かなり久しぶりの投稿となりますがこちら2話になります
新キャラも登場しますが前回登場して今回登場しないキャラもいます
楽しんで読んでいただけたら幸いです…
午前5時半、奏海の朝は早く既に身支度をおおよそ済ませていた。
父親は単身赴任しており不在、母親は既に仕事に出ている。
けれどこの家にはもう一人同居人がいる。
自分の隣の部屋のドアをノックしそっと開ける。
「……穹?起きてる??」
「んーー今起きたところだよ"お姉ちゃん"」
寝起きだから仕方がないが寝巻きは乱れており長い茶髪もボサボサだ。
彼女は神薙穹、ボクの妹だ。
そして穹はさっきの発言のようにボクがオトコの娘でお姉ちゃんを演じているなんてことを知らないのだ。
「朝ごはんなぁに?」
身支度をしながらボクに問いかける穹。
ボクのことなんてお構い無しで服からチラチラ下着が完全に無防備だ。
ボクは少しだけドキドキしまう、いやほんとに少しだけだよ?
まだあどけなさの残る顔立ちに微笑みを浮かべれば八重歯が覗く
「今日は洋食だよトーストとかポーチドエッグとか」
「おぉ、いつも悪いね」
どこの夫婦のやりとりだよ……
そんなやり取りをしているうちに穹の支度も終わったようで席につく。
「「いただきます」」
朝食を食べ残りの身支度を済ませて学校へ向かう
こうして神薙家の朝が否、ボクらの1日が始まるのだった。
×××
学校に向かう途中今日は穹と共に歩いていた。
「お姉ちゃんはもう学校慣れた?」
「うーん……まぁ、慣れた、のかな?」
初日から色々なことがあった。
けれどその出会いは逆にいきなりぼっちとなる案件の回避が出来たわけで良かったと考えるべきだろう。
穹の方はもう慣れてるの?と聞き返したところ……
「同じ中学だった子とかも多いからね、普通に慣れたかな〜〜」
「そっか……やっぱり女の子同士で星園に進学することが多いのーー」
「おはー穹ちゃん」
「あ、うん。おはよちづちゃん」
会話の中にいきなり割り込んできたのは穹の友達で國立千鶴……だったかな?
ボクも彼女とは既に面識があるがまるでいないように扱われている気がしていた。
恐らく彼女には敵視されているのだろう穹の中学の頃からの友達でいきなり出てきた姉というものに納得いかないのだろう。
「穹、先いくからね」
ボクは早足で学校に向けて足を進める。
ボクはそのまま一人で歩いていき昇降口で上履きに履き替え教室へ向かった。
ガララッ
「おはよ奏海」「おはようございます奏海さん」「おはー」
口々に挨拶をしてくるは昨日お話したりした面々だった。
その中から一人てとてととかけて来る影があった。
生徒会副会長の時雨さんだろう。
「奏海さん、昨日のお話受けるかどうかお決めになられましたか?」
「あーうん、もうちょっとだけ考えたいかな」
「ふふふ、待ってますのでいつでもいいですよ」
生徒会入りの話は悪い話ではないけどいろいろな場所に出るということは正体のバレるリスクがそれだけ高まるということにもなるのだ。慎重になるのも無理はないはずだよね?
「奏海ー今日の放課後空いてる?」
今度は後ろから声が掛かる。
來那だった。昨日一緒にちゃんと話したいって言ってたはずだ。
「いいけど場所はうちでもいい?」
「大丈夫よ」
「らなちーとかなみん遊ぶの?いいなー」
ボクと來那の話に割り込むのは彩加だった。
「うーん、でも今日はちょっと無理……かな」
「ごめんね遊佐さんこの埋め合わせは必ずするから」
おそらくボクの昔話とこうなるまでの経緯などを話すことになるだろうから彼女がいるとボクのことが露見してしまう。彩加さんには悪いけど断る引かなかった。
「そっかー。じゃあまた今度ねー」
少しばかり気が沈んでいたような気がした。
いや、いつも通り何だろうか?
