響け!全国へ!   作:rockyshocora

14 / 15
待望?の水着回です


第十二章 夏色楽園

太陽公園

青い空、白い雲、カンカンに降り注ぐ太陽の日差し、快晴の今日は絶好のプール日和。

「た~い~よ~う~こ~う~え~ん~!!!」

時刻は9時、俺たち4人は太陽公園で落ち合うと宗人が大きく手を広げ、空に向かって声を出す。

あっきはばら~みたいに言うな、お前はきりりん氏か!

「おーい、置いていくぞー!」

そう言って歩き出そうとすると、後ろから声が聞こえてきた。

「あれ、やっぱり拓海君たちじゃない」

振り返り、声の主を確認すると久美子先輩と高坂先輩だった。

俺たちから少し離れたところに久美子先輩と高坂先輩を除いた例の8人の女子グループがわいわい話ながら歩いている。

久美子先輩の言葉を聞いた宗人は一瞬ニヤリと口元を歪ませて、驚いたような素振りで久美子先輩たちの方を振り返った。もしかしてわざと目立つように声を出して向こうに気づかせたのだろうか?今の一瞬の笑みはそういう風に思わせた。

「え、もしかして先輩方もプール行くんですか!?」

宗人は白々しくも驚いたフリをして久美子先輩に話しかけた。

「うん、偶然だね~同じ日に来てただなんて」

2人が話している中、高坂先輩は俺の方をずっと見続けている。やだ、なんか怖い。

そう思っていると、スタスタとこちらにやってきた。

「もしかして、アタシたちと日程合わせた?」

「へ…?偶然ですけど……」

いきなりのズバリ的中に冷や汗通り越して滝汗流れてきたんだけど…。

「そう…?」

「そうっすよ、考えすぎです」

誤魔化せたかどうか微妙なところだがなんとか乗り切って入場口を通り中に入る。

話の流れで一緒に遊ぶまで持ってくることに成功した俺たちは一旦更衣室で別れ、後ほど合流することとなった。

 

お盆ということもあってか既に大勢の人で埋まっており近くに4人分の空きロッカーがなかったので2人ずつ分かれて着替えることになった。

「なぁ、昨日小野たちとご飯行った?」

一緒に着替えることにした宗人が昨日のことを聞いてきた。

「行ったで、ほんまにご飯食べるだけで解散したけど」

「ふうん、俺が断った時になんかまた今度相談するわ~みたいなニュアンスでLINE終わったからちょっと気になっててん」

「相談…?あ、小松さんのことかな?」

「なに?」

唐突に別の名前が出てきて理解できないのか宗人は首をかしげた。

「いや、小野が小松さんのこと好きみたいで、それで協力してくれへんか~って話にはなったな…」

「もっとはよ言わんかい!それでどしたん?」

「それで、聡君が小松さん誘って3人で花火大会行ったみたいやけどそれからはどうなったか知らんわ」

「え、まだ聞いてないん?」

「うん、昨日久美子先輩の家にご飯食べに行っててその後、おじさんとずっと将棋しとったから聞くのすっかり忘れとったわ」

俺は喋りながらスマホでLINEの画面を開いて小野に昨日どうなった?と短い文字を打って閉じる。

「おじさんも相変わらず将棋好きやな~、拓海も今モチベ高いんじゃないの?」

「う~ん、どうやろな…まぁ~でも俺も竜王になって女の子の弟子取りたいな~」

姉弟子とか。

「ロリ王…」

「はいはい…そろそろ行きまっせ」

ちなみに俺は決してロリ王ではない。

2人とも着替え終わってもう2人と合流してから更衣室をあとにした。

出たすぐのところで先ほどは気付かなかったが、とあるポスターが目に付いた。

「ミニバレーボール大会…?しかも今日じゃん」

概要には5人で1チームを組み、抽選で選ばれた総勢16チームでトーナメント戦を行い優勝の景品はなんと京都駅近くのイオンモール限定の商品券3万円分が贈呈されるらしい。全然ミニじゃないじゃん。

