Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 妹へ送るエール   作:ハープ

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今までで多分一番長いですね。切りどころが分からなくなってここまで書いてしまいました。


第1幕
第1話 崩れる日常(前編)


〜イリヤ side〜

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

終業の鐘が鳴るとすぐに、私は荷物をランドセルにしまって、外に向かって駆け出す。

途中で藤村先生が何か言っていたような気がしたけど気にしない。素早く靴を履いて、校門に向かうと、丁度目的の人物が見えた。

 

「お兄ちゃ〜ん!」

 

「お、イリヤも今帰りか?」

 

私が大声で呼ぶと、お兄ちゃんがそう返してくれた。

 

「うん!お姉ちゃんもすぐ来ると思うし、一緒に帰ろう!」

 

せっかく今日はお兄ちゃんの部活がない日なんだし、一緒に帰らないともったいない。

 

そんな事を思っていると、

 

「もう、気持ちは分かるけど、急ぎ過ぎ、イリヤ。ほら、忘れ物。ちゃんとしまってから出なさい」

 

「う、ごめんなさい。気をつけます」

 

あはは……やっちゃった。

お姉ちゃんには敵わないなあ。

 

お姉ちゃんは綺麗で頭も良くて、運動がちょっと苦手(といっても他と比べてで、全体から見たら十分能力は高い)な事以外は完璧な優しいお姉ちゃんなんだけど、怒らせると恐いらしい。

お姉ちゃんが怒ってるとこなんて見た事ないけど、誰か怒らせた事あるのかな?

 

「うん、分かればよろしい。それじゃ、帰ろっか」

 

ほら、やっぱり優しい。

 

「はーい!そうだ!みんなで家まで競走しようよ!」

 

「競走って、俺自転車だぞ」

 

「平気平気!私走るの得意だから〜!」

 

そう言って私は一番に走り出す。

 

「あ、イリヤ〜!」

 

「まったく、付き合わされる私の身にも…もう、しょうがないなあ」

 

なんだかんだ言いつつ、二人とも付き合って走ってくれる。

 

……ふふっ。幸せだなあ。

 

 

〜イリヤ side out〜

 

 

 

〜エール side〜

 

 

つ、疲れた……いつも思うけど、やっぱりイリヤって足速い。

っていうかなんであのスピードでずっと走っていられるの。

 

なんてことを思いながら走っていると、いつのまにか家に着いていた。

 

「「「ただいま〜!」」」

 

「イリヤさんエールさんお帰りなさい。…士郎も一緒でしたか」

 

「ああ、校門で会ったからな」

 

セラといつも通りの挨拶を交わす。

 

「そう言えばイリヤさん、昼間に荷物が届いてましたよ。確か中身は…DVD?」

 

DVD?あー、アレかな?

 

「ホント⁉︎もう届いたんだ!」

 

聞くや否や、イリヤがトテテ〜、とリビングへ走っていく。

 

ふふ、この反応はやっぱりアレだね。

 

「あー‼︎」

 

ん?どうしたんだろ?

 

イリヤが急に叫んだので私も様子を見にリビングに向かうと、

 

「リズお姉ちゃん、なんで先に観てるの〜⁉︎」

 

「お金払ったの私」

 

「そうだけど〜!」

 

届いたDVDを観ているリズと、それに憤慨しているイリヤがいた。

 

「何かと思えば…」

 

「アニメのDVDか」

 

あ、セラ達もきた。

 

「ああ、イリヤさんもすっかり俗世に染まってしまって……」

 

俗世って……まあアインツベルンは貴族だけどね?