彼女のことはよくわからないところが多かった。
この数分後先生が来てホームルームが始まり授業も始まった。
×××
数時間経った昼休みーー
「あー疲れたぁ」
「ちょっと來那そんなだらしない格好でそんなこと言わないでよ……」
「まるで仕事に疲れたオッサンね」
「はぁ?!ちょっと今のはおかしくない?!」
とまぁ、なんだかんだ賑やかな昼休みだった。
ボク、來那、時雨さん、彩加さんの4人で昼食を摂っていた。
「そういえば次の授業英語だったよね?小テストやるとか言ってたような……」
「なっ……それはまずいね」
え?なんかやばいこと言ったけ?
「英語の先生小テストで半分以上点が取れなかった人は居残りで勉強させるのよ」
「そうそう、それで奏倉羽さんはほぼ毎回居残り食らってたのよね?」
「ちょっと、なんであんたそれ知ってるのよ?!」
ははは……
まずいって來那が英語できないからまずいってことだったんだね……
「しょうがないなーらなちー私が教えてしんぜよぉー」
「お?まじで!頼む!」
來那が珍しく変に突っかかることなく話に乗っていた。
もしかして……
「奏海さん気づきました?実はですね遊佐さんかなり勉強できる方なんですよ?文系だけは」
その最後の一言なんか悪意ありませんか?
しかし以外だった彼女があまり勉強できるというイメージはなかった。
なんかこうね、ほら、バカっぽいキャラしてるしさ。
「いーい?今回の小テストは5W1Hの使い方が出るからー」
彩加さんはちゃんと教えていた。一方教えられる側はどうかというと……
「ふぇ?!なんでそこがこれになる?え?」
驚くほど理解してなかった……
これたぶんできる出来ないってレベルじゃないんだろうなぁ……としみじみ思っていた。
×××
授業は滞りなく進み放課後となった。
昼一緒にいた3人のうち時雨さんは生徒会の仕事があるらしく先にいなくなっていた
そして英語の小テストはどうなったかというと……
「ねぇ、見て奏海!半分ぴったりで合格!いぇーい」
いや、それあと1問でも落としてたら不合格だったんだから喜ぶんじゃなくて勉強するべきだよね。
「よかったねーらなちー。まぁ、私は余裕で合格だけどねー」
「うん、ありがと!さて、じゃあ帰りますか!」
「あ、うん」
これ流れ的にボクも点数聞かれるのかなーって思ってたんだけど違うのかぁ……
「かなみんは小テストどうだったのー?」
ボクが少し残念そうな顔をしているのに気づいたのか彩加さんが気を利かせたのかその話を振ってきた。
「ふふふ、実は……」
「満点なんだよねー?」
「あ、うん、そうだよ」
なんだよ!気を利かせて聞いたんじゃなかったのか!!
それに知ってるのに聞くってなんかなぁ……
「悔しいかなー麗たんが一番だと思ってたらかなみんの方が高くて満点とか聞いたからねーちょっとからかいたくなっちゃった」
てへぺろとチャームアップされたがそこは別に強調する所じゃないよね?
というか憂さ晴らしって訳じゃないだろうけどちょっとさっきのキツかったよ……
「まぁまぁ、とりあえずそろそろ行こか時間も惜しいし」
來那の鶴の一声により解散となり我が家へ向かうこととなった。
×××
「へぇ、ここが奏海のおうちね、なかなかじゃない」
「そうだね、ボクもまだここが自分の帰る場所になって1ヶ月ちょっとだけど凄いところだなぁとよく感じるよ」
神薙家はこの地域でもかなり大きな家を持っており敷地面積は東京ドーム2分の1個分ほどある。家というより屋敷というのが相応しいぐらいだ。
「ボクの部屋の隣が妹の部屋なんだけど妹の事は知ってる?」
「えーと、確か穹ちゃんだったかな?今年の1年生の学年次席だとか聞いてたけど」
え?そうだったの?穹って頭良かったのか?!
