第24話どうぞ!
くれめうは、ルナの案内に任せて隣を歩いていた。しばらく歩いていると明かりのついている店の前に着く。
「ここよ。ここのお店は本当においしいから。きっとくれめう君の口にも合うと思うわ。」
「そうなんですか?すごく楽しみです。」
二人は、店の中に入っていった。
「おお。なんかすごい。」
くれめうが普段絶対に入らないような店の雰囲気に思わず声を上げる。そんな反応にルナはにっこり微笑み
「予想通りの反応でおもしろいわね。くれめう君。」
「いや、だってこんな店に入るの初めてなんですもん。」
「まあ…そうだと思ったわ。このお店昼間も一応空いているけど、知っている人しか来ないような場所だから。」
「ルナさんは、普段からこのお店に?」
「まあ、そうね。大体一人で食べたり、たまに仕事仲間と来たりもするわね。」
「へ~そうなんですか。」
ふたりではなしていると、、店の店員がこっちにやってきた。店員はテーブルに水の入ったグラスを置き、
「いらっしゃいませ。本日のおまかせディナーのご説明をさせていただきます。本日は、一撃熊のほほ肉をラグーにし、そこにデミグラスソースを添えています。他のメニューもございますので、お決まりになりましたらまたお呼びください。」
「はい。ありがとうございます。」
ルナがお礼を言うと、店員は軽くお辞儀をして、店の奥の方へと歩いて行った。
「じゃあ、何頼むか決めよっか?」
「はい。…………ていうか」
「どうしたの?」
「一撃熊のほほ肉って食べられるんですね。ギルドや俺が行くようなレストランにはそういうメニューを見たことがないし。」
「ああ。そうね、一撃熊自体なかなか市場には出回らないから。それに、一撃熊の各個体にほほ肉はあるんだけどね、大体が肉の部分が少なくて、料理に使われるようなお肉はとても貴重なの。だから一撃熊のほほ肉が食べられることを知っているのは、腕利きの料理人や貴族の人が多くて、普通の生活をしている人や冒険者が知らないのが当たり前なの。」
「あれ?じゃあ今このお店は………」
「くれめう君の思っている通りだと思うわ。このお店は、ちょっと特殊なのよ。」
「特殊って?」
「まあ…それは、後にでも話すわ。くれめう君、もうメニューは決まった?」
「は、はい。じゃあせっかくなのでこのおまかせディナーで。」
「あら。私と一緒ね。飲み物は?」
「じゃあオレンジジュースで。」
「分かったわ。………すいませーん。」
ルナが店員を呼ぶとすぐにこちらにやってきた。
「お決まりになられましたか?」
「はい。えっと、このおまかせディナーを2つとこっちの子にオレンジジュース、私には、白ワインを。」
「はい。かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
そう言って店員は店の奥に再び戻っていった。するとすぐに戻ってきて、
「こちら前菜になります。」
店員は前菜が乗った皿2枚をそれぞれくれめうとルナの前に置き、二人の間にフォークやナイフなど入った箱を置き、その後に自分たちが頼んだ飲み物を置き、戻っていった。
「じゃあ、乾杯しよっか?」
「分かりました。」
お互い自分のグラスを持ち、
「じゃあ、この4年ぶりの再会を祝してカンパーイ!」
「か、カンパーイ。」
少し食べながら、ルナは思い出したことをくれめうに尋ねる。
「そういえばくれめう君。お昼に私のところに来ていたわね。あの時は何しに来たの。」
「え?……ああ。アクセルの街って駆け出し冒険者の街ってことになってるじゃないですか?なのに普通は王都や魔王城側の方の街で見られる装備の人が割とたくさんいるのって不思議じゃないですか?そのことと単純に人が増えた原因とか教えてもらえたらと。一応自分の中では、仮設は立ってますが。」
「へ~そうなの。じゃあ言ってみて。」
「え!?」