 

「まあまあセラ。いいじゃない、別に。ハマり過ぎなければ。…せっかく平和なんだもの、ごく普通の幸せに浸ってもバチは当たらないんじゃない?」

 

「エールは大げさだなあ。でもまあ、いいんじゃないかな、これぐらい」

 

私がセラを宥めにかかると、士郎も続く。

 

別に、大げさでもないんだけどね。

 

「……まあ、そうですが。それはそれとして、士郎!貴方がそんなだからクドクド…」

 

あ、また始まった。私に飛んでこない内に部屋に行こう。

 

……この家に来てからもう7、8年経つ。

最初こそ顔と名前が合ってないってからかわれたりしたけど、スルーしてれば大体すぐ収まったし、今はクラスのお姉ちゃん的存在になっている。

もっとも、イリヤによると、同時に絶対に怒らせてはいけない人として恐れられてもいるらしいけど………あれ、私のせいじゃないし。

イリヤが詳しい内容知らなくて良かった。流石にアレは知られたくない。

 

そんな事を思いつつ、あの時の事を思い出す。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あれは、小学校の低学年の頃。あの頃私は、顔と名前が噛み合っていなくて変、という理由で嫌がらせをされていた。

まあ、理由は違えど嫌がらせは昔にもあった気もするし、反応すれば相手が喜ぶだけだと相場が決まっているのでスルーしていた。

 

けれど、思ったより悪質な奴だったらしく、ある時放課後に屋上に呼び出してきた。

 

ケリをつけるのに丁度いいかと思って乗ってあげたけど、いざ行ってみれば結局いつもと大して変わらない事を延々と言ってくるだけで退屈だった。

何を言われてもどこ吹く風だった私が気に入らないのか、連中は悪口を言う対象を私からイリヤへと変えた。

怒りを抑えきれず私が思わず表情を歪めると、つけあがってだんだんエスカレートし、イリヤに直接手を出すなどと言い始めた時、私の中で何かが音を立てて切れた。

 

「……今なんて?」

 

「へ?」

 

間抜けな声をあげる二人の喉元を掴み、そのままフェンスに押し付ける。

 

「お前らが気に入らないのは私じゃなかったの?どうしてそこでイリヤが出てくるの?そっちがその気なら、今この場からフェンスごと下に叩きつけてあげようか?」

 

ギリギリと力を加えていくと、二人の顔が恐怖と苦悶に染まっていく。

そのまま締め続けることも出来たけど、これ以上は本当に死んでしまう。

キレてはいたが、流石に本気で殺しをする程理性は蒸発しきってはいない。

 

私は手を離し、へたり込む二人に、

 

「もしイリヤに手を出してみなさい。その時は二人の首がへし折れる時よ」

 

と、去り際に言ってやった…………………

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あー、うん。私のせいかな!ちょっとやり過ぎたし。

あの二人、あれがトラウマになったらしく、私を見るなりすぐ逃げるし、イリヤにはぺこぺこしてるんだよね……。ま、自業自得か。

 

「エールさ〜ん、夕食の時間ですよ〜」

 

あらら、いつのまにかそんな時間。不愉快な事は忘れてご飯ご飯っと。

……でも、こういう不愉快な事を思い出した時って、ろくな事がないんだよね……何もなければいいけど。

 

 

〜エール side out〜

 

 

 

〜イリヤ side〜

 

 

今、私は夕ご飯の時のお姉ちゃんの言葉を思い出していました。

 

「あ、イリヤ。観たい気持ちも分かるけど、今日は早めにお風呂に入って寝た方がいいよ。…な〜んか嫌な予感がするんだよね〜」

 

こういう時、お姉ちゃんの予感はよく当たる。

そう、分かってはいたけど、結局我慢できずにDVD一クールを一気に観て、お風呂に入るのが遅れて……

 

「イャッホー!素敵ですよイリヤさん!」

 

こんな、魔法少女の姿になる羽目になってしまいました。

 

「って、ホントに魔法少女なの⁉︎というか、いつの間に外に出ちゃったの⁉︎」

 

「いや〜流石にあのお風呂場は転身には少々手狭でしたので、つい☆」

 

混乱する私に最悪の事を告げてくるこのステッキ。

 

「ハダカで外に出ちゃったの⁉︎」

 

「大丈夫ですイリヤさん。結構お似合いですよ〜。前のマスターよりよっぽど」

 

そういう問題じゃないよ……。

 

私が内心で崩れ落ちていると、

 

「へぇ〜、それは良かったわねぇルビー?」

 

なにか、すごく怒っている女の人が、私達の目の前に立っていました……

 

 

〜イリヤ side out〜

 

 

 

〜エール side〜

 

 

今の魔力は⁉︎

 

イリヤより一足先に寝ていた私は、突如近くで発生した魔力を感知して飛び起きた。

 

あの日泥に触れて以来、私は魔力…特に、イリヤやママ達小聖杯の魔力に敏感になっていて、魔術回路を開いていなくても冬木市内であればどこにいても感知できる。

 

……話が逸れた。取り敢えず私は窓から外を見ると、丁度真下辺りにイリヤがいた。

…………何故かアニメみたいな魔法少女の格好で。

 

何やってるのあの子は。…ん?