隣の部屋からくしゅんとかわいらしいくしゃみが聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
いや、気のせいじゃないね。
既に帰宅している形跡があったし間違いないだろう。
「まぁ、適当なところに座っててお茶用意してくるから」
「はーい、ありがとね」
ボクはキッチンへ向かいお茶を用意して部屋に戻ったのだがーー
「ちょっと來那さん?なにしてらっしゃるんですかねぇ?」
來那がボクのベットの下を漁っていた。
「え?いや、ほら、 奏海もなんだかんだ言って男の子なんだしそういう本とかあるのかな?って思ってさ」
「來那……そこにならえ!」
「え?な、なんでよ?」
「問答無用ぉぉ」べしっ
來那の頭を軽く叩く。
「痛っ、ちょっとなにすんのよ!」
「あのねぇ來那、今は曲がりなりにもボクは女の子として女子校に通う身だよ?そんな状況でそんなもの持ってたらおかしくない?そうは思わない?」
「あ、うん……ごめんね、軽率だったかも」
うんうん、反省したようだね。全く最近の子はそういうことばかり気にしててけしからんな!
「つまりは誰にもバレないところに隠しーー」べしっ
反省の色なしだった。
「いたた…まぁ、こんな茶番はこのぐらいにしてお話聞かせてもらおうかな」
やっと本題か……でも、何から話すべきなんだろうか。
「來那は何から聞きたいの?」
「あの日……奏海が急にいなくなった理由から」
「最後の日だね、いいよ」
実はボクは昔のことをあまり覚えていなかった。
その頃色々なことがあったせいでショックを受けて記憶を封印してしまっているからだと思っている。
けれど最近になって少しずつその頃のことを思い出し始めていた。
「少し記憶が曖昧だけど來那と最後に会った日の次の日家族で出かけることになってたんだ。でもその途中で事故に遭った」
「それがあの高速道路での大規模な巻き込み火災事故ね」
「あぁ、ボクは全身に火傷を負ってたけどなんとか助け出された。でも、お父さんとお母さんは即死だった」
「あれ?待って奏海、妹ちゃんいたよね?あの子はどうしたの?」
「え……?」
ボクの記憶が食い違っていた。ボクに妹なんていなかったはずだった。
なのに來那はボクに妹がいると言った。
ボクの記憶全然不完全なんだろうか……
「ごめん、当時の記憶が全部あるわけじゃないんだ……きっと來那の言う通りなのかもしれないけど今はその事が思い出せないんだ……」
「……そう、なんだね。なんかごめん」
「続きいいかな?」
「うん」
「その後ボクは近くの病院に搬送されて治療を受け普通に良くなっていったんだ。でも心の面がまだ不安定で夜な夜な泣き叫んだりしていたと思う。そんな時ボクに孤児院に行くように話が来た。ボクはよく分からずそのままそこに行くことなったんだ」
「……」
「來那?」
來那がうつむき加減で少し震えていた。
そしてすぐその理由が分かった。
「來那……急にいなくなったことほんとに悪く思ってたよ。でもボクはーー」
「違うの!そうじゃないの!私が……私が言いたいのはそんな事じゃない!」
「來那もしかして君は……」
「奏海ごめんね、最後の日の約束奏海はちゃんと守ってたんだよね?」
「……っ!!」
「私はずっと奏海のこと疑ってたの。ほんとのこと知ったのも最近の話だし私は約束忘れられたとずっと思ってた。でも違った」
「來那……見たんだね君は」
「うん……奏海、ありがとう」
そう、これはボクと彼女が幼き日に交わした約束が果たされた瞬間だった。
その内容は至極簡単だった。
「私のあげたあの髪留め奏海はずっと持っててくれたんだね」
「うん、よく気づいたね……もう原型とどめてないはずなのに」
ボクと彼女の最後の約束それは幼き日の來那から貰った髪留めとそれに込められた思いへの答えだった。
彼女から送られた髪留めそれは珍しいアイビーの花の髪留めだった。
その花言葉は『死んでも離れない』という意味だった。
そう、ボクと彼女はあの髪留めをずっと大事にしてきたそしてそれはどんなときも離さず持ってきたそして今もそれは大切に持っていた。