「やるしかなくね?」

「宗人なら言うと思ったよ…5人やって、男子だけじゃ足らんな」

「え~俺たち運動出来へんで…ましてやバレーなんて」

タカと求君は嫌そうに口を尖らしている。

「じゃああと3人か…」

あ、出るのは確定なのね。

「なーにしてんの?」

「このポスター見てください…よ」

答えながら振り向くと傘木先輩がこちらに近寄ってくる。

濃いピンク色のビキニはシンプルながら大人っぽく、細い手首に巻かれた金属製のブレスレットが日差しで反射されている。

その、完成されたルックスに思わず見蕩れてしまいドキドキしてくる。

危うく鼻血ブッー!して、本当にムッツリーニになるところだった。セーフ。

「宗人隊長―――!」

「貴裕隊員―――!」

隣で大声を上げながらお互いハイタッチしている。

「へ~バレーか~面白そうやん」

「一緒に出ます?あと3人ほしいんですよ、今、僕と宗人…櫻井の2人なんです」

「う~ん、いいけどバレーやったら夏紀の方が上手やで!体育の選択スポーツで一緒にバレーやってんねんけどなかなかやで」

「お、うちがなんやって?」

夏紀先輩、鎧塚先輩、吉川部長がやってきた。

流石S7と言われているだけあってそのオーラは圧倒的だった。

周りの人たちの視線をチラチラと浴びているのが分かる。

他の1年男子たちにS7たちと一緒にプールに行っていたなんて知られたあかつきには俺たちの命はないかもしれない…絶対に外には漏らさないようにしよう。

「宗人隊長―――!」

「貴裕隊員―――!」

おまえら毎回それやるつもりなのか?

「あ、夏紀!これ見てみ!バレーやってさ」

そう言ってポスターを指差す。

「へー…ちなみに面子は?」

夏紀先輩はポスターを読みながら問いかけてきた。

「うちと神木君と櫻井君」

「確かに良い人選やな、あと1枠はどうするん?」

夏紀先輩はおそらく俺と宗人の運動能力については分かっているはずだ。

「まだ考えてないです。それより一緒に出てくれるんですか?」

「うちでいいなら全然大丈夫やで」

「是非!経験者なら心強いです!」

「別に経験者って訳じゃないけど…よし任された!」

「おーい!はよ行くで~」

吉川部長がじれったそうにして声をかけてきた。

「はいはい、じゃあ最後の1人は拓海たちに任せるわ」

夏紀先輩たちと話している間に残りの6人とも合流出来たので全員でブルーシートを引ける場所を探す。

ちなみに求君が川島先輩の水着姿を見て目をキラキラさせていたのを俺は見逃していない。

「拓海、あと1人どうする?」

「ん~そうやな、個人的には高坂先輩か加藤先輩が候補かな?」

ブルーシートを引き、各々が荷物を置いて準備していると大きな浮き輪を持った夏紀先輩と吉川部長が睨み合っている。

「どっちが浮き輪を膨らませるのが早いか勝負な」

「いやいや、アンタとなんて勝負になりませんから」

「はあ?肺活量でうちに勝てると思ってんの?」

「トランペットには負けへんわ」

「うわっ、アンタ今、全世界のトランペット奏者に喧嘩売ったからな?高坂連れてきたろか?」

「そうやって、すぐ人を巻き込もうとする~勝負に自信がないんですか~?」

「んな訳ないでしょ!みぞれ!審判やって」

「……審判、分かった」

下がっていた鎧塚先輩の腕がおもむろに上げられ、まもなくその手は脱力したように振り下ろされた。

「よーい、どん」

「ちょ、もう始まんのか」

「まじか」

夏紀先輩と吉川部長のいつも通りの微笑ましい光景を横目に俺は並んで準備運動をしている高坂先輩と久美子先輩のところへ向かう。

2人は同じ水着を着ているのに何故こうも違いが出てしまうのか……。

「どうしたん?」

2人を交互にジロジロと見ていたことに気づかれたのか向こうから声をかけてきた。

「あ、いえ…高坂先輩、良かったら一緒にバレーボール大会出ませんか?」

「アタシ…?でも、今日は久美子と泳ぐって約束してたし…」

そう言って隣にいる久美子先輩の様子を伺う。

「せっかくだから麗奈やりなよ。私応援するから!その代わり優勝してよね?」

先ほど更衣室の前で傘木先輩たちと話していたのを聞いていたのだろう、スラスラと話は進んでいった。

「分かった、任せといて」

お互いグータッチをして笑っている。

「まだ出場できるかは分からないですけどね、それより優勝か~ハードル高いですね…」

「やるからにはてっぺん取りたいやろ?じゃああとは任せたで!行こ、久美子」

高坂先輩はイタズラっぽくウインクして久美子先輩の手を引いて流れるプールへと向かっていった。

 