 

ふとイリヤの視線の先を見てみると、指を銃の形に構えている、赤服を着たツインテールの女性がいた。

 

って、あれ凛⁉︎何で……⁉︎しかもガンド構えてる⁉︎

 

予想外の人物に一瞬パニックになり、気付いた時には既にイリヤに向かってガンドが放たれていた。

 

イリヤ!………あれ?

 

イリヤがケガでもするんじゃないかと思ったけど、どういう訳か全くの無傷。後ろの菜園はボロボロなので、空砲的なものではないことが分かる。

どういう事か疑問に思っていると、

 

「お忘れですか〜凛さん?魔法少女にはAランク相当の魔術障壁等が常時展開されているんですよ?今の私達にそんな豆鉄砲が効く訳ないじゃありませんか〜」

 

なるほど、そういう事。

大変分かりやすい解説有難うございます。

 

都合良くステッキ(っていうかアレよく見たらルビーだ。ループする四日間で凛のメンタルKOした奴……嫌な予感の正体はアレか)が解説してくれたので、取り敢えずイリヤが無事な事が分かりホッとする。

 

大声で話しているルビー以外の声は聞き取れないけど、凛結構キレてるよね……!閃光弾⁉︎

 

突如視界が真っ白になり、何も見えなくなる。

 

マズい。魔術はともかく物理でこられたらイリヤが無事か分からない。

 

直前までの位置関係から、接近していればそこにいるであろう位置に、たまたま机の上にあったコンパスを全力で投擲し、窓から飛び降りる。

 

イリヤの日常を壊そうとするなら、誰であろうと許さない。

 

私の中で何かが切れる音がしたのと同時に、地面に着地する。

 

「うちの妹に、何してくれようとしてるのかしら?」

 

 

〜エール side out〜

 

 

 

〜凛 side〜

 

 

まったく、このバカステッキのせいで無駄に一般人を巻き込んじゃったじゃない。

 

宝石の魔力を開放して閃光弾がわりに使って、ルビーがくっついた少女に指を向けながら、内心で愚痴をこぼす。

 

…まあ、取り返すにせよ手伝ってもらうにせよ、一旦このバカを止めないとね。

 

ゼロ距離ならガンドでも障壁を突破できる。

私が指に込めた魔力を放とうとした時、

 

……⁉︎何か来る!

 

咄嗟に後ろに下がると、直前まで私がいた場所に、コンパスが突き刺さっていた。

 

………は?コンパス?しかも地面に完全にめり込んでるってなに?

 

今までガンドやら格闘やら武器やら、色々と戦闘時に見るものはあったけれど、こんなものを使ってくる奴なんて知らない。

流石に一瞬呆然としていると、

 

「ウチの妹に、何してくれようとしてるのかしら?」

 

そう言って、一人の少女が上から飛び降りてきた。

 

少女の姉を名乗るこの子は尋常じゃない殺気を放っていて、話を聞いてくれるとは思えない。

 

二人目の一般人……しかも話し合いの出来る状況じゃない。…益々厄介な事になったわね。

 

 

〜凛 side out〜

 

 

 

〜イリヤ side〜

 

 

あれ?

 

急に周りが真っ白になって軽くパニックになっていた私は、視界が元に戻っても何ともない事にちょっと不思議に思った。

 

「コンパスで凛さんを牽制するとか、なかなかすごい人ですね〜、埋まっちゃってますよアレ」

 

へ?

 

よく見たら、私の目の前の地面に、コンパスが突き刺さっていた。それはもう、深々と。

 

あれ、でもこのコンパス、どこかで見たような……?