「あの日ボクと君は離ればなれになってもボクは君のことは忘れなかった。それは君も同じだろう?」
「うん、ちゃんとあるよ」
彼女の手に握られているのはボクが送ったミセバヤの花の髪飾り。
その花言葉は『大切なあなた』という意味だ。
こうしてボクと來那は本当の意味で再会を果たせたんだ。
×××
その後ボクらは昔話に花を咲かせていた。
2年それがボクと彼女が一緒にいた時間だった。
けれどその時間はとても長く感じられるほどに濃いものだったのだ。
「まだあの頃の奏海は今と違って男の子らしかったよね、髪もなんかツンツンヘアーだったし」
「そ、それはおまかせでーっていつも頼んでたから」
「うーん、でも奏海すごい男の子っぽかったよ」
「そりゃ、実際男の子なんだから当たり前ーー」カシャン
話していた途中いきなり部屋の外で何かが割れるような音がした。
この家に今いるのは妹、穹だけのはずだった。
部屋のドアを開けるとすぐそこに穹が立っていた。
「そ、穹!大丈夫?!怪我しなかった?」
ボクはすぐにそこに割れて散らばる破片を拾おうとしたが穹から放たれたその一言で全身が凍りつくような感覚に襲われる。
「……嘘つき、信じてたのに……お姉ちゃん、ううん、あなたのことなんにもわかってなかった!私はバカだった、お姉ちゃんがほんとは男で性別詐称してたなんて!!」
「っ!そ、それは…」
「盗み聞きは悪い事だと思ったでも興味本位でずっと聞いてた!そしたらここに来る前のこと性別が違うってことが聞こえてきた!もう何がなんだかわかんないよ!私もうこんなのいやだよ!結局私は、私は……」
そう言い放つとそのまま走り去ってしまった。
ボクは穹に何も言い返すことが出来なかった。
事実ボクは穹に自分の本当の性別どころか自分のことを何一つ教えてはいなかった。
故に大ショックだったのだろう。
走り去る直前穹は泣いていた。
それだけボクのことを信じていたのだろう。
そしてら最後の一言の意味がボクには理解出来なかった。
穹はいったい何をどんな思いを抱えているんだ……
「奏海!そんな所で突っ立ってる場合じゃないでしょ!」
一人思考の底なし沼へはまっていくところだったが後ろからかかる声に落ち着きを取り戻す。
「でも、ボクは……ボクはどうすれば」
「奏海、落ち着いて!そして聞いて!」
來那に両手を掴まれ目を見つめられる。
彼女の目は本気だった。
「あ、あぁ……」
「奏海、あなたは今すぐあの子を穹ちゃんを追いかけなさい!私も協力してあげるから!」
「で、でも」
「これはあなたらにしか出来ないことだよ、まだ確証はないけどあの子はきっとずっと寄り添える本当の意味での家族が欲しかったんだよ。御両親ともに仕事でいない日が多いみたいだし、だからこそ今奏海が行って本当の気持ち伝えなきゃダメだよ」
「……っ!そうだね、お義母さんが言ってた穹はボクがここに来てから穹に笑顔が戻ったってーー」
ボクはどうしてすぐ気づかなかったんだろうか。
穹の気持ち理解した気でいただけで全然理解してなかった。
「來那、手伝って欲しい!」
「うん、任せて」
ボクは最低限の必要物を持ち家の外へと駆け出した。
穹にただ一言伝えたい思いを抱いてーー
×××
穹が家を飛び出して既に1時間半経っていた。
けれど彼女は全然見つからない。
家に残してきた來那が友達に目撃情報がないかSNSで聞いてみたらしいが誰も見た人はいないという。
「くっ……どこにいるんだ、穹っ!」
無我夢中で街中探し回り疲労も溜まってきた早く見つけないと夜になってしまいそうだった。
焦る気持ちが表に出すぎていたのか十字路を確認もせず飛び出してしまった。
すぐ真横に人がいた。
「しまっーー」ドンっ
思いっきりぶつかってしまった。
「いてて……全くどこ見てあーーって奏海先輩?」
ぶつかった相手はボクのことを見るなりすぐ名前を言い当てる。
そしてボクもすぐに誰かわかった。
「千鶴さんか大丈夫?急いでてつい……」
「……何かあったんですか?」
「あぁ、ちょっと穹がねーー」
「先輩少しあっちでお話しませんか?」
なんでだよ!
