響け!全国へ!   作:rockyshocora

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今回はほとんどオリジナルだったので少し時間がかかりました。
話のテンポはこれぐらいでもよろしいでしょうか?
また、これから別視点の番外編とかもちょくちょく出せたらなと思っているので誰か出して欲しいキャラとかいれば要望お聞きします。



第五章 それぞれの関係と思惑

 翌日 昼休み

4限目終了のチャイムが鳴り昼休みになり、いつものように宗人と小野とでご飯を食べる。

「「リズと青い鳥」やっと読めたで」

宗人が惣菜パンを齧りながら俺に言う。

「は?朝聞いたときはまだ途中って言ってたやん」

「さっきの自習の時にな、自習に感謝!感激!」

「よく先生にバレへんかったな」

「まあな」

「なあなあ、その「リズと青い鳥」って何?」

小野が疑問を投げかけてくる。

「ん?あぁ~今年吹部がコンクールで演奏する曲が「リズと青い鳥」って言うんやけど童話とリンクしてて演奏するにあたって読んどこうってことになってん」

「へ~どんな内容なん?」

俺は小野の問いに対しておおまかなあらすじを説明した。

「…って感じで最後はお互い別々の人生を歩んでおしまい。みたいな内容かな」

「なるほどな~」

小野が相槌を打っている横で宗人が

「結局のところ作者は何を伝えたかったんやろ…こういう童話って何か意図があるはずやろ?」

「だよな~2人とも幸せやったのにそれをあえて手放すってのがどうにも理解できん」

俺と宗人がう~んと唸っていると小野が口を開く。

「そのままの状態やと2人がお互いに共依存してしまうからそれを避けて、自立するための行動だったとかは?」

「へ~なるほどな~」

宗人が感心する。

「共依存…それって悪いことなんかな~?」

「いや、分からんけど…なんとなく」

俺の疑問に小野が申し訳なさそうに呟いた。

「それより問題は来週の中間テスト!」

「いちいち宗人に言われんでも分かっとるよ…」

俺は憂鬱気味に答えた。

「明日からテスト週間で部活ないけど拓海はどうするん?」

「とりあえず明日、明後日は軽く個人練習するつもりやで、土日は休んで後は気分次第かな~?もしかしたら楽器家持って帰るかもな」

「やる気満々やんけ、勉強せんで大丈夫なんか?」

「オーディションまであと1ヶ月ちょいしかないからしゃあないやん…勉強は言うて1年の中間やしなんとかなるやろ」

「オーディションなんかあるんや」

「部員多いからな~まあ簡単に言えばオーディションに受からんかったら1軍で演奏できへんってわけよ」

驚いたように小野が言ったことを宗人が答えた。

「吹部も大変なんやな…」

小野が感心していると宗人心配そうに言う。

「でも、今年ユーフォ4人いるんやろ?確か去年コンクール出たのは2人だけだよな?」

「そうやねん、去年は3人いて2人が出場やったらしいからな~、最悪2人、無難なところで3人やろな…」

俺は、はぁ~とため息を吐きながら答える

「まあ、その1枠は去年も出てた久美子先輩で確定やろな」

「せやろな~、ただ、ユーフォは汎用性の高い楽器やから4人取ってくれる可能性も…ないか」

中間テストに続きオーディションの件で俺と宗人は2人で勝手に空気を重くしていった。

 

 2日後 楽器室前

昨日からテスト週間が始まり放課後になると普段よりも人が疎らになっている。

宗人は掃除当番のため1人で楽器室に向かった。

自主練をしようと楽器室前まで来てドアを開けると、そこには窓にもたれかかって腕を組んでいる吉川部長と自分の楽器を棚から取ろうとする中川先輩が会話している姿があった。