「どうしたの?もしかして怖気づいちゃった?」
「いえ。まったく。その安い挑発に受けて立ちましょう。では、私が考えた仮説を説明します。」
そう言って、くれめうは、現在の状況への原因の仮説を話した。王都での事件からその情報がギルドに出回ったこと。そしてここが魔王城から一番遠い街ということも含めての説明も。
「………一応これが俺が考えた説です。」
「…………すごいわね。まるで見てきたかのようだわ。」
(まあ、ある意味見てきたからな。でもそれよりも俺が知りたい情報はこっちなんだ。)
「あのルナさん。もう1つ聞きたいことが。」
「あら、な~に?お姉さんが答えられることなら答えてあげるわ。」
「あの。少し酔ってます?」
「全然大丈夫。ほら聞きたいことあるんでしょ。」
「じゃあ………あのここの窓からも見えるんですが、あの塔の遺跡っていったい何なんですか?」
くれめうが指さしたのは、このアクセルの街のどの建物よりも大きい巨大な塔だった。ルナも塔の方を見て、ああとつぶやき、説明してくれた。
「あの遺跡は、ベルゼルグ王国が魔王軍によって落とされたその日付が変わるころに突然各町、地域に出現したダンジョンです。そしてこのダンジョンが出現したその日の昼、文章が書かれた無数の紙が空から降ってきたんですよ。しかし、我々ギルドの人間はその文章を読むことはできませんでした。しかし、ある方がこの文字の読み方を知っていて、その人に翻訳してもらいました。するととてもすごい内容だったんですよ!」
「え!?読めるやつがいるのか!?いったい誰が?」
「サトウ・カズマさんですよ。くれめう君が昼間来た後にダクネスさんがやってきて、話したんですよね?」
「あ、ああ。そうかカズマが。その翻訳に嘘はないのか。」
「はい。確認のために裁判などで用いられる嘘を見破る魔道具の中で語ってもらいましたから。間違いはないです。カズマさんの国の文字だったらしいですよ。」
カズマが翻訳したと言っても、他の奴には知られてはならない転生者システムのこともあったので、それを省いた内容だ。
「そうなのか。あの、それでその内容は?」
「ああ。好奇心の塊のくれめう君ならそう言うと思って、ちゃんと持ってきましたよ。」
そう言って、ルナは自分のカバンから紙を取り出し、くれめうに差し出した。それを受け取り、くれめうは、内容を読む。そして読み終えると、
「すっげえな。神様は、とりあえず俺たちの味方ってことか。」
「そういうことになりますね。ただ、そのことを知った冒険者がダンジョンに結構挑戦したんですが、誰も生きて帰ったものは1人としていません。なので、ギルドでは、今そのダンジョンの挑戦を禁止としています。」
「へ~そうなのか。確かに財宝と名誉そして他を圧倒する力が約束されているダンジョンならだれもが夢を抱いて挑戦するのは分かるな。」
「あっ!駄目だからね!!」
「えっ……いきなり何…」
「くれめう君が何かに興味津々な時ってそういう顔するのよ。だからくぎを刺しておこうと思って。」
くれめうは、舌打ちしそうな顔をして、
「確かにそう思ったけど、そんなすぐにダメなんて言わないでくださいよ。」
「ダメだからね!絶対に!!」
「はい。分かりました。」
「まったく…大人っぽくなって、カッコよくなったのにそこの辺は全く変わってないわね。」
あきれるように言うルナにくれめうはばつ悪そうな顔をして
「そりゃあ人は、そんなホイホイと変わるもんじゃないですって。」
「そうだけどね。まあ、そこがあなたのいいところでもあるからね。」
「それにしても……この一撃熊のほほ肉ってこんなにおいしいものなんですね。初めて食べたんですけど、ものすごいおいしいです。」
「そうね。なかなかメニューにも載らないものだし。今日はついてたわねくれめう君。」
「そうなんですか。良かったです。そう言えばこのお店の特殊のことって何なんですか?」