「あの~すみません、大会の申し込みをしたいんですけど…」

メンバーが揃い、俺と宗人は大会の申請をするために受付所にやってきた。

「はい、では、こちらに代表者の名前とチーム名をご記入ください」

「はい…チーム名どうする?」

「貸して」

宗人に用紙とペンを渡すと何やらスラスラと書き始めて受付の人に渡した。

「たしかに。では、11時頃当選チームの名前をこの受付所で紙を貼り出しますので当選されたチームの代表者はこちらまでいらして下さい」

「わかりました」

「なぁ、チーム名なんて書いたん?」

「それは当選してからのお楽しみということで」

 

受付で申請を済ませると泳げない俺は1人流れるプールに身を任せていたが2周ほどしたところで飽きてしまい、みんなが荷物を置いている場所に戻る。

「あ、神木君」

ブルーシートに傘木先輩がパーカーを羽織って座っていた。

俺は自分の鞄からバスタオルとパーカーを取り出す。

「休憩?」

「そうです、荷物番代わりましょうか?」

「ええよええよ、うちも休憩中やし」

ここから近くにある50メートルのプールでは鎧塚先輩が審判で宗人、タカ、剣崎さん、加藤先輩、吉川部長、夏紀先輩が二手に分かれて競争しているのが見える。

お互い無言のまま彼らを眺めている。気まずい。

「神木君はなんで北宇治入ったん?」

何を話そうか迷っているとありがたいことに向こうから話題を振ってくれた。

「僕は…去年の関西大会で北宇治の演奏を生で聴いて感動したんです。それで、自分も北宇治入って久美子先輩や秀一君と一緒に全国行けたらいいな~なんて思って」

「へ~ちゃんとした目的があって来たんやな、じゃあ尚更頑張って全国行かないとね」

「僕は今の代で全国行けると思っていますよ」

「それ、優子も言ってたなぁ~今年の1年は頼もしいね」

笑顔が眩しすぎます先輩。

「傘木先輩はもう進路決まってるんですか?」

「進路かぁ…」

傘木先輩は大きくため息をついて、ポニーテールの毛先を手で払う。少し刺激を与えるだけで簡単に左右に揺れた。

もしかしてこの話題って地雷だったか?

「多分……優子や夏紀と同じ私立の大学やと思う。でも、よく分かんないんだよね。今まで周りの流れに身を任せてたって感じやったし…北宇治入ったのだって家から近くて、友達が行くって言うから一緒に入ったようなものだしね」

「よく分からない?」

「最初はみぞれと一緒に音大に入るのもいいかもな~なんて思ってたの。でも、3年生になってだんだん現実が見えてきたっていうか…。ちゃんと音大に合格出来るのか~とか、その後もしっかり他の人に付いていけるのか~とか、ほんまに音楽を仕事にしてやっていけるのか~とか、みぞれや高坂さん見てると嫌でもそう思っちゃうの。あの2人みたいに演奏の才能があるわけでも努力の才能があるわけでもないからね」

「そう…ですか…」

他人の進路にとやかく言うことなんてとても出来ないし、ましてやプロを目指すなら好きの気持ちだけでは絶対にやっていけないと思う。

どちらが正解で不正解かなんて分からないし結局はその人がどのようにして前へ進むのかで未来は変わっていくのだから…。

「あ、ごめんね。なんか暗くしちゃったね」

傘木先輩は体育座りして膝小僧に顎を乗せ、えへへと笑う。

「いえ、そんなことないですよ、そもそも聞いたのは僕なんですから。またいつでも話聞かせてください」

「優しいね…あ、なんか買ってこようか?うち、かき氷食べたくなっちゃった」

先ほどの雰囲気とは打って変わっていつもどおりの傘木先輩に戻った。

「じゃあ僕が行ってきますよ、先輩にパシリはさせれないです」

「そう?悪いなぁ~、じゃあ、これお金」

「はい、じゃあ、行ってきます」

 