「よお!」

「お、神木か、自主練?」

「あ、こんにちは。はい少しだけ練習しようと思いまして」

「テスト前やのにご苦労さんやな」

「いえ、そんなことは…先輩方こそ」

「まあ、オーディション前やから別段珍しいってわけでもないけどな」

中川先輩が苦笑する。確かにテスト週間で部活がないってのに部員の半数くらいは学校に残って自主練しているはずだ。

「じゃあ僕はこのへんで」

さっさと楽器ケースを取って楽器室を出ようとする。

「あ、せっかくやしうちと一緒に練習せん?練習するええ場所知ってんで」

急な中川先輩の誘いにびっくりする。確かにこの期間いつもの低音パートの練習教室が使えないので場所を教えてくれるのはありがたいことだ。

「え、でもいいんですか?」吉川部長の方を見て問う。

「あ~、うちは気にせんでええよ。楽器持って帰ろう思ってここに取りに来ただけやから」

「じゃあ行こか!優子、おつかれ」

「はいよ~、神木も練習ほどほどにして勉強もしっかりな」

「はい、吉川部長お疲れ様です」

そして、中川先輩に案内されたのは屋上へと続く階段の踊り場だった。そこは学校の隅の位置にあり尚且つ屋上へは立ち入り禁止なので普段生徒は寄り付かない場所らしい。

「どう?ここやったら集中できるやろ?」

そりゃあ集中は出来るがこんな人気のないところで2人きりはまずくないか?いや、まずいでしょ…。

「邪魔も入らなさそうで良いところですね」

1人勝手に焦りながら答えた。

「さあ練習練習っと」

そうしてお互い準備を始める。基本的にオーディションは指定された箇所を吹くが抜き打ちでほかの箇所も吹くことがあるらしい。なので結論から言うと全ての箇所を完璧にする必要があるのだ。

1時間ほど練習して休憩を取る。

「先輩飲み物買ってきますけど何か飲みますか?」

「じゃあコーヒー牛乳お願い!お金は後で払うわ」

「了解です」

そうして自動販売機がある1階のピロティへと向かい飲み物を買っていると後ろから

「拓海君やん」

その声に振り向くとW鈴木の姿があった。

「さっちゃんと鈴木か、びっくりした~」

「もしかして練習?それといい加減鈴木じゃなくてみっちゃんって呼んであげてよ」

「うん、今から休憩しようと思って。今更呼び方変えてもな…どうしてもって言うなら変えるけど…」

そう言って目配せさせる。

「別に、神木君の好きなように呼べばええよ」

「ダメだよみっちゃん!みっちゃんだけ鈴木じゃ可愛そうじゃん…なんとなく」

「わ、私はそんなの気にせえへんよ」

「別にええんやったらさっちゃんとみっちゃんって呼ぶで」

「うんうん」

さっちゃんが満足したように頷く。

「じゃあ人待たせてるから行くわな、2人ともおつかれ」

「ばいばーい」

そうして手を振って別れを告げ、急いで戻る。

「お待たせしました」

「おう!ありがとうな」

「いえ、ついでなので全然問題ないです。それで…深読みのしすぎならいいんですけどもしかして何か話があったりしました?」

「うん?なんで?」

「あ、いえ…わざわざ一緒に練習しよって誘ってこの場所に来たので何かあるのかな~って…」

「そっか~案外勘がええんやな…別に大した話じゃないんやけどな、一応言っとこう思ってな」

「なんですか?」

「オーディションの件やけどな」

その言葉で急に緊張してしまう。

「去年うちAメンバーに選ばれてなかったやろ?それで今年は経験者が2人も入ってきた。正直最初は焦ったよ、次は頑張ればAメンバーに入れる思ってたからさ…」

その言葉に耳を傾けることしか出来なかった。なんて返せばいいのか分からない。

「でもな、だからってうちに遠慮とかしたらあかんで!それだけは絶対に!おこぼれでAメンバーに入れてもなんも嬉しくないしそれこそ本番でみんなに迷惑かけてしまうかも知れへん。だから全力でぶつかってきてほしい…約束できるか?」

中川先輩のその表情は今までよりも真剣でこちらを見据えてくる。

「………。分かりました、約束します!可能性は限りなく低いかも知れないですけど僕は4人全員でAメンバーを勝ち取りたいです」

「ありがとうな…拓海」

「!?」

「なんや?すごい顔してるで?」

「いや、だって名前呼び…」

「求にもそうしてるんやから別にええやろ?」

「でも、あれは名字が龍聖の顧問と関係者だから嫌ってことじゃ…」

「なんや、気づいてたんか」

「まぁ、一応…月永なんてよくある名字でもないですし龍聖っていう共通点もあったのでピンときました」

「で?名前呼びにするんかせえへんのか」

焦れったそうに聞いてくる。

「じ、じゃあ僕も夏紀先輩って呼んでも…いいですか?」

「よっしゃ、じゃあ決まりやな」

夕日のせいか夏紀先輩は少し赤くなっているようにも見える笑顔をこちらに向けた。

 