「確かにまだ話してなかったわね。えっとね、このお店を経営している人はね元貴族の人なのよ。」
「え?」
「その人ね、若いころは普通に家での習い事などを覚えてその家を継ぐつもりだったのだけど、あるときにね、料理人の作った料理に感動して、この感動を貴族だけでなく、すべての人に知ってほしくて、貴族の位もすべて捨てて、料理人の道に歩んだそうよ。そしてようやく自分の店を持つことができて、好きになった人と結婚して、子供もいるらしわ。ちょうど年同じくらいだったかしら。1,2歳くれめう君の方が年上だったはず。その子は、冒険話が好きで、最近冒険者になったのよ。やっぱり元貴族の人の子供だからステータスも高くて、いきなり上級職だったわ。」
「へ~そうなんですか。今度紹介してくださいよ。」
「分かったわ。本人のきょかをもらったらね。じゃあそろそろご飯も食べ終わったし、会計を済ませましょうか。」
「あ。俺が払いますよ。一応冒険者何でそれなりに稼いでもいるし。」
「だーめ。今日はあなたのためにこの場を設けたんだから。年上のいうことは聞くものよ。」
「………分かりました。じゃあ、お言葉に甘えて。」
「うん。素直でよろしい。」
ルナはお金を払い、店の外に出る。
「今日はありがとうございました。」
「いいのよ。こっちがお礼をしないといけないし。」
「え?」
何のことかさっぱり分からないくれめうは思わず尋ねる
「さっきお店でダクネスさんに会ったって話したでしょう?その時にくれめう君がこっちに来た経緯も大体聞いたわ。だからギルドの代表として言わしていただきます。くれめう君、アイリス様の護衛ありがとうございます。」
「ちょ、やめてくださいよ。」
「それでこれは、私から。くれめう君もうあのことは乗り越えられたの?」
その質問に答えが詰まるがくれめうは苦虫をつぶしたような笑顔で
「…………いいや全然だよ。今でもあの時のことは思い出せるし、忘れもしない。昔のことをずるずる引きずって、ガキみたいに嫌いなままさ。でも………」
「でも………」
「アイリスやこのお店の店長の話を聞くと、まだまだ捨てたもんじゃないなとも少し思えたよ。」
「そう……。なら連れてきて正解だったわ。余計なお節介かもと思ったけど、そう思ってくれてよかった。じゃあねくれめう君。明日は、君のびっくりするようなことが起こっているかもしれないわよ?」
そう言って、ルナは自分の寝床に戻っていった。
「明日?」
くれめうのその小さなつぶやきが夜の闇へと吸い込まれていった。
次の日
「それでは、今日から2週間後にベルゼルグ第一王女ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス様の護衛を決める冒険者決定戦を開く!!アイリス様をお守りする勇気と信念、そして自分の名をこの世界にとどろかせたいと野望を持っている奴は、ぜひ申し込んでほしい!!そして見事優勝した奴には5千万エリスとアイリス様の護衛の権利が得られる!!!さあ!冒険者諸君!!我こそはという者は、この大会に申し込んでほしい!!」
ダクネスはギルドの人に協力してもらい、高台の上でそう宣言した。その横には、カズマやめぐみん、アクアそして、アイリスがいた。
くれめうもその宣言を見たり聞いたが、うまく理解できず
「…………何事?」
と静かに心の声を漏らした。
決定戦まであと2週間
第24話お読みいただきありがとうございます!!
ルナがくれめうに見せた紙の内容が知りたい方は「神々の会合」をお読みください。面白くしたいと思っているのに、なかなかできないこの難しさ。何かとアドバイスやコメントしてもらえたらと思っております。
次回は、このようになった経緯を書く予定です。おそらく短くなりますがよろしくお願いします。
それでは次回、第25話でお会いしましょう!