Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 妹へ送るエール   作:ハープ

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評価、感想もお待ちしてます!


第3話 初陣、そして邂逅

〜エール side 〜

 

 

「…後で凛には説教が必要かしら」

 

翌日、放課後の帰り道。私達は今さっき靴箱に入っていた手紙を思い出していた。

 

『今夜0時に学校の校庭集合。来なかったら殺す帰ります』

 

まったく、手伝ってくれる人にあんな手紙を出すバカがどこにいるのか。

 

「ま、まあまあお姉ちゃん。リンさんも、きっと悪気があった訳じゃないと思うし…」

 

「………ま、今言ってもしょうがないしね。それよりルビー?イリヤと転身した時、何が出来る?」

 

気分を切り替え、今夜の戦闘に備えてイリヤの攻撃オプションを確認する。

 

「う〜ん、あくまで私は礼装ですから、基本イリヤさんに魔力供給と物理的魔術的な防御を施すだけで、攻撃に関してはイリヤさんのイメージ次第なんですよねー」

 

「つまり、イリヤがイメージさえ出来れば攻撃できるって事?それじゃ、凛はどんなのやってた?」

 

「あ、それ私も聞きたい!」

 

イリヤも食いついてきた。自分の能力知るって大事だよね。

 

「そうですね〜。メインはやっぱり魔力砲でしょうか。英霊には対魔力があるので、魔術にしてしまうと効果が落ちてしまうんですよ〜」

 

………え?脳筋?

 

要するに、魔術にすると効かないから魔力を質量弾として打ち出すという事だろう。対魔力は知っていたけど、何というか、残念な攻撃方法だった。

 

「それってビームみたいな⁉︎スゴイ!なんかそれっぽい!」

 

「ビーム以外にもやりようはありますよ〜?イメージ出来れば散弾や一点集中の収束砲も出来るはずです」

 

別に脳筋って訳でもないですよー、と主張してくるルビー。

 

……顔に出てたか。

 

実際、ルビーが言ったことが出来れば、それなりには戦えるはず。

 

「オッケー、それだけあればとりあえず大丈夫かな。イリヤ、帰ったら今言ったやつを練習するよ」

 

「はーい」

 

さてと、半日足らずでどこまでできることやら。

 

 

〜エール side out〜

 

 

 

〜イリヤ side 〜

 

 

「では、まずは魔力砲からやってみましょう!シンプルかつ高威力!これを当てられれば英霊相手でもそこそこダメージを与えられるはずです!」

 

お姉ちゃんの提案で、近くの森で特訓する事になりました。

 

「それじゃあイリヤ、とりあえずそこの木を狙って撃ってみて」

 

「はーい」

 

えと、魔力砲、だったよね。うーん、こんな感じ、かな?

 

ルビーを正面に構えて、なんとなくビームっぽいものを打つイメージをしてみたら、

 

「お見事ですイリヤさん!まさかの一発成功ですよ!いや〜これにはルビーちゃんも、ちょっとビックリです」

 

……なんか、あっさり出来ちゃった。

 

「ど、どう?お姉ちゃん」

 

あまりにあっさり過ぎて逆に不安になって、ついお姉ちゃんに聞いてみた。

 

「うん、いいんじゃない?っていうかすごいよ。これなら散弾とかもいけるかな?」

 

あ、お姉ちゃんもちょっと嬉しそう。

 

「ルビー!散弾ってどんな感じ?」

 

「そうですね〜、霧吹きの水みたいな感じでしょうか?小さい弾を大量に撃つんです」

 

「分かった!やってみる!」

 

得意になった私は、そのままドンドン練習を続けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「そろそろ帰りましょう。もう遅いし」

 

そう言われて、ふと周りを見てみる。

 

「え?あ、ホントだ。結構暗くなってる。思ったより早かったね〜」

 

「なかなか集中してましたからね〜。すごいですよイリヤさん!魔法少女の才能ありです!いや〜やはり私の目に狂いはありませんでした!」

 

「その件については、まだ許した覚えはないからね?」

 

そう言って、昨日の殺気を放つお姉ちゃん。

や、やっぱり怖い。

 

「ま、それはそれとして、この分なら何とかなるかな。本番も頑張りましょ?」

 

すぐに殺気をしまって、頭を撫でてくれた。

 

あ、そう言えば、こうやって頭撫でてもらうのって、ちょっと久しぶりかも。ふふっ。よしっ、今夜頑張ろう!