 翌日 PM2:00 櫻井家前

今日は中間テストに向けて勉強会をやろうということで櫻井家に来ていた。

ピンポーンとインターホンを鳴らすとドアが空き

「いらっしゃーい、拓海君久しぶりやね」

とおばさんが出迎えてきてくれた。

「ご無沙汰してますって言っても3ヶ月ほどですけど…」

「十分久しぶりよ、またご飯でも食べに来てや」

「じゃあ近いうちにお願いします」

そうして家にあがる。櫻井家は俺や久美子先輩、秀一君が住んでるマンションの近くに建っている一戸建てで自分の家のドアを開けて徒歩2~3分で着く。

「おう、やっと来たか!お菓子出すの手伝ってや」

玄関に入ると客間から宗人が出てきた。

「はいよ、俺が最後?」

「せやで」

そうして2人でリビングに行き準備をして客間へ向かう。

「神木君こんにちは」

「こんにちは」

小松さんと水瀬さんが挨拶する。

「おっす!小野は結局無理やったん?」

「そうみたい」

残念そうに水瀬さんが答えた。

「そっか、じゃあ勉強やりますか」

勉強をし始めて1時間が経った頃まず最初に根を上げたのは小松さんだった。

「あ~!もう嫌や」

「しゃーない、ちょっと休憩するか」

宗人が提案する。

「やっぱり高校生になると勉強も難しくなるね…大変やわ」

「でも水瀬さんこの中で1番勉強できるやん」

「そんなことないよ…神木君の方こそ」

「そっか?数学だけやん…英語は論外やし」

「得意な教科があるだけええやん、私1個も無いから辛いわ」小松さんが机に突っ伏す。

「1年の中間やからまあ大丈夫やと思うけど赤点取って補習で練習参加できんとかなるのは勘弁やで」

「拓海は余裕やな~?」

「別に余裕ではないけど…」

「神木君後で数学教えてや~」

「ええよ、せっかくの勉強会やしな」

「いや~持つべきものは勉強できる友達やね」

えへへと小松さんが笑う。

「そういや、2人は部活、オーディションとかどうなん?自信ある?」

宗人が話題を変えて女子2人に聞く。

「うーん、どうやろ?フルートはみんな上手い人たちばかりやしな~、特に希美先輩なんか飛び抜けて!」

「希美先輩みんなに優しいし綺麗だしすごいよね、テナーサックスは先輩3人いるしなかなかオーディション勝ち取るの難しそう…」

「おいおい2人とも弱気ちゃう?俺と拓海なんかもぎ取る勢いで狙ってんのに」

「もぎ取るって…でも、後悔はしたくないから全力は出すで!夏紀先輩にも言われたしな」言い切って気づいてしまった。が、鋭い宗人はすぐに指摘してきた。

「夏紀…先輩!?おまえいつから下の名前呼びになったんや?」

「ちっ…いちいち拾うなや」

「いいや、大事だね!」

「………。昨日からだよ、昨日一緒に練習してたんや」

「え!?え!?神木君、夏紀先輩と何かあったん?」

「そうなの?」

うきうきで小松さんと水瀬さんが食いついてくる。ほら!面倒なことになったと宗人を睨みつけるが向こうは反省していない。

「別に何もないよ、あの人は誰に対しても下の名前で呼ぶことが多いから、流れでじゃあ俺もってことになったんや!これで文句ないか?」

「ふーん、まあ一応信じといたるわ、一応な」

それを聞いて女子2人はな~んだと肩を落とす。

そして休憩も終わり嫌々ながらも勉強を再開した。

 

 中間テスト最終日

「やっと終わったー!」

チャイムと同時に隣の座席の住人小松さんが言葉を放つ。

教室は開放感に満ち溢れていた。前の席に座る小野に声をかける。

「どうやった?」

「いやあ、まじでやばい」

「だからあそこの公式は覚えとけって言ったやん」

「せやけどさ~なんとかなると思ってんって…」

そう言って机に突っ伏す。

宗人は自分の席で竜ちゃんと喋っているようだ。

「どうやった?拓、数学手応えあったか?」

「お、曜君、数学は結構手応えあるで、勝負する?」

「ええな!負けたらジュース1本な」

「おっけい」

そして最後にSHRを終わらせて1週間ぶりの部活へと音楽室へ足を進めた。今日からオーディションまでノンストップだ。

 