「ちょっと、困ります」

売店に向かう途中でタイミング悪く俺はとある光景を目にしてしまい、はぁ…とため息をつく。見てしまっては仕方がない。

大きく深呼吸し、落ち着かせると久石の方へと歩み寄る。

「あの~すみません…その子、僕の連れなんで勘弁してもらえませんか?」

周りに大勢の人がいるのでこちらに分があるのは確信している。

「チッ…なんだ彼氏連れかよ」

「え?あ、そ、そうなんですよ~」

「いえ、この人は彼氏じゃないです」

おい!空気読まんかい!

「じゃあ、問題ないじゃん」

そう言って男は強く久石の腕を引っ張ろうとする。

「あ~無理やり女の子をナンパしようとしてる人がいまーす。誰か係員呼んできてくださーい」

流石に大学生らしき男2人相手に正面衝突もできないのでおもむろに大声を出すと、その声で周りの人たちの視線がこちらに集中する。それに耐えかねたのか2人は去っていった。

ナンパするならもっと考えてやってほしいものだ。

「あ、ありがとうございます」

ひと安心して深呼吸しているとベンチに座り項垂れている久石に礼を言われた。

「ん?あぁ…それよりなんでこんなところに1人でいるん?」

撃退できる確率なんてほぼ100パーセントだったし流石に知り合いは見逃せなかったし。

「ちょっと人酔いしちゃって休憩してたんです」

「なるほど…今から売店行くけど一緒に来る?それか先に戻ってるか、今なら傘木先輩もいるし。1人でいたらまた声かけられるかもしれんし」

「………。まだ少し気持ち悪いですけど一緒に付いて行きます」

少しの沈黙のあと久石が口にしたことは以外だった。てっきり傘木先輩の方へ行くと思っていたのに。

そしてそのまま売店へと向かう。

「えっと、かき氷2つとコーラ1つください」

お金を支払いかき氷とコーラを受け取る。

「お待たせ、はい、コーラ」

「え?私頼んでませんけど…」

「この前ネットで見ただけやからほんまかどうか分からんけどコーラって車酔いに効果あるらしいからもしかしたら人酔いにも効果あるかなと思って。コーラ飲めるやろ?」

久石が何度かコーラを飲んでいるところを見ていたので飲めることは分かっていた。

「分かりました、ありがたくいただきます。今お金持ってないので戻ったら返しますよ」

「別にええよコーラ1本くらい。そこまでケチちゃうし」

「はい…では、お言葉に甘えて」

手にとったペットボトルのコーラを嬉しそうに頬に付けて涼を取っている。あざとい。

だからナンパされちゃうんだよ、そういうとこだぞ。

 

11時、俺と宗人は受付所にやってきた。ちょうど今まさに抽選結果が発表されるところでちょっとした緊張感に包まれた。大きな紙には16組みのチーム名がトーナメント式で記載されており、その瞬間俺はあっ…と呟く。俺、チーム名分からないじゃん。

「キタキタキタキタキタ」

「え?当選した?」

「これこれ」

宗人は興奮したように指を差す。

「いや、どれ?」

「あ、そっか…吹奏楽部さんチームってチーム名」

「おい、ネーミングセンスよ…」

今からやるのは戦車道じゃなくてバレーですよバレー。

「とりあえず、受付の人に報告行こうぜ」

「えっと、当選した吹奏楽部さんチームの神木拓海です」

改めて口にすると普通に恥ずかしい。

「神木様ですね、こちらがトーナメント表と大会のタイムテーブルが書かれた紙になりますので無くさないようにお願いします。そちらのタイムテーブルにも記されていますが開始時間は11時半からとなりますが神木様はBブロックですのでAブロックの8チームの試合の後となりますのでご注意ください」

「分かりました」

「よーし、テンション上がってきたー!」

さて、開戦だ!

 

 第十二章 飛翔(前編) 完




傘木希美との会話でかなり悩みました。どういう方向に持っていこうか無限に悩んでしまいます。
次回バレーボール回です、お楽しみに!

響け!の原作新刊がもうすぐ発売ですね。優子たちの代の卒業式めちゃくちゃ楽しみです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。