 

 

〜イリヤ side out〜

 

 

 

〜エール side 〜

 

 

「さて、言い訳を聞きましょうか?凛」

 

「え、えと、その…、ごめんなさい」

 

時刻は午前0時少し前。私の目の前、校庭のど真ん中で、凛が正座していた。

理由?私が手紙の件を許していたとでも?

 

「お、お姉ちゃん。そろそろ許してあげたら?」

 

むぅ。私としてはもっと説教してもいいと思うんだけど、イリヤにそう言われるとやり辛い。今回はここまでにしておこう。

 

「……そうね、時間もないし。それで、カードはどこにあるの?」

 

気持ちを切り替えて、凛にカードの場所を尋ねる。

 

「か、カードがあるのは校庭の中心よ。ただし、"ここ"ではないけどね。…ルビー!」

 

「はいはーい!わっかりました〜!境界回廊、一部反転します!」

 

ルビーの声と共に、足下に魔法陣が浮かび上がる。

 

「カードがあるのは、無数に広がる世界の境界……。鏡面界、そう呼ばれているところよ」

 

凛の説明を聞きながら、自分達が別の場所へと転移しているのを実感する。

着いた場所は見た目こそ元の世界と変わりがないけど、その雰囲気は完全に別物。

 

……この気配、あの時の泥と少し似てる…?

 

何故かあの日の事を思い出していると、校庭の中心から黒く染まった魔力が溢れ、徐々に形を作っていく。

 

「来るわ!報告通り実体化したわね…先手必勝!爆炎弾3連!」

 

魔力が英霊の身体を形作ると同時に、凛が宝石3つで炎を作って攻撃を仕掛ける。

 

「す、すごっ!もうやっちゃったんじゃ…」

 

イリヤが希望的な言葉を口にするけど、それはほぼない。

 

煙が晴れると、そこには無傷の敵の姿があった。

 

………あれ、第五次のライダーよね。

 

「ちっ。やっぱり魔術になると効かない、か。高い宝石だったのに。それじゃイリヤ!後は任せた!アンタも隠れなさいエール!」

 

言うや否や、脱兎の如く逃げ出し、物陰に隠れる凛。待てコラ。

 

「え⁉︎投げっぱなし⁉︎」

 

ああもう!効かないって知っててなんで余計な事するかな!

 

初手の不意打ちはこっちでも考えていただけに、効果の無い宝石魔術でチャンスを逃したのは痛い。

そんな事を考えている内に、ライダーが鎖付きの短剣を構えるのが見えた。

 

「っ!イリヤ!避けて!攻撃が来る!」

 

凛の逃亡に呆気に取られていたイリヤも、私の声で我に返って間一髪躱す。

 

「か、掠った!今掠ったよ〜!」

 

「落ち着いて下さい、イリヤさん!あの程度なら平気です!」

 

どうやら躱し切れていなかったようで、イリヤが軽く怯えている。

 

「しっかりしてイリヤ!ソイツは精々中距離までしか攻撃出来ない!距離を取って、安全を確保して!」

 

「う、うん!そうだね、取りましょう距離!…………キョリ〜〜‼︎」

 

パニックには的確な指示が一番有効。

イリヤも取り乱しながらも距離を取る。

 

おお、速い速い。

 

そんなイリヤに一瞬感心しつつ、目線はライダーから離さない。

 

……どう見ても理性とかないよねあれ。

 

言葉はなく、外見も禍々しいものへと変化している。その動きもまるで理性的とは言えず、むしろ獣のような本能的なものに見える。

 

…正直、本来のライダーなら下手に距離を取ったところですぐに詰められるだけだけど、この分ならいける……!

 

「イリヤ!アイツは速いけど動きがワンパターンよ!先読みして、魔力砲で攻撃!」

 

「う、うん!」

 

イリヤに指示を出すと、初めは避けられてしまって当たらなかったけど、タイミングを掴んだのか徐々に射線が近づいていき、

 

「ゴハッ!」

 

「やりぃっ!いい調子よイリヤ!もう一発やっちゃって!」

 

ついに一撃入った。

私はそのまま押し切ろうと思ったけど、相手は腐っても英霊。そう簡単にはいかない。

 

「な、なんか当たらなくなっちゃったんだけど〜⁉︎」

 

基本的な動きはさっきと大差ないけど、イリヤが構えると同時に動き始めるから当たらなくなったみたい。

 

……フッ、甘い。

 

ライダーの動きは今のイリヤの攻撃には有効だけど、それならこっちも動きを変えればいいだけの話。

私はイリヤに次の指示を出す。

 