こっちは急いでるというのに!
表情に気持ちが出ていたのか少し怪訝そうな顔をされたがついて来いとばかりに歩き始めすぐそばにあった小さな公園へ向かう。
「先輩ーー穹と揉めたんでしょう?」
「う、うん。そうだけど……」
「いいよ私はもう分かってるから」
なんだこの見透かされてるような感覚は……
彼女は、千鶴は何を知ってるんだ?
「奏海先輩、あなたは穹のこと好きですか?」
唐突な問だった。
けれどボクが答えるはもちろんーー
「好きだよ」
「家族として好きですか?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、最後の質問。先輩ーー」
ボクは息を呑む。
「穹のこと異性としても好きですか?」
その瞬間周りの時が止まったようにも感じた。
その一言がボクの頭の中で何度も繰り返される。
「な、なんで……」
ボクはもはや声を出すことすらままならなかった。
なぜただ穹の友達であるはずの千鶴がそれを知っている。
穹が教えたとは思えなかった。
「先輩、私がなんで知ってるか疑問に思いましたよね?」
今思っていることをそのまま言い当てられボクは少し怯む。
けれど彼女の言葉は続く
「先輩は覚えてないんですか……私もあなたと同じなんですよ?」
理解出来なかった。
何が同じなんだ。
頭の中で色々なことがぐるぐると回り始める。
「少し意地悪しちゃいましたかね。ほんとは私は先輩と同じ孤児院にいたから知ってるんですよ?」
「え?君が……まさか、そんな」
「奇妙な縁もあったものです。私は國立の家に2年前に養子として迎えられました。先輩は1ヶ月ちょっと前に神薙の家に」
それじゃあ、彼女が最初からボクのことを警戒していたのはーー
「先輩、私はあなたに会った瞬間にいつか来るだろうこのことを予見してました。先輩、あなたの覚悟聞かせてください。そうすれば私があの子のいるだろう場所教えてあげますよ」
「そっか……ははは、ボクはほんとどこまでも愚か者なんだね」
小さくつぶやくその声が千鶴に聞こえたかは定かではない。
ボクは彼女に今の穹への思いを伝える!
「ボクはーー」
×××
千鶴から教えてもらった場所を目指しボクは走っていた。
ボクは彼女に認められたのだ。
その思いは間違いなく本物だろうそれを伝えることが出来ればきっと穹も報われるはず。
それが彼女の返答だった。
そしてボクは隣町にある小さな公園にやってきた。
その公園の最奥にらある2台のブランコそこに1人座る少女がいた。
「探したよ、穹……さぁ、一緒に帰ろう」
チラッとこちらの様子を覗く穹。
その瞳には今まで見てきた明るい彼女の面影はなく暗い影が落ちていた。
「よく見つけたね、こんな遠いところを」
「穹……」
彼女の肩へと手を伸ばそうとするがーー
「さわらないで!!」
彼女の声にボクは怯んでしまう。
彼女の知ってしまったことは紛れもない事実でそれはもう変えることの出来ないものだ。
彼女には初めから尊敬していた姉はいなかったのだからーー
「穹、聞いてほしいんだ……ボクの本当の気持ちを」
彼女は顔を上げた。
目元は赤く腫れ上がっていた。
きっと長い間泣いていたのだろう。
そんな彼女を見るとボクまで辛くなってきてしまいそうだった。
「穹、ボクが神薙の家に来ることになったきっかけはねただの勘違いだったんだ。」
「え?」
意味がわからなかったのだろう。
それもそのはずだ。
なぜならーー
「君のお父さんはボクを一目見て女の子と勘違いして養子として迎えることにしたんだ」
「そんな馬鹿みたいな話信じられないよ!!」
「けどこれが現実なんだよ!」
そう、たったそれだけなんだ。
ボクが神薙の家に来たきっかけというものは……
「お義母さんはこのことを知ったけど誰にも言わずに隠してるんだよ?全ては穹のために」
「……私のために?」
「そうだ、穹はボクが来てから笑顔を見せるようになったって言ってたよ」
「!」
彼女が驚いた顔をしていた。
