ガリアへと進むウルキオラとシャルロットだがそれ以前に場所も分からなければ、まだこの世界のこともよく知らない。近くにお城もあったことからまずはそこを目指すことにした。
ちなみに徒歩である。
「あの、ウルキオラ様」
「なんだ」
「先ほどは失礼いたしました」
ウルキオラは悩んでいた。正直初めは騙されてることにも気づかず、まさかそうだとは思っても見なかった。しかし、シャルロットはウルキオラにたいしても何に対しても全力で取り組んでおり、冷たくしすぎてるような気がしてならないのだ。ウルキオラという人物が司る死の形は虚無だが俺は黒金当夜としての人格もあり、心というものもある程度は理解しているつもりだ。
それゆえにシャルロットにたいしては罪悪感しか抱いていない。
「別に気にしてない」
シャルロットはそのウルキオラの心情には気づいてないが、なんとか信頼を勝ち取ろうといろいろ模索しているのだ。
この二人の微妙な距離感はいつまで続くのだろうか。
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トリステイン王国
トリステインは、ハルケギニアの共和制国家である。南にガリア、東にゲルマニア、西にアルビオンに囲まれている。首都はトリスタニアと呼ばれるがあまり大きい国とはいえない。
国土の大部分は平地で、ラグドニアン湖などに潤され南部には肥沃な農地が広がる。 首都トリスタニアは世界有数のドッグレース広場が有る事で有名。 ハルゲギニア唯一の非キリスト教国家であり、独自の宗教、クギュー教を信仰している。
「なるほど、この国のことは理解した」
トリスタニアにて書店を発見し、歴史本などを読み漁っていた。字が読めたり言葉が話せるのは女神の恩恵のおかげである。全ての世界を管轄する転生の間、そこを管轄する女神から恩恵を与えられたものは全ての世界言語を習得することができる。でなければ魂との会話ができず転生などできない。
「今日はどこか泊まる宿をさがすか」
「かしこまりました」
ウルキオラ達は宿を探しに書店をでた。破面であるため泊まる必要もなければ食事も必要ではないが人間だった頃の名残でやはり衣食住は求めてしまう。しかし、この二人組の服装はもちろん破面専用の白い服になるので回りからは目立つし、人間とは思えないほど白い肌をしてるのでかなり騒がれている。いろんな意味で。
「シャルロット」
「何でしょうか」
「俺達は霊体だよな」
「作用でございます」
「慣れたがなぜこいつらは俺たちがみえる」
「そうですね。女神の恩恵のせいとしか」
「便利な言葉だな」
それ以上は会話は続かなかった。ウルキオラは心の中で霊体である意味あるのかと自問自答していたがその他にも会話が中断する出来事が発生していた。
「お前たちとまれ」
ウルキオラ達はいつの間にか兵たちに囲まれていた。マンティコアと呼ばれる生物に乗ってることからこの国の軍のようだ
「なんだ貴様ら」
ウルキオラはほんの少し霊圧を解放する。それにより回りの兵は顔を歪めるものもいれば耐性がまったくなく、膝をつくものまで現れる。
「くっ、我らはマンティコア隊。トリステイン王国の王女であられるアンリエッタ王女の命により貴殿らを城まで連行する。これを拒否することは許さぬ」
マンティコア隊の隊員である男が顔を歪めながらウルキオラ達に話しかける。
「アンリエッタ・・・あのときの小娘か」
ウルキオラは考える。そういえばあのあと勝手にどっか行ってそのまま挨拶もしなかったなと。それにガリアについて何かしら情報を持っているに違いないと。
ウルキオラは霊圧を抑えた。それによりまわりは謎の重圧から解放される。
「いいだろう。城にいってやる。さっさと案内しろ」
「ウルキオラ様!?」
「ガリアについての情報を知るためだ」
「そうでしたか」
シャルロットはウルキオラがおとなしくついていくことにしたことについて驚いたが理由を聞いてそれもそうかと納得した。
「ついてこい」
マンティコア隊先導のもとウルキオラ達は後ろをついていく。
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王宮内は隅々まで清掃が行き届いており、虚夜宮みたいに埃っぽくはなかった。それがウルキオラの感想だ。
あれから王宮内に通され、今目の前にはこの国の女王であるアンリエッタがいる。
「ようこそお越しくださいました。救世主様」
