「まさか、もうこちらの世界に来ているとは」
少女はペンを持っていた方の手を抑えながら上空にいる少女を睨む。抑えている手からは血が滴っていた。
「面白そうなパーティーに遅刻なんてしないわ。まぁ着いたのはさっきだけどね」
上空にいた少女が僕の前に降りてくる。
「まったく、文の笑顔に見惚れて負けそうになるなんてね」
僕の前に着地した少女は優雅に一礼する。
「まぁでも安心なさい。紅魔館主である私、レミリア・スカーレットが来たのだもの。あなたの勝利を約束してあげる」
顔を上げた少女は笑みを浮かべつつ後ろを向いた。
「どうするの文? このまま続けても良いけど?」
「あやややや、ちょっと厳しいですねぇ」
黒い翼の少女が手を上げると、ゴオォォと強い風が吹き始めた。
「ここは退かせていただきます!」
少女が上げた手を勢いよく振り下ろした。
「うおっ!?」
強かった風がさらに強くなり、黒い翼の少女を中心に竜巻を作り始めた。
さらに風は強く、竜巻は大きく高くなっていき、もう目を開けていられないくらい風が強くなった時、ピタリと風が止んだ。
恐る恐る目を開くと、先ほどまで少女が立っていた場所には黒い羽が落ちているだけで少女の姿は消えていた。
「上手く逃げるのね」
紅い羽の少女が呟きながらこちらに近寄ってくる。
「改めまして、私はレミリア。紅魔館の主であなたのサーヴァントよ」
「いや、あの、ちょっと待ってくれよ」
「あら?」
差し出された手を拒み、少女から離れる。
「サーヴァントってなんだ。それにさっきの……」
ちらりと切り裂かれた地面を見る。
「なにと問われても、私たちもよくわかってないわ」
「は?」
レミリアと名乗った少女が羽を撫でながら答えた。
「私たちは簡単な命令を与えられてこっちの世界に来ただけ。その単語が何を意味するものなのかは知らないわ」
「なにするかわからないのに戦ってたのか?」
「いえ、それは違うわ。言ったでしょ? 簡単な命令を与えられてるって」
少女が羽を撫でるのをやめて俺の目を見る。
「私たちはお互いを倒すために呼ばれたの」
俺の部屋で紅い羽の少女、レミリアが紅茶を飲みながら状況説明をしてくれた。
自分たちは何者かによって違う世界(厳密に言えば同じ世界らしいが)から呼び出され戦うことを命令された存在であるということ。最後の一人になるまで戦い、最後に残った一人は願いを叶えることが出来るということ。自分の力だけではこの世界に留まれないらしく、マスター、すなわち俺から力をもらわなければいけないということ。
「ってわけでしばらくお世話になるわね」
「よろしくって言われてもな」
「あなたの意思は関係ないわ。もうあなたはこの戦いに巻き込まれてしまったの。逃げるのは勝手だけど死んでもしらないわよ」
「死んでも知らないってどういう……」
「悪くなかったわ。またお願いできるかしら」
レミリアはそういうとカップをテーブルの上に置いた。
「え、あ、あぁ」
「そんなに心配しなくてもいいわ。私に力をくれている限りは守ってあげるもの」
「脅してるのか?」
「えぇ、そうよ」
レミリアがこちらに手を差し出し微笑む。
「私もあなたも、この戦いから逃げられないんだし一緒に踊りましょ?」
「……、正直レミリアが言ってることを理解できてないし、信用も出来てない」
「……、そう」
レミリアが差し出した手を引っ込めようとする。
「でも、レミリアがいなかったら俺は殺されていたかもしれない」
引っ込みかけた手を握る。
「だから今は、レミリアに協力する」
「そう」
微笑みながら、レミリアも手を握り返してくれた。
「その信頼を裏切らないようにするわ。マスター」
「その、マスターって呼び方はやめてくれないか? しっくりこなくて」
「そうかしら? いいと思うのだけどね。マスター」
「やめてくれ。名前でいいよ名前で」
俺の反応が面白かったのか、くすくすと笑うレミリア。
「えぇ、じゃあそうさせてもらうわ。
「あぁよろしく頼む」
もう一度しっかりとレミリアの手を握った。
この日、最後のマスターが契約を終えた。
七人のマスターと七騎のサーヴァントが揃い、聖杯戦争の幕が開く。
いつもより少し短くなってしまって申し訳ないです。
次からは本格的に戦闘描写とかを書いていきたいので、もしかすると月一での更新が出来なくなるかもしれません。
ご容赦ください。