「イリヤ、練習通りにいくよ!攻撃を散弾に変更!面制圧でアイツの動きを封じて、間髪入れずに最大魔力で砲撃よ!」

 

「う、うん!えと、ルビー、面制圧って?」

 

あ、そっからか。まあ、普通聞かないよね、そんな単語。

 

「簡単に言えば、散弾が平面に見えるほど隙間なく広範囲に打つ事です!躱されにくく、砲撃には及びませんが大ダメージを与えられます!」

 

「散弾を隙間なく……うん!やってみる!」

 

ルビーナイスフォロー。こういう時は気がきくというかなんというか。

 

解説している間にライダーもまた様子見し始めたし、今がチャンスかな。

 

「イリヤ!打って!」

 

「小さいのを沢山…散弾っ!」

 

「ッ!」

 

上手くいった。さっきよりも広範囲の攻撃に対応し切れなかったライダーは、密集した散弾を一部短剣で防いではいるものの、身動きが取れないでいる。

 

「今ですイリヤさん!思いっきり、かましてやりましょう!」

 

「うん!全力、当たって!」

 

よしっ!

 

イリヤの魔力砲がライダーに直撃し、周囲を爆煙が覆う。

 

これで、倒せていればいいけど……。

 

 

〜エール side out〜

 

 

 

〜凛 side 〜

 

 

な、なんなのあの子…

 

私は、目の前の光景を信じられない思いで見ていた。

 

エールは最初に軽くパニックになっていたイリヤを宥めて、正確、かつ冷静に指示を出している。

その上、相手の動きが変われば即座に対応して手を変えている。

 

それを実行できるイリヤもすごいけど、そのポテンシャルを最大限に引き出しているのがエールである事は間違いない。

 

「あの子、ホントに何者なのかしら」

 

イリヤが作った爆煙を見ながら、思わず疑問が口をついて出る。

 

私を倒した時の手際といい、今回のイリヤの指揮といい、小学生のレベルを遥かに超えている。

 

一体どういう事なのかし……ヤバっ!

 

「宝具が来るわ!二人とも、逃げなさい!」

 

気が付けば、晴れた煙の先で、黒化英霊が今までとは明らかに違う体勢を取っていた。

 

くっ、宝具が使われたらマズいわね……防げればいいんだけど……!

 

 

〜凛 side out〜

 

 

 

〜エール side 〜

 

 

思ったよりもしぶとい…!

 

煙の向こうから、ボロボロになりながらも未だ倒れないライダーの姿が朧げながらも見えた。

 

「宝具が来るわ!二人共逃げなさい!」

 

⁉︎マズい、まだそんな余力が…!

 

「イリヤ!攻撃は後!とにかく相手の真正面に立たないように逃げなさい!」

 

初撃はライダーの目の前の魔法陣の一直線上から来るはずだから、とりあえずそれで一旦は凌げるはず…。

 

イリヤに指示を出しつつ、私も全速力で離脱にかかる。

 

騎英の(ベルレ)…」

 

血によって描かれた魔方陣が徐々に形を為していき、真名が開放され始める。

 

間に合うか…………⁉︎こ、この気配は⁉︎

 

突然感じた気配の方を振り返ると、イリヤと色違いのよく似たコスチュームに身を包んだ少女が駆け抜けていった……。

 

その少女を見た瞬間、

 

あり得ない、と私の記録は否定する。

 

事実だ、と私の身体は告げる。

 

どうして、と私の心は戸惑う。

 

「…どういう……こと…?」

 

「クラスカード、『ランサー』限定展開(インクルード)

 

私の疑問をよそに、少女が淡々と言葉を呟くと、ステッキは血のように紅い槍へと変化し、宝具を展開寸前のライダーの目の前まで接近すると、

 

刺し穿つ(ゲイ)──死棘の槍(ボルク)

 

その槍でもってライダーを一撃で倒してみせた。

 

「クラスカード『ライダー』回収完了」

 

ライダーを倒すと、核になっていたカードが具現化し、同時に槍もステッキとカードに戻っていた。

 

事が終わってなお、私は動揺のあまりに動けなかった。

 

…どうしてあの子から、イリヤとほぼ同じ、聖杯の気配を感じるの……?

 

 

〜エール side out〜




はい。という訳で美遊は初登場にしてネタバレです。正直はっきりバラすのはどうかと思いましたが、今後の展開でどの道早くにバラす事になるので、まあいいかと思って書きました。
……ふと思い浮かんだので入れてみましたが、ネタを自然に入れるってかなり難しいですね。

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