「なんのことだ」
ウルキオラは連行まがいなことをされてきてみればいきなり救世主といわれる女王の思考回路に驚愕した。
「あなた方があの艦隊を倒してくださったおかげでこの国は救われました。そういう意味での救世主です」
そういえばそうだなと思い出す
「それなのに気付けば姿がお見えにならなかったので探していたのです。ここまでの無礼はどうかお許しください」
アンリエッタは頭をさげる。普通ならそれを止めるはずなのだがあいにくウルキオラとシャルロットは普通ではないためそれをただただ見つめる。
「それで、ここへ呼び出しておいて用件はそれだけですか?」
シャルロットが話を進める。シャルロットはウルキオラの後ろで立っている。アンリエッタは二人の服装を改めて見て、不思議な服という感想も抱いていた。
「いえ、あなた方はこの国の救世主。もしよろしければ私がこれから作る新しい軍隊の隊長を勤めてほしいと考えております」
「新しい軍隊だと?」
アンリエッタはウルキオラの目を見ていう
「はい。先の戦争で我が国のグリフォン隊から裏切り者が出たうえにヒポグリフ隊は壊滅。マンティコア隊の1隊体制となってしまいました。しかし、貴族には反乱分子もいるので信用できません。そこで平民からなる新しく作る銃士隊の隊長を勤めてほしいのですが」
「ことわる」
即答であった。
「理由をお聞かせいただいても?」
「ならきくがこの国は人間でないものも軍に入れるのか?」
ウルキオラはファスナーをおろしていく。そして露になったのはウルキオラの身体。だがアンリエッタが目を見開いたのは身体ではない
「穴が」
「どうなんだ?」
「たしかに人間でないものをおいたらこの国は分裂しそうですね。残念です」
アンリエッタは本当に残念そうな顔をしていた。ウルキオラは理解できないでいた。なぜこうも会ったばかりのものを信用できるのかと。ちらりとシャルロットをみるがシャルロットはその視線には気づいていない
「では爵位か金貨でも」
「いらん。俺は別に何かがほしくてあの場にいたわけではない」
「そうなのですね」
「ならばこちらの質問に答えてもらおう」
アンリエッタはそれだけでいいのかと複雑そうな顔をしていたがなんなりと聞くそうだ。
「ガリアという国について知っていることをはなせ」
「ガリア?ですか」
アンリエッタはなぜガリアを知りたがるのか不思議であった。
「今回の戦争の原因はガリアにある」
その一言だけで彼女の顔色が変わるのには十分であった。
「詳しくは知らん。だから知っていることをはなせ」
「知ってどうなさるおつもりで?」
アンリエッタはまさか攻め混むつもりじゃないかと疑ったが
「安心しろ。別に国と戦うわけではない」
アンリエッタはほっとした。まぁ国相手でもウルキオラ達なら勝てるが
「わかりました。お教えしましょう」
始祖ブリミルの子供の1人が興した国で王都の名はリュティスといいます。城はヴェルサルテイル宮殿。王家の紋章は組み合わされた2本の杖となっております。
人口約1500万人というハルケギニア一の大国です。そのため貴族の数が多く軍事力は非常に高く、空軍艦隊の規模は周辺諸国を圧倒します。
もちろん私どもも正面から戦えば敗戦するでしょう。
また様々な魔法人形(ガーゴイル)が使われており、文化形式はトリステインとほぼ同じです。
そしてそのガリアをまとめる国王が無能王ジョセフと呼ばれています
「無能王?どういういみだ」
「なんでも魔法が使えないという噂があります。あくまで噂ですがそれゆえ無能王と呼ばれているのです」
「ほう?それはおもしろい。国によって平民を国王にする国があるとはな」
「いえ、ジョセフは平民ではありません。王族としての血筋をついでいます」
「なるほど、ならば貴族では魔法を使えないものもいるのか?」
ウルキオラのその考えは当たり前だが、ガリアが戦争の裏で糸を引いてるとして果たして魔法を使えない王が国を動かすことができるのか。ここトリステインの書物で読んだ限りでは魔法を極めた貴族ほどその発言は強い。
「私のお友だちにも1人だけ使えない子がいます」
ウルキオラは目を細める
「そいつも王族か?」
「血縁関係にはあります」
「俺が読んだ書物には虚無というものが書かれていた。なにやら伝説の魔法らしいがそいつらはそれが使えるんじゃないのか?」
