり頭を撫でられて満足げに帰っていったのですが……」

リズ「気にしない。ここはそういうもの」

エール「そういうことよ。じゃ、今度こそ終わりね。次回はバーサーカー戦に入ります。私達の命懸けの戦い、楽しみにして下さいね」

セラ「私達は不安でしかないのですが……⁉︎」

エール「大丈夫、死にはしないわよ。まだ見捨てずに読んでくれている読者の方へヒントを出すなら、(アーチャー)とバーサーカーといえば……ってところね」

リズ「それ、ほぼ答え」

セラ「死にはしないの信憑性がほとんど消え失せたのですが⁉︎」

エール「まあまあ。それでは、Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 妹へ送るエール」

エール、セラ、リズ「次回もよろしくお願いします!」

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