 

そう思っていると、

 

「ウチの妹に、何してくれようとしてるのかしら?」

 

なんと、お姉ちゃんが上から飛び降りてきました。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

どこかいつもと雰囲気の違うお姉ちゃんに恐る恐る声を掛けると、

 

「イリヤ、話は後。取り敢えずこの虫と、そこのガラクタを始末するから」

 

今まで聞いたこともないくらい冷たい声で、そう返してきた。

 

コワッ!お姉ちゃんどうしちゃったの⁉︎

 

『エールってさ、怒ると大河もビビって逃げるぐらい怖いってホント?』

 

何年か前、友達にそんな事を聞かれたのを思い出す。あの時はそんな訳ないって思ってたけど、今のお姉ちゃんを見てると、それぐらいになっても不思議じゃないって思えるぐらい怖かった。

 

「ウヮーオ……随分と怖ろしいお姉さんですねー。普段からこんな感じなんですか?イリヤさん」

 

「違うよ⁉︎普段はすっごく優しいお姉ちゃんだからね⁉︎……私だって初めて見たよ…こんなに怒ってるお姉ちゃん。今まで叱られた事はあるけど、怒られた事はないし」

 

そう、今日だって忘れ物をしたのを叱られたけど、優しく諭してくれるような感じで、あんな風に感情的になって怒るとこなんて見たことがない。

 

「ふむふむ。となると、お姉さんが怒るのはイリヤさんに危害を加えようとした時、という事になるのでしょうか?あれ、ルビーちゃんピンチ⁉︎」

 

「私の……為?」

 

そう言われると、お姉ちゃんの性格的に、しっくりくる気がした。

 

…って、ウソー!

 

「あの凛さんを瞬殺…マジでヤバいですね、イリヤさんのお姉さん」

 

いつの間にか、私達が話している間に、お姉ちゃんが凛さん?を沈めていた。

 

「姉は無敵なのよ」

 

そう言いながら、私…正確にはルビーの方に近づいてくるお姉ちゃん。私に向けられたものじゃないと分かってはいても、その凄まじいまでの殺気に思わず泣きそうになる。

 

「お、落ち着いてください、イリヤさんのお姉さん!まずは事情を説明する権利をください!」

 

流石のルビーも身の危険を感じたのか、必死に説得しようとする。

 

「あ、あの、お姉、ちゃん?」

 

私が半泣きでお姉ちゃんに声を掛けると、

 

「…………‼︎」

 

一瞬目を見開いて、バツが悪そうにしながら足を止めた。

 

……もとに戻ってくれた、のかな………?

 

 

〜イリヤ side out〜

 

 

 

〜エール side〜

 

 

やっちゃった……。

コンパスで毒気を抜かれた上に、子供と侮っていた凛の鳩尾と首筋を全力で叩いて無力化したまではいい。ルビー諸共イリヤにまで殺気を向けるとか何やってるのよ私は……。

 

助けるはずが逆に泣かせてしまった事に対する罪悪感が半端じゃない。

イリヤの泣き顔を見てひとまず落ち着いた私は、

 

「……取り敢えず私の部屋に来なさい。詳しい話は後で聞くわ」

 

そう言いつつ、後ろに振り返って、

 

「貴女もそれでいいでしょう?いつまでもやられたフリしなくていいから」

 

そう言ってやった。

 

「……結構本気で痛かったんだけど。アンタ一体何者よ」

 

あら、ホントに効いてたっぽい。ちょっと悪いことしたかも…ま、いいか。

 

「さっき言ったでしょ、この子の姉よ。イリヤ、私は窓から戻らないといけないから、取り敢えずなんとかセラ達を誤魔化しておいて。まったく、せっかく忠告したのに聞かないで……」

 

「うっ……ハイ、スミマセン」

 

さて、長い夜になりそうね………

 

 

〜エール side out〜




正直、過去にエールがキレた話は本編にはほぼ関係ない予定です。ただイリヤをどれだけ大切に思っているかを表したかっただけなので。それにしても、バトルまでの道のりは長いですね……
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