暗い影を落としていた瞳は既に本来の明るい彼女の瞳へと戻りつつあった。
「そう、かもね……私はずっと独りだった。友達になんて作れなかった。みんな私のこと敬遠してて話しかけては来ても仲良くはしてくれなかった!家じゃお父さんはほとんどいないしお母さんも夜くらいしかまともに会えなかった!私は友達もいなくて家族の温かさすら知らなかった!」
彼女の本心からの言葉だとすぐに感じ取れた。
彼女の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「でも、お姉ちゃんがきて全部変わった。私は独りじゃなくなった。家族の温かさを知り始めた。でも!それが……」
そのあとの言葉には嗚咽が混ざりもうまともに喋られなくなってしまった。
「穹、もういいよ……あとはボクに喋らせて」
ボクは軽く深呼吸をすると千鶴に話したことをまた話し始める。
「ボクは知ってる通り幼い頃に家族の死を体験した。その頃のボクは完全に壊れてた。でもボクは今はこうして普通でいられる、それはね大切なものを見つけられたからなんだ」
「たぃせつなもの?」
「そう、それはここにある」
ボクはそういい自分の胸に手を当てる。
「大切なもの、守りたいと思うものがここにある。ボクは心の底から失いたくないものがある。それを失ってしまったらボクはきっとボクでいられなくなる」
自分の鼓動が早くなるのを感じる。
ここから先を言うのは凄く恥ずかしい。
けれどここで立ち止まったら終わりだ、覚悟は既に決まっているんだ!
「ボクが守りたいものは穹、君と君の絆だよ」
はっとした表情を見せる穹その目は大きく見開かれボクを見つめていた。
「ボクは穹の本物の姉にはなれない、けどさそんなのは関係ないんだ。穹にとってボクが家族の温かさを感じられる存在になるんだったらただそれだけでいい」
「性別なんて関係な言っていうの?」
穹の問はもっともなものだった。
けれどその答えも既に持ち合わせている。
「あぁ、関係ないよ。だってーー」
今この瞬間色々なことを思い出していた。
穹との出会いを初めは明らかに避けられていたことそして今日みた彼女の寂しそうな泣き顔を……
「だってボクは穹の事が好きだから!心の底から大好きだって言えるから!」
「……あ」
穹の唇が動かけれど声にはなっていなかったその言葉をボクは確かに受け取った。
「穹、ボクはもう二度と君を一人にはさせない。絶対に神にだって誓えるよ」
その瞬間穹の涙腺が崩壊した。
子供のように泣きじゃくる穹の頭を軽く抱き撫でる。
これで良かったのだ。
例えこの思いが歪んでいたとしてもそれはボクの中で正しいと思えるのならそれでいいんだ。
その後数分穹は泣き続けボクは穹の頭を撫で続けていた。
「ごめんね……私ずっと遠回りしてたんだね。お兄ちゃん」
「ははは、お兄ちゃんは二人だけの時にしてよ?ボクが女の子として振る舞うことにはかわりないんだから」
「うん、わかったよ」
ボクと穹の問題はこれで完全に解決した。
それは神薙家における大きな変化となることを間違いないだろう。
「穹、おうちに帰ろ」
「うん、でも少し待って」
「ん?どうした?」
「お姉ちゃん少し屈んで?」
「ん?こうかな?」
ボクが軽く屈むと首に手を回されそのまま頬に柔らかな何かがーー
「え、ちょ、穹さん?!」
「あはは、お兄ちゃん!だーい好き!!」
「全くませてるなぁ…まぁ、いいや」
「手、繋いで帰ろ?」
その問に無言で行動で答えボクらは家路へとついた。
何かを忘れてるような気がしたけど気にしない。
そしてそんな二人を影から覗いていた人物がいたことしてらこれからもたらされるものがまたひと波乱呼ぶことになるがそれはまた別のお話。
まず、お読みになっていただきありがとうございます!
前回の1話よりかなり長くなってしまってますね(汗)
読み応えがあるようでしたら嬉しいです
第3話も書きますのでお楽しみにです
もし誤字がありましたら遠慮せず誤字報告の方お願いします!