アンリエッタの心臓がどくんと跳ねた。まだ会ったこともしゃべったこともない相手であり、ほんの少しの情報を与えただけでここまで確信にせまるウルキオラに驚愕する。この男はどこまでが見えているのだろうかと思うほど清んだ目をしていた。
「どうやらそうらしいな。俺の予測だが虚無という魔法は他とは違う系統だ。それゆえに特別な血筋でしか使えない。貴族には魔法が使え、平民にはつかえない。その法則を考えれば特別な血筋には使えて貴族にはつかえない。この考えが一番しっくりくる。俺もその特別な部類に入るからな」
「もしやあなた様も」
「ウルキオラだ」
「ウルキオラ様も虚無なのですか?」
ウルキオラはぽっけに突っ込んでた手を抜き、左手を左目に持ってくる。
「あぁ。だがそれは少し違う。だからこれを見ながら説明してやる」
アンリエッタは何をするのかウルキオラを見ていたがいきなり左目をえぐりだしたことに驚いていた。
「共眼界」
ウルキオラ(黒金当夜)は特典でウルキオラになったがウルキオラとしての記憶ももちろんあるためウェコムンドでの映像を見せることができる。ちなみに黒崎一護の完全虚化に敗れるまでの記憶はある。
「これは」
シャルロットにもアンリエッタにもその映像はみえた。まず写し出されたのはあたり一面砂漠とかし、満月が照らす夜の世界だ。
「ここは俺達虚とよばれる種族が暮らす世界、虚圏だ」
「虚とはいったい?」
そうすると白い化け物が姿を現した。
「こいつが虚だ。人は死ぬと魂魄とよばれる魂だけの存在になる。こいつはいわゆる悪霊だ」
「しかし姿がまったく違いますが」
「俺達人形はこいつの上位種にあたる。虚の主食は生きた人間の魂。それを食いつづけて虚は力をつける。」
そして映像が変わる。こんどはでかく、顔だけ白く全身が黒い化け物が見えた。
「そして虚はある程度人を食らうと次は同族を食い始める。そうして幾百の虚が混ざりあうことで大虚が生まれる。」
そしてまた映像が切り替わる。
「大虚の中にはさらに三つの階級が有り、数が多く全て同じ姿をしたギリアン、やや小型で数も少ないが知能は高くギリアンの数倍の戦闘力を誇るアジューカス、虚としては極めて小型で人間と同程度だがかなりの戦闘能力を持つヴァストローデに分けられる。」
「ではこのヴァストローデと呼ばれる虚が一番強いということですか?」
「あぁ。」
そしてさらに映像が切り替わる。
今度は破面達の映像が流れ始めた。
「俺達虚には限界と呼ばれる壁がある。ギリアンから上へいけないもの、アジューカスまでしか進化できないもの。その壁を飛び越え、虚としての仮面を剥ぎ、死神の力を取り入れることで虚は破面となる」
映像には虚夜宮が流れており次第に破面達を写し出していた。
「破面は主に人型であり、その本体を斬魄刀に封印している。そして破面にはそれぞれ番号が与えられており、11から下の番号は生まれた順となっている」
グリムジョーの従属官であるシャウロンたちが写っていた。
「そしてこの数字持ち破面の中で最も殺戮能力に優れた十人の破面をエスパーダとよぶ。」
「ではウルキオラ様やそちらのお方もエスパーダなのですか?」
「私は違うわ。数字持ちよ。私は破面No.44 シャルロットよ。生まれた順でいうと44番目ね(ほんとうは違うけども)」
アンリエッタは信じられないという目をしている。ウルキオラの戦闘は眼にしていたが、シャルロットのを見ていたわけではない。しかし、艦隊を沈めた力をもつことからエスパーダだと誤認したのだ。
そして映像が十刃に切り替わる
「十刃には殺戮能力の高い順に1から10の数字が与えられる。さらに十刃にはそれぞれ司る死の形がある。下から憤怒、強欲、狂気、陶酔、破壊、絶望、虚無、犠牲、老い、孤独だ。俺が当たるのは虚無。そういう意味だ」
「ということはウルキオラ様は4番目にお強いということですか?」
「第4十刃 ウルキオラ・シファーそれが俺だ」
映像はここで途切れた。アンリエッタは今の映像でウルキオラがこの世界の出身ではないことをしり、人間ではないことも知った。
「このあとはいかがなさるおつもりで?」
「寝床だけ用意しろ。今日は宿をとるために街にいたんだ。それくらいいいだろう」
「わかりましたわ。すぐに部屋を用意させます。今日のところはそちらでおくつろぎくださいまし」
こうしてウルキオラ達のトリステインでの1日を終えたのであった。
次回はガリアでの話になります。ゼロ魔編は後2か3話くらいの予定です。次の作品は一応決めており、リクエストのものではありません。まだ勉強不足のため。