 あがた祭り当日

中間テストが終わった次の週、6月になり梅雨の時期になり毎日のように雨が降る。あいにく今日も雨だったが集合する時間のころには殆ど雨は止んでいた。

「どうしてこうなった……」

そう呟きながら人ごみに揉まれながら屋台が並ぶ道を歩く。

吹奏楽部に所属していながら、しかもそのうちの9割が女子だというのに一緒に祭りに来ているのは吹部の1年生の男子の4人なのだ。

「いや~裏切り者が出なくて良かった良かった」

宗人は嬉しそうに言いながら屋台で買った焼きそばを食べている。

「はは…そうやな、というか求君もタカも昨日急に誘ったのによく来てくれたよな」

「まぁ元々祭り行く気なかったし予定もなかったからな」

「なんだかんだ言って求は付き合い良いもんな」

求君の背中をバシバシ叩きながらタカがケラケラ笑って言う。

「俺を付き合い悪いやつやと思ってるんか知らんけど、別に人並みには交流あるぞ」

俺たちに反論するように求君が言う。

「そうやけど、最初に顔合わせしたときなんか話しかけて来るなよオーラ凄かったやん、普通にビビってたもん俺」

「まぁ…確かに」

タカの言い分に俺が賛同する。

「ぶっちゃけ求って川島先輩のこと好きなんか?」

「は?いきなりなんで?」

「いや、だって拓海から聞いてるとそうなんかな?って思ってさ、川島先輩の弟子なんやろ?傍から見ても仲良さそうやし」

そう宗人が問うと求君がキッと俺を睨む。

「好きやで?緑先輩は素晴らしい先輩やから」

いつものように淡白な反応を示す。

「おーーー!!!」

「告白か?告白するんか?」

みんなが興奮して食い気味になる。

「いや、そういうんじゃなくて、緑先輩の演奏技術と神がかり的な人格を尊敬してるだけで…だいたい俺と付き合うなんておこがましいやろ?」

「そんなことないと思うけどな~」

ポツリと俺が呟く。

「なんというか緑先輩は姉さんに似ててさ、俺にとっては特別な存在なんだよ…だから恋愛感情は持ち合わせてないんや」

淡々と語られた。

「へ~求ってお姉さんいたんや」

「まぁ…求君がそう思うならそれでいいんじゃない?」

「そうか~?なんかもったいないな…」

各々口を開く。

それから少し歩くと鈴カステラの屋台を見つけた俺は

「すまん、ちょっと買ってきていい?」

「おう、じゃああの辺のベンチで待っとくわ」

「了解」と、了承を得て1人で買いに列に並ぶとどこからか声が聞こえてくる。

「あっ!神木君ちゃう?」

その声の方に向き直ると

「やっぱりそうや!」

「げっ…久石と、えっと剣崎さんだっけ?」

「覚えててくれたんや!」

オーボエパートの1年生、剣崎梨々花である。胸まで伸びた髪は緩やかに螺旋を描き、その前髪は無造作に後ろへ纏められている。端的に言って美少女の部類だ。流石、吹部1年の中心人物の2人だけあって並んで歩いているのを見ると2人の可愛さは圧巻だ。

「人の顔見てげっ…ってなんですか?失礼ですよ」

剣崎さんがハニカミ、久石が不機嫌そうな顔をして向かってくる。

「もしかして1人?」

「いや、今1人で並んでるだけで向こうのベンチに吹部の1年男子3人おるよ」

「男子4人でお祭りだなんて寂しいですね」

嫌味を込めたような笑みでこちらを見る。

「ええやろ別に、そもそもそっちだって女子2人やん」

「なになに?奏と神木君っていつもそんな感じなん?」

「そうやねん、いつも久石が嫌味攻撃してくるんよ」

「え~珍しいやん奏がそんなに構うなんて、興味ない人には自分から絶対話さんのに」

久石の脇を肘で小突いてニヤニヤしながら言う。

「ちょっと梨々花変なこと言わんといてよ」

「でも、その割には神木君には敬語で喋ってるんやな?」

「だから別にタメ語で喋る仲ちゃうって」

「そう言えば久石がそんな砕けた態度取るところなんて初めて見たかも」

「奏、殆どの人に対して口だけ敬語やから友達少ないねん、THE八方美人」

「なんとなく分かるかも…」

「これを機に神木君にもタメ語で話せばええやん、な?神木君もそう思うやろ?」

「いや、まあ、もう敬語に慣れたから別にどっちでもええけど…」

「ほら、神木君もそう言ってるんやから無理にタメ語じゃなくてもええよ」

「そう?せっかく同じユーフォなんやから仲良くしたらええのに」

そんなやり取りをやっている間に俺は鈴カステラを買う。

「鈴カステラ買えたからそろそろ戻ろうと思うんやけど大丈夫?」

「あっ!ごめんなわざわざ呼びかけて」

「全然ええよ、暇潰しできたし助かった。ありがと!はい、2つずつくらい取ってって」

そう言って鈴カステラを女子2人にお裾分けする。

「えー!?いいの?ありがとー!神木君優しいやん」

「ありがとうございます………」

「じゃあ、また部活で」

そう言って2人に手を振って別れ男子3人のところへ向かって歩きだした。

 

第五章 それぞれの関係と思惑 完

 

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